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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第七話 「春名先生と生徒たち」




第七話 「春名先生と生徒たち」1




私、今年の九月から 晴れてめでた、玉小学校の教師となりました、城島茂(じょうしましげる)と申します。

以後 よろしくお願い申し上げます。


今日は九月七日、7がつく日なのでラッキーセブンと言う事なので 教師生活一週間を記念して、写真を残そうと思います。


昨日学校の帰りに商店街の角にある駄菓子屋に寄って使い捨てカメラとネギを買ってきた、あの駄菓子屋 野菜も置いていた。


インスタントカメラ、・・ではなく 使い捨てカメラだ、始めて使う代物だ、私は 以前 玉村に来る 1年ほど前までは携帯電話を持っていた、今は携帯・・通称ガラケーは持ってない、友達いないし必要なかったからだ、ましてスマホ、とは・・・よく知らない。

ネット接続は実家を出るときに解約した、エッチな何かを見るためにあっただけの物なので、もういらない。


いやー、さすがは春名先生! 「ここの駄菓子屋、とっても便利なんですよ、」と言っていたが、ほんとに便利だ! ちょっとしたコンビニのようで 雑貨なども置いてある、歯ブラシも置いてあったので一番安かった250円のを三本も買ってしまった。


今日のブレックファーストは 出前一丁ネギのせだ! このゴマの風味が食欲をそそる、なおかつゴマにはネギが合う! 素晴らしいコンビネーションだ!

・・・・とりあえず 一人用鍋の出来たてあっつあつの出前一丁ネギのせ"デラックス"(ネギか生卵をトッピング)を写真に撮ってみる!


・・・・パシャ! とな。


きっと いつかこの写真を見て、出前一丁だ懐かしーなー・・なんて思い出すんだろうなー・・。


私は このおもちゃのような使い捨てカメラで写真に撮ったつもりだが・・・何の音もしない、・・かすかに、・・カチ と言う音がなっているのが聞こえる・・・そもそも本当に取れているのか? 私は 出前一丁ネギのせデラックスを食べながら考えていた。


駄菓子屋の雰囲気とは見ているだけで何だか楽しい気分になってしまうあの感じ、駄菓子屋世代ではない私にとって、ちょっとしたカルチャーショックを受けていた、かもしれないのだ。

スーパーボールとカラー縄跳びと一緒に長らくつるされていただろう、\980のカメラ。

・・・・これって・・・・ほんとはおもちゃなんじゃーないだろか?


この後、私は上下ジャージに着替え、出勤した。

母さんが パジャマとジャージを荷物に入れておいてくれた。


・・・・、私が高校の時、着ていた体操服、上下のジャージだ、それを一緒に入れておいてくれた、それが 私の仕事服となっている、左胸辺りに刺繍の名前入りだが気にしない。



いつも 毎朝欠かすことなく竹ぼうきでアパートの前を掃除している大家さんに挨拶をかわし、上下緑のジャージにショルダーバッグを肩にかけ小学校へ向かった。


最近 学校へ向かう橋のところで個人タクシーが止まっているのを見かける。


今日も止まっていた。


こんな田舎でタクシーとは珍しい、誰なんだ? 村の人なのか? 村にはタクシーは見かけない。

私は 橋を渡り 横目でその個人タクシーの運転手を見た、車内でも帽子を被っている、それに 小ぶりで丸い金属フレームのメガネにトレーナーと言った感じだった。

帽子が印象に残った、映画で見かけるマフィアのボスがかぶるような 白の縁あり帽子だったから。



私はそのまま小学校の近くまで歩いてきたとき 「おはよー! 城島センセー!」と明るく元気な春名先生の声とともに私を電動自転車で抜いていった。

通り過ぎる瞬間、息を整え 吐くより吸う事に意識を集中する。


そして 深呼吸するのだ!


