スポーツテストで追いかけっこです2
次の日になり俺たちは中等部・初等部のスポーツテストの準備をしていた。
俺と真が担当したのは、50m走の記録係だ。
俺がストップウォッチ、真が記録をつけることになっている。
「ちゃんと記録してくださいね!」
そう言うのは50m走担当の教師である華扇だった。
「はいよ」
「先生にはいよとは何ですか!」
「わかりました。ちゃんとやらせます!」
俺はそう言うと、真の頭を小突いた。
「頼むから面倒ごとを増やすな」
俺は真にこっそりと伝える。
しばらく外で待っていると、中等部と初等部の生徒がやって来た。
どうやら、中等部と初等部はスポーツテストをペアで行うらしい。
初等部を連れている中等部の中にウサギの耳が特徴的な少女、鈴仙がいた。
「あの子可愛いよな~」
真が鈴仙を見て言う。
「まぁ、真面目でいい子だからな」
「え?知ってんの?何で?」
「正直言いたくない・・・」
「何でだよ!・・・あ、もしかしてそう言う仲なのか!?お前!詩音と言うものがありながらあんな可愛い子まで・・・」
俺は真の頭を叩いた。
真には言えないが、俺には苦手な教師がいる。
紫も苦手な教師であるが、最も苦手なのは化学担当の八意 永琳である。
長い銀髪を三つ編みにして、左右で色が分かれている特殊な服を着ており、被っている帽子や服からナース姿を連想させる女性だ。
永琳はあらゆる薬を作ることが出来るらしい。
初めて見たときは見た目や能力からなぜ彼女が保健室の先生ではないのかと思ったのだが、今でははっきりと言える。
彼女が保健室の先生じゃなくて良かったと。
それが確信になったのは高等部1年の秋頃だ。
提出物を渡しに永琳がいる実験室に向かった時のことである。
その際、俺はとある何かを見てしまい、それ以降永琳から実験台として見られるようになったのだ。
何を見てしまったのか、それは薬の効果で覚えていない。
ただ、俺にとって永琳が恐怖の対象であることに変わりはない。
その際、俺と同じ永琳の実験台にされていると言う鈴仙・優曇華院・イナバ(れいせん・うどんげいん いなば)と知り合いになった。
「おい!教えろよ!」
「世の中には知らない方が幸せなことだってあるんだ」
「なんだそれ?」
「いいから早く持ち場につこう。先生がこっち見てる」
真がスタートラインを見ると、そこにはこちらを見ている華扇の姿があった。
「しゃあない。始めるか」
真が仕方なさそうに席に着き、俺はゴールラインに立つ。
「それでは第一走者、準備してください!」
スタートを担当する華扇がピストルを構えると、第一走者がスタートラインに立った。
始めに走るのは鈴仙ともう1人の中等部らしい。
中等部の次に初等部が走るらしく、交互に並んでいた。
「位置について、よーい・・・」
パァン!
銃声が響き、走者が一斉に走りだす。
一番に抜けたのは鈴仙のようだ。
力を制御されているとはいえ速い。
すでに隣で走っている者と2秒近く差が出ている。
そして、ゴールラインを超えようとした、その瞬間、鈴仙の姿が消えた。
「!?」
「はっ?!」
鈴仙が消えたところに駆け寄る俺たち。
見ると、地面に大きな穴が空いており、鈴仙はその中にいた。
「鈴仙!大丈夫か!」
「な、なんとか・・・」
深さは3mくらいだろうか。
俺は手を伸ばし、鈴仙を穴から引きずり上げた。
それにしても、なんでこんな所に落とし穴が・・・
「おい岳!見ろよあれ!」
真がグラウンドを見て叫んだ。
「な・・・」
俺はグラウンドを見て絶句した。
グラウンドには鈴仙が落ちた穴以外にも、たくさんの落とし穴があり、落ちてしまった生徒を教師や並んでいた生徒たちが助けていた。
「貴方たち!」
華扇がすごい剣幕で俺と真の所に向かってくる。
「まさか、ここまで危険なことをするだなんて思いもしませんでした!学園でもそれ相応の対応を取らなければなりません!」
「え!?違いますよ!」
「ちょっと待てくれ!俺たちじゃねぇって!」
俺と真が誤解だと華扇に言うが、聞く耳も持たずに俺の腕を掴む。
「こっちに来てください」
「だから!俺たちじゃないですって!」
「言い訳は後で伺います!村岡君も来なさい!」
「だからやってねえってば!」
真もそう言いながらも付いてくる。
この場で逃げると逆に疑われてしまう。
ここは付いて行ったがいいと考えたのだろう。
華扇が向かっているのは休憩用に建てられたテントの方だった。
「先生、本当に俺たちじゃないですよ?」
「今まで散々問題を起こしてきた貴方た」
華扇の言葉は最後まで続かなかった。
華扇が踏んだ地面が突如陥没したからだ。
おそらく落とし穴があったのだろう。
しかし、教師であり、仙人でもある華扇は、崩れ落ちる地面を蹴り、宙を一回転して落とし穴に落ちるのを防いだ。
ただ、その時掴んでいた俺の手を離したため、俺は落とし穴に落ちてしまった。
「痛っ・・・!ぐはっ!」
俺の後ろにいた真も落とし穴に落ちたらしく、先に落ちた俺は下敷きにされた。
「ま・・・真・・・」
「すまねえ。でも、1人じゃ上がれねぇ・・・」
俺と真は華扇に引き上げられると、テントの所で横一列に並ばされた。
俺と真以外に、魔理沙、てゐ、サニー、ルナ、スターも並ばされていた。
その周りを教師、中等部、初等部、同級生たちが囲んでいる。
「何で私も並べられてるんだぜ・・・」
「それは俺のセリフだろ。いつも面倒事に巻き込まれてるような気がするんだが」
「そこ、静かにしなさい!」
映姫が俺と魔理沙に注意した。
「貴方がたは過去に問題を起こした事があるため集められました。私はこの中に犯人がいると考えています。各自、異論は認めません」
映姫が俺たちに言う。
こうなった時の映姫は、何故か教師でも逆らうことが出来ない、強い力を発している。
「被害者は数名、中には保健室へ運ばれた生徒もいます。重ねて、スポーツテストの妨害行為など、これらを踏まえ、罪人にはそれ相応の重い罰則を与えます。よろしいですね?」
「ちょっといいか?」
真が手を挙げる。
「ダメです」
「なんでだよ!?」
「映姫、俺と真はその落とし穴に落ちている。仕掛けた人間が自分の作った罠に落ちると思うか?」
「被害者を演じていると言うこともありますので」
映姫の言う通り、犯人が被害者になりすますことで自分から疑いの目を逸らそうとするのは不思議なことではない。
映姫は俺や真も疑っているようだ。
「お兄ちゃん・・・」
俺は声がした方を見る。
そこには心配そうに俺を見つめるリアが居た。
俺はリアに大丈夫だ、と小さく頷いた。




