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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第三十三話 「みけつ様の理(ことわり)」

第三十三話 「みけつ様の(ことわり)




電話はない。


なので次の日の朝、学校で春名先生に、事情を説明することにした。


つまり、みけつ様は今中の家に何しに行ったかと言う事だが、


死神をお祓いに行った、とは言わず、御見舞に行きました、と言っておいた。


「大丈夫なんですね、・・良かったあ。私、みけつ様が城島先生のお部屋にお泊りする、と言ってましたので、てっきり城島先生もその予定だと思ってました。」


みけつ様は春名先生にはちゃんとお出かけする事を言うのに、何故、オレの時には勝手に来て勝手に帰って行くのだ?


「それと、みけつ様は朝も眠り続けていますが、猫娘のタマが看病してますんで心配いりませんよ。」と言っておいた。


「え? ネコ娘!? ・・どなたなんですか?」


あ! なんて説明しよう、


「えっとですね、そのぉ〜・・」


「はい、」


「え〜っとですね、みけつ様の知り合いみたいなもので・・、なんて言いましょうか、猫耳の付いた女の子がいましてぇ、」


「・・猫耳が付いた女の子? ・・城島先生のお部屋にいるんですか?」


しまったあっ! 女の子なんて言ったから誤解されてしまうぅ〜!


「そうですか、みけつ様のお知り合いの方だったら安心ですね。」と笑顔で返された。


・・まぁ、そうですよね。


「・・はい。」


実際のところ、みけつ様や田霧姫と言う神様や、黄昏さん、釜ボッコと信じているだろうから、猫娘と言う妖怪です、(玉江は妖怪ではありません。)て、正直に思ったままを説明してもいいのかもしれない。



この後は通常通りに授業も進んだが、みけつ様が休みだったのでみんなが心配してお見舞いに行こうとしていた。


面倒なので「また今度にしなさい。」と言っておいた。



放課後、春名先生はマイ自転車を押しながら、一緒にオレの部屋に向かった。


二階に上がると、上島が防寒着を着込んで自分の部屋の前で、こっちを見ていた。


「あら! 新ちゃん、そんなとこでなにしてるの?」と春名先生。


「春ぅ〜っ! おまえら付き合ってんのかぁっ!?」


相変わらず言葉を選ばないバカ。


「違うわよ! みけつ様が城島先生のお部屋にいるの!」


「みけつ様あ!? 城島の部屋にいる化け猫の事かぁっ!? 気を付けろッ!その部屋には化け猫がいるぞッ!! 気を付けろッ!! 殺されるぞッ!!」


・・・それが言いたいがために、そこで立ってたのか?


オレは鍵のかかってない玄関を開け、「さ、春名先生、どうぞ。」と、案内した。


「・・化け猫って・・、言ってますよ。」と、少し怖がる春名先生。


あいつ、また勝手にオレの部屋に入ったって事だな。


「無視していいですよ、あいつ、中二病ですから、あ、じゃあぼくが先に入りますよ。」と言って入る事にした。


「オイッ!!聞こえてるぞッ!! オレは中二病じゃねーからなあッ!! 知らねーぞッ!! 取って食われるぞッ!! 化け猫だぞッ!! 行灯舐めるやつだぞッ!! ああーッッ!!もーッッ知らねえからなあッッ!!」


中二病です。



部屋に入ると、猫娘と・・


驚いた事に幸詠さんがオレの部屋に居るではないかっ!


春名先生はオレの布団で眠るみけつ様を見ると、側に駆け寄った。


オレも遅れてみけつ様の足元に、正座して座った。


・・・女の子がいっぱい居る。


オレの人生、こんな光景、一度たりとも無かった事だ。


ああ、感動だあ! と、オレは感動に浸っている間、


それにしてもだ、人間の姿になってる猫娘、青みがかった銀髪に青い目、その上、半裸・・、同じく銀髪の幸詠さん、なのに春名先生は、至って普通・・、人を見た目で判断しないのだろうか? ・・分からない。


「大丈夫よ、眠ってるだけだから。」と幸詠さんは言った。


「・・なぜ、みけつ様は倒れたんですか? 城島先生の話では突然の事、だったと聞きました。」


「倒れた理由?」


「はい、」


「・・それは教えられないわ。」と幸詠さんは言った。


幸詠さんともお知り合いなのか!?


