個性豊かな人妖たちです4
「はい、ビーフカレーと天ぷら定食で1150円です」
「ゴチになりまーす」
「霊夢、お前冗談じゃなかったのかよ・・・」
霊夢が頼んだ天ぷら定食を奢ったとは言え、合計1150円というのは安い。
それに、この学食の担当であるミスティアの料理は冗談抜きで美味しいから、この値段で食べられるのは破格だ。
俺たちは多くの人が座れる場所を探し、席に着いた。
「お?皆が学食にいるなんて珍しいな。俺たちも一緒に食べて良いか?」
食べている途中で流と雛も同じ席に座る。
「あ!教室に居ないと思ったらこんなところに居たんですね!先輩!」
真がトイレに行っている間に学食に来た早苗が真の席を取り俺の隣に座った。
「早苗、そこ真の席だぞ?」
「良いんですよ。村岡先輩はあっちの席で」
「岳も大変ね。こんな女に付きまとわれて」
隣に座っている霊夢が俺のカレーの肉を気付かれないよう取りながら呟く。
「あら?霊夢さんが学食なんて珍しいですね。いつも安物のパンばかり食べているのに今日は贅沢じゃないですか。あ!先輩の奢りですか?」
「なっ!?」
「よくわかったな早苗!」
「当たり前じゃないですか!先輩のこと、一番見てるんですから!」
早苗は嬉しそうに頬を緩めた。
早苗と話しながら真を待っていたが、まだ戻ってこなかった。
頼んだ物も食べ終えているので構わないのだろう。
俺もカレーを食べようとした。
カレーの中にあった肉が全てなくなっていた。
「あれ?俺の肉・・・」
「なかなか美味しかったわよ」
霊夢が肉の感想を言う。
「お前かぁぁあ!!」
俺は霊夢が残していた海老の天ぷらを自分の口に放り込んだ。
「あぁぁぁあ!!私が最後の楽しみに残しておいた海老がぁ!」
霊夢は俺の頬を抓る。
「いだだだ・・・」
「先輩に何しているんですか!」
早苗が霊夢の手を離そうと引っ張るが、霊夢は手が離れないようもっと強く抓るので更に俺の頬に痛みがはしる。
「いだだだだだ!!!」
このまま引っ張られたらマジで頬が千切れる・・・!
「ねぇ、咲夜。あれは誰かしら?」
岳が霊夢に頬を引っ張られている光景をガラス越しに見ていた蝙蝠の翼を生やした少女は、側にいるメイド服を着ている教師、十六夜 咲夜に尋ねる。
彼女たちがいるところは学食外のテラスであり、緑のチャイナ服を着た女性教師が大きな傘を持って少女に太陽の光が当たらないようにしていた。
「頬を引っ張っている方でしょうか?」
「引っ張られている男の方よ」
「彼は古郷 岳、高等部2年の生徒です」
「ふ~ん、面白そうな人間ね」
「たしかに教師たちの間でも彼は有名人らしいですね。良い意味でも悪い意味でもですが」
「なるほどねぇ。貴女高等部の教師になったんだから彼の事調べられるでしょ?少し興味があるわ」
「かしこまりました」
「あの~、その事なのですが、彼には初等部の妹もいるらしいです。私、初等部の体育担当教師なので妹さんから話を聞いてみましょうか?」
大傘を持った女性が少女に尋ねた。
「そうね、頼むわよ美鈴」
「いったぁ~!」
霊夢の抓りから解放された俺は食器を片付けに行く。
霊夢、早苗とのやり取りの中、他の皆はお昼を食べ終えて学食を出て行ったようだ。
「アンタが悪いんだからね!」
「俺のせいかよ!?」
隣で食器を片付けている霊夢に俺は突っ込みを入れた。
真は未だ戻ってくる気配がない。
仕方なく真の頼んだ物を片付ける頃には学食にいる生徒も少なくなっていた。
「さぁ、戻りましょう!先輩!」
側にいた早苗が俺の腕を掴む。
「戻ると言っても教室違うだろ?」
「良いんですよ!途中まで一緒に戻りましょう!」
俺は早苗と共に1年生の教室に向かい、その後2年の教室へ戻った。
結局真は昼休みが終わるまで帰ってこなかった。
「すまねぇ!ちょっと後輩たちと会ってた」
「後輩って、ヨシキたちか?」
「あぁ、とりあえず後輩たちについて大体わかったぜ」
真が後輩男子たちについて話した。
ヨシキは前聞いた通りである。
和泉 彼方について、彼は男でありながら常に女装がしたいためにこの学園にAO入試で入学したらしい。
女装趣味があっても普通に女の子が好きらしいのだが、真が見たとき初めは女と思ったらしい。
性格は明るく誰とでも仲良くなるタイプだという。
立花 元鬼について、彼は半人半鬼であり、彼方同様AO入試で受かったらしい。
入学理由は鬼である萃香や勇儀に憧れたから。
見た目によらず性格は結構フランクな感じでめちゃくちゃ良い奴とのこと。
小豆 大福について、彼は小豆はかりで実家が和菓子屋さんらしい。
彼は一般入試で受かったらしいのだが、理由は友達である元鬼と一緒の学園に入学したかったとのこと。
甘いものが好きらしい。
「で、もう1人木村 悠人って奴がいるんだけど、コイツがキザな奴でさ。俺の質問に一言二言で返しやがる。あぁ、一応伝えとくけど俺らと同じ人間な」
「ふ~ん・・・」
「性格はさっき言った通りキザだな。一般入試でここに来たらしい。理由は家から近いからだとさ。変わった奴だよな」
「なるほどな。にしても良くそこまで知ることが出来たな」
「アイツらも俺らの事気になってたらしくてさ。それでたまたま会ったから、色々と話したってわけ」
「なるほど」
「とりあえず全員いい奴だと思うぜ。特に彼方は結構俺に似てるかもしれねぇな」
「真がもう1人増えるのもな・・・」
「俺みたいに行動力があるってことさ。流石に悪いことはしないだろうけど。そうそう、岳や流についても聞かれたから適当に説明しておいたぞ?」
「なんて言ったんだ?」
「ん?流は真面目な奴。岳は俺と一緒に問題を起こす奴って言った」
この野郎、直接顔合わせる前に俺の評判を下げやがった・・・
「ただ、岳については結構聞かれたぞ」
「え、なんで俺だけ?」
「とりあえず女性関係を聞かれた」
「なるほど、で、変な説明してないだろうな?」
「とりあえず早苗ちゃんに好かれてることは言った。まあ早苗ちゃん見てりゃわかることだしな。あとはとりあえず知り合いが多いとだけ、な」
真が変な説明をしたわけでないことにとりあえずホッとした。
「今年からは濃いい後輩たちもいるし、楽しい学園生活になりそうだな!」
そう言う真に俺は頷くと、チャイムと共に午後の授業が始まった。
「あ、そうそう。まだあった」
授業中、真はこっそりと話しかける。
「どうした?」
「学食の外にテラスが出来てるの知ってたか?」
「いや。そんなもの出来たのか?」
「あぁ、でもテーブルは1つだけ。そんで、いっつも同じ奴らがそのテラス使ってるらしいんだけど、そいつら、岳の事調べようとしてるみたいだぜ?」
「は?俺?」
「あぁ、見たことないからおそらく転入生だと思うが、ひゅ~!隅に置けない奴だぜ!」
真はそれだけを言うと、前を向き授業を受け始めた。
転入生が俺について調べてようとしてる、ね・・・
「これ以上面倒ごとが起きませんように」
俺は平穏な学園生活を静かに祈った。