朝の空気はみずみずしく新鮮だ! 春名先生の匂いが嗅ぎたい・・。


なんて考えたりする変態ではあるが、今のところ誰にも気づかれていない。


教室に入り 一番最初に 春名先生の笑顔が目に入ったら、


"当たり!!"


校長の大きな顔が目に入ったら "はずれ。"


てな具合に 今日の自分勝手な占いをしてみる。


「おはよう、城島先生。」はっ!!!? この声はっ校長っ!! 後ろからだとっっ!? させるかぁぁっっ!!!オレは職員室の中を見たぁッッ!! あああっっ!!! ・・誰もいなーぁい…。


「・・・・・・・おはようございます、校長先生・・・。」 ・・・今日は・・・もういい…はずれで。


「・・・うん、・・・今日はどおしたの? 疲れてるようだけど。」


「ええ、・・そんなことないですよ、・・校長先生。」 


いやっ! 待てよ、朝 学校の前で春名先生を見ているじゃないかー! じゃあ、セーフ! セーフ!セーフ!


ちょっと気が楽になった 私は子供たちの待つ教室へと向かった。


廊下は朝の日差しがうっすら入っていた、・・今日は 曇り、なのかな。



授業とは 一年生から三年生で一緒にやる、まず 一年生の教科書から授業内容を進め、次に二年生、そして最後は三年生と同時進行に授業を進めていく。

これは 二年生、三年生にとってはおさらいとなるし小さな子をお姉さんお兄さんが面倒を見ると言う形になってくるので、これはこれで有効的な授業方法となる。

担任の先生にとっては 以外に楽だったりする。


私のクラスは年少組で一クラス、九人学級となる、子供の数が田舎ともなれば極端に減って年々減少傾向にあると言う。


教室は日当たりが良く、風通しもいい、九人の生徒には広すぎる教室だが見慣れてくれば こんなものと思えてくる。


三年生三人、二年生四人、一年生が二人となる。


どの子も可愛い、小さい子は鉛筆ひとつを持つにも覚えるところから始まる、あー・・オレもこんな頃があったんだなぁ・・としんみり思ってしまう。


この小さい子たちの中で 最初に印象に残ったのが 三年生の(松本百合子)で髪は短く切って男の子みたいにしている、私が初めてこの教室に来て生徒たちと一緒に座った時、となりに座っていた女の子が この松本百合子だ、「分からないことがあったら聞いてください」と言った、しっかり者タイプなのだ。


それに積極的に一年生の面倒を見る面倒見のいい子だ、 ほんと助かる。


そしてうるさいのは二年生男子で四人中三人が男子だ、この男子三人が授業の進行を遅らせる、・・まあ、オレも子供の頃はそうだったのだろうが、相手してるとだんだん腹が立ってくる。


前の席に 1年生2人に2年生の男子2人に女子一人、昭吉の弟で 2年生の小田平太が1年生の横に座り、平太の横に2年男子の佐藤、そして北元正美と言う大きな瞳で美人顔の女の子が座っている。


残りは後ろの席で、3年女子の窓側から今中に利倉、真ん中に座らされてるのが、2年の男子鈴木、次に女子で松本だ。


何か計算されて座らされているようだ。



そして今日の図工の時間のことだ、一二年生は油粘土で好きな形のコップを作ると言う課題にした。


三年生は 三人とも女の子なのでやりやすい、私がアパートの前に落ちてた木の葉を大家さんが掃除する前に十枚ほど集めてその中から好きなのを選んで画用紙に木の葉の絵を描きなさい、と言う課題にした。



