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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第九話 「小さなミカンとお手製おにぎり」



第九話 「小さなミカンとお手製おにぎり」




はあーっ! 今日もいい天気だぁ! 


私は起きたらすぐ 部屋の窓を開ける!・・木製の古い窓。


今までは実家だったから母が窓を開けていた、家に居れば 食事も洗濯も部屋の掃除もすべてやってくれるんだから、楽でいい。

・・・部屋に籠っていたときは勝手に部屋に入られると非常に迷惑だったが・・・今、考えるとなぜあんなに暗い部屋に閉じこもっていたのかと思うほどだ。


今日は日曜日だ、何してあそ・・・オレは未だに子供のままなんだろうか・・? 実際 何も知らないし。


友達もいない、彼女はずっといない、風俗と言う手もあるが、・・・そこへ行く勇気がない、・・それに変な病気も怖い。


二十六にもなって恥ずかしい、世間がオレを小バカにするだろうし、ますます女の子たちはオレを気持ち悪がって相手にしてくれないだろうし、それでも相手にしようと言う女性がいるなら、「え!?あんな人と付き合ってんの?」と聞かれ、身勝手な噂が立ち、リア充どころか不幸になると敬遠されてしまう。


仲良くなりかけた男友達は 「もしかしてー、童貞?」などと聞いてくるから 下手に仲良くなれない。


だが、オレ自身はそうは思っていない、機能的に問題があるわけでもないし、特別 変わり者と言うわけでもないはず・・と自分では思っている。


運命の出会いがオレには無かっただけなんだ、ただそれだけ、・・運命の出会いと言っていることが キモイとか言う奴もいるが、未経験なんだから仕方がないだろ! 経験ありでも やはり運命の出会いを感じる人でしか オレは無理かもしれない。


細木数子のテレビを見ていたら、四緑木星の人は 婚期は めっちゃ早いか 一生 結婚出来ないかのどちらかだと言っていた。


オレは勉強、スポーツ、ファッション、どれをとっても 取り入れるのが人よりチョー遅い、ジーパン一つをとっても 近所のスーパーで買う、1980円だ、だからファッショナブルでない事は分かるように、最近なった。


もっと最悪なのは高校時代に友達の家へ遊びに着て行くシャツがないから 学生服のまま、近所のスーパーに買いに行ってライトグリーンのストライプ柄のシャツを見つけ、それを買って友達の(当時は友達がいた。)家に遊びに行った、友人が苦笑いを浮かべていたのだが気にしなかった。


そのグリーンのシャツは ラージサイズなのにえらく小さく、丈が短かった、その上 ボタンの位置が 左側についていて、止めにくかった、・・左利きのシャツなのかな? と思ったけど、今考えると、あれ・・女の子物だよね、・・それ着て何度も遊びに行っていたら、だんだん友達が減ってきたように思えた。


そう考えると、オレは 何するのも人より遅く経験している、気づくのも恐ろしーほどに遅い。


占い通り、一生結婚出来ないと考えるのは とても自然の事だ。


オレは占いなんて信じない、悪い結果の占いなんて信じる方がバカだ! 良い結果だったら信じる、それでいいのだ。


これまで 数年間、


オレは家と大学の道のりしか知らない、バイトで得たものは少ない金だけ、・・それ以外は 英会話教材のローンで消えた。


だが、オレは金の使い道を知らないから、わずかに残ったお金で旅行に行った、青春十八切符で高野山と埼玉に行ったのだ。


もう長い間、笑っていない、いや・・ テレビ見て一人で笑う事はあるが、友人と楽しく笑った事は 高校二年・・から、ない。


・・青春から得られるだろう・・リアル充実的な、"何か?"に至っては まったくない! 断言できてしまう。


もしかすると オレの精神年齢は止まったままかもしれない、未だに高校生なのかも・・いや、違う・・まだ中学生かもしれない・・・


・・心が折れそーだ、もうよそう、考えるのは。



だがしかーしっ!!


ここへ来てから何かが変わった!


オレの人生チャートは右肩上がりなのだっ!・・・のような気がする。


いやっ! 間違いない! すべてが良い方向へ、何かが後押ししているような、これでいいんだと、もう大丈夫だと、誰かが私の心の奥で諭しているかのように! それは、・・・いったい何なのか? それはいったい誰なのか?


・・・やっぱり 近所の神社の神様なのだろうか? ・・・それともご先祖様? 母方は子供の頃から毎年、盆暮れ正月には参っている、・・・父方は 遠いから 生まれてこの方 一度も お墓参りはしていない、・・・やっぱ ダメかなぁ・・、行かないと。


・・・そんな事 考えたって分かるはずもない! だから もう、考えない! なるようになるっ!! ・・母ちゃんが・・よく言ってたなぁ・・・引きこもりの浪人さん時代に、「なるようになる! 気にしちょったって仕方なかろーね。」・・・広島弁で話す 母さん。


そうだ、・・・落ち着いたら 広島の母の実家にあるお墓にお参りに行こう、・・・それと父方のお墓参りも。


やっぱ、先祖を敬う気持ちは大切だよね。



だけど今日は 遊ぶことにしよー。


学生時代、今日は休むと決めて何しようかなぁ、なんて考えてたら、日が暮れてしまったことが何度かある。


だから その教訓を生かし! 何も考えずに表へ出よう! 外を歩こう! 人の目なんて気にしなくていいのだっ!


オレは部屋の押し入れの前に置いてあるゆーパックの中から 母さんが入れてくれていたトレーナーを出した、それを着た、ジーパンをはいた、これで完璧、ちゃんと着たから表へ出よう。


そしてオレは外に出た! 大家さんは風呂かトイレの掃除に取り掛かっているようだ!


カアー! 


っ!! カラスだとッッ!!! アーオーっ! と鳴いている、お前はなんで朝に鳴くんだよッッ!! カラスは夕方って決まってんだろっ!


時間を守れよぉっ! それでもカラスかよぉっ! 時と場所をわきまえろぉっ! 


・・くっそぉ・・・まだ鳴いてやがる、・・・あいつ なんでオレが出かけようとするときや何かしようとする時に限って、絶妙なタイミングで鳴くんだぁッ!? わざとかぁっ! わざとなのかぁっ!? クッソッ、カラスは頭が良いって言うからなー・・いや待てっ! カラスは鳥だっ! 脳みそだってちっちゃいっ!! ・・危ない危ない、カラスごときに被害妄想をしてしまうところだった、人間不信から引きこもりは起きると言われているが、カラス相手に引きこもり症候群が目覚めるとこだった・・。


もしそーなったらカラスを恨む、そして 道ですれ違う犬や猫にまで あいつ、オレを見て笑った・・とか考え始めるんじゃないだろーか? それどころか、虫にまで こいつ本能でオレを馬鹿にしている? とか考えて 挙句の果てには その辺に立ってる電柱やジュースの販売機にまで 笑ってんじゃねーっ! とか言ってたりして、・・ああっ!! 怖いよッ!! 自分が怖いっ!! どーしよ・・、


以前 テレビで見た 麻薬中毒患者のドキュメンタリー番組で 御見かけしたAさんと さっき想像した自分が酷似しているのが怖い! 麻薬も使ってないのにそれはないだろっ!


・・何だか疲れてしまった・・、だが ここで引き返すものかっ! 田舎だから人はいないっ!


