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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ツルペタ好きな私の独白~ロリコンじゃないからね!

作者:

思い付いて、勢いのままに書き上げました。

やり過ぎたか?と思いつつも後悔はしていない。

 


 私はツルペタ好きだ。

 待って!通報しないで!

 ツルペタといっても、ロリじゃないの!

 そっち系統じゃないの!


 ほら、哺乳類をモフモフっていうじゃない?

 だから、爬虫類とか両生類が好きな人は『ツルペタ』といってもいいと思うんだ。

 ほら、ちょっと可愛い言い方したらクッションになるかな?って。


 え?センスゼロ?

 いちいち、指摘されなくても知ってますー。


 え?ツルツルペタペタだけじゃなくて、ヌルヌルもしてる?

 いや、ツルペタヌルって言いづらかったからさ。


 他になにか可愛い言い方あるなら教えてくれって、周囲にも言ったよ?

 でもさ、なんか皆諦めたような顔で、「ツルペタでいいじゃん……」って言うんだもん。

 開き直って、ツルペタでいくよ!


 え?何でいきなりこんな告白してるかって?

 んー?暇だったから?

 待って待って、帰らないで。

 寂しかったってのもあるんです!


 だってさー、モフモフ好きですって言ったら同意してくれる人もいっぱいいるかもだけどさ。

 女子でツルペタ好きって人、珍しいじゃん?

 私のまわりにいなかったんだよ

 男でもいなかったね。


 私さ、小さい頃からツルペタ好きだったのよ。

 あの、キョルンキョルンした目とかチロチロって出てる舌とかあの微妙な触感の皮膚とか。

 カエルもヘビもトカゲも大好きなのよね。


 昔は田舎住まいだったからさ、畑とか田んぼとか山とか沼とかいっぱいだったの。

 私にとってはパラダイスだったんだよね。

 でも、私の母親にとっては地獄だったみたい。


 お母さんは普通の女の子だったんだよ。

 モフモフ好きで、虫もツルペタも大嫌い。

 モフモフ以外なら、金魚と鳥はセーフだったみたい。

 ミドリガメも駄目とか相当だよね。


 でも、小さい頃の私って母親がツルペタ嫌いだなんて知らなかったんだよね。

 幼児な私は、色々なツルペタを見つけては家に喜んで持ち帰ってたの。

 シマヘビを見つけて可愛くて、飼おうと思って大喜びで帰って母親に見せたの。

 単純に、自分の好きなものは母親も好きだろうっていう子ども思考。

 大好きな人に大好きなものを見せてあげたいって、いじらしい子ども心よ。

 ……まあ、シマヘビを見せられた母親は卒倒して、ヘビ家に持ち帰るの禁止令が出た。


 その次はトカゲ。禁止された。

 イモリ。禁止された。

 お祭りのミドリガメ。禁止された。


 牛蛙を連れて帰った時はすごかったね。

 牛蛙、知ってる?