「心配しなくても、みけつ様は大丈夫よ。 」


「でも、・・・・」


「それにね、神様には、"神様の事情"があるの、」と、笑顔で答えていた。


「人は知ってはイケない事なの、あなたのためなのよ。」と更に優しく話していた。


人は? 知ってはいけない事!? お祓いに行った事? それとも死神が憑いてるって事? どっからどこまでがいけない事!? オレは全部知ってるんだけど・・。


春名先生は終始うつむき、黙って聞いていた。


「みけつ様、神様には見えないでしょうけど、一応、本物の神様なのよ。フフフ。」


やっぱり本物の神様なのか!?今更だけど。


それにコン太が言ってたけど・・、幸詠さんも神様だよな、何だかよく分からないが、幸詠さんが言った言葉は現実になる・・・ような、そうじゃないような、


だが、幸詠さんはいつ見ても笑顔だが、怖いと言うイメージがオレにはある。


その幸詠さんが、


・・なぜかオレを見て、・・ニコっと笑顔を見せてくれた、


・・なに? え!? まさか! オレの事、好きって事なの!?


幸詠さんは「みけつ様は大丈夫よ、いつか目を覚ますわ、フフフフ。」と、言った。


オレに言ったのかな? 慰めてくれたの? オレ、別に心配してないんだけど。


それに、いつか目を覚ますって・・、えらくアバウトなんだけど。


「え!? いつか?・・幸詠さん、それは・・」春名先生の話が終わる前に、幸詠さんが、


「困った事ね、目を覚まさないかも〜、」と、言った。


「そんな・・」


「そうだわ!あれよ、眠り姫には王子様の目覚めのキスって言うでしょ!」


思いつきで喋ってんじゃないの? この人、


「・・目覚めのキス、ですかぁ・・?」


なんか、この前もピノキオとか言ってたよな〜、お伽話が好きなのかぁ? こんな時によくそんな冗談言えるよなあ〜、幸詠さんはぁ。


「出番よ! 城島さん!」


「・・え?」


「この中で王子様と言えば、城島さんしかいないわ!」


「え!? ・・オレ?」


「そうよ! 城島さんがキスしたら、みけつ様、起きるわよ!」


「何言ってるんですかあ〜、こんな時に幸詠さん、・・・」


あれ?


・・・なんだか、みけつ様が起きる気がしてきた! 何でだ!?


目覚める! 間違いないぞ! 目覚めのキスだ! これしかない!


「ガンバ! 城島さん!」


「お!おうっ!」オレは幸詠さんの応援に応える気、満々になった!


オレは王子様っぽく、「任せてください。」と、カッコつけて言っていた!


すると「え!?」と、驚く顔を見せる春名先生、なぜ驚く? 王子様に見えて仕方がないのか? それは仕方がない事ですよ、ハッハッハッ。


「ちょっと失礼、」と春名先生の後ろから、ハイハイでみけつ様の右横に正座した。


「ちよっ、ちょっとあんたっ! な、何しようとしてるの・・・」猫娘、


「フ・・ 何、だって? そんな事、決まっているだろう。」


猫娘の顔がおかしな事になっている、お前も上島みたいに顔に出るタイプなんだな。


と、自分の事を棚に上げて、そう言った。


オレはそっと・・


みけつ様の顔に近づいた。


いま、目覚めさせてあげるよ、みけつ姫。


そしてみけつ姫の小さな唇に口づけを・・と、


思った一番大事なこの瞬間に、


「あ! みけつ様、起きたわ!」と、言う幸詠さん。


・・何だってぇ?


みけつ様の目が・・・


開いた?


・・・・あれ!?


オレ、なんでこんな事してたの?


あれ!? オレは幼女に何しようとしてたの!? あれ!?


