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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第三十四話 「赤い巻き物」

第三十四話 「赤い巻き物」



冬だ、コタツが欲しい。


ある日のこと、ペルシャ猫の猫娘が、「ねえ、あたしのためにコタツを買いなさいよ。」と、言うもんだから、「はあ〜あっ!? お前っ何言ってんのぉ〜っ!!」と、ブチ切れた。


「一日中、ストーブつけっぱなしだと空気が蒸せるのよねー、この部屋、狭いから息苦しいし〜、なんで押入れ使わないのよ〜、片付けられない人なの〜!? それじゃあ野生動物と同じじゃなぁ〜い! 人としてどーなのかしらぁ?」


「こ、ここはオレの部屋だぞっ! 嫌なら出てけばいいだろっ!」


猫娘はなぜか、不機嫌だった。


「そ~やって妻や子を(しいた)げて自分の存在価値を認めさせるのよね〜、そ~言う男ってサイテーよね〜、負けてもらえる相手には大声張り上げて、勝った気になるのよ!」


「なっ、妻や子ってなんだよっ! オ、オレがいつ虐げたんだよっ!」


「そんな男ども、あたしは何百人と見てきたわ、時代が変われば、あやめて(殺す)無かった事にする奴ばかり、簡単よね〜」


猫娘は黒いモヤを発し始めてるように見えた。


「悪いことして、平気な顔をして笑ってる・・どんな言い分があるのかしらね、」


またこいつ、化け猫に変身するのか!?


「そんな奴の顔には"怨"(うらみ)と書いてある・・」


「・・え!?」怨み? 顔に?


「ああ・・同じ事をしてやりたい・・・」


「あ・・・」やはり怖い! 周りの空気が一瞬にして変わったように感じた!


猫娘の顔が膨張し始めた!? 目の錯覚!? 歪んで見えている!?


「お、おまえっ!何なんだよ!みけつ様のペットなんじゃないのか!! それじゃッ妖怪だろおッ!!お前ッ、あいつらと同じじゃないかあッ!!」と必死に虚勢を張ってみせた!


と、同時にオレの頭の中で、こいつは誰かに酷い事されたのか!?とも、考えていた。


猫娘はすぐに、元の姿に戻っていた、


・・・と言うか、人型、美少女猫耳娘になっていた。


・・・半分裸、


この裸だが、・・オレにはかなりの刺激がある、とっても嬉しい。


さっきまでの恐怖!


もう忘れた。


エッチな事を考えるとストレスが消えるのか?


結婚するまでは貞操を守らなくてはいけないものだとは、思っている。


おっぱいが・・


素晴しぃ〜ィ


妖怪でも素晴らしいっ!(何度も言いますが、猫娘は妖怪ではありません。)


目が離せないっ!


だが見てしまうっ!


猫娘は美少女だっ! 乙女の瞳だ! ブルーの瞳だ! カラコンなのか!? 違うかな。


ガチャ


!?


ヒュぅ〜・・と冷たい風、部屋の戸が開いたのか!?


「お〜い! らー・・アアアッ!!!」 上島・・お前か。


上島がオレの部屋の玄関を開け、奇声を上げていた。


来なくていい時に、絶妙なタイミングでやってくる上島、


この前、化け猫がどーたら騒いでたのに、もー忘れたのか? 溜め込まないタイプなのか!? オタグッズは貯め込むくせに 中学生みたいにモジモジしながら、オレあの子好きなんだよな〜的な、気持ちの悪い態度で話しかけて来た。 ストレスは溜め込まないのか!?


「猫耳娘がいるぅーッ!猫耳だあああッ!本物がいるぅぅーッ!」上島は怒涛の如く、部屋に上がり込んできた。


「入って来んじゃねーっよッ!お前の豚小屋は向こーだろッ!!」


「あ、あ、あ、あなたのおなまえなんてーの?」無視すんじゃねーよ、何言ってんだよこいつ、


「なに、座り込んでんだよっ!これやるから帰れっ!」と言って、猫娘の正面に正座する上島に賞味期限切れのカップラーメンを手渡した。


しっかり受け取るバカの上島。


猫娘も美少女のまま、正座して、すっげーカワイイ笑顔を上島に向けていた。


なんだよっその笑顔! オレにはいっつもブスっとしてるくせにっ! やれば出来るじゃん!