 すっごいでかいの。

 その牛蛙が、お昼寝してた母親の頭にノシッて乗っかったのよ。


 ヤベ。って思ったときには遅かった。

 重みで起きた母親は、大絶叫。

 牛蛙を連れて私は逃げた。


 その時は、さすがに父親にも怒られたね。

「何でこんなでっかい蛙を持ってくるんだ! お父さんでも怖いぞ! もっと小さい蛙にしなさい」


 素直な私は、こう思ったよ。

 ()()()蛙ならいいんだ。


 ウキウキと雨蛙を連れて帰って、母親に怒られたの。

 理不尽だ!って思った私は、母親に抗議したよ。


「お父さんが、小さいカエルならいいって言った!」


 凄まじい夫婦喧嘩が勃発したね。


「あなたが余計な事言うから!」


「いや、ゴメンって! でも、小さい蛙を連れて帰って来るとは思わないじゃん!」


 その時私は、お絵描きで遊んでたよ。

 その後、大きいカエルも小さいカエルも禁止令が出た。


 何もかもを禁止されて苛立っていた私は、考えたね。

 どうすれば、飼えるのか。

 そして結論が出た。

 カエルじゃなければいいんだ。


 早速私は、バケツに入れて数十匹のおたまじゃくしを連れて帰ってきた。

 見せたら怒られて取り上げられると学習した私は、隠れて飼育した。


 家の裏の軒下に隠して、おたまじゃくしを可愛がった。

 ちゃんと図鑑で飼い方を学んだからね。

 ちゃんとバケツや入れ物を何個も用意したさ。

 共食いなんてさせない・ヨ☆


 私が何のツルペタも見せてこないし持って帰って来ないから、母親の機嫌はいつになく良かったよ。

 今思えば、妹を仕込んでたのはこの時期だったんだろうね。


 大事に大事に育てて、足が生えて尻尾が生えてきた。

 カエルになってバレる前に、逃がさなきゃいけない。

 それは解ってたけど、大事に育てた子達を放すのが悲しくて寂しくて仕方なかった。


 あと1日、あと1日って引き延ばしてる間におたまじゃくしはカエルになり、巣から脱走した。


 裏庭でカエルの大合唱。

 軒下でカエルの大合唱。

 不審に思った母親がおそるおそる裏庭を覗いてみたら、そこにはカエルの山。


 私は逃げた。

 母親はノイローゼっぽくなった。

 ゴメンね、ママン。後お腹の中にいた妹。


 その後、事態を重く見た父親によって家族会議が開かれ、私はツルペタ全般を飼う事も持ち帰る事も禁止された。

 とにかく、家の敷地内&母親の視界にツルペタを入れるな、話もするな、と。


 私は猛抗議したね。


「私の趣味を奪うな! お母さんがツルペタを好きになればいいんだ!」って。


 両親に「我が儘いうな!」と理不尽に怒られた私は、田舎の近所の噂やおばちゃん達を有効活用した。


 お父さんもお母さんも私のしたい事を全部ダメっていう。

 抱っこしてくれない。

 妊娠してからいつも、お腹の子ばっかりで怒ってばっかり。

 私のほうを見てくれない。

 お父さんもお母さんも、お腹の中の赤ちゃんも大キライ。


 こんな感じの事を泣きじゃくりながら、学校や近所で言いふらした。

 嘘は言ってないし。

 元々、近所のおばちゃん達に好かれてなかった母は、ここぞとばかりにヒソヒソされまくった。

 母は、ノイローゼになった。


 父親にやりすぎだ!って怒られたが反省はしなかった。

 理不尽に禁止しまくった両親が悪い。

 近所のおばちゃん達の噂は確かにエスカレートした。


 が、それは近所付き合いを疎かにして地域に溶け込めていなかった母親の自業自得だと思っている。


 両親から、飼うのと持ち込むのは禁止されたが、今まで禁止されていたツルペタを模したキャラクターグッズOK。

 ツルペタ図鑑OKという妥協案を引き出したので、良しとした。


 後でおばちゃん達と母親のフォローもしたよ。

 お父さんとお母さんが優しくなったの!抱っこしてくれたの!

 お母さん、ごめんね……って。


 近所のおばちゃんと母親の関係性は、若干良くなったみたいだった。



 数か月後、妹が誕生した。

 妹は、母親理想の女の子らしい女の子に成長したよ。


 ピンクとフリルとリボンが大好きで、スカートがはきたくてズボンが嫌い。

 お姫さまになりたくて、モフモフ好き。

 ツルペタも虫も大嫌い。


 私と正反対に育った妹を母親は、溺愛してたね。

 私? 拗ねるとかはなかったよ。

 母親が妹に手をかけて溺愛する分、私への目がなくなるからね。

 思う存分ツルペタを満喫してたよ。

 妹GJ!


 姉妹仲?