「・・じょ〜しまー、なんでおまんの顔がそんな近くやあるんえ?」と、みけつ様。


「みけつ様あー!」と、春名先生のその声にオレは驚いた! ビックリした!


「良かったあー!」と正座するオレの目の前で、みけつ様をギュっと抱きしめた。


・・・何だろうか、


猫娘がすっげー睨んでる、


幸詠さんは「良かったわね〜。」と終始平和そうだった。


・・・何だろうか、とっても恥ずかしい、気がする。


「この変態。」と言う猫娘。


オレは考えるのをやめていた、ドラさんほどじゃないが、やめていた。


自己防衛本能が働いていたのであろう、ちょっぴりドラさんの気持ちが、今なら分かる、気がする。



帰り際、みけつ様はオレの耳元でそっと、「あのな〜、死神の事やけどな、祓うの出来んかったえ、ごめんえ。」と、・・子供のように、無邪気に言って、そして春名先生と手を繋いで帰って行った。


オレの部屋には誰も居なくなったはずなのに、猫娘だけがチョー不機嫌な顔で、


なぜか、そこに居座っていた。


その後のことは、もう憶えていない。



オレはいつの間にか、眠っていた。


気がついたら朝だった、


もの凄く怖い夢を見た気がする、


・・真っ暗な闇の中、小さな扉の向こうに、巨大な怪物の顔がこっちを見ているような・・そんな夢、 そのせいか、パジャマは汗で濡れていた。


・・・、


こいつが化け猫だからかな、


・・やはり猫娘は、居残っている。


ペルシャ猫の姿のままオレの布団の上で、丸くなって寝ていた。



真冬の玉村の朝、とてもいい天気だ。


浅く積もった雪は白銀に世界を見せた。

みけつ様も、その日には普通に学校に登校していた。


着ている服は着古されている、春名先生が子供の頃に着ていた服だろうか? そう考えるとみけつ様が可愛く見えてしまう。


ドラさんと田んぼで取っ組み合いをしていた頃だな。



そしてまた次の日、


今中は学校を休んだ。


母親の様態が急に悪くなり、町の病院へ再入院となったのだ。


それを校長から聞いたとき、悪い予感が頭の中をよぎった。


幸い、その予感は外れてくれたので安心した。


オレは色々考えていた、釜ボッコの風呂や、みけつ様のお祓い、


それでも死神は祓えなかった。


"神"と、みけつ様は言っていたから・・


死神は、やはり"神"クラスなのだろう、しかも、みけつ様にも祓えない、となると、


それはとても恐ろしい事でもある様に思えた。


オレの範疇を超えている。



十二月も半ばとなり、この時期に風邪が村で流行った。


うちのクラスでも、九人のうち、四人が学校を休んでいた。 

それも一週間も経たないうちに収束した、のだが、


・・・今中の背中には、なぜか、


あの黒いモヤに、人の頭らしき形を見て取れるようになっていた。


どぉ言う事だ!?


それはつまり、あの黒いモヤは成長したと言う事だろうか?


みけつ様には見えてるはずなのに、隣の北本と楽しそうに話をしている、・・・授業中に。


このまま放っておくのか!? いいのか!?それで!


神様には、神様の事情があると、幸詠さんは言っていた、


オレはどおしても今中の背につくあの黒いモヤをなんとかしてやりたいと考えていた。


今、神様の事情と言うのを知りたい!


・・・それを聞けるのは、


・・・授業中に楽しそうにお喋りしているみけつ様では無理なような気がする。


・・・一番、的確な事を教えてくれそうなのは、


やはり幸詠さんか。


だから放課後、オレは一人で幸詠さんの家に行くことにしてみた。


この前、遊びに来てね、とか何とか言ってたし。


それを口実に女の子のお家に行ってみようとも、思ったりする。前は急げだ。



日が暮れるのは早く、小学校を出た頃にはかなり暗くなっていた。


小雪が深々と降り続けている。


ああ、そうだよ〜、村には街灯がほとんどないから、月明かりがないと足元すら見えなくなるんだよ〜、


・・行くの、やめよっかなあ〜、明日にしよっかなあ〜、・・こんな時は、人面牛が出てきそーだしなあ〜、ああっ!弱腰で考えちゃいけないっ!! ほんとに人面牛が出てきちゃう!