・・とにかく、オレはカラスが大っ嫌いだっ! ふんっ! 住んでんのかぁっ!? この近くっ! あーっ!もーっ・・。


我に返ったオレは以前 行った場所に頑張って行ってみることにした。


それは あのシロツメクサの畑のあるところ・・、そうだ、いい事考えちゃった。


あの シロツメクサの畑を こう呼ぶことにしよう、"幸運の丘"と。


シロツメクサの英名はクローバー、クローバーと言えば四葉、四葉は幸運をもたらすと言われている、だから"幸運の丘" なのだ。


私は 幸運の丘へ行く途中、春名先生の家の方角から、変わった格好の男が自転車に乗って私の前を走って通り過ぎて行った。


その男は 眼鏡をかけ 帽子を被っていた、その帽子が 映画に登場するマフィアの被る帽子と同じで 縁あり帽子だった、・・たしかあの個人タクシーもこの縁あり帽子を被っていたな・・。


・・似ている、同一人物なのではなかろーか。


その縁あり帽子は 真っ白に赤色の帯が巻かれた、・・なんだかめでたい感じのハットだつた。


PUMPKIN(かぼちゃ)と書いたトレーナーを着て、黒っぽいジーンズに ・・・素足で下駄を履いていた。


・・私のファッションセンスは・・ほぼ 無いに等しいが・・これは、いくらなんでもおかしいだろ、・・・コーディネートって言うんだろうか? それがまるでない。


だって マフィアの帽子に、カボチャのトレーナー、それにジーンズをはいて下駄、・・そのうえ自転車こいでいる。


コーディネートと言う言葉を まったく無視しているのでは? ・・・人の事は言えないけど、私より酷いと思う。


・・いやまて、・・今の流行りなのかな?


・・下駄って・・お洒落? ・・水虫なのか? ・・ああーやだなーなんかぁー・・、同じアパートだったら脱衣所でうつされそーだよ。


山下清が下駄履いて 絵を描いてたって言うけど、あれは昔の人だからなー、千と千尋のハクも履いてたけど ハクはいいよ、カッコよかったから、それに和服だったし、ほんとは川の神様だし。


昔の青春映画で番長は下駄だったけど、さっきの人は どー見てもケンカとかしなさそーだし、とっても笑顔だったし、ちょっと足りなさそーだったし。



ああ・・なんかもいい、もう、考えるのはよそう、それがいい。


さて、オレは幸運の丘へと目指した!


シロツメクサがが生る畑は 中学校の南側から山間へと広がっていたかなり大きな畑になるが ここの一帯ではあまり田んぼが見当たらないな・・。


アパートから一つ目の橋を渡って反対側の川沿い道・・と言うより あぜ道を歩いて行くことにした。


涼しいくらいの風が草の匂いと優しい花の香りが一緒に通り過ぎていく。


トンボが一面あたりを飛んでいた。


蝉の鳴き声も少なくなってきていた。


夏の季節が 静かに終わりを告げようとしているようだ。


少し歩くと田んぼに囲まれた小さな山がある、そのてっぺんには 小さな鳥居とお社が 西を向いて建っているようだった。


また今度 あの小山の神社にもお参りに行ってみよう。


小山の陰から 中学校が見えてきた。


一番近い 橋を渡ってシロツメクサの畑のある"幸運の丘"を目指した。


あぜ道から村の公道に出た。


舗装はされていない。


交差する四つ角を過ぎれば シロツメクサの畑へと辺りは変わっていく。


その交差する道の左、中学校の方角に さっきの下駄男が自転車を降り、じっとこちらを見ているようだった。


・・なんか気味が悪い・・。


私はそ知らぬふりして目的の場所へ向かった。


ミツバチって言うのは シロツメクサの蜜も集めるのか? これは別名クローバー(三つ葉)と言って、都会では その辺、どこにでも生える雑草と認識されていて、私も子供の頃 何度か四葉探しをしたものだ。


カッコよく言えば、これも西洋では ハーブとして知られているらしい。


沢山の ミツバチが 花の蜜を集めている。


このシロツメクサには ピンクもあるんだよな、・・この辺にあるものは混在している。


・・・なぜか ここに来るととても落ち着く、


シロツメクサの畑を緩やかに上って行くと あの一本だけ大木の立っている丘に来る。


あの大きな大木の近くまで来ると まだ蝉はたくさん鳴いていた。


これは クスノキ・・なのかな、私のお気に入りの場所だ。


座るにちょうどいい岩が大木の前にある。


北側、北向きの景色、と言うのは 建物を建てる時にあまり良いとはされていないのは、太陽を背にして影を作るからだ。


日当たりが悪い、ジメジメしている、暗い、などなど マイナス要素と思われる所が多いからだろう。


だが 岩に腰かけ、大木を背にしたとき、格好の木陰スポットになるから とても涼しい。


ここから座って北を向く。


太陽の光は 自分へ日陰を作り、夏なら涼しくいられるだろう、そしてあたり一面は太陽の光で照らされ、影を少なく見せてくれる、それはもちろん陽気な気分にさせてくれ、全てが生き生きと見える。


逆に日当たりのいい南向きからは 自分への日当たりは良く、夏を除く季節は暖かくいられ、そして見える景色は 影がよく見え、夏なら涼しくも見せてくれる。


北向きだから絶対ダメって言う事はない、見方を変えれば 感じ方も180度違ってくるものだ。


大自然の神様は 上手に世界を創ってくれている。


宗教的感覚で物事を考えてしまうと "根"が深くなってそれが重荷になる事はあるが、どこに はっきりと境界線を引くかで考える領域は広がる、いやそれどころか "境目"を尊重することでどちらを見ても相乗効果が生まれるものと思う。


以前、春名先生の言った言葉が思い出された、「空が青いのは他の色が譲ってくれたから。」 オレも今は そう思っている。


奪い取ったんじゃない、勝ち取ったんじゃない、生き残ったのでもない、お互いが尊重しあって 青い空が生まれたんだと思う、それに 他の色の空は、こう思っているかもしれない、"青い空は昼間、ずっと青で大変なお仕事だね。"そして 別の色の空は こう言ってるかもしれない、"たまには休んでください、その間 雨を降らしますから。" なんて、・・オレって絵本作家になれそーだな。


それに春名先生はこんなことも言っていたなぁ・・「社会の秩序は譲る気持ちから生まれるもの」と。


お互いが 尊重しあう、それが すべての均衡を図る道理なのではないだろうか?


"尊重"とは 一歩 譲って丁寧に考えると言うこと、譲る、譲られる、それが きれいな調和を生み出すのだろうとオレはこの玉村に来て そう思えてきた。


春名先生は すごい、オレと一つしか歳が違わないのに、その事をちゃんと 自分の中で考えていたし、宗教的信心を思わせるほどまっすぐな心で誰よりも深く考えていた。


私は 春名先生の言ったその言葉に 私自身の未開拓な心が新たな世界への扉を開いたと確信が持てるようになった。


ここへ来て まだ一か月も経っていないのに オレは素晴らしいと思える確信をいくつも手に入れることが出来た、いや・・まだこれからだ、もっと深く、もっとたくさん知りたい、まだオレの知らない大切な"何か"を。


断片的な私の思考そのものをつなぎ合わせ、あやふやなものでなく、"使える知恵"になっていこうとしている。


なぜにこんなにオレの思考回路は麻痺していたのか?


