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瞳先輩と双葉先輩

吉永君の結婚式や挙式のプロデュースに奔走する毎日。

あこがれの人の結婚式かぁ・・・。


自然とため息がこぼれおちる。お客様の前では、絶対にしないけれど。

ひとりになるたびに、ため息をしているような気がする。


ショックだったなぁ。幸せそうな彼女の笑顔と、ひきつった笑顔の吉永君を今でも鮮明に覚えている。

あんなにショックなことは、今までなかった。

きっと、これからだってここまでショッキングな出来事には遭遇しないだろう。



「お先に失礼します」


疲れた声。自分でも嫌になる。


会社を出ると、なんと、瞳先輩と双葉先輩が会社の前にいた。


「お!きたきた。待ってたんだぞ」


「先輩!どうしたんですか。突然、こんなところで」


「実はね。この近くまで来たものだから、二人で行ってみないかっていうことになってね。突然来て、なっちゃんをびっくりさせようと思って、何も言わないでおいたの」


私を驚かせようとは。昔から変わっていないようだ。

瞳先輩は、人懐っこくて、その上、人を驚かせるのが好きな人だ。

かわいげがあるからいいけれど、それがなかったら、こんなに仲良くはなっていなかっただろうな。


「人を驚かせるなんて。相変わらず、悪い人ですねぇ」


「悪い人だなんて、人聞きの悪いこと言っちゃって。それよりも、一杯どう?」


「いいですよ。そのために来たんでしょうから」


飲むなんて、今の私には必要なことかもしれない。

お酒におぼれるのはいいことではないけれど、ちょっとくらいはね。

お酒でも飲んでないと、やっていられない気分だから。


三人で駅前のチェーン店の居酒屋へ行った。


「3人で飲むのって久しぶりだね」


席に着くなり、瞳先輩が身を乗り出してきた。隣に座る双葉先輩は、軽く苦笑いを浮かべているようだ。


「相変わらず、元気ですね」


「もちろん、元気だけが取り柄みたいなものじゃない。ね!」


突然、気を抜いていた双葉先輩にふると、双葉先輩は驚いて体をぴくりと跳ね上がらせていた。それを見た瞳先輩は、少々ムッとした様子。恋人が話しかけただけで、驚くとは何事かとその目が言っていた。


注文を終え、話は自然と私の仕事へ移って行った。本当は、あんまり話したくはないのだ。吉永君を思い出してしまうから。


「ウェディングプランナーやってるんでしょう? 素敵よねぇ」


「先輩たちは、いつなんですかぁ?」


出されたばかりの梅酒サワーを飲みつつ、話の中心を自分から先輩二人に移動させた。

二人ともドキッとしている。瞳先輩は照れているようだけれども、双葉先輩はちょっと違う。あんまり乗り気ではないのか、瞳先輩とも私とも目を合わせようとはせず、そっぽを向いてビールをグイッと飲んでいる。


「私たちねぇ。いつごろかしらね」


瞳先輩は、すがるような目つきで双葉先輩を見ていた。しかし、双葉先輩はそれでもそっぽを向いたままだ。

おかしい。いったい、双葉先輩はどうしちゃったのだろう。


「結婚が決まったら言ってくださいね。私が、先輩たちの結婚式をプロデュースしますから」


「本当? 嬉しい! かわいいなっちゃんに結婚式をプロデュースしてもらえるなんて」


「高いですけどねぇ」


「えー!」


女二人で盛り上がっているのに、双葉先輩は隅っこで、から揚げやらシーザーサラダやらをつまみにビールを飲んでばかりいる。なんだか楽しくなさそうだ。二人の結婚の話をしているのに、全然話に入ってこようとはしない。こんな双葉先輩は初めてだ。


あんまり、結婚の話はしたくないのだろうか。まだ、結婚は考えられないのかもしれない。二人で会ったときだって、私に彼氏を作れと言うだけで、自分の話はあまりしていない。

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