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転生少女はルーン魔法使い  作者: 白星光
3/15

3.冒険者に会う

「うーん……ここは?」

 目が覚めると知らない場所だった。辺りを見回しテントの中だろうかと当たりをつける。

「うわっ!」

 すぐ近くに女の人が寝ていたため驚いてしまった。

「あ、起きた?」

 寝ていた体を起こしながら女の人は私に聞いてきた。どうやら起こしてしまったようだ。

「はい、えーと……どういう状況でしょうか?」

 私は自身が置かれた状況が分からず問いかける。

「あれ?もしかして覚えてないかな?」

 何かあったかなと私は記憶を思い起こす。

(私は森の中をひたすら歩いてて……あっ!煙が上がっていたから人がいると思ってそっちに向かったんだ!そしたらナイフが飛んできて……)


「思い出した?」

 私は首を縦に振り肯定する。

「毒の方は大丈夫なのでしょうか?」

 解毒薬があると言っていたし今のところ問題はなさそうだが不安になって聞いてみる。

「毒だとわかってたのね、ええ解毒薬もあったし元々死ぬような毒でもないから大丈夫よ、頬の傷は勿論、太もも怪我の方も私が治しておいたわ」

 それを聞いて安心すると同時に怪我まで治してくれたのかと脚の方を見る。タオルは外されており、傷も塞がっていた。

「ありがとうございます」

 私は感謝を述べる。

「いえ、感謝されるようなことは何もないわ、むしろ逆ね、ごめんなさい私達はあなたを魔物と思って攻撃してしまったわ、他の2人にも謝らせるしお金も支払う……それで許してもらえないかしら?」

「い、いえ、私も不用心に森の中から近づいてしまったので、謝られるようなことは何もn」

「そういうわけにはいかないわ!確認せずに攻撃してしまった私達の落ち度よ……」

 女の人は拳を強く握りしめ震えた声で話す。反省していることは声や表情から分かる。しかし、私も悪いと思っているためお金を受け取るのは抵抗がある。このままではだめだと私は妥協点を考える。

(お金じゃなくて代わりのものを要求するのがいいかな……)

「あの、お金はもらえません」

「でも!」

「最後まで聞いてください!その代わり、街まで私を連れていって欲しいのと、この地域、特にバールス周辺の魔物の情報を教えてください」


 私は金銭代わりにこの2点を要求する。村の近くでよく採取はしていたため低ランクの魔物であるゴブリンやホーンラビットは倒したことがあるが、街の周辺では生息している魔物が違うかもしれない。私が倒せないレベルの魔物が多いのであれば冒険者として生活できるかも怪しくなってくる。魔物の情報は金銭以上に知っておくべきだと考えたのだ。


「えーと……街には勿論一緒に行くわ、パーティーの皆とも話して決めていたことだし、でも、魔物のことでいいの?」

「はい!冒険者になるつもりですので魔物のことを教えて貰えると助かります!」


 街に行ったところで12歳の少女を雇ってくれるとこなどない。もし雇ってくれるとこがあっても最悪騙されて奴隷商にでも売られる、なんてこともあるかもしれないし、誰でもなれる冒険者になるのが無難だろう。しかし冒険者になると聞き女の人は酷く驚いた顔をした。


「ぼ、冒険者!?えーと親御さんは許可しているのかしら?」

 私が冒険者になると言ったことが予想外だったのか少し慌てながら聞いてきた。

「親は恐らくもういません……」

 私は母親の顔を思い出してしまい涙目になる。

「恐らく?……まさかナール村の子!?」

 自分がいた村のことを知っていると分かり私はすぐに食いつく。

「ナール村を知ってるの!?どうなったの!?」

 私は丁寧な言葉遣いも忘れ声を張り上げる。私がナール村の出身だと分かったからか、悔しそうな顔をしながら女の人は口を開く。

「ナール村は少なくとも村の中にいた人は全滅よ……私達パーティーは調査としてナール村をこの目でみたから間違いないわ」


 わかっていた。わかっていたことだったのに、それでも現実を受け止めきれなくて私は呆然と立ち尽くし、涙を流す。

「ごめんなさい……間に合わなくて……」

 女の人が謝罪しながら私を抱き寄せる。

「あぁ……お母さん!……お母さん!」

 私は女の人の胸の上で泣きじゃくり、泣きつかれたのか眠ってしまった。




 目を覚ます。見覚えのあるテントの中だった。

「迷惑かけちゃったな……」

 私は女の人を抱きしめながら泣いて、その後眠ってしまったのを思い出し反省する。

 このままだとまた迷惑をかけると思い、切り替えて私は立ち上がりテントの外に出る。



 外に出るとテントの中で話した女の人と、知らない男の人が2人いた。恐らくこの2人が女の人が言っていたパーティーメンバーだろう。


「起きたようだな、そろそろ起こさないとなって思ってたからちょうどよかった」

 真ん中にいる金髪のリーダーらしき人が声をかけてくる。

「「おはよー!」」

 女の人ともう1人の男の人が挨拶をしてくる。女の人は黒髪、男の人は赤髪だ。

「おはようございます」

 私は挨拶を返し、3人の顔を見て1つ気づく。このパーティーやたら顔面偏差値が高いなと。



 互いに自己紹介をし、街に向けて出発する。金髪碧眼のクールそうな人がライベルトさん、赤髪赤眼の元気そうな人がカイジンさん、テントでも話した黒髪翠眼の綺麗なお姉さんがイルナさんと教えて貰った。イルナさんと私は眼の色が一緒ということで姉妹のようだと言われた。私は前世でも今世でも1人っ子だったのでそんなことを言われるのは初めてだ。       

 パーティー名は黒狼といい銀級冒険者で3人ともレベル3らしい。銀級といえば中堅どころで、黒狼の皆さんは20代前半と若いのに銀級まで来ているとそれなりに街では有名のようだ。ちなみにライベルトさんとカイジンさんには自己紹介の時攻撃したことを謝ってくれた。特にナイフを投げたライベルトさんはそのことを特に気にしていたみたいで何度も謝ってきた。

 他には私が森に何故いたかも話し、あの私を森に追いやった憎きブラックベアは、黒狼の皆さんによって倒されていると聞き驚いた。それと街道にブラックベアが出現したことはギルドに報告しておくとライベルトさんが言ってくれた。街道には魔物除けの術式が張られているがそれが作動していない可能性があるとのことだ。お母さんも魔物除けのことを知っていたからこそ私1人でも街に辿り着けると思ったのだろう。


 そして今はイルナさんに約束の魔物について教わっているのだが……距離が近い、そして何故手を繋いでいるのだろうか、魔物が来た時に危ないと思うのだが。


「あ、あのイルナさん!手を離しませんか?」

「えーそんなこと言うならもう教えないぞー?」

 イルナさんは私をからかうように言う。


「ふーんだ、イルナさんなんてもう知りません!」

 拗ねたように言い、イルナさんから離れる


「ごめーん!許して!ネヴィアちゃん!」

 悪びれもせず、笑いながらイルナさんは私に近寄って頭をなでてくる。イルナさんは私がスタンピードのことを思い出させないようにするためか、気を使って元気に話しかけてくれる。そのお陰か私は笑うことができるのだった。


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