都会時間のせい? 人間関係? 競争社会? もっと他にも理由はあるだろう、健全とは言えない心や社会道徳が生み出す見えない不幸。



運命、


これも春名先生が私に言ってくれた言葉だが、何か、不思議な何かが必然と思わせるほどに私を導いてくれていると思わずにはいられないのだ。


私は この玉村に来て 春名先生と出会い、自分の未来が絶対的に 明るく幸せなんだと心から思えてくる、それは 胸のずっと奥から込み上げ溢れんばかりのものとなり高揚感で満たされていく! 今、私は希望に満ち溢れ! 幸せでいっぱいなのだ!


幸せになりたい、と言うのは当たり前の事で 理由もなく誰かが自分を幸せにしようとするものとして考えると、そちら様にどんな利益があるのでしょう? と偽善扱いしてしまう。


私が考える "幸せ"の条件は、"家族"であると考える。


家族が家族の為に幸せにしようとする、その行為に何の理由が必要なのか、それに対し、何の利益が? そう考える人はいないだろう。


世の中には幸薄い人もいるだろうし、家族愛に恵まれなかった人もいるかもしれない、・・・今 思い出したけど 映画で"ミリオンダラーベイビー"と言う クリントイーストウッドの監督作品があるが、これが 驚くべき作品だった。


三十路の"女性"が"プロボクサー"となり世界チャンピオンになると言う、日本のアニメのような "ありえない"話だった。


深夜の木曜ロードショーでコマーシャル入れて二時間番組で放送されてて、ラスト三十分まで アメリカンドリームであくびが出るほど 昔のハリウッド映画っぽかった。


だけど 残りの三十分でそれまでのアメリカンドリーム的話に 全て納得いくクライマックスが待っていた、・・・いやー、思い出したら泣けてくる。


興味があったら 見てもらいたい、あまりに衝撃的な 家族愛に恵まれなかった素晴らしい女性のお話だ。


あと 昔の映画で、芝居にもなっている "ステラ" と言う 母子の半生を描いた話だが、とても素晴らしい内容だった、演出は露骨だったが、監督さんが分かりやすく伝えるための撮り方なんだろうと思わせてもらう。


私は 子供の頃、夜店で取った金魚が小さな鉢の中で二年近く生きていたことに驚きとショックを受けた記憶がある。


・・それは子供の感性による 小さな小さな事なんだが、金魚のキンちゃんが死んだ時、オレはショックだった、先に言っとくが ここは笑いは取らないので。


・・数日前から 体が沈まず 少し上向きだったので気にはしていたが 学校から帰った時、水面で横になって死んでいた。


私は 一瞬死んだのかな、と思い そのままランドセルを部屋において、遊びに出かけようとしたら、自分の意志とはべつに急に足が止まったのだ。


そして もう動かない金魚のキンちゃんをみて 「寂しいよね・・」と言った言葉に驚いた、だって それまでそんな事考えてもなかったんだから、・・私はあの時・・昔の記憶だけど 泣いていたと思う。


・・たかが金魚だよ、だけど大切な何かが 消えてなくなるのはとても悲しい事だと言う事をあの時、強く思った。


・・そう言えば 子供の頃、何度かあったなぁ・・そんな事。


近所の公園の誰も行かない場所に 小さなお墓を掘って そこに埋めてあげた。


私は 寂しいのは嫌だし悲しいのも嫌だ、


・・痛いの嫌だし、怖いのも嫌だ、ホラー映画も大っ嫌いだ! 怖い顔した奴も嫌いだ。


なぜ お化けは怖い顔をしているか?・・面白い顔だったら、


・・・よそう、考えるのは。


また、バカみたいなどーでもいいことを妄想しつづけて、電車にひかれうになったりするんだから。


だいたい 途中まで素晴らしい事を考えていたような気がするのだが いつもバカみたいな結論で終わってしまう、それはダメだと今気が付いた。


それに、ここには電車と言うそんな怖いものは走ってない。


この玉村には素晴らしく心を穏やかにしてくれ高揚感だけに包まれるパワースポットのような場所が たくさんあるように思えてくる。


その一つが ここだ。


シロツメクサの畑の高台に位置する場所、・・私が名付けた「幸運の丘」だ。


私は 前に座ったこの場所に腰かけようと・・・


目をやっ・・・・、


・・・・、


・・・犬だろうか・・?


・・・、


・・・それとも・・・・


・・・・昭吉だろうか・・?


・・・・。



そこには ウンコがあった。



・・今日は・・なんていう日だ・・・。


なんでウンコ? なぜここに? ここじゃなくてもいいじゃん、トイレでしようよ、犬なの? 昭吉なの? マナーは守ろーよ!


空は青い、・・春名先生が言った言葉が頭に浮かんできた、「玉村の空は世界一 青い」・・・


とかなんとかだっけ?


・・私は・・ゆっくりこの幸運の丘から 下りて行っていた・・。


幸運とは 幸せを取ったら、ウンの丘になる・・。


・・それどころか、ギョーカイ用語に変換すれば こううんが ウンコ―になってしまうではないか・・ああ・・・


オレは 自分でも知らず知らずのうちにボケて突っ込める一人漫才師みたいになっているじゃーないか・・・。


・・今日は朝からカラスが鳴いてたし、・・変な! 下駄男を見たし、・・・幸運の丘は ウンコの丘になっていたし・・・・。


・・何かに見捨てられたような気がする。


・・確か、・・朝は、高揚感に包まれ、とてもとても幸せな朝だったような気がするのに・・遠い昔のような気がする、・・何だろう すべてが悪い方へ向かっているような気がする、・・何かとても大きな力が オレの邪魔をしているような・・・


運命がオレをバカにしている、・・カラスがっ! 幸運の丘が! なんでピンポイントにそこにあるんだよっ! 普通 ありえないだろっ! もーぉっ・・・


・・ああ・・、なんか・・体から力が抜ける・・、ふぅー・・


オレはその場で 和式ウンコさん座りをしてみる。


・・・・、


・・・こーしていると落ち着く・・・。


・・風は優しく吹いている・・・両側には シロツメクサが咲き乱れ、・・美しく、可憐に、風に揺られて優しい香りを運んできてくれていた。


いつかマイホームを持ったら トイレは和式にしよう。


・・まだ、夏なんだなぁ・・、日向は まだまだ暑く、トレーナーの下は汗だくになっていた。


オレは少しでも涼しくなるように腕まくりをした。


・・・やっぱりここは きれいだ! 美しいよ!


茶畑に見えているあの 低い木に小さなミカンのような実がなっている、それは段差のある傾斜を背に 一列に並んで植えられてあった。


ブーン・・


?


・・ハエかな? いや、ここは美しいシロツメクサの楽園なのだから、きっと可愛いミツバチだろう・・。


・・ブゥゥーン・・ブゥゥーーーーン・・・


・・・・なんかだんだんその音は大きくなってきた・・、


・・・・あの音は・・・ミツバチって言うより・・・・・・・・嫌な予感がする、・・・・後ろから聞こえる その音の主を確認する事より、そっと逃げた方がいいかもしれないと思った。


オレは静かにその場から立ち上がった!