そんなカップラーメン上島じゃなくて、オレに見せろよっ!その笑顔。


「あたし? あたしは玉江よ、よろしくね。」


よろしくね〜!? 近所付き合いでもする気かぁっ!?


「た、玉江チャンですか! そーですかっ! 玉江ちゃんですかっ! ア、アニメでいつもお見かけしています!」


猫違いだよ! 何と勘違いしてんだよ!?


「ニャ〜、」


わっ!猫娘の奴、メイドカフェで猫マネするメイドさんと同じポーズをとった! どこで憶えたんだ!?


上島が危ないやつだ!興奮しすぎだ!ハァハァし過ぎだ!


「もーいっかいお願いします。」


「帰れよッ!!なにリクエストしてんだよっ!カップラーメン持って早く帰れっ!!」


「ニャ〜! にゃー!」と、リクエストに、ポーズを添えて応える猫娘。


「カ、カワイイ!」


オレのプライベートはいつも台無しだ! 上島に始まって、心を読むみけつ様、そして猫娘・・、そしてまた上島!


「おお〜ッ!!! 本物だあ〜ッ!! 俺はっ、初めて本物の猫耳娘、玉江ちゃんを見たんだあ〜ッッ!!」


ほんもの!? 普通は一生かかっても見れないぞ。


「・・泣くなよっ、何で泣くんだよっ! とっとと帰れっ、みっともないなあ〜、とっとと帰れっ!」


「お前にッ何が分かるって言うんだああーッッ!!伝説の猫耳娘、玉江ちゃんだぞっ!!それが目の前にいるんだぞッ!!」


「唾の他、色んな体液飛ばすんじゃねーよ! それに伝説って何だよ? 猫違いだよ!」


「はああ〜っ!?伝説は伝説に決まってんじゃねーかっ!! 猫耳娘に魔法少女と言やあ、もはや伝説なんだよッ!!知らねーのかっ、バァーカっ!」


「バカはてめーだよ。」


「何だとおおおッ!! お前にはこの重大かつ、大発見が分かんねーのかあッッ!!」


「もういいからッ、カップラーメン持って帰れよッッ!!」


「コタツが欲しいニャ・・」


!?