・・怖いから帰ろう、と考えていたら、


あれは・・・


以前にも同じ場所に・・・、


ほらああ〜、やっぱり出てきたよぉ〜! 人面牛だよぉ〜・・もお〜


また現れやがった、怖いよ〜、足が(すく)んで歩けないよ〜、なんでこんなにも怖いと思うんだ!? 克服したんじゃなかったのかよお〜・・


もしかしてアレか!? 本物の死神を見たからか!? あんな洒落にならないもの見たからかあ〜!? 普通は人面牛も洒落にならないだろうけど、マジかよぁ〜、


とにかく怖え〜よ〜! すっげー怖え〜よ〜っ!! なんでこんなに怖ええんだよお〜! 小便チビリそーだよお〜! まただよお〜! 何回目だよお〜! 学校帰りに漏らしたなんて洒落になんね〜よ、もお〜!


その時、誰かがオレに声をかけた、「おい」「うわああアッっ!!!」オレは死ぬほど驚いた!!


振り向くとそこには、


・・・コン太、!?


「なっ、何だよっ!!おどかすなよっ!!」チビったかもしれないだろっ!! と、心の中で言った。チビってないことにする。


「お、俺の方が驚いた!」


だけど! 良かった〜、なんかコイツがいると怖くないぞ!


「なあ! コン太!一緒に帰ろうぜ! な! あそこに人面牛が居るんだよ! アイツ嫌いなんだよ〜」


「おまえ、幸詠姫のとこへ行くんじゃないのか? だから迎えに来てやったんだぞ。」と言うコン太。


「いくぞ!」


え!? どゆこと!?


「何してんだよッ! こっちだよッ!」


どゆこと!?


その時、すでに人面牛は消えていなくなっていた。


とりあえずはコン太と歩くしかないと思ったので、「おい、コン太、オレが幸詠さんちに行くって何でわかったんだよ?」


「幸詠姫が言ってたんだよ、お前が来るから迎えに行って来てって、」


「え!? 何で幸詠さんはオレが来るって知ってたんだ!? さっき、行こうかなあって思ったばっかだぞ、何で知ってるんだ!?」


「うるせーなあーっ、知らねーよッ! 幸詠姫がそう言ったらそうなんだよッ! お前もこの前、鼻が痛いとか騒いでたろっ、あんとき、幸詠姫がそう言ったからだよッ!」


え!? 駄菓子屋にいたあの時か・・


・・・やっぱりそうなんだ。



途中、人面牛以外にも、


・・何か、不気味なものに後をつけられている様に感じていた。


月あかりが雲の隙間から何度も辺りを照らしてくれている、だが、その月明かりが確かにそこにそいつが居ると見せていた。


それは、白く見える人影だった、


それが今、オレたちが歩いてきた道を、後ろからついて来る様に見えるのだ!?


ちゃんと意思を持ってこちらに向かって歩いてくる!?


何なんだ!あれは!? 人の形をした白くボンヤリとしたシルエット、


人じゃないのか!? 何でそう見えるんだ!? じゃああれはいったい何なんだ!?


オレはコン太より少し遅れていた


降りしきる雪が風に舞う中、「お、おい! コン太!」


こいつ、チビのくせになんでそんなに早く歩けんだよ!?「コン太、ちょっと待てって、」


「おまえ! 遅いんだよ!」


「お前が早すぎんだよ! もうちょっとゆっくり歩けよ! 雪で足が取られるんだよ!」


短い足を高速回転させんじゃねーよ! 早いんだよ。


オレはまた、振り返ると、その白い影は、さっきよりずっと近かづいていた! だか、そいつは止まったまま動かないでいる!?


だけど次、振り返った時には、すぐそこまで近づいていた! 追いつかれるっ!!