っっ!!! なにぃっっ!!


何て事だっ!! こんな時にぃっっ!!


・・足が痺れたあっ!!!


トイレは洋式だっ!


オレの体は右へと傾き倒れそうになるのを・・っ!!?


っ!? なにぃっっ!!!


・・あ、立ちくらみが・・・・


オレの体は一瞬 平衡感覚を無くして よろよろとシロツメクサの畑へとよろめいた。

あれはっ、あいつはっ、黒いものに襲い掛かる習性があると聞いたっ! 髪はともかく目を隠さなきゃっ!

耳元を大きな虫の羽根の音が重低音で鳴り響いたっ! 


刺されるっ!!!


オレはシロツメクサの畑へ倒れ込んだ!!



重低音の羽根の音は少しづつ離れて行くように聞こえる,


ブーン・・と聞こえている・・ブーン・・と。


・・どおやらオレは刺されなかったようだ。


それは、


あのスズメバチではなく・・・、


・・カナブンだった・・・。 



紛らわしいんだよおおっ!!! お前よぉっっ!!! イィッッッッーっ!!! て来るわあっ!!!


くっそぉー・・何なんだよぉー・・ 畑の横に 水が流れる小さな用水路があるよぉー・・ はまっちゃったじゃないかあー・・・もおーっ・・、

のび太じゃんっ、これじゃあっ!!

泥だらけになっちゃったよー・・・グスン・・。


・・・サイテーだっ!! 今日はサイテーの日だっ!! 踏んだり蹴ったりだあっっ!!! もー帰るっ!!


オレは とぼとぼと歩いて帰ることにした・・・。


・・やっぱ・・、部屋の中が 一番安全だな・・・・。


一番で思い出した・・


今日のお昼ご飯は サッポロ一番しょうゆ味にしよう。



「城島センセーイ!」


っっ!!?なにぃっ!!!この声はあっっ!!!


疑う余地はないっ!! もう騙されないっ!!


どこだっ!? 右っ!? いやっ左!? 上なのかっ!! そんな訳はないっ!! 鳥じゃないんだっ!! そこかあっ!!!


最初 茶畑と間違えた 小さなミカンの木、私の歩く道側から西側、左手の山のふもとに規則正しく並んでいる、その木の陰に隠れるように、ああっ・・春名先生がいる!!


なんて幸運なんだっ!! また 偶然に会ってしまった! なんて・・・なんて素晴らしいんだっ!! 今日と言う日はっ!!


春名先生は竹の籠だろうか? それほど大きくないもの、それをポシェットをかけるように斜めにかけて持っている、そんでもって麦わら帽子を被り 軍手をはめ、・・何かの作業をしているではないかっ!!


「城島先生も一緒に・・」えええぇーっっ!? 一緒にぃ!? 何おぉっ!? 何でもやりますよぉっ! 一緒にぃッッ!!



「なんでいるんだよ・・お前。」と言う梶山、それはこちのセリフだあっ!! 


「・・きみこそなんでいるだか?」 なんでお前なんだ? ある意味 上島より一番いてほしくないぞっ!!


「用が済んだんなら帰っていいよ。」と、腹の立つ梶山が言いやがる! 


「・・オレは春名先生のお手伝いするんだよ、・・・ミカン取るんだよ!」


「ミカンじゃねーよっ! バカじゃないの? ゆずだよっ! 見た事ねーのか?」


「ちょっと二人とも お互いまだよく知らないでしょー? ・・なんでそんなケンカ腰なの?」あなたのためなのです、春名先生。


「・・・こいつが・・・生意気そーな目をしてるから・・」


「自分の事言ってんの?」


「なんだとおっ!!」


「やめなさいって、・・・梶山くん、もし ケンカしたら嫌いになるからね。」


・・ハハハ、ざまーぁ見ろっ! 嫌いになるって言われてやんのぉー、バーカぁ! こいつ 思いっきり顔に出てるよ、よっぽど春名先生に嫌われるのが怖いんだぁ、へへへへ、バーカ! バーカ!


・・梶山のやつ! 半泣き状態でも こっちを睨んでんじゃーないよっ! 眼飛ばしてんのかぁ? へっ・・、だけど何で梶山がここに居るんだ?


「城島先生! 今日はお昼頃までゆず狩りです、」と言って オレはとっても喜んで手伝う事となった。


一緒にいる女性は「私のお母さん!」と元気に言う春名先生! 「こんにちは 城島先生。」と言うお母様。


「あ、はい! こんにちは初めまして、じょーしましげ・・しげると言います!」


「おまえ、シゲシゲルって言うのかぁ? 変な名前だなぁ、・・・シゲシゲちゃん! へへへへぇー。」こいつぅぅっっっ!!!! 恥ずかしいのと腹が立つのとでっ・・ああっ!!もうっっ!!て感じだよっ!!


「シゲシゲちゃんは どーしたのかなぁー? ・・・お顔が真っ赤ですよー! 高血圧ですかあ? ハハハハ、それはいけませんねー、隣町のヤブ医者紹介しましょーかあぁ!?あはははぁ。」


「フフフ・・梶山くん、年上なんだからイジメちゃだめよ。」とニコやかに言う春名先生のお母さん。


「ふぇーい・・」とバカな子みたいに言う梶山。


「フフフ、面白いでしょ、梶山くんて・・・いつもふざけてるんですよ。」と言うお母さん・・・いやーなんて言うでのしょうか・・オレからすれば面白い、ではなく、とても腹立たしいだけなんですが。

それに こいつ・・いつもふざけてんのか? ・・・いつもバカって事? ・・・・納得だけど。


だけどあれだねー・・さすがは春名先生のお母さん! 春名先生に負けず劣らずベッピンさんなことで、・・・いやいやいやいやぁー・・まいったなぁー、・・春名先生が二人いるみたいに見えてしまう、・・この人があ、・・春名先生のおー・・、お母様かあ・・、そおなのかあー・・へへ。


オレは 春名先生と春名先生のお母さんとでゆず狩りを手伝う事になった。


ゆずをと言う事だ。



ここにある、山への勾配にかけて、 北向きだが平地に近いところにゆず、とそれより上にアカシヤの木や、きんもくせい、桜、ハナミズキ、つつじなどが植えられていると言う事だ。


私の目の前にある2メーター前後の並木は山の形状に合わせて東西へ伸びている、パッと見るだけでも1キロ近くはあるだろう ゆずの木は一列ごとにゆとりを持たせて植えられている。


「城島先生、籠は3つしかないんで ここに私の籠を置きます、ざるで取るようにします、ざるがいっぱいになったらこの籠に入れてください、分かりましたか?」


「あ、はい 分かりました。」と言って 春名先生から小ぶりのざるを貰った。


「こうやって肩にかけるんですよ。」


オレは 教えられたように小ぶりの籠? ざるを肩からかけゆずの実を手摘みしていった。


すぐ横で一緒にゆずを手摘みしている春名先生はつけていたエプロンの両端の裾を縛って即席の袋をつくりそこに手摘みしたゆずを入れていった。


「城島先生は お昼、どうするつもりだったんですか? もし 予定がなかったら、おにぎり作ってきたんで一緒に 食べませんか?」オレは 体中からゾクゾクっときた! それは つまりっ春名先生が作ったおにぎりっ! "素手"で握ったおにぎりっ!! 間接キッスが連想されるんだけどっ!!

