国の名前
絨毯から紋章が浮かび始め、絨毯から4人の男女が現れた。
「お前らが...おれの幹部か。」
一見、普通の高校生ぐらいだと思われる風貌であり恐らくこの世界に召喚されるまでがごく普通の高校生活を送っていたのだろう。
俺と背丈が同じぐらいの男の子が一人、少し小柄な女の子が三人だ。
それにしても...まだ人数も少ないし実感もわかないが俺はこの小さな国(部屋)
の王様になったのだ。
生まれも育ちも全て平等で差別のない日本に生まれた俺にはまさに異常な光景だ。
「お呼びしましたでしょうか、変態王」
....??今、一人の女の子が俺の事を呼んだ気がするが耳が遠くなったのか主に後半に、急に幻聴が聞こえた気がする。
「...あの...いまのもっかい言ってくれない?」
「聞こえなかったのでしょうか、変態王」
....ok。おれの耳にはどうやら間違っていなかったようだ。
「誰が変態王じゃあ!!!!」
「え..?あなたがこの変態の国の王様じゃないの?」
変態の国...?たしかに好きな事を全力で行う方針にしたが変態はみんな俺のとこにこい!なんていった覚えはないぞ。
「ちょっとまて...誰が変態王だって...」
「ところで、この国の正式名称はなんなの?このままなら変態の国って呼ぶけど?」
男勝りの気質を持っていそうな女の子は、俺の渾身のツッコミをまるで意に介さないように、鮮やかにスルーしてオペレーターであるじいやに話しかけていた。
なんで、俺が王様なはずなのにこんな可哀想なポジションを甘んじて受け入れないといけないのか。
って思ったが、この女の子が国の名前を俺にではなく、オペレーターであるじいやに話しかけた事を考慮すると...
「もしかして、この国の名前ってもう勝手に決まっちゃってんの?」
「そういや、いってなかったですな。失敬、失敬。実は、国の名前は予め神様に決められていてその名前を神様の許可なく変更する事は認められてないんですな。」
え...?どんどん王様の仕事らしい仕事を奪われているような気がするが、決まってしまっているなら仕方ない。
せめて、神様のセンスを信じるしかない。まさに神頼みって奴だ。
「この国の名前は....」
じいやは、わざともったいぶる口ぶりを皆を惹きつける。
全員が固唾を飲んで見守る。
「エロマンガ島ですぞ」
「ちょ..ちょっと待て!!!」
王様なのに、国の名前を今まで知らされてなかったどころかそんな変な名前をつけられていたなんて聞いてもいない。
俺はいてもたってもいられず思わず声に出てしまった。
「名前..おかしいじゃん!国の名前なのになんで島ってつくんだよ。しかもエロマンガなんて何一つ関係ないじゃん!!」
「そんなこと言われましても..神様の一存で決まりますからなぁ..」
「断固俺が、あのクソ神様に抗議してやる!!またあいつに会わせろ!」
「あら?いいんじゃない?私たちらのチーム名によく合ってるじゃない?」
さっきから、俺につっかかってくる女の子が妙に納得した様子で告げる。
「う...嘘だろ??お前たち..こんな名前でいいのか..?」
「私はいいと思うけど?」
「私は..どうでも...いい...」
「ぼくもそんなに断固抗議しない訳じゃないなぁ..」
「私たちにはそれが合っておりますぞ」
4人の幹部は、特に否定する訳でもなくむしろ納得したといった表情だった。
まじかよ..それでいいのかお前ら...
「そんなどうでもいい事なんかよりも私達の自己紹介の方が先じゃない?まだお互いの事みんな知らないと思うし」
ど..どうでもいい事..自分の国の名前の事をどうでもいい事扱いしましたよこの子..
でも...自己紹介か。確かにお互いの事を知らないなら自己紹介はする必要性があるだろう。
「わかったよ。じゃあまずは自己紹介からだな。」
「そうと決まればまずはトップバッターは私からね!」
さっきから俺にいちいち意見する女の子が先陣を切って自己紹介を始めるのだった...
国の名前は....まぁまた考えるか。
こいつらの事も知りたいしな。
国の方針、好きな事を全力で。
そんな人間を神様は選んだという。
好きな事を全力で生きる人間しかここにはいない訳だ。
ここでなら自分の趣味を話せるかも知れない。
そう考えると胸のつっかえが取れたような気がした。