「おっ、おい!コン太、・・あれは何だ!? さっきからついて来てるぞっ!」


「・・・知るかっ!」


「知るかって・・、おまえ、」何でこいつ、余裕なんだ!?


「おいっ!コン太っ あいつ何なんだよっ! 顔がないぞ!? 幽霊みたいだっ! 全身真っ白だぞっ!」


「うるせーなッ! そんなのほっとけよッ!」


「ほっとけぇ!? 近づいて来てんだって! 何なんだよっ!!あいつっ!怖ええよッ!!」


「お前が振り返るからだよッ! 止まんじゃねーよッ! 面倒くせーヤツだなあッ!!」


オレはコン太に手を引かれ歩いていた。泣きわめく幼稚園児の如く。


コン太の手は小さかった。


オレはコン太が言ったように、振り返らなかった。


コン太はあの白い幽霊みたいなものを知っているのかもしれない。


それから少し歩くと武家屋敷を思わせる木造の大きな門に着いた。


その門の左端に(かが)んで入る小さな扉があり、コン太はその戸を開け、入って行った。


お前には丁度いい高さだな、と思った。


広い敷地の奥に立派な日本家屋が見え、玄関の脇には2つの灯籠があり、明かりが灯されていた。


コン太は自分の家みたいに、ガラガラガラー・・と引き戸を開け、中に入っていった。


オレの部屋が入るほどの広い玄関口は薄暗く、コン太は左のふすまを開け、中に上がっていった。


・・・子供用の青色の長靴を履いてたんだな、誰に貰ったんだ?


「何してんだよ、早く来いよ!」


「ああ・・、いいのか?」



明かりのない畳の部屋に、向こうは板張りの部屋となっている。


幸詠さんはそこにいた。


ああ、良かった。


幸詠さんはオレを見て、ニコッと笑顔を見せてくれた、


ホッとした。


幸詠さんは白の着物を着ている! それにしてもなんて美人なんだ!


色白で髪まで白いから、雪女に見えるぞっ!


この世の人とは思えない雰囲気を醸し出している! まさか、本当に雪女だったりするのかっ!?(冬の女神様です。城島さん、いろいろ頭の中を整理してください。)


囲炉裏だ! 囲炉裏がある! 火がついている! 上から鉄鍋が吊るされ、木でできた落し蓋がされ、何か美味しそうなのがグツグツと煮立っている!


回りに木の枝で立てた川魚が何本も立っている! なんて美味そうなんだ!


まさに時代劇だ! にっぽん昔ばなしだ!



「こんばんは、城島さん。」と、声をかける幸詠さん。


「こ、こんばんわ、」


「寒かったでしょ、さあ、お座りになったら。山菜汁食べるかしら? 温まるわよ、フフ。」


「あ、はい。」と、幸詠さんがよそってくれる山菜汁を頂いた。


っ!!


美味いっ!!


なんだっ!? この美味さはっ!! こんな美味い山菜汁を頂いたのは初めてだ! 体は一瞬にして温まっていた!

オレの口の中は、舌から脳天に電撃が走る程の美味さで溢れかえっていた!


深みのある味、旨味! まろ味! 少しの苦味と甘味、懐かしい味! 味噌以外に特別なダシを使っているのか!? こんなの初めて食べる!


四季を思わせる山菜の香りが口いっぱいに広がっていく! それにこれはっ!? これは花の香りだっ! 食欲をそそるだけのものなんかじゃないっ! こうして、目を閉じるとお花畑が広がっているようだっ! ああっ!心も胃袋も満たしてくれる! まるで幼き日の優しく温かい母の腕に抱かれているようだ! なんて素晴らしいんだっ! 感動だっ! まさにこれは山菜汁のエンターテイメントだっ!ゴールデンだっ!ヘブンズドアだっ!天にも昇るとはこの事だあ〜っ!エンジェルがラッパを吹きながらやって来たよ〜っ! お迎え御苦労様あ〜っ!