あああーっ・・・間接キッスなんて・・・小学生みたいなこと言って・・オレは恥ずかしくないのかっ、26だぞっ!!・・・いいんだよおおっ!! オレの心の中の言葉なんだから好き勝手に考えたっていいんだよっ!! もーっ!! 葛藤だあっ!! 心の葛藤がオレを変態だと言っているうーぅっ!! いいんだよっっ!! 変態でえぇーっ!!

春名先生にわかんなかったらそれでいいっっ!!


「・・い・いいんですかぁ・・? ・・ぼくも一緒で・・。」


「ええ、よかったら 4人で一緒に。」と 素敵な笑顔で誘ってくれた。


4人?


春名先生・・春名先生のお母さん・・・、そしてオレ。


・・・3人じゃんか。


それにしても ゆず畑の木と木の感覚が3メートルは離れてる、・・土地があるから ゆったり植えてるんだろう。

足元は シロツメクサの花が所狭しと咲いていた。


春名先生の足元を見ると 上手にシロツメクサの花を避けて歩いている、さすが優しい女性なんだ。

言葉にしなくても、行動や話すこと、考え方、答え方、そういった形でその人の内面の美しさが見えてくるように思う。


・・・それに比べてうっとおしい梶山は 花を踏んづける事はもとより、採ったばかりのゆずをそのまま食い散らかしている! 農薬は大丈夫なのか? いっその事 当たれよっ! ゆずをポロポロ落とすなよっ! 落ちたゆずを踏んづけている、まあー、なんと汚い足元だこと。


春名先生のお母さんと笑顔で話をしている うっとおしい梶山、「ゆずてビタミンが多いんですよねー、たくさん食べるとお肌にもいいらしいですよぉ・・」


その梶山が 春名先生を挟んでこっちに来た、・・来るなよ!


「なあ、春! お前も キンカン食ったほーが良いぜ! お肌には採りたてがいいんだって!」 ビタミンCの事言ってんのか? みんな知ってるだろ、そんな事。


なるほどね・・・だいたい梶山がどんな奴か分かってきた。

・・・下品でガサツで無知で、バカでアホだと言う事みたいだ。


「あら? ・・・小野さん! こんにちは。」と春名先生のお母さんが・・げっっ!!! さっきの下駄男っ!!


「へへへ・・・こんにちわ、・・・へへ。」


「・・・チッ」梶山は この下駄男を嫌っているのか?


何やら 春名先生のお母さんが話している、「・・・春ぅ! 小野さんも手伝ってくれるって。」


えええーっ!!


「なに!?・・今からか?」と梶山の小さな声とオレの心の声。


梶山は この下駄男を知っている、それに嫌っているようだ、だが オレに対しては露骨に嫌がるが、この下駄男には、少し控えめに感じる・・・年上だからか?



この下駄男、名は 小野と言って個人タクシーを生業にしている、以前 通勤途中で見た個人タクシーはやはり この男だ。


・・それにしても ・・変な格好だ、・・人の事は言えないが、オレより酷い。

白のマフィアハットにカボチャトレーナー、ジーパンに素足で下駄、背はそんなに高くはない、付け加えるなら 丸眼鏡をかけ ぽかんと口を開けどことなく笑っている。


この小野と言う男、こっちをチラチラ見ている、・・春名先生を見ているのか? ・~(^。^q)~~

・・まあ、大丈夫だ、・・・春名先生はこんな 下駄男なんて好きになるはずがない、はずだ。



ゆずはあっという間に三つの籠にいっぱいとなった。


籠はそのままここへ置いて 昼食のおにぎりは 少し上に休めるとこがあり、そこでとるらしい。


ゆずの木々の間に手作りの階段のような道がある、人の手で持てる大きさの石を 寄せ集めて地面に埋め込んでいるだけの簡単なものだ。


・・それにしても大したものだな、一本の木に実が数十・・。


ゆず畑の木の数も相当なものだ。


少し上ったところに またここも眺めのいい場所がある、緩やかな傾斜の雛壇部分でここから上には違う木が生えてある。


これまた大木だ、桜の木か? 桜の木の表面は 横筋がたくさん入っているから花が咲いてなくても見分けやすい。


春名先生とお母さんは バスケットから ピクニック用シートを取り出し桜の木の下にそれを敷いた。


「五人だとちょっと狭いわね、」と言う春名先生のお母さん。


オレはすかさず誰より先に「ぼくは 別に 地べたでも全然かまいませんから、・・それに始めっから汚れてますから。」と言った。


「じゃあ、城島は地べた座り、決定な!」 なに呼び捨てにしてんだよっ! 友達でも何でもないだろっ! 


ムカつくけどオレはシートに座らず外れの地面の上に座った。


そしたら、春名先生が「じゃあ私も 地べた座りで。」と言ってオレの横にすわっあってくれたあー!! ヤァッホーゥっ!!


また、梶山のバカも反対側の春名先生の横に座った。このバッカぁっが、またこっちを睨みつけてやがる!


梶山のバカが「あ、おばさんはシートの上に座ってよ、・・」とパッと切り替え春名先生のお母さんに言った。


・・・・、


「よいしょー・・・へへへ・・」・・・この小野って男・・・春名先生のお母さんと一緒にピクニックシートの上に・・"下駄"を脱いであぐらをかいて座った・・・、後から来たくせに・・・。


風下なのか・・・? ちょうどオレの位置・・、下駄男が風上にいる・・・心なしか・・・風が、水虫臭いような・・・


「さあ どうぞ、そんなに料理はうまくないんだけど・・、おにぎりいっぱい作ってきたのよ、春名と一緒に。」


と言ってバスケットの中から竹細工で作っている竹製の弁当箱を二つ出し ふたをとった、もともと三人で食べはずだったお弁当は多めにつくられているようだ。


一つは ふりかけやのりを巻いたおにぎりが入っていた、もう一つはおかずと 箸や手拭き、紙の小皿、他何か入っている。


パっと、下駄男が おにぎりをつかんだ、こいつっ! 一番最初に手を付けやがった! 一番後に来て一番最初に手を付けやがったっ!! ・・なんかバスケットの中がちょっと穢れたような気がする。


たぶん これは梶山も同じ気持ちだろう、と思って バカの顔を見てみたら・・


・・・思いっきり顔に出ていた。


たぶん・・これはショックを受けたときの顔だな・・。


「ちょ・・ちょっと小野さん・・ちゃんと手を拭いたんですか?」なんと梶山は敬語を使えるのか?


「大丈夫よ、梶山くん ラップで巻いてるから。」


「さっすがおばさん!」


梶山はオレより先に取るつもりなのだろう、・・・させるかぁっ!!オレはすばやく右腕をボクサーのごとくバスケットに伸ばしたッッ!!来るかッッ!! 「痛ってえぇッッ!!何すんだよぉっ!!」梶山のやつがオレの腕にパンチ入れてきやがったッッ!!正確に言うと前腕三頭筋にだっっ!!


「あ・・ワリィ・・お前の手があったの、わかんなくてさー、・・・へへへへー。」


へへへへー、て腹の立つ笑い方しやがってぇッッ!