「え!?なに!? コタツ?」


「このままじゃ凍えて死にそーニャ。」と言って、猫娘は両手を組み寒そうにした。


胸の谷間が強調され、目が釘付けになる上島。

「そ・・そーだねー・・ そんな薄着じゃ寒いよねー・・」


舐め回すようにスケベ面で見る上島、


「寒いんなら服着りゃいいだろ。」


「なっ!お前なんて事をッ!」


「服は嫌いニャ!このままがいいニャ!」


「そっ、そーだよッ! 服はたまに着るもんで、毎日着るもんじゃねーんだよッ!」


「どこの原住民だよ、服は毎日着るもんだよっ! 裸で表、歩くのかっ!?」


「知らねーのかよッ! お気に入りが一番いいんだよっ!! もう、お前、黙ってろよッ!!」


「はあっ!? なんでお前が仕切ってんだよッ!!」


「コタツが欲しいニャ。」


「え? コタツ? ・・そーだよねー、コタツはいるよねー、」


「・・部屋が狭くなるだろ!」


「玉江はコタツがないと死んじゃうニャ。」


「しッ、死ぬだってえーッッ!!」表情豊かだよな、イライラするよ。


「そうだニャ、早くしないと死んでしまうニャ。」


「なッなッなんだってーッッ!!はッ早くしなくちゃッ!!」信じるなよ、このバカ。


「お前、なんでアニメ言葉になってんだよ?」


「あ、新しいのプレゼントするよっ! 明日、町までま行って買って来るからさ!」


「今すぐ欲しいニャ。」


「ワガママ言ってんじゃねーよ!」睨む猫娘、


「今すぐ!? 今すぐはぁ・・、」


「寒いニャ寒いニャ、もうじき、死んでしまうかもしれないニャ・・」


「ちょっ、ちょっと待てッ! 俺の家に古いが、いいのがある・・・」


「じゃあそれ持って来いよ。」


「お前が言うんじゃねーよッ!!」


「それがいいニャ、古くていいのがいいニャ、今すぐその、古くていいのがいいニャ!」


「だけどよぉ・・、そのコタツ、実家にあるんだよなあ〜・・、」


「じゃあ、すぐ持って来いよ。」


「だからッ、何でテメーが言うんだよぉッ!!」


「お前以外、誰がいんだよ!?」


「なっ・・、あのなあっ、俺はもう何年も帰ってねーんだよッ!」


「なら、すぐ帰れよ。」


「かっ、簡単に言うんじゃねーッ、・・てめぇ、他人事だと思って〜・・」


「早く帰って、コタツ持って来いよ。」


「お前にコタツをやるんじゃねーんだよッ!」


「早くコタツを持ってくるニャ、凍えて死ぬかもしれないニャ」


「おまえ、何でアニメ言葉?」


「需要と供給ニャ。」


経済新聞でも見てんのか!?


「そうだ、城島あ、お前が行って取ってくりゃいいじゃん!」と言う上島


「それは世間で泥棒って言うんだよ。」


「城島〜、あんたが泥棒して取ってくるニャ。」


「はあっ!?ふざけんなよっ! 出来るわけないだろっ!」


「出来るニャ!」


「出来ねーよっ!」



上島の実家はバス通りの終点にある古い日本家屋だ。商店街と公民館の東側、奥になる。


「ほんとに貰っていいのか? 校長先生が使ってんじゃないのか?」雪はやんでいた。


上島と二人で、校長のいる家、上島の実家へ向かっていた。


「あの親父は練炭コタツが好きだから、電気コタツは蔵に仕舞ってあるはずだ。」と言う上島は暑がりの寒がりだから、作業用防寒着を頭からすっぽりと被るように着込んでいた。


丸々と太ったでかい幼児だ。


そんなに着込んでいてはかえって動くのに不便ではなかろ〜か?疲れるだろう。


「おい、ちょっと休んで行こうぜ! ゼェ〜ゼェ〜ゼェ〜・・」


雪国育ちのくせに、数百メーター歩いただけでバテている。


「何で玉村には自動販売機が置いてねーんだよ! 脱水症状になるだろっ!」


「雪食えよ。いっぱい落ちてんじゃん。」


「雪なんかっ食えっかッ! 俺はコーラ派なんだよッ!」


「オタクはみんなコーラが好きだよな。」


「コーラはなぁっ!ジュースのお」ウザいので省きます。



上島の家に到着。


玄関の右角に開けっ放しの蔵があって、中にはトラクターや農作業に使う資材などが置かれていた。


上島はコソコソと蔵の中に入って行った。


オレは目の前のピンポンを押した。


ピンポ〜ン・・


「ごめんくださ〜い! 校長先生いますかあ。」


「アアアッ!! お前ッ何押してんだよぉッッ!!クソ親父が出てくんだろッ!!」


「それでいいだろ。」


「良くねーよッ!! 何のためにコッソリ来たか分かんねーだろッ!!」


「いつコッソリしてたんだ!?」


「今だよッ!!」


「はあ〜い! 今行きまぁ〜す!」


「おふくろだっ! オレは居ないっていえよっ!」


「あら! あなたは城島先生じゃありませんか?」


「はい、はじめまして。」


上島のお母さんはふっくらした体型に、至って普通サイズの頭蓋骨だった。


「さ! どうぞ、上がって下さい、うちの人、中にいますから。」


「はい、有難うございます、ですが今日は別の用事で伺ったもので、」


「え!?別の用事?」


「はい。 新平くんもここに来てます。」


蔵の入り口で慌てまくる新平くん。


「な、な、何で言うんだよっ!」


上島のお母さんはこちらから蔵をのぞき込んだ。


「新ちゃん! 帰って来たのね! 寒いでしょ! お腹すいてない? 中、暖かいから入りなさい。」


「・・お、俺は、」言葉を詰まらせる。


「城島先生も一緒に上がってください。」


「はい、お邪魔します。」



嫌がる上島を引きずって、畳の部屋に通された。


だが、校長先生はいなかった、代わりに初めてお目にかかるお爺さんがコタツに腰掛けていた。


「こんにちわ。」と挨拶をかわすオレ。


「・・おまえ、誰に挨拶してんだよ?」と、上島。


お爺さんはオレを見ても何も言わなかった。


上島はいじけながらにコタツに座った。


「お前のお祖父ちゃんか?」と、上島に聞いた。


「はあっ!? 爺さん!? 爺さんなら御玉神社だろ。」


「じゃあ、この方は誰?」


「この方って・・、誰だよ?」


「ほら、そちらの方だよ。」


「・・・・、そちらの方ってぇ、お前、何か見えてんのか!?」



まさか!? このお爺さんは"翁"(おきな)!?


