個性豊かな人妖たちです3
「なぁ、岳。やっぱり私ってそんなに男に見えるか?」
一緒に歩いていると、妹紅が問いかけてきた。
「どうした?いきなり」
「告白してくる女たちがさ、カッコイイって言うんだよ」
確かに妹紅はカッコイイ。
男装すると俺たち以上に格好良く見え、男装が似合う女子ランキング第1位に選ばれているくらいだ。
真も言っていた。
『俺が女で妹紅が男なら絶対に告白してるわ!いや、妹紅が女でも告白してるわ!』
「俺も憧れるくらいにカッコイイと思う。でも、俺は妹紅の可愛いところも知ってるからな」
それはバイトの厨房内で妹紅といる時、黒い害虫、俗に言うGが出てきた時のことだった。
妹紅はカサカサ動くそれを見て可愛い悲鳴をあげ、俺に退治してくれと言ってきたことがある。
他にも、バイトの休憩中に妹紅が女性物の雑誌を読んでファッションについて勉強しているのを見たこともあった。
「っ!?可愛いって言うな!」
「痛っ!」
赤面の妹紅に頭を叩かれた。
「どうした?」
教室に戻った俺は机で突っ伏している真を見る。
「う~ん?あぁ、さっきまで説教食らってたからな・・・」
真は顔を上げた。
その表情は何やら疲れ切ったような感じであった。
よほどの説教だったのだろう。
「誰に?映姫か?」
真は頷いた。
俺と別れて逃げた真だったが、途中で茨木 華扇に見つかったらしい。
華扇は世界史の担当教師であるとともに、生徒会の顧問でもあるため、風紀を乱す生徒を見つけると、必ずと言っていいほど注意してくる。
真は華扇に注意され、さらにその場面を映姫に見られたことにより、彼女にも説教されたらしいのだ。
「まぁ、俺も大変だったけど岳も天子に捕まって大変だったんだろ?」
「ん?俺は逃げ切ったよ」
真は突然立ち上がる。
「おい映姫!こいつも廊下走ってたぞ!!」
そして校庭まで聞こえるほどの大きな声を出し、俺を指差した。
「おい!俺まで巻き込むなよ!」
「ギャアギャア騒がなくても聞こえています」
席に着いていた映姫が俺たちを見た。
「放課後、貴方たちのお説教の続きをします」
「おい、お前のせいで俺まで説教じゃないか!」
「ちょっ!?俺はもう終わったんじゃないの!?」
「古郷が走っていたかは他の生徒の証言を聞き次第です。村岡は友達を売ると言う卑劣な行為をしたからです。以上で黒と判決します」
それだけ言うともう話すことはないと思ったのか、前を向いた映姫。
俺は無言で真の脛を蹴った。
「学園の生徒たちに尋ねたところ、古郷も走っていたと語る生徒がいました。なので貴方も黒ということでお説教です。良いですか、そもそもこの学園は・・・」
くどくどお説教する映姫に教室内で正座させられている俺と真。
説教は1時間近く続いた。
「はぁ・・・やっと終わった・・・」
長く正座していたせいで足が痺れてしまった。
「よっしゃ、人探し放課後編行きますか!」
説教に疲れた俺と違い、真はまだ探す気のようだ。
「まじかよ・・・まだやるのか?」
「いくぞ!」
真は振り向きもせずに教室を出て行った。
「帰ろう・・・」
俺は帰ろうと思い立ち上がったが、鞄がなかった。
「あれ?ここにあったはずなんだけど・・・まさか!」
俺は真の後を追いかけた。
やはり、俺の鞄は真が持っていた。
「やっぱりお前か!」
「絶対岳帰ると思ったからな」
「返せ」
「他の奴ら見たらな!」
真はそう言うが、殆どの生徒はもう帰っているだろう。
流石に残っている生徒は少ないと思う。
俺はそれを伝えた。
「まぁ、少ないんならすぐ終わるだろうし付き合えよ」
「・・・わかった」
俺が不本意ながら了承すると、真はニヤッと笑い鞄を返した。
とりあえず高1の教室を見てみるが、やはり誰も居なかった。
「仕方ねぇ、初等部と中等部の校舎にでも行ってみっか」
真は初等部と中等部がいる校舎へと向かった。
初等部の教室を見ると、生徒は居なかった。
「中等部も居ないんじゃないか?」
「いや!絶対誰か居るって!」
真に続いて俺は中等部の教室へと向かう。
結果、中等部の教室にも誰も居なかった。
「はぁ、帰ろうぜ?」
「しゃーなしか・・・」
部活をしている生徒は居るが、邪魔をするわけにはいかない。
俺たちは帰路につくことにした。
「じゃあ明日の昼休みに学食行こうぜ!そん時に学食にいる奴らを物色だ!」
「いや!勝手に決めるなよ!?」
次の日の昼休み、俺は真と共に学食へと向かった。
たまには学食も悪くない。
リアにも今日は学食に行くよう伝えている。
俺は真と2人で学食へと向かおうとしたのだが、気が付いた時には大所帯になっていた。
「真はともかく岳が学食なんて珍しいな。私も同行するぜ」
「今日は岳の奢りね」
「おい、なんで俺の奢りなんだよ!?」
魔理沙と霊夢が学食に同行することになり、
「私も行きましょう!」
「魔理沙が行くなら私も行くわ」
文とアリスも合流することになった。
「皆居るんだ!私も一緒に行って良い?」
「また何か企んでいるのではないでしょうね・・・」
詩音と映姫まで来る始末だ。
「なあ・・・岳」
「なんか、ごめん」
俺は真に小声で謝った。
「ん?何で?」
予想外の返答だった。
「なんか良いなってさ!こういうの」
「そ、そうか」
真が良いなら良いか。
俺はそう思いながら学食の方へと向かった。