 良くも悪くもなかったよ。

 あいさつもするし、話もするけどそれだけ。

 服の好みも趣味も食べ物の好みも何もかもが違ったからね。


 ツルペタを満喫しながら成長していったんだけどさ、私が中学生の時に、父親が転勤になったんだよね。

 ガチ泣きしたよね。


 持ち帰りと飼う事は禁止されてたけど、触れあう事は禁止されてなかったからさ。

 学校帰りとか休みとかにツルペタを探して、思う存分触れあえた私のパラダイスがなくなったんだから。


 ツルペタ&虫嫌いな母親と妹は大喜びよ。


 新しい家は都会のコンクリートジャングルでね、探しても探してもツルペタさん達はどこにもいないの。

 絶望にうちひしがれてた時、世の中にネットや携帯、パソコンが出回りはじめたの。


 今の若い子は解んないだろうけど、私が小さい頃ってスマホもPCもなかったんだよね。


 ネットの存在を知った時は、嬉しかったなー。

 動画で動いてるツルペタさんを見れるし、日本中にいるツルペタ好きな人たちと話せるんだもん。

 まわりにツルペタ好きが一人もいなかった私はネットにのめりこんだよ。


 あ、ちゃんとやるべき事はやったよ。

 じゃないとPC取り上げられるからね。


 それにね、その時の私の夢って、一人暮らしをしてツルペタさん達に囲まれて暮らす事。だったからさ。


 ヘビなら、タマゴヘビとボールパイソン。

 ハンドリングを仕込むのが夢だった。


 カエルなら、グラスフロッグかヤドクガエル。

 ツノガエルでも可。


 後、イグアナとかヒョウモントカゲモドキとかリクガメとかサルバトールモニターとかパンサーカメレオンとかカナヘビとかウーパールーパーとか……

 えっ、もういい?

 まだまだいるんだけど。


 ツルペタさん達に囲まれて暮らすには、広い家が必要。

 快適な住居や食事、病気になった時の医療費等々。

 愛しのツルペタさん達に、苦労はさせられないからね!

 お金を稼げる職に就く事は、私の人生ではとても重要な事だったのさ。


 だから、勉強しまくったよ。

 もう勉強しまくった。

 その甲斐あって、国家資格が必要な稼げる職業についたよ。


 頑張って働いてお金貯めて、海外旅行でリアルツルペタさん達を見たかった。

 アメミニシキヘビやアナコンダ、キングコブラにイリエワニ、コモドオオトカゲ。


 爬虫類カフェでまったりした。

 ペットショップに通いつめて癒された。

 国内旅行で、ぶっといゴールデンパイソンを首に巻いて記念撮影した。

 後日職場で見せたらドン引きされた。


 楽しい人生だったよ、だけど未練も残るよね。

 頑張って就職して、お金貯めてこれから!って時に事故でドーン。

 私死んじゃったんだよね。


 こんな所で死ねるかー!!って未練タラッタラだったからなのか、目が覚めたら違う世界とか笑えるよね。

 知らないおっちゃん達に囲まれて、「やっと帰ってきた」とかワケわからん。っつーのね。


 まあ、おっちゃん達が言うには、私は元々この世界で生まれる予定だったけど、何を間違えたか向こうの世界で生まれてしまった。

 何とかしてこっちに戻ってこないか、とあれこれやってたら戻ってきた。ヤッタね!


 ふざけるなー!って右ストレートよ。

 おっちゃん吹っ飛んだよ。

 私の輝かしいツルペタライフを返せ!って叫んだよ。


「ツルペタ?」「つるぺーた?」

 とか、言ってるおっちゃん達を尻目に、膝かかえて泣いてたわ。


 何か部屋に入れられて、そこで愛しのツルペタさん達を思ってたら、何か幼児がおっちゃん達に連れられて入ってきた。


「ツルペータ言ってたから連れてきたよ♪」


 私は無言でおっちゃんに、デスクローを決めたね。

 何、人を犯罪者にしようとしてくれてんだよ!

