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反撃開始

普通の顔をして、いつも通り仕事をしている。自分の席に座り、吉永君の結婚式をどうするかを考え、段取りを練っているのだ。


すると、遠くから何やら女性の声が聞こえる。しかも、それは普通の声ではなく、腹の底から出しているとてつもなく大きな声だった。一体、何事かと思い、そちらの方を見てみると、吉永君のフィアンセが事務所の入り口からこちらへとゆっくりと歩きながら大きな声を出しているのであった。


「この会社の人間は、私のフィアンセを寝とったんですよ!」


ね、寝とった!?

きっと、それは、私のことを言っているのだろう。まさか、私と吉永君が一緒にいるところをどこかで見ていたというのだろうか。


吉永君の結婚式の段取りを考えるのを中断して、机に足をぶつけそうになりながらも、吉永君のフィアンセのもとへと駆け寄った。


「お客様!」


私よりも先に、上司の坂本部長が駆け寄っていた。


「一体、どうされたというのですか。落ちいてください」


坂本部長は、落ち着いた声で言った。


「落ち着け?落ち着いてなどいられるわけがありません。この会社の人間が、私のフィアンセを奪い取ったんですよ!絶対に許しません」


近寄ろうとする私を吉永君のフィアンセが睨んできた。私は思わず後ずさりしそうになってしまった。一瞬、足が硬直したけれど、プロとしてこのままではいけないとなんとかしなくてはならないと自分に言い聞かせて、近付こうとすると、突然、吉永君のフィアンセが私を指さした。


「あなたが私のフィアンセを奪ったのよ!」


そういうと、ゆっくりと私の方へと吉永君のフィアンセが近付いた。


「日比野さんだったわね。私が、何も知らないとでも思ったら大間違いよ!フィアンセのことを探偵に調査させていたのよ。何かあったら困ると思ってね。まさか、私たちの結婚式をプロデュースしてくださる方と浮気をしていたとはね」


「う、浮気だなんて・・・」


口ごもっていると、吉永君のフィアンセが、カバンの中から封筒を取り出し、封筒の中から写真を思い切りばらまいた。そこには、私と吉永君が写っていた。会社帰りにばったり会ったところ、一緒に居酒屋へ行ったこと、そして、同じマンションに入ったところ・・・。


「これでもまだ、浮気をしていないとでもいうつもり?」


もう、これ以上は無理だった。私は、必死に床にばらまかれた写真を拾うことだけで精いっぱいだった。上司や先輩、同僚が茫然としている間に、私は、すべての写真を拾い上げた。しかし、時すでに遅し、茫然としながらもその場にいた上司も、先輩も、同僚も、写真の中の私たちを見てしまったのだ。


「も、申し訳ございませんでした。すぐに、他の人間に担当を変わらせますので・・・」


と、坂本部長が吉永君のフィアンセの真横で頭を深々と下げて言ったのだが、それを制すように手を出すと、吉永君のフィアンセは、私の目の前に立った。


私は、写真を抱えていた。


「いいえ、担当は、日比野さんあなたのままでいいわ。いいえ、ぜひ、あなたに私と吉永の結婚式をプロデュースしていただきたいわ。もちろん、結婚式にも出席していただかなくてわね」


不敵な笑みを私に見せると、そのまま吉永君のフィアンセは帰ってしまった。


すると、鬼の形相で私の前に坂本部長が来た。


「一体、君は何を考えているんだ!大切なお客様のフィアンセに手を出すとは!」


「も、もうしわけありません!」


深々と頭を下げることしかできなかった。

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