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転生少女はルーン魔法使い  作者: 白星光
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9. 誘拐犯との決着

「は……?」


 男が突然現れた者に訳が分からないと袋に入れる手が止まる。そしてそれは私も同様だった。背丈は私より少し上くらいでプラチナブロンドの髪に碧眼の浮世離れした顔。傾国の美少女と言う言葉が相応しい少女がそこに佇んでいた。そしてその少女は私が助けを求めようとしていた女性だったのだ。距離も遠く上空から見ていたため顔や年齢までは分からなかったが、膨大な魔力量に見覚えのあるロングソードを見て間違いないと確信する。


(どうやってここに!それに早すぎる……)

 私では少女と会った地点からここまで全力で走っても10分近くは恐らくかかる。それを数十秒ほどで私の居場所を探知して移動してきたのだ。訳が分からなくて当然だろう。


 数秒間双方動かずにらみ合っている。最初に動いたのは男の方だ。男は勝てないと踏んだのか私を放置して全速力で扉にダッシュする。少女はなんらかの魔法でここまできたのだろう。私が雀を飛ばした窓の前に佇んでいたため扉には男の方が近い。

 しかし気づいた時には男の頭が胴体から切り離されており、少女は一滴の血もついていない白銀の剣を抜き扉の前に立っているのだった。


  (あぁ……凄い……私もこの人みたいに強くなりたい!)

 人が殺されるのを目の前で見たというのに湧き出る感情は恐怖ではなく感嘆で、私は助けてくれた少女に憧れの感情を抱く。そして今世での私の目標が出来た瞬間だった。



 その後少女に抱きかかえられ私は治癒院に連れていかれた。彼女は一応怪我は治せるけど毒は無理とのことで、どちらにせよ治癒院に行くから怪我の方も専門の者に治して貰えということになった。治癒院とは前世で言う病院のような所で、怪我や病気を治療する施設だが、料金が高く平民ではよっぽどのことがない限り行かない場所である。料金は少女が出してくれた。申し訳ないと思いつつ私の全財産を使っても足りるか分からなかったので正直に言うと助かった。

 

治癒院の人に回復魔法をかけてもらい喋れるようになった。隣にいてくれた少女に孤児院の子供たちが奴隷商に連れていかれたと話すとギルドに報告しておくと言って出ていった。

 治ったので私もギルドに行こうと思ったのだが体がだるく動けない。治癒院の人に回復魔法で体を急速に治すと体力を使い動けなくなってしまうのだと説明された。その後治癒院の人に服を着替えさせられ、大人しく1日ベッドで寝ることになった。


 寝ようと思って目を瞑るのだが寝ることができない。あの少女が男の首をはねるシーンが脳裏に焼き付き何度も頭の中で再生される。


「駄目だ、寝れない、やることないしステータスの確認でもしようかな」


 私はステータスを開き何か変わっていないか確認する。


 名称:ネヴィア Lv1

 年齢:12歳

 種族:人間

 魔力:25/140

 スキル

 ルーン魔法:Lv2 土魔法:Lv1 魔力制御:Lv1

 魔力浸透:Lv2 剣術;Lv1 身体能力強化:Lv1 魔力感知Lv1

 耐性スキル

 魔法耐性Lv1 物理耐性Lv2 毒耐性Lv1

 エクストラスキル

 土妖精の加護


「あ!スキル増えてる!それに毒耐性も!」


 恐らく毒耐性の方はここ数日で2回もの毒を食らったことで出来たのだろう。男に注射を刺された後、多少指なんかは動かせたのは耐性スキルのおかげかもしれない。魔力感知は魔法使いがよく持っているスキルだ。これは雀を動かして冒険者を探しいたときに魔力量を見ていたため習得したスキルなのだろう。思い当たるのがそれくらいしかない。

 新スキルを習得したのは喜ばしいことなのだが、目当てのスキルレベルが上がっていることはなかった。土魔法か剣術のどちらかが上がりレベル2になることを期待していたのだが無理だったようだ。そう簡単にレベルが上がるなら苦労しない。昨日までの私ならそんなものだと気にしなかっただろうが今は違う。強くなりたい、あの憧れの少女の隣に立ちたいとそう強く思っているからだ。レベルが上がれば魔力も増え、身体能力も上がる。技術を磨くことも確かに大事だが手っ取り早く強くなるにはレベル上げが早急に必要だと私は感じていた。


 そうして独りで考えていると治癒院の人がスープを持ってきてくれた。そういえば昼に何も食べていなかったことを思い出し、私は治癒院の人にお礼を言いスープを飲む。

 遅い昼食を食べていると昼になったら一緒にご飯を食べようと誘ってくれたシスターの顔を思い出す。


(何もできない自分がこんなにも悔しいだなんて思わなかった)


 私は男との戦闘で手も足も出なかった。私がもっと強ければ男を倒せた。土魔法がスキルレベル2なら素手で石を破壊されるなんてこともなかった。剣術がスキルレベル2なら武技が使えるようになるのでもっと戦えた。私がもっと早くに違和感に気付けていたらシスターも死なずに済んだ。そんなことを考え私は涙を流す。


「ごめんなさい、シスター」

「何故、あなたが謝る?」

「え……?」


 顔を上げるといつの間にか部屋に私を助けた少女がいた。


「あなた、現場に居ただけ、違う?」

「でも、私が来たから計画を変えたって」

「あなたがいた、だから犯人捕まえれた、子供も助かった」

「子供見つかったんですか!?」


 私はもう見つかったのかと驚く。


「ん、誘拐犯もう1人、捕まえた、その後吐かせた」

 私は今のでこの少女が動いてくれたのだとわかった。街の兵士がこの短時間で見つけられるほど優秀ならあの誘拐の常習犯らしき男を見逃しているはずないから。


「そうですか……よかったです」


「「…………」」

 会話が一区切りついたためかお互い無言になる。私は少し気まずくなっているのだが少女は無表情だ。何を考えているかわからない。


「提案、いい?」

「え?ど、どうぞ」

「ここのギルマスからあなたのこと聞いた、このままだとあなた、また同じような目に合う」

「どうして、ですか……?」

 何故あのような目にまた会うと分かるというのだろうか。


「まず守ってくれる人いない、同じような境遇の冒険者多いけど、あなた容姿がいい、それに私も知らない魔法体系の知識ある」


 そう言われて納得してしまった。確かに私は客観的に見ても容姿は優れている。美少女だと言って過言ではない。だからこそ誘拐犯の男は私の容姿目当てで待ち伏せしていた。それに銀級冒険者の魔法使いであるイルナさんや恐らく白金級冒険者の目の前にいる少女も私が使っているルーン魔法を知らない。ギルマスは知っていたけれどそれはお母さんが使っているのを見ていたからだ。


「どうすればいいのでしょうか……?」

「ん、だから提案、私があなた鍛える」

「は……?」

 聞き間違いかと疑うほど予想外過ぎる提案だった。ここまで私を助けてくれる理由がわからないため困惑するが、こんなチャンスはもう2度とないと判断し私は即答する。


「はい、お願いします」

「ん、それに対価は勿論貰う」

「な、なんでしょう?」

 私はただで教えてくれるとは言ってなかったなと思い出し、何を言われるか少し怯える。


「あなたの魔法を教えてほしい」


 無表情から急に期待に満ちた眼差しで私の返答を待っている少女を見て、私は少し笑いそうになりながら了承した。


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