 デスクローを決めながら、おっちゃんにツルペタとは何かと熱く語ったよ。

 こっちをポカーンと見上げてた幼児は、ポッケに入ってた飴をあげて、ナデナデして家に帰した。


 その翌日、


「連れてきたよ、これがツルペータだね☆」


 っておっちゃんが来たから、またデスクローを決めようとしたら、今度は私がポカーンだったね。

 二足歩行で服と鎧着た、トカゲみたいな顔のツルペタさんがいたんだよ。


 抱きついたね。

 もう、思いっきり。

 ツルペタさんだー!!って泣きながら抱きつきまくったよ。


 愛しのツルペタさん達との生活がなくなってしまったと悲しんでたところに、等身大のリアルツルペタさんだよ?

 そりゃ抱きつくって。


 リアルツルペタさんはめっちゃ固まってめっちゃ困惑してたね。

 何か逃げようとしてたしね。


 おっちゃんは、

「はっはっはー、あってたみたいだね。ではごゆっくりー♪」って出てったわ。

 ひとしきり抱きついて、ナデナデしまくった後に我に返ったね。


「……あのー、どちらさまでしょう?」


「……アドニスと申します……」


 そのリアルツルペタなアドニスが、色々と詳しく説明してくれたわ。

 ここは剣と魔法の世界で、人間やモフモフな獣人、鳥人、魚人、アドニスみたいなツルペタ獣人もいるって。


 歓喜したね。

 アドニス以外にもリアルツルペタがいるし、ファンタジーの王道ドラゴンもいるって聞いたらそりゃ喜ぶでしょ。

 ドラゴンもツルペタだよ?

 ツルペタドラゴン万歳だよ。


 で、その後に続く言葉に打ちのめされたね。


「あなたはモフモフマスターだから、ツルペタ?には避けられるかもしれない」


 モフモフマスターなんて聞きなれない言葉だから、何それ?的な顔をしてたらアドニスが説明してくれたよ。


 モフモフマスターってのは、モフモフな人達を癒す?スキルを持った人の事。


 このスキルを持った人は、モフモフ達をとても癒したり活力を出したり元気にする事ができるらしい。

 まあ、マッサージやエステみたいなものだった。

 それを何倍にも効力を高めたもの(モフモフ限定)


 で、その効力が高すぎて、モフモフではないツルペタさんにとっては、足つぼマッサージみたいな痛みを伴うものだったり、何ともいえない不快感だったりするみたい。


 道理で、アドニスが逃げようとしていたわけだよ。

 ちなみにアドニスは、足つぼマッサージみたいな痛みを伴うものらしい。

 誠に、申し訳ありませんでした。


 モフモフな人ってのは、毛皮を持ってる獣人、鳥人、獣、鳥。

 ツルペタな人達は、魚人と毛皮を持っていない獣人だってさ。


 で、私は代々モフモフマスターを務める家の唯一の跡取りで、将来誰かと結婚して子どもをつくり、そのスキルを次代に引き継がなきゃいけないんだってさ。


 イヤだよ!誰かにこのスキルを渡してよ!って言っても、私が子どもを産まない限り、このスキルが引き継がれる事はないらしい。


 私がこっちに戻ってこられなかったり、子どもを産む前に死んでたりしたら、モフモフマスターのスキルは一生なくなっていたらしい。

 下位互換のスキルもあるらしいんだけどね。


 私は頭を働かせた。

 私は20代後半。

 すぐにできるとも限らないし、急がないと時間がない。


 目の前のアドニスに土下座した。


「私と子どもつくってください!!」


 あの時のアドニスの顔は見ものだった。

 数十年生きてきて、言葉に詰まったのはあの時が初めてだったんだって。

 そんな事知らない私は、たたみかけたよね。


「私は20代後半なんで時間がないんです! これから相手探して~とか、ツルペタさんに全てを捧げてた私に1から恋愛とか無理すぎる! 相手探している間に時間切れ! リアルツルペタさんやドラゴン一杯夢いっぱいの世界なのに、触れないどころか避けられるなんて、酷すぎる! そんなの絶対にイヤ! 私の愛しのツルペタライフの為に、どうかお願いします! 私はドラゴンに乗りたいし触りたいし、リアルツルペタさん達と友達になりたい! あ、触られるのが嫌なら、触らないから! 間違って触らないように、手縛っておくから!!」


