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異世界という玩具箱で  作者: 神谷 隼
第1章 辺境の寒村にて
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4.ナビゲーターのリリス

というわkで、やっとト書きの文章が書けますです、はい。

ト書きが得意な作家さまと、苦手な作家さまがおられると思いますが、あっしは苦手なほうでやんすかねえ。

というわけなんで、苦手ですんで、いじめないでね?

目が覚めると、代官屋敷としてあてがわれた小屋に体を横たえられていた。

羽織っていた毛皮のマントは脱がされ、血液で汚れたであろう麻の上下も新しいものに換えられており、頭には白い布が被せられている。

暖炉も囲炉裏もない、板張りの床に毛皮の敷物があるだけの寝床であるが、竈だけは室内の土間に設えられており、村人の一人が薪をくべては暖を確保していた。

すでに夜は更けて、日のある内は絶えず聞こえている渡り鳥の鳴き声もない。

身を起こして、胡坐をかくと、物音に気が付いた村人に声をかけた。


「世話を掛けたようで、すみませんでした。傷も塞がっているようだし、もう大丈夫だと思います。あなたも、今夜は自宅にもどって休んでください」


「とんでもねえですだ。お代官様が来ていただいたおかげで、今年の年貢は勘弁してもらえたですからね。お代官様が亥に殺されたりしたら、どんだけお役人から責めを受けるか……、ちったあ気を付けてけろ。あ、そうだ。芋を煮たで、腹が減ったら、お上がりになってけろ。んじゃ、おらは失礼させてもらうだよ」


そう言って、村人はお辞儀をして退去して行く。

彼は、確か村長として紹介された村人である。

暖房代わりの竈からよけられた鍋を覗くと、ごろごろとした芋とキノコと肉片が茹でられていた。

汁の色からみて、味が付いているとしても塩のみであろう。

焼いていた川魚も食べ損ねたケネスは、鍋から直に匙を使って、芋を口に入れた。

キノコや僅かな肉片から染み出した素朴な出汁が、ほのかな塩味の芋の風味を増しており、異世界に転移してから初めて落ち着いた気持ちを得られた。


それにしても、バイクに積めるだけのアウトドア用品があれば、技術レベルの低い異世界でも、ある程度の利便性は確保できると思っていたのに、全て没収されているのは解せない。

ある程度の個人資産は担保してくれる言質も取っていたのに、それも見当たらない。

政治または宗教的な権力からの理不尽な弾圧に対しても対策があるとも聞いた覚えがあるが、ケネスの立場は理不尽の総原色見本で、権力から寒村に縛られている分、行動の自由すらない。

あの女神は、俺を騙したんだろうか。あ、そう言えば、『ナビゲーターを付ける』とか言ってなかったか?


上り框に置かれていた足置きを引きずって、竈の近くに座り込んだケネスには、赴任する際に支給された銀貨200枚と、荷運び用のロバ以外には何の資産もないはずだ。

刷いている剣は、捕虜兵の時に支給された安物で、売り払っても銀貨にすらならない。

おまけに来年以降は、この村で得られた年貢から生活費を捻出せざるを得ない。

領主に差し出す分もあるから、この寒村の生産力から考えても余裕があるとは言えない。

つまりは寒村の代官という地位は、給与を現地調達するという過酷な立場からも、全くもって負債に過ぎないのだ。

自治権は村長にあり、この国の制度では代官は警察権と徴税権を領主の代理として執行するだけに過ぎないのである。


《ナビゲーターだよ!!!》


ケネスの中では駄女神まで評価の落ちた女神に悪態をつこうかと考えていると、竈の角にちょこんと座った小人が叫んでいた。

全長15cmほどの羽の生えた見た目は、ケネスの知る限り『妖精』とか『フェアリー』と呼ばれる生き物であった。


「おい! この状況はどうなっているんだ。女神の言っていた状況と違いすぎるだろ。錯誤契約で、全額返金とキャンセルを要求しても裁判で勝てる事案だぞ!」


《まあまあ、慌てる代官は帯を引っ張るのですよ! 女神様のおっしゃっていたことは、全部履行されていますよ。ご安心ください。えーと、ケネス様の持ち込んだ個人資産は、ナビゲーターであるリリスが全部お預かりしています》