その図工の時間、2年男子佐藤が一人、粘土を忘れたので 隣に座っていた唯一の二年生女子、北元正美に半分粘土を貸してやれ、と言ったら、うつむき返事をしなかった。


だから私は少し強い口調で「北元、聞こえないのか?」と言ったら「いやっ! 貸さない!」と言った。


・・え!? と思った。


「なんで貸してあげないんだ? なんで意地悪するんだ?」と 聞きただした。


それでも北元は「貸さないっ!」と言って 頑固に拒否した。


子供と言うのは素直にわがままだ、普通にイラッとくる。


私も少し腹が立ったので「お前はそんな子なのか? 分かった。」と言って 同じ男子に貸してやるように言った、その男子は 普通に貸していた。



そのことを 休み時間に春名先生に言ってみた、そしたら「そーですか、女の子ですもんね。」と言うだけだった、どう言う意味なんだろう、女の子ですもんね、て。



そして・・・


また、次の図工の時間の時のことだ、

粘土を忘れてきた男子は一人もいなかった、代わりに北元が粘土を忘れたのである。


当然 男子は「お前になんか貸さないよー!」と言って貸してもらえなかった、私は 自業自得だろうと思ったが 先生ゆえ、そこは男子に「誰か貸してやれっ!」と男子だからこそ強い口調で言った、そしたら しぶしぶだったみたいだが、昭吉の弟で平太が半分 粘土を貸してくれた。


だが、こともあろうに 北元はその申し出を断ったのだ、「いらないっ!」と強い口調で。


・・・何な訳!?


私はふてくされてる北元に 怒った、「貸してくれるって言ってるのにお前は断るのかっ!? この前はお前は貸さなかったろっ! だから誰も貸してくれないんだよっ!」と言ったら、・・・泣いてしまった。


机に伏してわんわん泣かせてしまった。


私は とてつもなく してはいけない事をしたのではないかと ・・・胸が締め付けられた。


私は いやらしくも、誰かに怒られそうで、校長にばれていないか 周りや廊下を見渡した、・・よし、誰もいない。


今の時代、保護者やPTAが怖いらしい、自分の身の安全を確認した。


ちょっとビビりながら「…お前が・・悪いんだぞ・・。」と言ってその日はそれで済ませてしまった。


何だかバツが悪く、このことは春名先生にも言わなかった。



夕方、職員室での最後の仕事を片付けてアパートへ帰ろうとした。


帰り際、春名先生が「城島先生・・・今日の図工の時間はどうでした?」と聞かれて ちょー焦った! 冷汗が出てきて、おなかの調子まで悪くなりそうだった。


その場は 笑って誤魔化して帰った。


・・・帰る途中、ずっと気が滅入っていた、春名先生も何かを気にしていたみたいだし・・・何より 小さな女の子を泣かせてしまったことが一番の気がかりだったんだと思う。


だって、あれは北元が悪いんだから、ちゃんと先生としての道徳を教えなきゃいけない事なんだから、仕方ない事・・でしょう。


最初に粘土を貸さなかったのは 北元なんだから 男子から貸さない、と意地悪されても仕方がないところだろう、自分が貸さなかったから その手前 平太が貸してくれると言っても素直に貸してもらえないのだろう。


・・だが 自分の粘土を 女子としては男子には貸したくないと思うのも・・また 当然なんだろう・・。


私の結論は 予備に粘土を一つ 用意しておけばいいと言う事だ。


・・・一番は 何も考えずに北元を 悪者にしてしまった事だ、

・・・・当然 困っている人を助けるのは 道徳であり、教師としては教育の一環だ、・・忘れ物をした子がいるなら 貸してあげる優しさがもっとも大切なことなんだ。


・・北元は どんな理由があれ、"貸さない"と言ったんだから怒るのは当然だ。


・・・・なんだ、・・何なんだっ! ・・・何かが違う気がする、・・何が違うんだ? ・・オレはいつも今感じで悩むんだ・・で結局わからないから 考えないようにする、・・・また・・考えないようにしていくんだ、・・・。