梶山におにぎり、先こされちゃったじゃんかぁーぁっ!!!梶山の顔が目に入った、顔に出ているぅっっ!!! なんでっっ!!こいつはこんなにも腹立たしい気持ちの悪い変な顔が出来るんだよぉっっ!!!しかもオレを見て勝ち誇ったかのようなーぁっっ!!「城島先生、・・食べないんですか?」


!!!? ・・・春名先生の美しい声だ・・。


「あ・・もちろん、頂きます。・・・・」と言ったら なんとこともあろーに 春名先生は持っていたおにぎりを 「はい、どうぞ。」とオレに渡してくれたああッッ!!!


ああ・・ありがとう・・、ありがとーぅ! 「・は、春名先生、ありがとうございます。」どーだ! 梶山あっ! このオレは春名センセ―から直々の手渡しだあっ!!ハハハあっ!! 


・・うわっっ!! こいつ梶山、ほんっと顔に出るんだなぁ、これは・・たぶん、ショックを受けたときの、更にショックを受けたときの顔だな。

口の中の穢れたおにぎりが見えている・・、汚ねー、漫画みたいな奴だ、この絵に描いたようなマヌケヅラを見ていると食欲を無くしそうだ・・。


・・目を合わすのはよそう。


ラップに巻かれていた三角形の のり巻きおにぎりを半分だけはがして、おにぎりの頭の部分を ガブリと食べた。


ほほーぅ・・これが 春名先生がにぎったと言われるおにぎり! ですかー。


お口の中を・・全神経を・・集中して・・・・クッチャクッチャと・・音立てて・・、


・・ほほーぉぅ・・・これが春名先生がにぎった、・・おにぎり ですかぁー・・。


・・ヘヘヘェー・・へへ・・


はっっ!! 小野っっ!! おい、おっさんっっ!! おにぎり何個食ってんだよおっっ!! 無くなるだろかっっ!! おまえっ仕事してないだろっ! ゆず取ってないだろっ!! うわっっ!!? 梶山っっ!! 顔に出てるっ!! オレと同じこと考えてんのか!? おまえっ、さっきはオレにズケズケ文句言ってたんだから今回も言ってやれよっっ!!


後から来て人一倍 おにぎり食ってんじゃねーっっ!! とかなんとか・・・何で言わないんだよっっ!?


「城島先生、卵焼きとから揚げもどうぞ。」と春名先生のお母さん。


「はい、頂きます!」 と 箸を渡され 卵焼きを・・・取ろうとしたら、またしても 小野がっっ!!卵焼きを先に取りやがったっっ!! ・・・何度もっ何度もっっこのヤロおッッ!!! わざとやってんのかッッ!こいつはあッッ!!! 

どーするッッ!!オレッッ!!このまま卵焼きを取ってしまったら・・負けたような気がするッッ!!!この場合から揚げに行くかっっ!!! ああっっ!!!! 梶山のバカがから揚げを先に取りやがったッ!! ついでに ニヤッと笑いやがったあッッ!!! オレはいったいどーすればあっっ!!!

おかずは他にもあるウッッ!!! これだあっっ!!!いやっ!待てッッ!!春名先生のお母さんは "卵焼きとから揚げもどうぞ"と言った、つまり それを無視して他のおかずを取れと言うのかあッッ!!!、


オレはっ!いったいっ!どーすればあーっ!「城島先生・・? どうかしたんですか?」と春名先生、「ああ・・何から・・いただこうかなぁー・・てぇ」


「フフフ・・私が取ってあげましょうか?」「えっ!!?」まじっっ!?「あ、はいぃ。」と言ってくれた春名先生はニコやかに体を前に乗り出し、おかずのお弁当箱から箸でチャっチャっ!と取ってくれ、紙の小皿にのせてくれている。


・・ああ、細かいこと言うと 嫌われるかなぁ・・その卵焼きは小野さんが箸で突き刺した跡があるから・・・嫌だなー・・。


だけど! とってもいい気分なんだけどー! イヤッホーゥっ!! から揚げものせちゃってーぇ! つまようじで刺してあるゴボウとベーコン巻にアスパラチーズベーコン巻にぃ・・おおっっ!!!なんとこれはあっっ!!!赤い奴っ!!!もう十五年は目の前に現れなかった赤い奴と言えばッッ!!!彗星じゃないぞぉっっ!!!そうっっ!!あれはあっっ!!!


春名先生が箸でつまんでっっ!!!取り上げたあああッッっ!!!ヤアホーウッッ!! タコさんウインナーだあっっ!!! 四本足いっっ!!!


あッッ!? 梶山がショックを受けた顔で露骨にこっちを見ているのはいいとして・・あの小野さんが・・何考えてるか分からないあの小野さんが、ショックを受けているような・・顔をしているっ!!


・・それはっ!! 何に対してショックを受けているのか私には分からなかったっ!! タコさんウィンナーに対してだろうか? それとも春名先生のオレに対する優しい態度に対してなのだろうか?


おおっっ!!! 小野さんは食事中なのに白いマフィアさんが被るだろう帽子をずっと被ったままだったのにィっ!!その帽子に手をかけたっっ!!!帽子を取ったあっっ!!!やっぱり禿げているぅッッ!!!


・・・・フフフ、


・・・・・勝った。


「小野さん、今日はお休みだったんですか?」と聞くお母さん、


「・・ええ・・・へへへ、・・・・・・土日はー・・休みなんですよー・・・へへへへ。」と 元気のない喋り方だ、それに へへへへ、って 棒読みしているような笑い方だなぁ・・。


春名先生が私に話しかけてくれた「城島先生は 今日の予定は良かったんですか? なんかゆず取るの手伝ってもらっちゃって・・


「いやーっ! いいんですよっ! いつでも手伝いますから言ってください!」 ゆず取ってどうするんだろうか? かなりの量だけど・・ジャムにしたりケーキにしたり・・春名先生は女性だから いろいろ考えて作るんだろうなあ・・ハハハぁ。


「じゃあ、来週も頼むぜ!」


「あ、はい! 分かりました・・・・?」


?


?


・・・なんで梶山・・?


なんで お前が言うの? ・・お前は 春名先生のなんなのっ!? すっげーっ不安になるんだけどっ!!


「それにしてもよー、なんで こんなにゆずを植えたんだぁ? 実がたくさん生りすぎて困るだろう・・。」


梶山よ・・・実がたくさん生るのはいいことだよ、・・・お前の言う事は バカの発想だよ、梶山くん。


「ごめんね、城島先生・・・手伝っ貰っちゃってぇ・・」と春名先生・・。


「それは・・いいんですけど・・・」


「いやーなんか悪いなあ、また来週も頼むよ!」と 梶山


「・・・なんできみが頼むんだよ・・・。」とオレは不機嫌に言い返した。


モグモグ「いやあー、誰が頼んだって結局一緒じゃんかあ、」クチャクチャ


・・すっぱいだろ、食えりゃあいいのか、


「・・お前 いいやつだなぁ、・・」ポロポロ・・「城島あ・・」グッチャグッチャ・・


・・・、食いながら喋んなっっ!!目に入るだけで腹が立つだろっっ!! 