「い、いや私は獣人で……」


「え? なに? ツルペタさんだからNGなの? バッチコイ、だよ! 私はツルペタさん大好きだからね! え? 顔? そのツルペタさん顔が駄目なの? なんで? キョルンキョルンな目も鱗の肌もチロチロの舌も可愛いじゃん! はっ、ツルペタさんの子どもを産む時って、卵なのかな? 私卵産むの? え、自分がツルペタさんになれるの? 子どももツルペタさん? なにそれ、どんなご褒美?」


 私がマイドリームを延々と語る間、アドニスはドン引きしていた。

 いや、ドン引きしつつも嬉しかったんだってさ。


 獣人や鳥人、魚人は色々なタイプの形を取る事が出来るらしい。

 で、色々なタイプの形を取れれば取れるほど優秀なんだって。

 体は獣で頭部は人間ってタイプの形は優秀な人しか取れない形らしい。


 で、アドニスは取れなかった。

 まんま獣や鳥の形を取る事ができる人もいるけど、アドニスはそれも無理。


 アドニス曰く、中途半端な二足歩行トカゲの形しか取れない事がとても彼のコンプレックスだったらしい。

 女の子にもモテなかったらしいしね。

 そんな自分を絶賛してくれる人は初めてだったんだってさ。


 口説きまくって押しまくる私にたじろぐアドニス。

 ドタバタと音をたてて繰り広げられる騒動に、周囲が慌てて様子を見にきたよ。

 天の助けとばかりに、助けを求めるアドニス。


「半端なツルペタ獣人の私がマスターと子作りなどー!」


「相手が誰でも、子どもをつくれば、無問題モーマンタイだよ!」


「問題ないね! さあ、子作りを!」


「誰かお助けをー!!」


 アドニスの悲鳴を聞いて、先代モフモフマスターが助けに来たのもこの時だった。

 先代モフモフマスター=私を産むはずだった母親ね。

 産みの母が向こうの世界の母親で、血縁上の母親が先代マスター。

 ややこしいよね。


 先代マスターが、


「出会っていきなり子作りではムードがなさすぎるわ。とりあえず、あなた達、お互いを知る為にデートしてきなさい」


 と、アドニスを助けに来たのかとどめをさしに来たのか解らない一言を告げてとりあえず解散になった。

 その時に、少し話もしたよ。


 先代マスター的には戻ってきてくれて嬉しいけど、私には向こうの世界で暮らした数十年があるから、おかえりなさいって言っていいのか悪いのか解らないって。

 自分が子どもに会いたいってワガママだけで、違う世界に連れてこられたあなたに辛い思いをさせているんじゃないかって。


 その顔と纏う空気で、なんとなく、ああこの人が自分の母親だ。って思った。

 何か泣けてきて、抱き締めてもらっちゃったよ。

 向こうの母親に、何か悪い事したなってその時初めて思った。


 私は違う世界の人間で、あの人の子どもじゃなかったからうまくいかなかったのかなって。

 実の親子なら、うまくやれたのかなって。

 私が死んで、少しは悲しんでくれたのかなって。

 今ではもう解らないけどさ。


 んで、情けない事に、その時初めて自分が若干若返ってる事に気がついた。

 20代後半だった顔が、10代後半から20代前半の若い顔になってるんだよ。

 お肌がピチピチなの。


 先代マスターが、何でそんなに時間がないって焦ってるの?って聞くから、私は20代後半で~って話したら、鏡を見せられて判明。


 後日、おっちゃん達が、

「時間の流れで、何歳の状態で来るか解らなかったからねー。少し若返りさせてもらったよ。ハッハッハー」


 おばちゃんで悪かったな、この野郎!!!