だけどなっ!! こんな事 いちいち気にしていたら身が持たない! 田舎ですらこうなんだ! 都会の三十人学級なら・・・オレは・・、・・辞めてるだろな。


考えただけでゾッとする、・・・・オレは・・ダメだぁ・・・・誰にも聞こえない心の言葉だから言えるけど・・・オレは "ヘタレ"だよ・・・、すぐに凹んじゃうし…。



その日の夜、私は ベランダを開け、いつものように錆びた格子窓に腰かけ めっきり涼しくなっていく秋の夜風に癒されようとしていた。


その時 同じように 二階の端の住人、校長のバカ息子が 同じように格子窓からでかい顔を突き出し 気持ちの悪い表情でニヤニヤしているのを見てしまった。


嫌なもの見たので部屋に入ろうとしたら 上島のバカと目が合ってしまった。


なにっ! 眼飛ばしてんだよっ!! 睨んでくるバカに 「なんだよっ!!」と言い返したら、人差し指を口元にあてて「しーっっ!!」と言ったのである。


はああっ!? ちょうどその時、ソフィーさんがお風呂に入っているようだった。


ははぁ・・、このバカは 入浴中のソフィーさんをまた、覗こうと・・・いやいや、二階からは覗けないよな、とすると ・・・・・ちょうど風呂の上が バカの部屋だから・・・立ち昇る湯気の香りを楽しんでいたのかぁぁッッ!!


さっきの気しょっく悪いっあの顔は匂いを嗅いでいたのかああっっ!?


このヤロおっっ!!


「おいっ!! おまえっまたソフィーさんのっ」と言った瞬間、ものすごい表情で部屋の中に引っ込んだ! そして来なくていいのに無駄に体重の重い足音がドンドンオレの部屋に近づいてくるではないかっ!!


しまったあっ!! 扉にバカ除けのカギをつけるのを忘れていたぁっっ!!!


オレはすぐ玄関へ行って扉のノブを握りしめたっ!!


と、同時にバカが扉を開けて入ろうとしているッッ!!


「開けろよぉっっ!! 何閉めてんだよぉっっ!! 開けろってぇっ!!」


「何しに来てんだよッッ!!お前はッッ!! オレは明日仕事なんだよっ!!お前みたいに親のすねかじってないから忙しいんだよぉっっ!!」


・・・・? 静かになった・・・。


「おまえ・・オレが親のすねかじってるって・・・・なんで知ってるんだ?」


「はああぁっ!?・・・・やっぱ、お前 すねかじってんのか? だいたい いつも一日中 部屋に籠ってんだろがっ!! それに オレは小学校の先生だぞ! お前が校長のバカ息子だってすぐにわかんだろがっ!」バカ息子はまずかったかな、


「・・・・、ああ・・オレはバカ息子だよ・・・、だけどなぁっ!・・・・・」


「なんだよっ!」


「!・・・・、!  だけどなあっっ!!! オレの家は土地持ってて金持ちなんだよぉっっ!!」


「・・・・・・・・・。」


「おいっ!! 聞いてんのかっコラあっ!」


・・・・、こいつ、だいじょうぶかなぁ・・・・、危ないやつじゃないのかなぁ・・・・。


こんな奴はちゃんと話さないと 逆恨みされるかもしれない、


と、私は 扉を開けた、


「あ・・あれ、!?」 いない? 


上島のやつ 自分の部屋の前にいる ・・・・うわっ! こっち見た、な、泣いてんのかぁ!? なあんでっっ!?


この夜もまた ・・・・・・いろいろあった、・・・・。


それにしても あの上島一家はどーなってんだよ? この場合は他人の家庭の事情に首は突っ込まないものだ。




私は 静かになった秋の夜長に虫の音を聞きながら 眠りについた。


嫌な夢を見た、


上島が ものすごい顔して 春名先生の横でわんわん泣いているのだ、そして春名先生は 今まで見たこともないような 顔で私を睨みつけているのだ、怖くなった、不安になった、どーしていいかわからなくなって、・・・私は 眠りから覚めた。


