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転生少女はルーン魔法使い  作者: 白星光
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7.宿屋の食事

 しばらく話していると料理がやってきた。

「お待ちどおさん!少し遅くなって悪いな!」

 マスターは忙しいのだろう。私達の机に定食を置くと急いで厨房の方へ戻っていった。料理を見てみるととても美味しそうだ。魚のフライ、それにスープとパンが置かれている。


「「「いただきます」」」


「やっぱ旨いな!ここの料理は」

「えぇ、これだけ盛況してるのも頷けるわね、ネルヴァちゃんどう?美味しい?」

「美味しいです!これなんの魚でしょう?」

 魚のフライを食べてみたが思っていた以上に弾力があり、なかなかに美味しい。


「確かグラークという魔物と言っていたな、重さ50キロくらいあるでっかいやつで船を襲ったりすることもあるらしいぞ」


 ライベルトさんが教えてくれる。50㎏など私では身体能力強化なしではとでもじゃないが持てないだろう。

 ちなみにこの世界の魔物の定義としては魔力を持っているか否かで判断される。魔力を持っているものは魔物、それ以外は動物といった感じだ。これを聞くと魔力を持たない動物なんて魔物にやられて絶滅するのではと思われるかもしないが、基本的に魔物は動物を襲わない。魔物は本能的に魔力を求めるのだ。魔物であれば全ての魔物に備わっている魔石、人間の場合であれば魔力器官を糧とし生きている。倒した魔物の魔石を回収するのは魔道具なんかで使えるという理由もあるが、他の魔物が魔石を食べて成長するというのを防ぐためでもある。  

 魔石を食らい続け長く生きた個体は稀に進化することがあり変異種や特異種と呼ばれる。進化することで危険度のランクが2や3上昇するほどまでに成長するものもいるため発見次第報告、又は討伐が義務付けられている。

 基本的に動物を襲わないというのは縄張り意識の強い魔物が追い払うために攻撃したり、低ランクの魔物で獲物がいない場合には動物を狩って食べることもある。ゴブリンなんかはまさにそうで、人が育てている家畜なんかも狙ったりするのだ。


「そういえば私達魚の魔物は倒したことないわよね」

「まず海に行ったことすらないからな、金級冒険者になれば1度行ってみるのもいいかもしないな」


 黒狼の3人が海に行くことについて話しているが、私には関係ないことなので少し疎外感を覚える。ご飯を食べるスピードだけが上がり黙々と食べていく。結局私が3人の中で1番早くに食べ終わってしまう。ライベルトさんは先に食べていたこともあり、私より早かった。


「あれ?もう食べ終わったの?」

 私が食べ終わったことに気づいたイルナさんが声をかけてくる。


「ごめんね、ちょっとこっちばかりで話しちゃって……」

「いえ、構いませんよ、これからのことを話し合うのは大事なことでしょうし」

「そうね、それじゃあネルヴァちゃんのこれからのことを話しましょうか、明日なにするかすら決めれてないんじゃない?」

「か、簡単な依頼とか受けようかなって……」

 本当は何も考えていなかったのだが思いついたことをとりあえず言ってみる。


「そう、簡単な依頼って例えばどんなこと?」

「えー、採取とかランク1の魔物討伐やらをっ!……」

 私は最後まで言いきる前にイルナさんにデコピンされる。


「ネルヴァちゃん、今のあなたじゃあ街の外には行かせられない」

 真剣な眼差しで私に言う。

「……どうしてです?」

「確かにネルヴァちゃんはレベル1上位の強さはあるでしょうし、ランク1の魔物にはまず負けないでしょうね、でもまず体力が足りないわ、そこらの町娘よりよっぽどあるのは分けるけど1日中魔物の生息地で動き回れる自信はある?半日で行って帰えれるような依頼でも予想外のことは起きるものよ?ランク2以上の魔物に遭遇しないなんて言えないわけだし」


「……」

 私は何も言えない。なんせ崖から落ちて目が覚めたのが朝方、そこから移動し、日が暮れてきて黒狼の皆さんに会う頃にはへとへとだったにも関わらず、戦闘はたったの1回だったのだ。それであの疲労具合では確かに厳しいものがあるだろう。


「それと装備も貧弱ね、ローブや剣はいいとして下半身をどうにかしなさい、今の格好が気に入ってるならタイツやブーツを魔物の素材で出来たやつに変えるといいわ、特にタイツは破れてるんだし新しいのを買いなさい」


 確かにゴブリンの矢のせいでタイツは破れている。それに私の認識は随分甘いことがわかった。


「はい……すみません」

「謝らないの、別に責めてる訳じゃないんだから、それとこの先色んな人と話すことになると思うけど敬語や丁寧な言葉遣いは貴族以外には不要よ、私達にもいらないわ、特に商人なんかに下手に出ると舐められてふっかけられることもあるんだから気をつけなさい」


「はい」

「それじゃあ、明日は午前中に雑用係の依頼をやって午後からは装備を買いに行きましょう!買い物は私も付き添うわ!2人ともいいでしょう?」

 イルナさんはパーティーメンバー2人に許可を求める。


「だめだ、ギルドから街道の調査の依頼を頼まれている、朝から出るぞ」

「えぇ!?休みなしじゃん!」

「調査が終われば1週間は休みを取る、今回は緊急の依頼だ、流石に断れん」

「そんなぁ……ごめんね、ネルヴァちゃん」

「いえ、大丈夫です、それに頼ってばかりはいられないから……」

「わかったわ、明日の依頼頑張って」

「はい!!」



 その後カイジンさんとイルナさんもほどなくして食べ終わりお開きとなった。部屋に戻る際に水入りバケツとタオルをマリナちゃんから受け取る。部屋に入ると服を脱いでタオルで拭いていく。余談だがこの国には入浴文化はなく、シャワーだけである。そのシャワーも、もうワンランクほど宿のランクを上げないとないようだ。銀級冒険者の黒狼ならそれくらい泊まれるだろうが、イルナさんが浄化の魔法が使えるため問題ないとのこと。新人の頃から使っているこの雪月花の杯亭を気に入っているというのもあるとも言っていた。料理は美味しかったし、宿も綺麗にされているので私もしばらくお世話になりそうだ。

 髪と体を拭き終わり下着姿のままベッドに飛び込む。下着や寝間着なんかも早急に買わなければと思いながら私は眠るのだった。

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