「お前さあ、いくらなんでも俺んちで妄想すんのやめろよな! いま、この部屋には俺とお前しか居ねーんだよっ!」


細身の身体に高そうな着物を着ている、 いい風格のある白髪に長い髭、見るからに高貴なお方と見た。


そこへ上島のお母さんが隣の台所から、丼ぶりを二つ、盆にのせでやって来た。


「城島先生、今こんなものしか出せないけど、召し上がって下さいな。」と出されたのは親子丼だった。


上島はがっついた。


「ちょっと待ってね、お味噌汁も持ってくるから。」


その間、オレはこの翁に尋ねてみた。


「あなたは、この屋敷の神様ですか?」首を横に振った。


・・・・、何も喋らない。


「おいっ!城島ッ! やめろって言ってんだろっ! 何が言いてーんだよっ!テメーはっ! 言いたい事があんならハッキリ言やあいいだろッ!」唾や米を飛ばしまくる上島、


「親子丼、美味そうだな。」


「はっ!? ・・じゃっ、食えよっ!遠慮すんなよっ!」


「新ちゃん! ケンカはだめよ、お母さんいつも言ってるでしょ、」


「うるっせーなーっ! かんけーねーだろっ!!」


・・なんだろ、離れて暮らすと分かるのかな・・、上島を殴りたい。


このお爺さんの事は黙っておこう。


「あ、あの、今日は校長先生は・・?」


「それが・・ね、さっき小学校で飼ってる魚に餌をあげてくるって・・、」困ったように応える上島の母さん、


「あ、そうなんですか。」


「なあ、母ちゃん、むかし家にあった電気コタツ、あったろ、あれ使わねーんならもらっていくぜ。」


「え? コタツ? たぶん蔵の二階に仕舞ってあると思うけど。」


「城島にやるんだよ! 猫耳の玉江ちゃんが凍えて死ぬかもしれないからな。」


どこまで本気にしてんだよ。


「え!? ・・たまえ、ちゃん!?」


「あ! ね、猫です! 猫なんです! ペルシャ猫!」


「ああ、猫ぉ。」


上島のお母さんが作ってくれた親子丼はとっても美味かった。


「おい、城島ぁ、蔵にこたつ取りに行くぞ!」


「ああ。」


そして蔵に行こうとコタツから立ち上がったその時、床の間を背に座っていたお爺さんが、オレに何やら渡してきた。


「何ですか? これ、」


「・・・城島、お前、マジいい加減にしろよ!」


これは・・・巻物!? 時代劇で見た事ある。


このお爺さんは終始喋らなかったが、最後に赤い色の巻物を手渡してきた。


「あの・・、くれるんですか?」


お爺さんは笑顔でうなずいた。


「城島先生・・? どうかしたんですか?」


「あ、はい、・・お爺さんに・・」言っていいものか迷った。


「そこに座ってるお爺さんに、これですが・・、巻物を頂きました。」と、それを見せた。


上島もお母さんも、戸惑っていた。


「・・巻き物なんて何処あんだよっ!」


「ここだって、」オレは手に持った巻き物を見せた。


「・・・だからどこにあんだよ? 俺の母ちゃんまで騙すような事、すんじゃねーよっ!」


「新ちゃん! ダメよ、大きな声出して。」


見えてない!? だけどちゃんとここにある、手に伝わる布の感触、ちゃんとここにある! 間違いなくある!