なんでこんな変な夢を見るんだろう・・・、ああ・・嫌な夢を見た・・・、こんな夢見たの初めてだ・・。


夢は心の状態を表しているとか・・・前にネットで読んだことがあるが、いままで こんなにリアルで怖い夢を見たのは初めてだ。


ああ・・・そうだ・・、浪人中 ブックオフで \100均一小説を買って読んだ小説に たしか "若かった日々"と言う タイトルだったと思う、外人さんが書いた小説で自伝小説、私は この小説を読んでノンフィクションが好きになったんだった。


その小説は 作者の生い立ちから 母親が亡くなる頃までの長い人生を描いたものだった。


美しく感動するものではないが、本物の一人の人生が 当たり前のように、そして素朴に自然に書かれていた。


とくに 印象に残ったのが 年老いた母親が亡くなるまでを リアルに描いていたことだった、何も知らない私には 衝撃的だった内容だ。


この小説でも 主人公の母親が 怖い夢をよく見て 自分の悲鳴で目が覚めると言う 話を書いていた。


心身共に不健康だった母親のはなし・・・、だが・・ノンフィクションだから 真実味があるし、現実的に解釈も出来る。


思うに・・体と心のバランスが崩れたときに 怖い夢って見るものじゃないだろうか?


実際、オレは・・・何か心の奥に不安定な何かがある・・それが分からない・・でも、とても大事なことだと焦る気持ちにもなる。


・・・ああ、・・・分からないよ・・オレは まだ 何にも知らないんだ・・、二十六にもなって・・何にも知らない・・・、女の子と手をつないでデートしたこともない・・、ああ・・・・・・情けない。


はっきり言って ・・・・暗い話は嫌いだ、人が死ぬのも嫌いだ、悲しい話は感動しても二度と読みたくないし、見たくない・・・、だけど、その本はもう二度と見ることはないだろうけど素晴らしいものだった。


・・・・・だから何? て事だけど・・・・


・・・・・・・・・・、なんだっけ?


あ・・・内容説明してたら 忘れてしまった。


まあいいや、・・・怖い夢を見たから・・・もう見たくないって事なんだけど・・・、


・・・・・・・・・・、あれ?


・・・・・・・・怖い夢ってどんな夢だっけ?