「いやー、ほんとっ!! 助かるわーっ! こんな事なら 始めっから城島にも声かけとくんだったなぁ・・、ハハハハア。」


さっき取ったゆずを口の中にほうり込んで クッチャクッチャクッチャ・・ピュー・・


ゆずの汁が梶山の口から溢れている! うわ・・汚ねー、こいつにはヨダレかけが必要なんじゃないのか!? 


「今日はご苦労様、城島先生!」と言う春名先生のお母さん。


「いえ、いいんです! 春名先生とお母さんのお役に立ててうれしいです。」


「・・・・・、城島 おまえさあ・・・・」クッチャクッチャ・・・ピュー


「・・あと、帰りは春の母さんの籠もってやれよ、・・いいな。」


「なに 仕切ってんだよっ!」


「じゃあ 何かぁ、お前は 自分は持たずに 春の母さんに持たせんのかっ!? サイテーだなあっお前ッッ!」


「あ、いいのよ 持たなくても、私は力持ちだから!」とお母さんが言っている


クッチャクッチャクッチャクッチャ・・

「ぼくが持ちますよ!・・・大丈夫です、・・"これ"に言われたからちょっと嫌だっただけですから。」


・・ピュー・・


「これぇぇっっ!!!? お前は誰に向かってもの言ってんだよッッ!!!」


「汚ねーんだよぉッ!! お前はよおおっ!!もうちょっときれいに食えねーのかよぉッッ!」


「なんだとおおっっ!!!!」


「やめなさいっっ!! 二人ともっ! 梶山っ! お前 城島先生に手伝ってもらっておいて・・その言い方は何ぃ!?」 えっ!? ・・今 春名先生が・・姉御・・?


いやいやぁー・・そんなわけないでしょ、こんな可愛らしい春名先生が・・・・・姉御!? いやいやいやあー・・そんなイメージじゃないでしょ、だってポシェットが似合うんだよ、ありえないありえない。


「城島先生 ごめんなさい、 せっかく手伝ってくれたのに、嫌なおもいさせちゃって・・」


「あ、いえ・・ぼくの方こそ・・・すいません、つい・・むきになっちゃって・・・すいませんでした・・・。」


「・・そーだ、お前が悪い・・。」


「いい加減にしなさい!」


「・・いいんですよ、春名先生、きっと梶山くんは子供なんですね、・・・食べ方見てたら分かります。」


「・はあ!? 何が食べ方だよっ! 男は食い方なんて気にしないものなんだよっ!!」


「・・気にしないんなら、必要に応じてヨダレかけした方がいいんじゃないのか?」


「なッッッ!!!」


・・・クス


・・・?


あ、春名先生のお母さんが少し笑った?


え? なに? オレが面白いこと言って笑わせた? ポイントゲットぉ? ・・・ヨダレかけ? ヨダレかけが面白かったぁ? いけるっ! いけるぞっ!! 城島先生って面白い人ねー、と言う具合に好感度がアップアップだっ!



そのあと 


後片付けをして収穫したキンカンを持って帰ることになった。


もちろん オレは春名先生のお母さんの籠を持つことにした。


「梶山くんは 春名先生の籠は持たないのか?」


「オレはオレのがあるんだよっ! 春は自分で持つだろっ!」


まだ 怒ってんのか? こいつ。


小野さんはと言うと・・いつの間にやらいなくなっていた・・。


小野さんは神出鬼没で それに非力だから重いものは持たないだろう・・持てないだろうと言うことだ。


・・いったいあの人は何しに来たんだか・・・。


だか、とても楽しかったように思えてくる、梶山ともいろいろ癪にさわるところあるが、悪い奴ではないようだ。


私が 悪人と善人の区別をするとき、その人の受け売りな言葉よりも、行動やしぐさ、表情なんかを見る。


さっき 春名先生が シロツメクサの花を避けてキンカンを取っていたみたいにだ。


梶山や小野さんは花を踏んづけていた、この花は踏まれても枯れないほど強い生命力をもっているんだからと、利己的に考えるのは集団においては合理的なんだろう・・。


だが それは 近い未来において マナー違反と言われる輩が闊歩することになるだろうと思われる。


集団社会における合理的思考は 一見、"自分は頭が良い"と 自画自賛の若者を生み、知らず知らずのうちに無秩序な世界を作り 最初に目についた者を"すべてお前が悪い"的に袋叩きにする。


オレは 知恵者を誇示する若者の言う "自分は頭が良い" はただの "とんち" だと思う、現実には使えない知恵だ、"本物"の知恵と言うものは 100年経っても色褪せないものだと思う。


世界の偉人たちの言った言葉は本物だろう・・だか、マイクを向けられ世界中の人たちに発信された偉人たちの言葉は ただのエンターテイメントのセリフとなる。

いま、もしここに "死に逝く人がいたら" そしてもし、ここに マザーテレサのような女性がいたら・・・こう言うだろう、"あなたが必要なんです、あなたを愛しています。"と。


その言葉は 今のオレにも 春名先生にもまだまだ 必要のない"本物の言葉"だろう、"あなたが必要、あなたを愛する" ただの普通の言葉。


言葉も知恵も 必要としないものには届かないものだ、ただ・・・ただ、オレが強く思う事は・・オレが その言葉を必要とするとき その言葉を言ってくれる人がオレのそばにいてくれるかと言う事、・・そしてそれ以上に思う事、


オレを必要とする愛すべき人が その言葉を必要とするとき、オレは その"愛すべき人のぞば"にいるかと言う事だ。


・・夏が秋に季節をゆずるように、生きていけたら、・・いま、あなたは必要としていなくても きっと 未来は愛情で満たされていると思う。


それでも小さな事に目を向け、愛らしくそこに咲く野の花にも敬意をもって面倒くさがらず生きていける人は強いと思う。


準備は整った! さあ 行こう!


オレはゆずでいっぱいの籠を担いで 前へ歩み出た。



「少し重いけど 役場の倉庫まで運びますから。」と言う春名先生。重さ約十キロちょっとだ、大丈夫 重くない、背中に背負える籠だ。


まだまだ日は高い、小さな小川にかかる丸太で作られた橋、畑の持ち主が手製で作った橋と思われるような橋が いくつもに枝分かれしている川にかかっているパッと見ても三か所は見える。


そのうちの手前に三本の丸太が架けられてるだけの木製の橋を渡る、…ギシギシ音をたて、揺れている、動いたりしないだろうか?


このままシロツメクサの畑を横目に通りまで歩く。


少し振り返ってみた、キンカン畑は広く東西に広がっていた、はじめは 畑の一部として全体としてとらえて見ていたがどこにどんな木が植えられてるか分かると 山の形まではっきり見えてくるようだ。


!?


・・あれは・・?


「城島先生! とうかしましたか?」と これは春名先生のお母さんの声、

「・・・・あ、いえ・・・あそこに、さっき ぼくたちがいた キンカンの木の外れに・・誰かいるみたいなんで。」


「・・ああ・・」春名先生、「あれは 北元さんよ。北元さんと北元さんのお母さん、・・たぶん ゆずを取りに来たんだと思います。」


北元・・・なんか気まずい・・・粘土の事があるからなぁ・・


「・・偉いのよー、北元さん! ちゃんとお母さんの言いつけを守ってお使い行ったりお手伝いしているんですよ。」と言う 春名先生。


・・北元・・・あの子が・・?