「城島先生にはそのお爺さんが見えるですか?」


正直に言う事に決めた!「はい、そこに座っているのが、ボクには見えます。」


「え!? だ、誰なんですか?」と不安がるお母さん、


「それが、応えてはくれるんですか・・、喋ってはくれなくて、」


「・・おい、城島! もしからかってんならぜってー許さねーからなっ!」


「ああ、嘘じゃない、長く白い髭を生やしたお爺さんで、・・立派な着物を着てる。」


「えー、誰かしら!? ひいお祖父ちゃん!? ご先祖様!?」


お爺さんは「首を横に振ってます、違うみたいです。」


「じゃあ、誰なのかしらね?」


「おいっ!幽霊じゃねーだろなあっ! 祟ったりしないだろなあっ!」


「・・おい、上島、お前の方見てるぞ。」


「えっ!? ・・ま、マジ!? なんで!?」


「怒ったんじゃないのか? 祟っりなんて言うから、謝ったほうがよくないか?」


「え!?そ、そうだな・・、あの、その、えっと・・あの、えー・・あのですねー、そのー・・」


「さっさと謝れよっ!」


「わっ、分かってるよっ!ちょっ、ちょっと待てよっ、」


お爺さんは最後まで喋らず、その場所にずっと座っていた。


上島のお母さんには、「この方は神様なのかもしれません。だから心配いらないと思います、むしろ縁起がいいかもしれません!」と言っておいた。


信じるだろうか。



二人には見えなかった巻き物を持ち、コタツの仕舞ってある蔵へと行き、ホコリだらけの場所から引っ張り出して、持って帰ることにした。


「おい、上島!おまえ、そっち持てよ。」


「・・・なんでたよ?」


「は!? 何でだよじゃねーよッ!さっさと持てよッ!重てーだろがよッ!」


半泣きになりながらも上島を手伝わせたが、すぐバテてコタツを落っことしたので、「バカヤローッ! 壊れんだろかよッ!ちゃんと持てよッ!」と一喝した。


またしても上島は使いものにならなかった。


仕方がないのでなんとかオレ一人で持って帰ることにした。


「あー、猫娘連れてくるんだったなあ〜! あいつの方がお前より力があんじゃねーの? ・・前が見えねーよー!」


「遅せーぞ!城島あ〜! 先行くぞっ!」と、前を大威張りで歩く上島、


殴ってやろーかッ!


雪道を、オレより先に歩く上島だが、アパートにつく頃にはオレのはるか後方を年寄りの如く歩いていた。


「お〜い!猫娘ー! これ、持って上げるの手伝ってくれー!」


・・・・・


・・返事がない、分かってはいたけど・・


上島が異常なほど息を切らして生還した。「ゼェ〜・・ゼェ〜・・ゼェ〜・・」


こいつ、大丈夫なのか!?


「た、玉江ちゃあ〜ん! 俺の部屋にコタツ置くんだけど、温ったまりにおいでよ〜。」


と、上島が助けを呼ぶように叫んだ。


誰の部屋に!?


オレの部屋の戸が開き、嫌そうな顔をして猫娘が出てきた。


寒がりのくせに服を着ない奴だな。持ってないのか?


猫の手も借りたい、とは、ある意味、役には立たないとも言える。


猫娘は手伝わなかった。


上島から貰ったはずのコタツをようやく二階に上げる事が出来た。


「おい、俺の部屋に持ってきてくれ!」と言う大バカ野郎の上島。


「はアッ!!?何でテメーの部屋なんだよおッッ!!」オレはブチ切れた。


「じょ、冗談だって・・、本気にすんじゃねーよぉ〜・・も〜、あ、そうだ!おまえ、コタツ布団あるのか?」


「あ!ない!」


「ちょっとあんた! コタツ布団が無けりゃ意味ないじゃない! どーにかしなさよっ!」


コタツ布団はない! なので「今度、町行った時に買ってくるから。」と言ったら「今がいいッ!今じゃなきゃヤダっ!」と、「ガキみたいにワガママ言うんじゃねーよ!」と言い返した。


そしたら逆ギレして、「今すぐ町まで行って買って来なさいよっ! じゃないと呪い殺すわよッ!!」と恐ろしい事を、また言われた。


その時、「あの〜・・、城島先生、」


「あ! ソファーさん!」玄関に金髪美女が現れた!その横にでかい幼児もいる。


なんと! ソファーさんはコタツ派だった。


「予備のコタツ布団ありますから使ってください。」と言ってくれたのだ!


猫娘はソフィーさんをオレの部屋に招待した。


そして熱いお茶を出すよう命じられたので、そのようにした。


「よかったらこのミカンもどーぞ、とっても甘いですよ!」とミカンまでソフィーさんから頂いてしまった。


ソフィーさんはいつのまにやら猫娘とお知り合いになっていた。


・・・この姿を見ておかしい、と思わないのだろうか?