 とニードロップを決めた。



 それからの日々は、もうまさに怒濤だったよね。

 アドニスと初デートをして、本当にアドニス以外のツルペタさん達には避けられまくって泣いて、私がいなくなってから約30年不在だったモフモフマスターの仕事をして、モフモフ獣人達に求婚されまくって。

 その中で解ったのは、私は歴代のモフモフマスターよりかなり力が強いという事だった。


 いらないです!私はツルペタマスターの方が嬉しいです!

 って言ったら、本当にツルペタマスターってスキルがあって。

 なにそれ、ずるい!!ってツルペタマスターを見に言ったら前の世界の妹で。


 お互いに、「何してんの!?」ってなった。

 妹はツルペタさん苦手でモフモフ好きだから、お互いにズルイズルイ言いまくった。

 そんな中で、姉妹仲も深まったよ。


 妹も何やかんやで生まれる前に、むこうの世界に行ってしまったのかと聞いたら、なんかよくは解らなかったけど違うらしい。


 モフモフマスターもツルペタマスターも、基本的には代々親から子へ引き継がれるらしい。

 が、解明されてないけど時々スキルが引き継がれないで行方不明になる事があるらしい。

 今回の妹がまさにそれで、引き継がれなかったツルペタマスターが何故か別世界の妹に入ったらしい。


 姉がモフモフで妹がツルペタってどんな偶然だよ、マジで。


 で、私とは違って妹は早死にせずちゃんと結婚して子どもをつくり孫の顔も見てから亡くなった。

 ちゃんと天寿を全うしたらしい。

 それは良かったよ。

 私に続いて妹まで早死にしたら、両親が気の毒すぎる。

 私と違って、妹は溺愛されてたしね。


 私がいなくなっても、両親はさほど悲しまなかったでしょ?って聞いたら、妹に怒られたよ。


 両親ともに悲しんだんだって。

 特に母親は、私のせいだって自分を責めたらしい。

 大学を卒業して就職してから、滅多に実家には帰省しなかった。

 何を話していいか解らなかったし、特に話す事もなかった。

 幼少の頃のツルペタ騒動で嫌われてると思ってた。


 でも、妹によれば母は、私を決して嫌ってはいなかった。

 ただ、自分とあまりにも違う娘をどう扱っていいか解らなかったらしい。

 周囲にも相談せず、悩みに悩みまくって最終的には溝は埋めようがないほど広がっていった。


 どう接していいか解らなかっただけで、母なりに私を思っていたらしい。

 むしろ、母は私に嫌われていると思っていたらしい。

 娘があんなにツルペタが好きなら、どうにか受け入れたい。

 でも、身体が拒否してどうしようもないと。


 ツルペタグッズから始め、少しずつ自分を慣らしていたらしい。

 やっと写真や動画で見ても大丈夫になって、話もできるように克服できた時、私が事故で死んだ。


 自分のせいだ、自分が早く克服できなかったから。

 自分が病的なまでにツルペタが嫌いなせいで、あの子はツルペタを楽しめなかった。

 私のせいだ。

 と責め続けたらしい。


 私が国家資格の試験に合格した時も、就職した時もとても喜んでいたと。


 それを聞いて、私は初めて母を思って泣いた。

 嫌いじゃなかった。

 しょうがないって、理由をつけて諦めていただけだった。

 悲しませてごめんなさい。

 親不孝でごめんなさい。

 泣かせてごめんなさい。


 もっと話をすれば良かった。

 母は歩み寄ろうと私の為に努力を続けていたのに、私は何もしなかった。

 母のせいだと決めつけて、悪者にして歩み寄る事を拒否した。

 向こうに残してきて後悔したものは、ツルペタさん以外に何もないと思ってた。


 私は馬鹿だった。

 とてつもない馬鹿娘だった。


 母は、妹や父に支えられて何とか持ち直して、ちゃんと孫の顔を見てから亡くなったそうだ。

 娘の月命日や墓参りを欠かす事もなく、私の仏前にはツルペタさんグッズや写真を供えてくれたと。


 亡くなる時、妹に言ったそうだ。

「やっとあの子に謝りにいける。ツルペタさんの話もできるように勉強したから大丈夫だね。あの子は、私と話をしてくれるかね……」って。


 するよ!いくらでもするよ!