リリスは、両腕を上げて、空中で錐もみ状態になりながら答えた。

ケネスは、リリスの小ネタをスルーして、記憶にあるアイテムを要求した。


「お、そうなのか? じゃ、カトラリセットにあった竹箸を出してもらえるか。匙で芋を食べるのは、とても不便だ」


《箸? ああ、2本でセットになっている棒ですか。これって食器だったのですね。あとですね、女神様から与えられたスキルとか加護とかは、自分を『鑑定』すれば分かりますよー》


リリスから箸を受け取った右手に対して、『なんだろう?』と意識しながら目を向けると、半透明のダイアログがポップアップする。

やっとのこと、テンプレな異世界転移じみてきたと、期待を込めて表示を見る。


名前:ケネス(正木 剛)

種族:人間 レベル2

性別:男性

年齢:16

職業:コチ村の代官

筋力:C 魔力:C 敏捷:D 器用:C 精神:D 運:C

スキル:農業、野営、操作、算術、言語理解、鑑定

加護:自給自足、魔法


確かに女神から受け取ったスキルや加護がステータスに含まれてはいるが、なんというか凡庸だな。

これ有名な歴史シミュレーションゲームのキャラクターとしたら、完全な雑魚じゃないか。

思った通りを口にしてみた。


「うーん、期待していたよりは、雑魚っぽいステータスだったな。これで、この世界で生き残れるのかね」


《何を言っているんですか! レベル2ですよ。一般的な村人なら、G以下のステータスもザラなのに、むしろ平均的に高めじゃないですか。しかもスキルや加護など、16歳という年齢なら、やっと1つあるかないかなんですよ。それが合計で8もあるんですから、くれぐれも権力者から目を付けられないようにしてくださいね》


「そ、そうなのか。うむ、女神に感謝しよう。で、リリスみたいなのが、身にまとわりついているというのは、この世界の常識的にどうなんだ?」


《リリスは妖精です。高度な精霊魔法を使うハイエルフ以外には、姿も声も認識できません。それに、さっきから声に出して会話しているようですが、リリスとの意思疎通は、テレパシーみたいに頭の中で考えるだけでできちゃいますからね。あ、全部の考えが伝わるのではなくて、伝えようという意思がなければ感知できないので、プライバシーはお互いに保てますよ!》


それなら食べながらでも会話ができる。大きめの芋を箸でつかみ、口に放り込む。

空腹だったはずなのに、たった2切れの芋で満腹感が満ちてきた。


《なあ、リリスさんよ。訊きたいことは山ほどあるのだが、夜を徹してしまうと、それはそれで明日からの日常生活に支障が出る。スキルだの加護だの、またコチ村周辺の事情なんかは明日以降に教えてもらってもいいか?》


リリスが、体の3倍はあろうかという火バサミを使って、竈にくべられていた薪を散らし、火勢を弱め、まだ燠火になっていない薪を土器の炭壺に差し入れて、蓋をした。

竈の消火には、水や土を使わない。


《竈の始末は、リリスがやっておきますから、どうぞケネス様はお休みなってください。妖精族は夜行性なので、ご心配には及びません。申し訳ないのですが、昼間は、こうして姿を見せることは種族的な都合からも不可能です。でも、ナビゲーターとしての機能は女神から頂いているので、御用があるときは遠慮なくお申し付けくださいね》


鋳物の鍋に蓋をして、毛皮の寝床に戻る。怪我の介抱をされていたのであろう時間も休んではいたが、あまりにも激変した生活様式に大きな疲れを感じていた。

この村の生産効率を高めること、スキルや加護への理解を深めて使いこなせるようになること、ナビゲーターのリリスとの関係を親密なものにすること等の優先事項を考えながら、ケネスは眠りについた。


《まったくもう。ケネス様は、真面目すぎます》


竈のわきに佇む妖精は、ため息まじりで呟いた。


次回、「5.コチ村」


なんか、捻りのないタイトルっすねえ。ま、わかりますよ、わかります。もうね、登場キャラのネーミングセンス、あれでしょ? ええ、あれです!!


サブタイトル、むずかちー

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