もう、どーでもいいのだろうか?


コタツは温かそうだった、遠慮なくミカンをいただく猫娘、と上島。


・・なんでお前までいるんだよ。


オレもコタツに入らせていただく事にした。


猫娘は口いっぱいミカンを頬張りながら、コタツの上のミカンを、獲物を見るように見つめていた、と思ったら、


「あ! なんだ、こんなとこにさっきの巻き物が置いてあるじゃないか!」と、オレが言うと、


猫娘は「アっ!?」と言って大きな口を開けて驚いた。


と、同時に口からみかんの汁が溢れ出た!


「あんた!これ、見えるの!?」と、猫娘が言うもんだから、「ああ・・、見えるぞ、巻き物だろ。」と返事した。


「おい! 巻き物って何だよ!? さっきもお前、巻き物がどーたら言ってたよなぁ・・。」


「ここにあるだろ! 巻き物が、」と、オレはコタツの上の巻き物を指差した。


「・・・ねーよ! どこにあんだよっ? 見えねーよっ!」


猫娘は口の中のミカンをゴックンと飲み込むと、「これは普通の人には見えないのよ、だから新ぺーには見えないのよ! ソフィーさんにだって見えないわ!」と、猫が顔を洗う仕草で口の周りのミカン汁を舐めとった。


舐める仕草に上島は軽く興奮しているようだ。


「そ、そうなんですか!? ここにその・・巻き物って言われるものがあるんですか!?」とソフィーさん。


「あるわよ! 赤い巻き物が。」


「へぇ〜・・、あるんですかぁ・・」とマジマジとあるであろう場所を見つめていた。


「その赤い巻き物って何ですか? 何か書いてあるんですか?」


「あ! そうだよ、何なんだ? これ。」


「付喪神よ、聞いた事あるでしょ、古い物とか大事にされた物とかには、稀に付喪神が宿るのよ、・・たぶん、このコタツね!」


と教えてくれた。


・・・コタツ。


なぜ宿るかは、ハッキリしたところはわからないが、猫娘が言うところ、「幸せだったのね、かけがえのない大切な大切な思い出がこのコタツには在るのよ。」


と、言ってもコタツその物が思い出を作ったのではなく、その持ち主、この場合、上島家に大切な思い出、かけがえのない記憶がこのコタツに刻まれていて、そこに"霊的"な、何かが宿り後々に神格化された物、と言う事だ。


「かけがえのない記憶ですか・・、」とソフィーさん。


そういった物は、日本に限らず、世界中であり得る話だ。


だが、


え〜!?上島ァ〜!? 神様が宿る思い出ぇ〜!? うっそぉ〜! うえしまあ〜!? しんじらんなぁ〜い!


「おい、上島ぁ、このコタツ・・誰から貰ったんだよ?」と、普通に思った。


「はアッ!? どー言う意味だぁッ!? このコタツは昔しっからッ、俺んちにあんだよっ!!」怒る上島。


「あんた、良い家に生まれてきたのね。」と気の利いた事を言う猫娘。


「それに、稀なのよ、どんなに素晴らしい記憶がその物にあっても、付喪神が宿るかはほんとに稀な事なの。」


素晴らしい記憶、大切な思い出、それらの条件の中で、「永遠に忘れたくない思い出。」を持っている事が必要らしい。


その人にとって、共に過ごした思い出は、永遠 と言う事、


つまり、かけがえのない大切な想いが、その時代にあった、と言う事なのだ。


大切な想い、それは愛情だろう、この場合は家族愛なのだろう。


上島にそんな美しい思い出なんかあるのか!? ・・・こんな奴にぃーっ!?


そして、一番驚いたのは、


「その大切な思い出、愛情を持つ者が側に居るとき、この巻き物が、あたしやあんた、それに神々にだけ、見えるのよ。」


「・・・つまり、」


「ええ、そうよ。」


「・・・上島自身が、・・なのか!?」


「そお言う事になるわね。」


こいつが!? 嘘だろ!! 「だって上島だぞっ! ・・そんな奴に見えねーだろ!」


「フ・・、城島ぁ、お前はまだ人間が出来てねーんだよ、・・だから分からねーんだ。」


「な、何がだよ!?」


「ハハ・・もしかすると、お前には一生かかったって、分からねーかもしれねーなぁ・・、フフ・・」


・・何だよこの敗北感は!?


