第二十九話 「冬の女神 幸詠姫」
第二十九話 「冬の女神 幸詠姫」
学校の教室では石油ストーブを使っている、が、
「環境を考えて、石油ストーブは止めて、職員室から薪ストーブにして行こうかと考えてます。」と朝一から、校長先生が言っていた。
役場に行けば灯油が買えるので、町まで行かなくて住むことが分かった。
オレは母さんが送ってくれたストーブを使い、上島のバカと買ってきたストーブは部屋の角に置きっぱなしとなっている。
上には箱買いサッポロ一番しょうゆ味が二ケース乗っかっている。
女子と言うものは、職員室が好きなのかして、松本百合子までが春名先生と話しに来ている、オレは流された。
なぜだ? なぜオレとは楽しく話しをしようと来ないのだ?
軽くへこむ。
「城島先生、みけつ様に何か言いましたか?」と言う春名先生、
「何の事ですか!?」
「黙れ、小娘って言われたって、とても気にしてたんですが、」
それって、心の中で言ったことで、本気じゃないし、それに今までそのくらい気にしなかったじゃないか!
「先生、そんなひどい事言ったんですかぁ!?」と藤原孝子たち。
「そんなこと、言ってない、言うわけないだろ!」と、焦って答えた、心の中で言ったんであって、嘘じゃないし。
今日の授業中、今中の背中に黒いモヤが見られた、
それは以前よりずっと小さいが、今中の体の中に一部入り込んで小さく動き回っている様にも見える。
みけつ様は、気にしていると春名先生は言っていたが、いつもと変わらない。
北本の隣で相変わらず子供らしい表情を見せているみけつ様だか、今中の黒いモヤは見えていないのか!?
今日は音楽の時間だが、
みんなで合唱をした。
合唱の内容だが、季節外れだか、"村祭り"と、"雪やコンコン"の二曲をみんなで歌った。
この時に気がついた事がある、
今中の背中の靄が、消えそうになるのが見えたのだ。
歌に反応したのか? 歌う事に反応したのか分からないが、今中に、「よし! いつも声が小さいから今中! お前だけ一人で歌ってみろ! 先生も一緒に歌うぞ、みんなは聞いててくれ。」と半ば強制的に歌わせることにした。
今中は顔を真っ赤にして歌った。
「ゆ〜きや、コンコン、」
「もっと大きな声出さないと、二番も歌わすぞ〜!」けっしてイジメではない。
みんなの笑い声と、お喋りが聞こえた。
「みんな静かに〜、」
思った通りだ、歌を歌い終わった後も今中の笑顔は消えなかった。
それと比例するように黒いモヤは小さく消えかかっていた。
今までのこの黒いモヤや、人面牛など、人に害があるものと思われるものは、総じてポジティブな感情に反比例している。
次の日、今中の背中にはまた、黒いモヤがかかっていた、以前より大きくなっている気がする。
この黒いモヤは消すことはできないのか?
何が原因でこの黒いモヤは現れ、取り憑くのだろうか?
焦る気持ちがあってもどうしようもない。
その次の日、今中は学校を休んだ。
今中の母親の具合いがよくない、と言う事だけ、父親から電話で知らされた。
土曜の休日、午前中は洗濯をすまし、昼から春名先生の田んぼのあぜ道を散歩しながら市場へ買い物に行く事にした。
いつかは春名先生と手を繋いで歩けるだろうか。
今日はやけに陽射しが明るく感じる。
冬の陽気がよく、今日一日、村全体がご機嫌のようだ。
ずっと遠回りして駄菓子屋の前を通りかかったとき、中から話し声が聞こえてきた。
だけど気にせず先に行く。
ます最初に寄るとこは、魚屋、ここは土曜日しか営業しない、 余った魚は焼き魚として売る。
もうこの時間、魚の焼かれるいい匂いがしていた、素焼き、塩焼き、特製ダレの三種だ。
オレは 魚屋の勧めで、何だか分からない切り身と焼き鯖を買った。
母さんが送ってくれたエコバッグに入れる。
実家近くのスーパーのロゴか入ったエコバックだ、お金を出して買ったのか!? いや、たぶん誰かから貰ったんだろう、少し使い古されたあとがある。
田舎ではエコバックが便利だ、どの店もただでビニール袋はくれない。
だから母さんのゆうパックにはエコバックなど、実用的な物が入っていて、実に助かる。
豆腐屋、 「城島先生! 買い物かい!?」いつも、店の前で待ち伏せされている、 寄らなきゃいけない店となっている。
豆腐を三丁も買わされた。
「城島先生、周一か来ねーもんな〜。」
食料品店でマヨネーズを買う、が他に卵とロールケーキを買わされた。
そして次、
何も言わないのは駄菓子屋だ、まるで喋らない、いらっしゃいませはまず言わない、それどころか、声をかけても直ぐに返事はない、時間が止まっている、まさに田舎時間だと言える。
さっき、前を通りかかったとき、駄菓子屋から、話し声が聞こえたけど、
店の横にベンチが置かれているが、そこにこの前の白髪、白い目の女性が座っていた、やはりどう見ても若い女性だ、なんか嬉しい。
驚いた事にその白髪の女性の横に、おもっいっきり人相の悪いコン太が並んで座って⚫⚫
駄菓子を食べている。
この前、こいつ! オレの腕を噛みやがった、思い出したら腹が立ってきた!
「あら、あなたこの前の、」と、白髪の女性、
「こ、こんにちわ、」と挨拶を交わすものの、なぜコン太がここにいるッ!? ムカっ腹が立つ! なぜ、白髪の女性と駄菓子食ってんだ! こいつ、どこにでも居るなぁっ!