「・・・ゆずて・・ここのゆずは誰でも取っていいんですか?」


「ええ、かまいませんよ、」春名先生のお母さん、「いくらでも好きなだけとっても食べちゃってもいいし、役場に持ってくれば 一キロ/四十円で買い取ってくれますよ。」


一キロ/四十円!? ちょっとした小遣い稼ぎになるじゃないのかな? 今 オレが背負てるのも買い取ってくれるのかなぁ? ・・・貰える? オレが背負っているだけで約十キロはある、・・て事はぁ・・四百円!


・・なんだ それっぽっちかぁ・・・ 半日かかってそれっぽっちかあ・・・


「それにしても偉いわねぇ・・北元さん、いつもお母さんのお手伝いして・・、」と言う春名先生のお母さんに対し、梶山が「おばさん! 手伝いもいいけど、子供はいっぱい遊ばないとダメだってー・・・あいつはいつも一人でいるからダメだよ!」


梶山やつ、その意見にはオレも賛成だ。


・・・でも、そうなのかぁ・・・北元のやつ、いつも一人でいるのかぁ・・・それは 寂しいよな。


あいつ、・・そういえば・・筆箱とか・・鉛筆とか・・消しゴムとか・・・他の子に比べて、素っ気ないものだったなぁ・・・。


「確か 北元さん、あの一緒にいる小さい子は 北元さんの妹さんよねぇ・・」と言う 春名先生のお母さん。


妹!? 妹がいるんだ。


歩きながら北元の話をしていた春名先生たち。


北元には 二つ下に妹がいて、来年一年生になると言う事だ。


「じゃあ 城島先生は来年 二人の担任と言う事ですね。」と 春名先生のお母さん。


「はい。」


北元にはお父さんがいないと言う事だ、母一人で 二人の子供を育てていて、お母さんは隣町まで自転車で二時間かけてパートに出かけ 帰るころは夕方の五時を回っていると言う事だ。


下の妹はお母さんが町の幼稚園に入れているそうだ、・・じゃあ 夕方五時過ぎまで 北元は何しているんだ? 梶山がいつも一人でいると言っていたが・・やっぱり家でも 一人なのだろうか?


オレにも兄弟はいる、生意気で 私を無視するので今までいないものとして考えてきたが 北元と同じで 二つ下に"妹"がいる。


幼いころは 私の言う事をなんで聞いていた、いつも私の前では無口だったが、中学に入るとバスケ部に入り友達もたくさんでき、いろいろなことに積極的に参加していた。


・・オレはと言うと・・、根暗で友達いなくて、アニメ見てて、・・・浪人さんで・・・、あいつの友達の間では "オタク"で通っていたみたいだ、


・・・あいつは ・・・ほんとは優しく 真っ直ぐな奴だから、きっと オレの事でたくさん恥をかいたんだと思う。


・・もし、・・・オレがあいつの知っている頼もしい兄貴でいることが出来たなら、何度も悔しい思いをしなくてすんだんだと思う。


あいつが オレを無視するのはそれだけの事を何度もあいつにしたからだ。

あいつをとても傷つけた・・いや、オレは強い兄貴でずっといなきゃいけなかったんだ。

・・オレは活発な少年から、・・・気がついたらヒッキー(引きこもり)になっていた。気がついたらだ。


・・・きっとオレは ずっとあいつの前では "許せない奴で、認める事の出来ない奴"なんだろう、・・・死ぬまで・・・


・・はあ・・、よそう、・・・考えると不安になる。


「北元さん、よくああやってお母さんと一緒に収穫を手伝うんですよ、収穫したキンカンなんかは 役場にもって行くと 少しだけど買い取ってくれるから、北元さんちにしたら収入源の一つになっていると思うんです、・・・お父さんがいないから、お母さんの収入だけで二人の子供を育てるのって大変だとおもいます。」


どこの道を通ったんだっけ・・気がついたらもう役場の前の橋まで来ていた。


役場の敷地の右隣に古い蔵があり それをそのまま倉庫として使っていた。

扉は両引き戸になっていて鍵などは無かった。


梶山が扉を開け、手前の開けたスペースに 担いでいた籠を下した。

中は薄暗く、藁の匂いがしていた、梶山の籠の横に春名先生が籠を置いた、私はその横に置いた。


焦げ茶色の丸く太い柱に 紙とボールペンがぶら下げてあって それに梶山が 自分の名前を書いて担いで持ってきた ゆずの籠の上に入れた。


・・・三つとも "梶山"と書かれて入れられた。


・・なぜ 梶山? ・・なんでお前の名前?


「城島先生! 今日はどうもありがとうございました。梶山くんもちゃんとお礼言って。」と春名先生。


・・・・・、


「いやーあんがとね、・・また来週も頼むわ。」


・・・分かっていた、・・なんとなく・・・そーじゃないかなー・・て。


「これも役場の人のお仕事なんです、休耕田の収穫も自治会との共同作業なんです。


・・・梶山くんは 役場の中で一番若いんで 一定量の収穫を義務づけられてるんです。」


オレは とっても嬉しく梶山のお手伝いをしていたのか。


「春と 春の母ちゃんには手伝ってもらってたんだよねー、ハハハハアー。」

事情を知らずに陽気に手伝っていたオレも悪い、・・・だが、梶山あっ!! お前が一番っ悪いんだあっっ!! 理由なんているかあっっ!!


オレはてっきり 春名先生のお手伝いをしているんだと思っておりましたわっ。


途中、なんとなく おかしいぞ!と思ったりもしたが、考えないようにしていた。


オレの特技の一つは いつどんな時でも現実逃避ができる事だ。

いつどんな時でも昼寝が出来る のび太君と同じなのだ。

のび太君はしずかちゃんと結婚するのだ。


・・だが この現実逃避とは恐ろしいもので、すればするほどRPGで言うところの経験値が伸びないのである。


歳をとっても精神年齢が低いまま、と言うことになる。


ただ 精神年齢が低いだけなら、エリートと呼ばれる職に就いている中にもいるだろう、沢山の勉強や知識を手に入れる代償として、何も知らず経験値を伸ばせず中年男になっていってる者も結構な数に上るのではなかろうか。


何も知らないことは悪い事ではない、だけどそれが 競争社会では "恥" とされてしまう。


相手の事を考えれば 自分が傷つく、相手の事を考ずに済むのなら図々しく生きることも出来るだろう、それが出来ないものは "引きこもる"

誰でも歳を重ねれば 人ごみを避けたいと口にする、やはりそれは しがらみに疲れるからだろう。


人が増えれば一般の人までも 疲れるからと関わりを断とうとする、これもまた 社会の中の連鎖の結果なのだろう。


と、考えれば ニートと定義づけられオタクは生まれる。


誰でも暗い部屋に籠っていると悪い事ばかり頭に浮かび、小さなことでも大きくしてしまう。

その恐怖や不安は ただの想像であるのに 現実の事として脳に記憶されてしまう。


その妄想はいずれ絶望にかわる。


依存症程度なら まだいいだろう、

それに耐えられなくなってしまった人は 薬や酒に溺れていき そのうち体を怖してすべてを失う。


オレは自分でも 時たま驚くほど 冴える時がある、


・・・だけどなぜか、すぐ忘れている。


・・なぜだろう。


・・やっぱり 経験値なのだろうか。




第九話  「小さなミカンとお手製おにぎり」




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