2.人に攻撃される
視点変更があるので話はあまり進みません。
その後ゴブリンの魔石を胸から取り出しポーチにしまう。魔石は必ず取るようにお母さんから言われていたためだ。太ももから流れている血と、魔石を取り出して血が付いた手を洗うために、ルーン魔法を使い水を出す。今回は空中に文字を書く。空中に書くのはスキルレベルが2になってできるようになったものだ。威力は下がってしまうが手や脚を洗うだけなら十分である。ポーチからタオルを取り出し太ももに巻いておく。ローブも汚れているが浄化の付与がされているためそのうち綺麗になるだろう。食べられる魔物であれば解体もしたが、ゴブリンは流石に無理なので死体は放置し西に向かう。
昼過ぎ頃になり木を背にして座り込む。少し落ち着いたとこでポーチからパンを出して食べる。約1時間おきに小休憩をはさみ水分補給はしていたが、食べるのは昼の休憩までと我慢していたため随分とお腹が空いていた。
「うーん……黒パンはやっぱりあんまりおいしくないなぁ」
パンを食べながら愚痴をこぼす。味としては吐くほどではないが、できれば食べたくないくらいだ。しかし今はこの黒パンしかないので食べる。私は早く街に行きたいと切に願った。
森の中を魔物に警戒しながら歩き続ける。未だに先ほどのゴブリンとしか遭遇していないため魔力はまだ残っているが、日も暮れてきており暗くなってきている。私の体力も限界なためそろそろ野営する場所を決めなければならない。ちゃんと舗装されている街道を歩くのとはわけが違い森の中は酷く体力を消耗する。
どこで野営するか考えていたところ、前方に煙が見えた。人がいるのではと早足になる。もう少しだ。
ヒュン
風を切る音がし、私の頬にナイフが掠る。
「くっ!?」
私を魔物と思ったのだろうか。それはまずいと思い声を出そうとする。
「…………!!」
声が出ない。体も痺れてきて立てなくなる。これは毒だと判断するもどうしよもない。
「まだ仕留め切れてない、気を付けろ」
人の声が聞こえる。どんどん近づいてくる。
「なっ?子供!?」
「おい!ライ!お前人に攻撃したのか!!」
「か、解毒薬は持ってる!すぐ使うぞ!どいてくれ!!」
解読薬があると聞き安堵する。
「……!……!!」
(あぁ……声が聞こえない……これ大丈夫かなぁ)
最後に解読薬が効きますようにと願い、私は意識を手放した。
とある冒険者ライベルト視点
「やっぱスタンピードが起こっただけあって魔物が多かったな!!」
パーティーの1人であるカイジンが、獲物を多く狩れたからか嬉しそうに話す。
「あんたいつもほんと元気ね……私は魔力が残り少なくなってきて体がだるいわ」
もう1人のパーティーメンバーであるイルナは疲れた声でカイジンに言葉を返す。
「よし、もうすぐ日も暮れる、この辺りで今日は野営にしよう」
俺は2人に提案をする。
「了解!!今日獲ったボア焼こーぜ!」
「疲れてるから宿でしっかり眠りたかったけど仕方ないわね」
2人の賛同を得られたため俺は魔法袋からテントを出し各々野営の準備をはじめた。
「2人とも飯は食べ終わったな?」
2人が頷いたのを確認し続ける。
「まずは今日の狩った魔物の確認だ、ゴブリン10体、フォレストウルフ9体、ビックボア5体、ウィンドバード3体、鉱石猿1体、そしてブラックベア1体だ」
「おーやっぱ今回は多いね!!」
「ブラックベアとはもう戦いたくないわ……」
「俺はまたやりたいぞ!……い、いやーやるとしてももう少し強くなってからにするかな」
イルナに睨まれ発言を撤回するカイジン。
「ブラックベアは俺達には少し早かったな、危ない場面も多くあった」
「物理耐性が高いのか2人の斬撃の効きが悪かったものね、魔法はそんなことなかったんだけど」
「それなー!パワーも桁違いで何回か吹き飛ばされたなぁ」
俺達は今回戦った魔物、主にブラックベア戦の反省会を続けた。
「ま、こんなもんだろ」
俺は反省会もこの辺りにし切り上げようとする
「夜番の順番はどうする?」
イルナが訪ねる
「いつも通りカイジン、俺、イルナの順でっ!?」
森の方からなにか迫ってくる。すぐに戦闘に入れるように短剣を抜き構える。2人も俺に続き戦闘態勢に入る。
「なにか分かる?」
イルナが訪ねてきたが分からないため首を横に振る。
「俺が牽制でナイフを投げる、その後俺、カイジンの順に接近する、イルナは魔法の準備に入っておいてくれ」
「「了解」」
ガサガサ
(来る……ここだっ!)
俺は毒ナイフを気配の方に向かって投擲する。殺すようなものではなく動けなくするタイプの毒だ。仕留めるのは無理だろう。
「いくぞ!」
「おう」
2人で森の方へ駆ける。
「まだ仕留め切れてない、気を付けろ」
この辺りのはずだ。俺は注意深く観察する。さらに進むとなにかが倒れているのが見えた。
「なっ?子供!?」
近づいてやっとわかった人間である。
「おい!ライ!お前人に攻撃したのか!!」
カイジンも気づいたのか声を荒げる。
「か、解毒薬は持ってる!すぐ使うぞ!どいてくれ!!」
すぐさま解毒薬を出し少女に飲ませる。気を失っているようだが何とか飲み込めたようだ。
「大丈夫なのか?」
カイジンが心配そうに声をかけてくる。
「正直何とも言えん、毒の方は大丈夫だと思うが……とにかく運ぶぞ!イルナなら回復魔法が使える!」
「わかった!!」
俺達は少女を担いで野営場所まで戻るのだった。