「そ・・そんな事・・、」


「このコタツ、凄いことなのよね! 付喪神が宿っているのよね!」と、日本つうのソフィーさん。


「ああ、そお言う事だな。」と上島、勝者のように言った。


「私達に見えないけど、城島先生や猫ミミちゃんには見えるのよね! 巻き物が!」


「うん、確かにあるよ、赤い色した巻き物が。」


「・・はい、確かに赤い色した巻き物がここにあります。」


「そんな凄いコタツがどーして城島先生のお部屋にあるんですか!?」


「え? ・・ああ、上島のやつが、要らないから猫娘にやるって・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・?」


「え!? 新ちゃん、あげたの!?・・・・」


あれ!?


「かけがえのない宝物を・・・、あげちゃったの? ・・新ちゃん。」


「・・・えっ!?」


「貰ったニャ〜! 新ぺー優しいニャ〜!」


使い分けるアニマル言葉。


「あ!! いやっ! そっ、それはだなっ!! 玉江ちゃんが凍えて死ぬかもしれないニャ、・・て言うもんだからさぁ・・・そ、その、」


「おいっ上島ぁっ!誰からもらったんだよおッ!」


「だ、だからッ、このコタツは昔っから俺んちにっ・・」


「とぼけんじゃねーッ!!ネタは上がってんだよおッ!!



上島家に伝わる、コタツ、


このコタツに付喪神が宿っているのは間違いないらしい。


そして、上島本人に反応してか、赤い巻き物はオレや猫娘に見えているのは確かだった。


"付喪神の姿"が巻き物なのか、と言う事だが、これは御玉神社の神様が、付喪神としての"神通"を書き記した書物、巻き物として模したもので、この玉村に至っては、伝記などに登場する付喪神、人の形や獣の形としたものではないらしい。


では、御玉神社の神様とは?


上島の爺さんではない。


玉村の伝承では、平安時代頃の石碑に平清盛と書かれていた事から、その石碑を祀るために御玉神社が建てられたと言う事だから、御神体は平清盛と言う事になる。


「じゃあ、平清盛さんが巻き物を発行してるのか?」


「発行!? ・・あんたバカにしてるの!?」


なら、上島の実家で見た、・・オレにしか見えない、高そうな着物を着たお爺さんが平清盛なのか!?

平清盛が上島の家に居たのか!? そーなのか!?


「・・さっき上島の家で黄色い派手な着物を着たお爺さんからこの巻き物を手渡されたんだよ、・・猫娘、おまえそのお爺さんが誰か知らないか?・・まさか、そのお爺さんが平清盛だったりしねーだろな!?」


「黄色い派手なぁ? ・・・知らない、でも 屋敷神か、地主神か、でもほんとに・・・」 


「・・・なんだよ?」


「ぜってーそーだよッ!!多分その爺さん、俺んちのご先祖様だよっ!オレの先祖は平家だからなっ!!・・たぶん!」


「えっ!? マジなのかぁ!? 嘘つくんじゃねーぞ!お前、貴族って面には見えねーんだけど!」


「新ちゃん! ほんとなの?・・平家の子孫なの!?」と聞くソフィーさん。


「・・・・だったらいいな〜て思っただけぇ、・・へへへ。」


「・・・上島よ、お前はいつでも何処でもフザケてるよな。」


「だけどさ、・・もしかすると、だけど・・、この巻き物を手渡されたんでしょ? ・・なら、ほんとに新ペーの家に居たそのお爺さんて・・」


「ないない! 上島だよ! 上島の家に居たんだぞ! こいつの先祖としたってあんな風格のあるお爺さん・・・」


とは言ったものの、


・・巻き物を手渡されたのは事実だし、猫娘も御玉神社の神様を未だ見た事がないと言ってるから、"平清盛"かどうかを判断する事も出来ない。


仮に出来たとして、ほんものなんて見たことがないから・・、やはりこれも自己申告で、自己紹介して頂くしか、調べようがない。


みけつ様やタキちゃんみたいに、「あなたは神様ですか?」と聞いたら、「うん。」と答えるみたいに。




第三十四話 「赤い巻き物」


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