ああ・・、さっきまでのあの寒さや怖さが嘘のようだよ・・、感動のあまり、涙がこぼれそうだ、暖かな春の陽射しに包まれ、小鳥のさえずり、頭の上でヒラヒラ舞う可愛いらしい蝶々さん・・、幸せのあまり、鼻歌交じりにスキップしたくなるよ・・・フフフ。


「城島さん、城島さん、」


!?


「は、はい!」


「どおかしたのかしら?」


「・・いえ、あまりの美味さに、・・・感動していました。」


「良かったわ、そんなに喜んでくれて、まだ沢山あるから、もう一杯いかが?」


「いいんですか!? 是非っ!」


オレは食った! 食いまくった! 向かいに座るコン太が「おい!おまえ、幸詠姫の手料理は"神饌しんせん "なんだぞ!」


「新鮮?」


神饌しんせん)だよッ! 神様の食事って意味だよっ! しかも幸詠姫が自ら作った 神饌しんせんなんだぞ! 人間が食べられる事なんてありえないんだからなっ! わかったかっ!」


神様の食事!? お前も食べてんじゃん。


「やめなさい、コン太」


「はっ、はい〜・・」


・・相変わらず、ビビリまくってんな、


腹がいっぱいになってきたら、気づいた事がある、


「あの、幸詠さんは、・・一人で住んでるんですか?」と、聞いてみた。


部屋は板張りで、六畳間、二つ分くらいの広さだろうか、


「いいえ、四人で住んでるわ。」


「あ、四人で・・、ご家族ですか。」


四方の隅に行灯が四つ、灯されている、部屋全体は薄暗い、が、何て言うのだろうか・・、とても落ち着く、奥の部屋は真っ暗で何も見えないのに、怖いとは少しも思わない。


「私の姉妹よ、妹たちがあと、三人いるわ、フフ。」幸詠さんはニコッと笑顔で答えた。


オレは何だかとても楽しい気分で満たされている。


「へえー、妹さんですかぁ〜、幸詠さんみたいに、みんな美人なんでしょうね〜、フフ。」と、オレもニコッと笑顔で答えた。


「あら、お上手なのねぇ、城島さんたら。」


「いえいえ、本当の事ですよ! ハッハッハ。」


「フフフフ。」


なんて気分がいいんだろう、ほんとに気分がいいや、まるで夢み心地だ。


ここが何処かも、今何時かも、も〜どーでもいい! 明日、遅刻しないように起きれるか、そんなのどーでもいいー! このままずっとここに居られたらどんなに素晴らしいだろう!


ああ、不謹慎かもしれないが・・


着物の似合う幸詠さん・・・、寝間着だろうか? 真っ白! 死に装束を思わせる圧倒的な存在感! なんて綺麗なんだ、髪も肌も着物も、・・真っ白だ! 雪女みたいで美しぃ〜!


幸詠さんがオレのお嫁さんだったらいいのになぁ〜・・、


膝枕してもらってぇ〜、エヘヘ、太ももぉ〜! ひゃホーっ! 洗濯物の匂いがする〜! 青空の香りだぁーっ!


エヘヘへぇ〜・・、幸詠ちゃぁ〜ん! オレ! 頑張って働くよ〜っ! だから一緒に家庭を持とう!


子供は二人! いや、三人がいいかなぁ、最初は女の子だな、絶対可愛いよお〜! 可愛すぎて、ほっぺにチュッチュするんだあ〜、チュッチュ、チュッチュ! そうだ! ペットも飼おう! 犬がいいな! そう、ゴールデンレトリバーなんかいいじゃないかなぁ〜、あっ、牧場を走るコリーもいいよね! どっちがい〜い? 幸詠ぃ〜!


「私、猫がいいわ!」


「え? ネコ!?」


「みけつ様の飼ってるペルシャ猫。」


「え? ・・・ぺるしゃねこ?」


・・・ぺるしゃねこぉ〜?


チュッチュチュッチュ、チュッチュチュッチュ、


チュンチュン、チュンチュン・・


アアアッ!!


「オレはいったいっ、なにおっ!!」飛び起きた!?


こっ、ここは・・布団の上?