 そこまで親不孝な娘じゃないよ!

 そして、向こうの母親にできなかった親孝行をこちらの母親にはきちんとしていこうと思った。


 こちらの世界で、私なりに母を供養していこうと思った。

 母がずっと悲しんでいるばかりではなく、晩年は幸せに暮らせた事に安堵した。


 え?父親?

 ……感動話の後に水をさすのもなんだけどさ、正直どうでもいい。

 母親はツルペタさんが病的なほどに嫌いだったから、しょうがないと思うの。

 歩み寄ろうと頑張ってた事も知ったしね。

 でもさ、父親はさ、なーんもしてくれなかったよ。

 ツルペタさんが苦手なわけでもないのに。


 養ってくれて学費を払ってくれた事には感謝してるよ。

 お金を稼ぐのは大変だもんね。


 でも、父親がしたのってそれだけだからね。

 私へのフォローも何もなかったよ?

 だから、どうでもいいです。


 はいはい、両親の話はこれでおしまい。

 脱線してすごい長くなっちゃったけどね。

 ……でー、どこまで話したっけ?


 あー、そうそう私が歴代のモフマスより力が強いってところまでね。

 もうモフモフマスターとか長いから略すよ。

 モフマスね。


 歴代のモフマスは、モミモミとマッサージしないとモフマスとしての力は出なかったらしい。

 でも、私は揉まなくても力が出せた。

 触るだけで、モフモフ達を悶絶させたのだ。

 手袋ごしでもダメだった。


 その分、ツルペタさん達への不快感や痛みは相当だった。

 私は手袋越しでも愛しのツルペタさん達に触れなかったのだ。

 アドニスにも出会った当初だけで、それ以来手も触ってないよ。

 そして、私のモフマススキルはそれだけではなかった。


 何と、人間の頭髪にまで効果をもたらしたのだ。

 歴代モフマスは、毛皮のある獣人、鳥人の羽部分にだけ効果を発揮させていた。


 私のモフマススキルは、人間への頭髪マッサージにも絶大なる効果を示した。

 まあ、効果は頭髪の量に左右されるんだけどね。

 ……要するに、ツルピカな人には効果ないって事!


