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プロローグ

始業式

現在、世界的にも多くの分野で高水準のテクノロジーを有する日本。

その島国には1億2千万人以上の人間が暮らしている。

そして、妖怪も生活している。

妖怪は人間にとって危害を加える者として恐れられているが、中には人間と共存しようとしている妖怪もいる。

そして、その妖怪たちの代表が集まって設立された幻想郷学園げんそうきょうがくえんは日本で初めて人間と妖怪が共学できる学園として誕生した。

日本では珍しい小中高一貫学園。

さらに初等教育や中等教育では学年の振り分けがない学園である。

初めは代表の妖怪が女性ということもあり、学園は女性の人妖しか入学できないようになっていたが、1年前、高等部だけであるが男性の入学生を入れるようになった。

これにより、一般入試に合格した学力の良い者。そして、AO入試に合格した者、計3名が幻想郷学園に入学した。

合格者の1人である俺こと古郷(こぎょう) (がく)は今日から高等部2年生としての第一歩を踏み出そうとしていた。

「行くぞ、リア」

玄関で靴を履いた俺は後ろを振り返る。

「ちょっと待って」

そこには座って靴を履いている少女が居た。

赤色のロングヘアーに、真紅の瞳をした少女。

彼女は古郷 リア。

出張している親父からの手紙によると、彼女は俺の義理の妹であるらしい。

本名はリア・ブラックローズらしいのだが、今は古郷 リアとして俺と2人で住んでいる。

「いいよ。お兄ちゃん」

俺がリアを妹として見ているように、リアも俺を兄として慕っていた。

リアは本人の証言によると、魔族と呼ばれる者であるらしい。

魔族のリアと親父がどのような繋がりがあるのか知らないが、いつも家に帰ってこない親父のことだ。

何か想像できないような事情があるのではないだろうか。

しかし、親父は学費を俺とリア2人分、さらに生活には困らないほどの生活費も一緒に振り込んでいる。

それに母を早めに亡くし、俺が自立するまで1人で育ててくれたのも親父だ。

そこまでしてくれた親父が今何をしようと、俺は気にしていなかった。

「よし、それじゃあ行こうか」

「うん!」

俺はリアと共に家を出ると、鍵を閉めて学園へと向かった。

リアは俺と同じ幻想郷学園の生徒だ。

俺が中学生の時は学校が違い、途中までしか一緒に通うことが出来なかったが、今では学園まで一緒に通っている。

「お兄ちゃん」

「ん?」

「手、繋ご?」

俺はリアに微笑むと、リアの手を繋いで学園へと向かった。



学園に近づくと、同じ学園の生徒たちの姿を見かけるようになった。

見かける人や妖怪は全員女だ。

実際、昨年学園にいる男性は俺を含めて4人しか居なかった。

一般入試に受かった村岡(むらおか) (まこと)に、俺と同じAO入試で受かった大王路(だいおうじ) (りゅう)、彼らは俺の友人だ。

真とは小学生から、流とは中学生からの知り合いで、今では親友だ。

もう1人は学園の用務員である森近(もりちか) 霖之助(りんのすけ)である。

彼は半妖であるらしいが、たまに相談に乗ってもらうお兄さんのような存在である。

「おーす!岳」

突然後ろから名前を呼ばれて振り返ると、少し青みがかった黒色の髪をした少年が手を振りながらこちらに向かって来た。

彼が村岡むらおか まことである。

「よう、真」

真は俺の隣に居るリアを見る。

「リアちゃん、おはよう。今日も可愛いね」

「おはようございます、村岡さん」

「村岡じゃなくて真でいいよ。てか岳もリアちゃんに言えよな!これ何回目だよ?」

「良いだろ?リアがそう呼んでるんだから」

「まぁ良いけどさー・・・」

真が合流してからしばらく歩いていると、幻想郷学園へと着いた。

「じゃあお兄ちゃん、行ってきます」

「あぁ、また後でな」

学園に着くと、リアは初等部の校舎へと向かっていった。

俺と真は高等部が学ぶ校舎へと向かう。

「おい岳!また一緒のクラスだぞ!」

下駄箱に貼ってある紙を見た真がこちらを見るが、俺はため息を吐いた。

「なんだよ、俺とは嫌だってのか?」

「違うよ、俺らの学年は元々1クラスしかないだろ?人数も30人くらいなんだし」

幻想郷学園に通っている生徒は多くない。

初中等部がそれぞれ50人くらい、高等部では各クラス30人近くが今の学園に通っている生徒の人数だ。

何故クラス表が貼り出されているのか言うと、それは担任及び副担任の教師を生徒たちが知るためである。

俺は担任と副担任の教師を確認した。

「げ・・・まじか・・・」

絶句した。

貼り紙には高等部2年生の担任に八坂(やさか) 神奈子(かなこ)、副担任は洩矢(もりや) 諏訪子(すわこ)と書かれていた。

「お、担任は神奈子先生と諏訪子先生か。良かったぁ、BBAじゃなくて」

真はホッとしたように呟く。

ちなみに真がBBAと呼んでいるのは八雲(やくも) (ゆかり)である。

八雲 紫は幻想郷学園を設立させた代表教師の1人だ。

「真、あまりその言葉言うなよ?どこから見てるかわからないんだから」

俺はそう呟きながら靴を新しい下駄箱へと直し、スリッパを履くと2年の教室へと向かった。

「いやぁ、でも俺たちも2年生か。今年は新しい男子の後輩も出来るし楽しみだな!」

「まぁ、そうだな」

何気ない会話をしながら教室へと入ると、既に何人かの生徒が席についていた。

初等部は私服、中等部はセーラー服、高等部は男女共にブレザーを着るのがこの学園での決まりだ。

実際、俺と真も決められたブレザーを着用している。

俺と真は黒板に貼られている座席表を確認すると、名前が書かれている席へと座った。

俺の席は1番後ろで窓側の席、真がその隣だった。

「やりぃ!1番後ろじゃん」

真が自分の席が1番後ろだったことに喜んでいる。

「てか最高じゃん!俺たちの席も近いし、流も岳の前だしさ!」

「そうだな」

男の数が少ないからなのか真と流の席が近かった。

だが、1年の時はこんなことはなかったはずなのだが、何か理由でもあるのだろうか。

「おはようございます!岳さん!」

その声と共に俺の前に現れたのは黒髪のショートに烏のような翼が生えている鴉天狗の少女、射命丸(しゃめいまる) (あや)だった。

「・・・よう、文」

俺は文を見て本日2度目のため息を吐いた。

「ちょっ・・・そんな反応されると流石の私でも傷つきますよ!?」

「おい、文。俺には挨拶なしか?」

「ん?必要あるの?」

「おい!?なんだよ、この扱いの差はよぉ!」

そんな真を見て文は笑っていた。

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