・・・・夢、? オレはいつ寝たんだ!?


いつの間にか、オレは自分の部屋にいた。


朝、七時過ぎ、スズメの鳴き声が聞こえていた。


夢、だったのか・・・


・・だけど、どっからどこまでが、


・・夢なんだ?


昨日確か、学校の帰り、


「あんた、幸詠さまのお屋敷に行ったでしょ?」


あ! 猫娘、


「よく中に入れてもらえたもんね」と、猫娘はペルシャ猫の姿のまま、点けっぱなしのストーブの前で丸くなっていた。


「・・どー言う意味だ? やっぱ夢じゃなかったのか?」


「フン、幸詠姫は冬の支配者よ、あんたみたいなのがどーして入れてもらえるわけぇっ!? チョームカつくんですけど!」


「何なんだよ、その女子高生口調は! それに冬の支配者ってなんだよ、それ?」


「え!? あんた、知らないの? 幸詠さまは冬の女神様よ、」


この時、ようやくオレは幸詠さんの素性や、その他の事柄を知る事となった。


まず、幸詠さんは季節を司る女神様の一人で、冬の女神様だと言う事。


季節の女神は四人いて、みんな姉妹にあたり、初めに長女の幸詠さんで冬、次に春の女神で"静香姫"(しずか)、三女の夏の女神"夕成姫"(ゆうなり)、四女の秋の女神で"陽月姫"(ひづき)となる。


この季節の女神が住む家が、昨日、訪ねたあの屋敷となる、そして猫娘は「四姉妹みんな料理が上手なの、しかもその四姉妹の手料理を食べると不老長寿となり、神の一人と成るって言われてるわ。」


「幸詠さんの家で山菜汁を食ったぞ、驚くほど美味かったぞ。」と、言ったら猫娘の奴が、


「た、食べたの!? 何で!?どおして!? 何であんたなの!? なんであんたばっかなの!?」と、何故かショック受ける猫娘だったので、「コン太も食ってたぞ。」と、火に油を注ぐ感じに言ってみた。


「なっ・・・なんで!、・・・・コン太!? ・・・あの成り損ない!?」


コン太の素性は詳しくは分からないが、日本に古くから伝わる伝説上の、"野狐"(やこ)と呼ばれる霊的な力を持ち始めた"化け狐"で、他に神に近い神通力を持つ"天狐"などがあると言われている。

その中でもコン太は一般に知られる人を化かす狐や狸で、最も位の低い"化け狐"と言う事だ。さらにコン太は「ちょーサイテー」と、言う事らしい。


「黄昏さんは?」


「あの方は神格で、勝尾神社の氏神様よ。千里眼を持つと言われる神様で、それ以上は知らないわ。」


"氏"(うじ)とは、土地の神様を祀り、その土地に住む人間、一族の総称。


あのカワイイ「田霧ちゃんは?」


「あの御方も別格の神様よ! 古代の神様で創造神の一人と言われてるの。」


タキちゃんこと、田霧姫、


川の神様で、玉川や勝尾川の主神の一人と言う事なのだが、「タキちゃんてそんな凄いのか!? まるっきり子供に見えるんだが、」と言ったら、「凄いってもんじゃないわ! 創造神よ! 川があるからそこに神が生まれるんじゃないっ、神がそこに居るから川が生まれてきたのよっ! 分かるう〜?お馬鹿さん!」


つまり、何も無いとこから、全てを一から創り出せる神の事だ。


「田霧姫は川神の三姉妹の三女よ、長女にあたる"市姫"(いち)、次女に"早瀬姫"(はやせ)、三人ともみけつ様と同じ創造神よ。」


女神に"姫"と付けるのは、敬意の一つで、清らかな女性に対しての"様"と同じ意味合いになる。


「じゃあ、みけつ様は何なんだ?」


「はああ〜あ!? 今更何聞いてんのぉ〜!? 最も位の高い神様の一人よ!」


「え〜、あのみけつ様があ〜、どこをどう見れば位の高い神様なんだよ〜、授業中、隣の北本とお喋りしてて、注意すれば睨み返す、あの可愛げのないみけつ様なのに〜ぃ!?」


「ああっ!あんたっよくそんな神を冒涜する事言えるわねーっ!!あんっなにっカワイイみけつ様!どう見たって、とってもカワイイ神様よッ!! あんたッ目が腐ってんじゃないのぉーッ!!呪い殺すわよッ!!」