 泣かないでよ、私が意図してやってるんじゃないもん。

 フサフサな人は、モミってしただけで悶絶してしまった。

 私が触れてはいけない場所が増えていく……


 それでも、アドニスは側にいてくれたんだよね。

 私が触ってしまったら、尋常じゃない痛みが襲ってくるのに。

 もし触ってしまったらって考えたら、普通離れるでしょうにね。


「私みたいな者はマスターに相応しくありません」とか言いつつ側にいるの。

 律儀というか何というか、惹かれて当然だよね。


 ちゃかさないでよ、恥ずかしいじゃん。

 マジだったんだよ。

 ガチで惹かれはじめてたの。

 アドニスがツルペタさんだからじゃないよ。

 アドニスだったら、人間でもモフモフでも魚でも鳥でも惹かれてたよ。


 マジぼれしたら今までのように軽く、出会い頭に「子作りしよー」なんて言えない。

 うるさい、痴女言うな。


 もう、自覚したらどうしていいか解らなかった。

 ツルペタさんと勉強だけだったから、初恋だったんだよね。

 側にいたいけど、いざいたらどうしていいか解らなくて。

 結果、避けまくる事になった。


 アドニスはアドニスで、この時今までうるさいくらいに付きまとっていた私に避けられはじめた事ですごいショックを受けたらしい。

 私は知らず知らずの内に「押してダメならひいてみろ」を実行していた。


 で、色々略すけど、私が崖から落ちそうになったんだよね。

 え?略すな?だって疲れてきたし。

 そんな時、アドニスが颯爽と助けに来てくれてさ。


 手を伸ばして、「捕まれーっ!!」って。

 掴みたいけど、無理だし!アドニスが痛い思いするよ!って。

 そうしたら、「お前をなくす痛みよりマシだっ!」って。


 もう、キューーン!来たね。

 ときめきがやばかった。

 だって、その時初めてアドニスが敬語なしで話してくれたんだよ。


 捕まった私を引き上げて、ギュッて抱き締めてくれてさ。

 私はもう、手で触れてしまわないように頑張ってたよ。

 抱きつきたかったけどね。


 でもね、その後結局アドニスは引き上げた時の痛みで寝込んじゃってさ。

 未だに、「俺格好悪い……」って思い出しては落ち込むの。

 可愛いよね。


 意識を取り戻して回復したアドニスに面会したらさ、「無礼な事をいたしました」って敬語に逆戻り。

 両思い?ヤッター!って喜んだ私は沈んだよね。


 でも、頑張ったよ私。

 もうアドニス以外なんて嫌だし、むしろアドニスは私のだし。

 頑張って告白して、アドニスからの「好き」を引き出したよ。

 でも、その口で「子作りは……伴侶は……」って断るの。


 もう、ぶちギレて押し倒したよ。

 掌と指で触らなきゃ大丈夫。って事は解ってたから身体全体で押し倒してね。


「アドニスが抱いてくれないなら私が抱く! 大人しく抱かれてなさい!」って啖呵きったら、惚れた女性にそこまで言わせては……ってアドニスも諦めたの。

 私の粘り勝ちだね。


 で、その後妊娠して結婚して出産して~

 え?順番がちょっと違う?

 ……いや、その時の1回で見事ね……

 私もビックリだよ。


 で、私が産んだのは何か?って気になるでしょ?

 一人目が卵で、二人目が人間型の赤ん坊だったよ。

 卵の方が男の子で、人間型の方が女の子。

 モフマススキルは、卵の方に引き継がれました。


 アドニスと同じトカゲ型のツルペタさん獣人でね。

 ツルペタさんにモフマススキルが引き継がれるのは初だって。


 私とアドニスが結婚した時も前代未聞だって言われたしね。

 モフモフとツルペタはあまり仲が良くなかったんだって。

 でも、モフマスがツルペタと結婚したり、ツルペタがモフマスになったおかげで、少しずつ歩みよりが始まってるんだって。


 あ、それでね聞いて。

 二足歩行トカゲのタイプにしかなれなかったアドニスなんだけど、完璧トカゲと頭だけ人間のタイプになれるようになったの。

 完璧トカゲの方は、私が他のツルペタさんを愛でてるのに嫉妬したんだって。


 自分の方がかっこかわいいトカゲだって。

 で、頭人間の方は、私とディープなキスがしたかったからだって。

 人間同士がブッチューってしてるのを見たらしくてね。

 羨ましかったらしいの。

 愛の力だよねw


 え?のろけがうざい?

 いいじゃん、あなたしか聞いてくれないし。

 それに、もう終わるからさ。


 え?その旅支度は何かって?

 行けてなかった新婚旅行にアドニスが連れてってくれるの。

 子ども達は先々代の母が見てくれてるしね。

 二人っきりの旅行、イチャラブしまくりだよ。


 どこに行くかって?

 アドニスの友人のドラゴンさん達に会わせてくれるんだって。

 夢のドラゴンさんだよ?

 しかも複数!

 ヤバイし!今からテンションあがる!!


 ア、アドニスが呼んでる。

 じゃ、行ってくるね。


 長い間聞いてくれてありがとう!

 じゃあ、またね。

 いってきます!



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