・・・そー言えばちょー怖い夢だったな・・・と思う。


・・・・・もしかして・・・・・、それは つまり・・・・、このアパート いわく付きじゃーないだろなぁ・・


・・・・・・・・・・・・、


・・よいしょっ・・と、オレは布団から起きて 部屋の電気をつけた。


・・・よいしょぉ・・と、オレは布団の中に戻り毛布をしっかり体に掛けた・・・、もう秋だから・・ね。




次の日、


職員室で春名先生の顔を見て 北元正美の事を思い出した。


春名先生は 北元の事は聞いてこなかっが、私としては北元の・・・あの意地悪な態度が気がかりだ。


教室に行くと 北元が男の子三人にいじめられ泣いていた。


「なんだ?・・・・なんで北元は泣いてるんだ?」と聞いても 誰も返事はしなかった。


少しして三年生の松本百合子が返事をした「・・先生、 黒田君たちが 北元さんをいじめて泣かしました・・・。」と言ってきた。


松本の隣の女子二人がヒソヒソ話を始めた。


「・・黒田、ほんとか? 北元をいじめたのはお前たちか?」と聞いても 下を向いたまま返事をしなかった。


黒田って 6年生にもたしか黒田っていたな・・兄弟か・・。


私は 少し注意しただけで一時間目の授業を始めた。



国語の時間だったので黒田を中心に教科書の内容文を立って読ませることにした。


そして社会の時間に 黒板に書いた日本地図を書き写させる授業をした。


その時、佐藤と言う黒田と同じ二年生男子が 隣に座っている北元に、「消しゴム貸てくれ」と頼んだ。


北元は一瞬ためらったが 無言のまま 自分の机の左端、佐藤の机の方へ消しゴムを置いた、女の子にしては可愛げのかけらもない普通の消しゴムを使っていた。


三年女子のはと言うと、筆箱や下敷き、鉛筆に至るまでキャラクターもので占められ、なんとカラフルなことか。


一年女子の女の子も 今年買ったばかりの新品でピンクづくめだった。


北元はと言うと、これが 飾りっ気のない小さな筆箱に いたって普通の三菱鉛筆に消しゴム、ノートはなんと大学ノートを使っている、下敷きだけは 何年か前に・・いや、今でもやってるのかな、アンパンマンの下敷きを使っていた。


私は気づかないふりして三年女子の授業に取り掛かっていた。


松本のやつが とても不満そうな顔で私を見ていた。


なんなんだ? 何が不満なんだ? 私は無視して授業を進めた。


「消しゴム返して。」と言う 北元の声が聞こえた。


佐藤は 借りた消しゴムを 北元の方へ投げた、「おい! 取れよ!」 北元はそれをうまくキャッチできず床へ落としてしまった。


それをすぐに拾う北元。


「おい、佐藤! おまえ人から借りたものを投げて返すな!」と私は注意した。


他の男子は笑って佐藤を茶化した。


私は黒板に振り返り 授業を進めようとした、そのとき、北元が また 「わあっ・・」と泣き出し、机に顔をうずめて泣き出したのだ。


今度はなんだ? と私は思った、これじゃあ予定通り授業が進まない、遅れる一方だ。


わたしは軽くため息をついて「・・どーした? 北元、・・何かあったのか? おい! 佐藤、お前また何か北元にしたのか?」


と聞いたら「してませーん。」と元気に答えた。


私は 北元を無視して、今日やる授業を進めることにした。


授業が遅れると言う事は、一日一日雪だるま式に遅れて 収集がつかなくなる、これでは 教師失格だ! 都会では学級崩壊と言う恐ろしい実状が存在すると言う、・・・それだけは嫌だ。


給食の時間が始まって二回目だ。


私は職員室で食べている。


その時 職員室の前を通りかかった春名先生が私に声をかけてきた。


「あれ、城島先生は 教室のみんなと一緒に食べないんですか?」と聞いてきた。


「ええ・・・なんだか 子供って相手してると疲れちゃって・・」


「ああ、わかります、・・私も初めはそうでした。」と言って戻って行った。


一年生は午前中で帰宅し、二年生からは昼の授業があるため給食の時間となる。

給食の時間が終わると休憩を挟んで十分間の掃除タイムがある、それが終わるとすぐに五時間目だ。


「起立ー、礼、着席。」と当番のかけ声。


・・・・3年松本のオレを見る目が冷たい・・気がする・・・。


・・・なんで?


相変わらず二年男子はうるさい! その反動でか、北元はとても内向的だ。


北元は 机の上で教科書の置く位置や鉛筆の置く位置、はたまた消しゴムの置く位置まで念入りに決めている。


だが 今日は あまりいじらないようだ、さっきの事を引きずってるんだろう、消しゴムは机の上に置いていない。


まあ、北元は 一人でも遊べるタイプなんだろう、ノートや教科書の配置をカスタマイズして ニコニコしているときもあるんだから。


どこに置いたってたいして変わらないだろーに。


性格はかなり神経質のように思う。


五時間目で今日は二年、三年も終わりだ、・・・・どっと疲れが出てくる。


体を動かしてるわけでもなく、なんで子ども相手だとこんなに疲れるんだ? ・・・・だけど嫌な疲れで無い事は確かだ。


職員室で今日の授業のまとめと片付けをし、年長組の春名先生の授業が終わるのを職員室を掃除しながら待っていた。 

職員会議と共同作業のためだ。


そうしているうちに六時間目も終わり 春名先生が女子生徒一人と楽しそうに戻ってきた。




第七話 「春名先生と生徒たち」



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