呪い殺すって・・あんたそりゃあ〜、カルトだよ。


「なあ、じゃあ・・」


オレは死神や今中の背中に憑く黒いモヤを聞いてみた。


「教えてやんな〜い、みけつ様にそんな酷い事言うあんたなんかに教えてやんな〜い。」


「はああ!? なんだよそれ! お前だってみけつ様に死神を祓いに行かせたくなかったんだろっ! あの時、みけつ様には無理だって教えてくれてたら、倒れずに済んだんじゃないのかよっ!」


「そ、それは・・、」


「どおなんだよっ!?」


「・・みけつ様は神様よ、神様の言う事は"絶対正義"のなのよ、あたしやあんた如き人間が、神様のする事を否定できると思ってんの!?」


「なんだよ!? ダメなのかよ?」


「・・・駄目よっ! 絶対に駄目っ! もし否定したら、みけつ様は神様じゃなくなっちゃうわ! それが神の法則なの! あんたもみけつ様の人柱だったら理解しなさい!」



"神の法則"


仮にも神様の側近、猫娘の説明は有難かった。


猫娘の言うところ、神と人間の間にあるのは、"信心"、それは疑う事で無意味となる、それは神の消滅を意味する。


それが別格と言われる創造神でも同じ事なのだ。


消滅、と言っても人間の前から居なくなるのであって、存在そのものは無くならない。


自然と共存する八百万の神は、大きく分けて、創造神と守護神の2つに分かれる。


みけつ様や、タキちゃん、幸詠さんは創造神にあたり、後々の神格化で誕生した黄昏さん、神格化はされてはいないが、釜ボッコなどは、その場所やモノ等に司る神で、守護神となるのだ。


では、その真逆の存在で、死神や人面牛、赤黒い形を成さない何か、は?


みけつ様から初めて聞いていた、"マガ" が、それらの総称として用いられ伝えられる。


この"マガ" とは、漢字に直すと、"禍"となり、読みを変えると、"わざわい"となる。


つまり、宗教的な表現で、"まがまがしい"や、"厄"、"災い"と言った意味で、その存在理由は、神々の逆を意味し、怨み、怒り、憎しみ、恐怖と言った、"ネガティブな信心"が"魔格化"の因果となるものらしい。


まだ、分からないことも多いが、この玉村は土地そのものに、神懸かりな、"絶対領域"と言うものがあるらしい。


簡単に言えば、パワースポットの最高峰が、玉村と、言う事なのだ。


玉村の歴史によれば、源平合戦に敗れた平家の落人(おちゅうど)が逃げ隠れた、"隠れ里"だと言われている、または"常世の里"(とこよのさと)や"桃源郷"など、浮世離れした場所 "仙人"が住む村があると、当時の時代背景で信じられていた。


それが今でも守られ、存在するのがこの玉村ではないかと、知り得た事から想像する。


最後に付け加えて言える事は、"死神"と、みけつ様本人が言った事から、"マガ"から神格化した、恐ろしい神だと思われる。


だが、オレの見たあの死神は、創造神でない事だけは分かる、つまり、"守護神"の逆、"破壊神"なんだと思う。


だからと言って、猫娘が言ったように、人間如きが太刀打ちできるものではない、


幼姿とは言え、みけつ様が最高位の神様とするならなおさらだろう。


神様、とは絶対の存在であるから、運命は変えられない・・のかも、しれない。


もどかしい、


・・・ごめん、今中、


映画やアニメみたいに、カッコよく助けてやる事・・、できないよ。


ごめん。


だけど、非力でも何か出来る事は無いかと、


陰ながらではあるが、いつも考えているから。


な。




第三十三話 「みけつ様の(ことわり)


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