ミドリムシの冒険
あるところに、ミドリムシくんがいました。
ミドリムシくんは、ずうっと水の中にいて、人間には見えないくらいとっても小さな虫でした。
ミドリムシくんは、
「ぼくもお外に出てみたいな」
「だめよ、お外はとっても怖い生き物がたくさんいるからね」
「出てみたいー!」
と、いつもお外に出たくてごねていました。
ある時、そんなミドリムシくんのもとに、とても大きな魚がやってきて、食べられそうになりました。
ミドリムシくんは助かったけれど、他の仲間はたくさん吸い込まれていきました。
「ゾウリムシくん、ミカヅキモくんもいなくなっちゃった…」
しかし、そんなミドリムシくんを気の毒に思ったのか、メダカくんがやってきて、
「ミドリムシくん、こんにちは」
「僕、お外の世界に行きたいの」
「そうかそうか、ならば連れていってあげようか」
「ミドリムシ、無茶言わないの」
「お母さん、メダカくん、とっても優しいの!行きたいっ!」
「でも…」
「お母さん、心配しないでも、大丈夫ですよ。私がちゃんと保証します」
「あらそう?助かるわ。じゃあ、メダカさん、お願いします!」
「いってきまーす!」
そうして、ミドリムシくんはメダカくんと一緒に出掛けたのだった。
メダカくんに乗ってやって来たのは、ひろーい川の世界。
とても大きな魚がいっぱいです。
「ヤマメさん、イワナさん、こんにちは」
「こんにちは!」
メダカさんは、川をぐんぐん進んで行きます。
突然、メダカくんは、止まりました。
ある沼に到着したようです。
「ここからは、カエルさん、お願いね」
「はいよ!任しとき!」
ミドリムシくんは、メダカくんからカエルさんに移りました。
「どうだい、川の外は」
「すごい!すっごく大きな世界が広がっている!」
ミドリムシくんは、ひどく感動したようです。
カエルさんは、ぴょんぴょんぴょんぴょんぐんぐんぐんぐん進んでいきました。
途中、森に来ました。
たくさんの植物があることに、とても驚きました。
しかし、水のない世界、少し不安も募ります。
カエルさんが森を進んでいくと、カエルさんは何かを呼びました。
出てきたのは、ヘビさんでした。
「ヘビさん、こんにちは。」
「こんにちは。カエルさん、何をしているの?こんなところへ」
「ヘビさんに、会いに来たんだよ。ほら、全然怖くないよ~」
ミドリムシくんは、ヘビさんのことを少し怖がっていました。
しかし、ヘビさんはとても優しくて、素敵な人でした。
「そこにいるのは誰だい?」
「こちらは、ミドリムシくん。」外の世界が見たくて、やってきたんだぞ!」
「そうかそうか、じゃあ、僕についていったらいいよ!僕はこう見えても、ちょっと早いんだぞー!」
「じゃあ、今度はヘビさんにお願いしようかな」
「ヘビさん、お願いします!」
そうして、ヘビさんの上に乗りました。
ヘビさんは、森をぐんぐん進みました。
森は暗くて、たくさんの大きな動物がいました。
「森にも僕みたいな子はいるの?」
「いるよ。もっともーっと小さな子もたっくさんいるよ。それは、悪い子もいるけど、良い子もたくさーん働いてくれてるんだよ」
「そうなのか!森ってすごいんだな」
ヘビさんはさらに進んでいくと、景色が開けました。
「うわあーすごくきれい!海よりもっと広いよ!」
「今度はまたバトンタッチをしよう!鳥さん、おいでー!」
「はーい、きょーうはどーしたのー?」
「突然だけど、このミドリムシくんを空の世界に連れていってほしいんだ」
「おーやすーいごーようー。」
「ありがとうー!じゃあ、よろしくね」
「ヘビさん、ありがとう。鳥さん、よろしくね!」
「いーきましょー」
ミドリムシくんはそんなこんなで、空の旅へと飛び立っていきました。
「空ってすごい!海を見下ろしているみたい!」
「空はみんなの夢あーるよー♪みーんな楽しく飛んでーるよー」
「鳥さんも楽しいの?」
「そーりゃたーのしいよー。みーんなーといっしょーにおーはなしでーきるー」
「鳥さん、こんな感動ありがとう!」
「こーちらーこそー。ぼーくの予感だと、そろそろお別れになーるかも」
「そうなの?短かったけど、楽しかったな。」
「あーりがーとねー」
そんなほんわかしていた中、声が聞こえた。
「ミドリムシ、探知。宇宙へ送ります」
人間の声だ。
その途端、謎のもので吸われた。
「ミドリムシ、見つかりました?」
「この中にいる。ロケットに積んでください」
「積んだらすぐ発射だ」
「ぼく、どうなっちゃうんだろう」
最後に出会ったのは、ロケットくんだった。
「ミドリムシクン、コレカラ、ヒローイウチュウノナカニイクヨ。トッテモステキナトコダカラ、オタノシミニネ」
「わ、わかったー!」
そして、ロケットくんの中に乗って、勢いよく地面から離れた。
それは星を越えていき、暗い世界に飛び込んだ。
銀河が広がっていて、神秘的な、素晴らしい光景だった。
「うわあー!すごーい!いろんなところを巡ってきたけど、こんなにきれいなものがあったんだ!」
「アレハ、カセイトイウノデスヨ」
「火星、そんなのがあったんだ!海ではわからないことって、たくさんあるんだなあ」
「コレハ、ミンナカラノ、オクリモノ。ミドリムシクン、ズットイキタガッテタ。ダカラ、ミンナデキョウリョクシタ」
「そうなんだ!てことは、お母さんも?」
「ソウダネ」
「みんな、僕のことを、考えてくれてたんだ、ありがとう!楽しかった!」
「コチラコソ、ト、チキュウノカタガタガイッテイマス」
「ありがとう。最高だよ!」
そうして、ミドリムシくんは、旅の終わりとなった。
ミドリムシくんは、みんなのおくりもの。
そして、そのみんなは、誰のおくりものなんだろう。
進化があってみんながあるのならば、ミドリムシくんのおくりものかもしれないね。
みんなで、おくりあって、平和になろう。