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終身  作者: 佐藤 成
4/6

契約と生約

真っ白な場所に移った途端、誰かが俺の後ろに立っている。


振り向くとそこには白い布で顔を覆い、白いスーツを身に纏いながら此方の方へ歩いてくる。


白い手袋をした手を前に出すと、そこには黒いペンが手の平の上で転がり、俺の目に入る。


なんの変哲も無いただのペンを差し出してくるが、その意図がつかめずに悩んでいると、相手の唇が微かに動く。


『そのペンを受け取れ』とさっきまで話していたアイツの声だ。


まさか、コイツがあの話していた奴なのか?確定は出来無いが、言われた通りにペンを受け取る。


『手の甲に、お前の名前をそのペンで書け』


「何で・・・」


『それがこの世界に留まる為』


「案外簡単なんだな」


俺はペンを握り、利き手とは逆の腕に名前を書く。


しがら けい


その書き慣れた名前を書き終えた途端、腕に焼けるような痛みが走る。


「ぐぅ、あああああぁぁぁ!!」


名前を書いた腕を力強く握り締め、少しでも和らげる為に別の痛みを加えようと試みるが、痛みのせいでそれどころでは無い。


蹲っている俺の横にはアイツが立っていた。アイツは俺の腕を掴み、名前の書いた所を手で優しくなぞると、さっきまでの痛みが嘘のように消えた。


『己を傷つけると同じだ。体に、魂に刻むのだ。激痛であろう』


「は、早く言えよ・・・」心の準備くらいさせて欲しいものだ。


「でも、こんなんで本当に此処に留まる事が出来るのか?」


腕に名前を書いただけで消えずにいられるものだろうなのか。それ相当の痛みはあったが。


『消えると言うのは姿だけでは無い。記憶、人格も忘れ消える。己を消滅せずに留まる為には、己を忘却しなければ良い。その為には己の名前を魂に刻む必要がある。先程お前がした行為が、その理由だ』


あのままだと自分の事を忘れ、気づかないうちに消えてしまっていたと思うとゾッとした。


訳も分からないまま消えてゆくのは、どれ程寂しく、虚しいものなのだろうか。


『圭』


「は?」


『お前の名前だ。今、自分の名前を忘れたのか?』


突然自分の名前を呼ばれるとは思っていなく、不意をつかれたようで少し


「驚いただけだ」


『名前を呼ばれる事はお前にとって、驚くものなのか・・・変わった人間だ』


「・・・・」


『おーい!』


どこからか誰かを呼ぶ声が聞こえる。どうやら女の声だ。


『彩、か』


手をかざした瞬間、何も無い所から誰かが映る映像が現れた。


そこには見覚えのある女性の姿が映っている。確か、子供を助けた時に現れた。


「あの人か・・・」


『アル!またあいつらが現れて邪魔された!すぐにあれを用意して!』


映像はいきなり消え、一体何があったのか分からないまま、アイツは何かを始めようとする。


「一体、何が・・・」


『話すよりも見た方が早い』というと俺の腕を掴み、そのまま光に包まれる。



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