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佐々木の話。
突然飛び出した割には何の買い物もせずに帰ってきた。いつもそうだった。自転車を停めて静かに階段を上る。手前の部屋のドアが少し開いている。不用心だなと思って閉めようとしたけど、靴が挟まって閉まらないらしい。中にはたくさん靴があるようだ。また飲み会でもしていたのだろうか。まあいいか、佐々木はいい奴だから。今日は授業は休もう。それぐらいは昨日頑張ったんだし大丈夫なはずだ。
鍵を探していたら、隣のドアから佐々木が出てきた。欠伸と髪の毛をいじる様子を見ると、さっきまで飲んでいたのだろうか。
「おはよう。」
「おはよう。」
本当は佐々木に話したいことがある。でもこれからコンビニへ何か買いにでも行くんだろう。友達が起きたら朝ご飯でも作るのかな…朝までなんて飲んだことないから分からないけど。
灰色のスウェットの後ろ姿がカッコよく見えた。佐々木は私に無いものの全てを持っているんだろう。
脱衣場で自分の化粧の微妙な落ち具合にもう溜め息も出ない。無関心ってこういうことだろうか。時計はまだ4時になる前だと言っている。もう一度よく寝よう。明日は佐々木には話そう。