「こいつ!このまえ、タキちゃん泣かしたんだぜっ!」と、コン太、
お前が言うなよっ!
大人になれ!オレ! 冷静に冷静に。
「それはお前が、オレの腕に噛み付いたのが原因なんだよっ!」あの後、痛みが、すっ⚫⚫と引いたんだよな、あの子の手の平からやっぱり、神の力みたいな、ハンドパワーが出ていたんだろうか?
「⚫⚫コン太、あなた人に噛みついたの?」
焦るコン太、「ハッ!! いやっ、あれはだなっ、あのっ、そのっ、たた、タキちゃんがあぶないって、⚫⚫思ってー⚫⚫」
よく分からんが、コン太はこの人が怖いと見た!
「⚫⚫血がいっぱい出て、オレー、死ぬかと思ったぁー、」と、言ってみた。
「ちちち、違うッ!! 俺はッ!俺はッ! たた、タキちゃんが危ないって思ってッ、それっ、それでッ俺っ」
おまえはオレに噛み付いたんだぞ! 血が出るほどの事をやったんだ! 明らかにお前の一方的な暴力なんだよ!
コン太はベンチから立ち上がり、「⚫⚫俺っ、タキちゃんを⚫⚫タキちゃんを⚫⚫⚫」
なんでそんなにビビるんだ!? 脅されてるみたいだな、そんなにこの人が怖いのか?
たしか、こよみさんて言っていた、
その幸詠さんが一言、「コン太、あなた獣ね。」と笑顔で言った。
「俺はっ、たきちゃ⚫⚫」
だが、その言葉のすぐ後に、コン太が震え出し、顔つきが変わって言った、
これは何だ!?
「おい!コン太!」様子がおかしい! 何かの発作か!?
白髪の女性は隣で冷静に、⚫⚫⚫駄菓子を食べている! だがしかし!
コン太が四つん這いとなり、震える声で、「⚫⚫いや⚫⚫だ、嫌だ⚫⚫、いやっ⚫⚫だっ⚫⚫,」
オレは焦っていた、コン太が、⚫⚫まるでほんとの、⚫⚫⚫獣に、見えてきた!
この状況の中、白髪の女性はベンチに座り何事もないかのように駄菓子を食べている、「おいし。」なぜ平気な顔してるんだ!?
オレはとっさに、「だ、だけどコン太は⚫⚫その、悪い事はしていないかも⚫⚫しれない、」と、嘘をついた。
「あら、コン太は悪い事はしていないの?」と白髪の女性はオレを見つめて聞いてきた、
オレは作り笑いで「はい、⚫⚫良くある事ですよ、男の子は少しヤンチャな方がいいですよ。」と言った。
あれほど、腹が立っていたのにコン太をかばう様な事を言ってしまった。
が、
コン太の震えが止まった、
「でも、この子、あなたの腕に噛みついたんでしょう?」と、とても穏やかに冷たく、聞いてきた。
その通り答えたらいけないような気がした、
「あ、えっと⚫⚫⚫コン太は⚫⚫⚫何もしていません、⚫⚫⚫。」
「何もしてないの?」
「⚫⚫はい、⚫⚫。」⚫⚫怖い! なんか怖い!
「さっき、コン太に腕を噛まれたって言ってなかった?」
絶対なにかある! コン太がこんなに苦しんで、なぜ平気な顔してるんだ!?
「あ、あれは〜⚫⚫、なんて言うのか〜、その〜、冗談ていうか〜、嘘っていうか〜、⚫⚫みたいなぁ〜へへへ」
「冗談? 嘘なの? コン太に腕を噛まれたのは嘘なの?」
「ハハハハ〜!」笑ってごまかそう!
「嘘をつくと鼻が伸びるのよ〜。」
「はい!?」と思った次の瞬間、鼻に激痛がッ!!「ア!イデデデッッ!!」
「ピノキオはね、嘘をつくと鼻が伸びるの。知ってるでしょ、フフフフ。」
ピノキオッ!? 何それッ!?
「鼻が痛いッ!!鼻が痛いッ!!引っ張られるウーッッ!!」
「城島さん、嘘付いたでしょ〜、ダメよ〜、嘘は〜」
「なっ何の話ですかッ!?」
「あら、知らない? ピノキオはね、嘘つくと鼻が伸びて大変な事になってね、⚫⚫」
「そっ、そうじゃなくて、そうじゃなくてっ、お話はッ、そっそれは知ってますッ! 鼻が痛いッ!鼻が痛いんですけどッ!」
「ピノキオって鼻が伸びても痛がらなかったんじゃないかしら、」
「エッ!? そうなんですかッッ!? そっそっそれは木でできてるから⚫⚫ そっそんな事よりッッ!!」
「ええ、たしかそうよ。」
「鼻がッ鼻がッ鼻がッ!のび⚫⚫ッッ!!」
「本当の事を言えば鼻は元に戻るのよ。」
「コッコッコッコン太が腕を噛みましたッ!!」
すると、
途端に鼻の痛みがなくなった、
「やっぱりコン太、あなた人に噛みついたのね?」
「ヒエーッ!!」コン太はまた、怯えまくった、
「⚫⚫⚫あ、あの、」
「なあ〜に?」
「えっとぉ、」嘘ついたら、よくわからんが、鼻が痛くなるみたいだからっ! え!?て事は!?
「その、コン太は⚫⚫」
「なにかしら、コン太は?」
「オレの、腕に噛みついたけど、⚫⚫⚫」
「やっぱり噛みついたんだ」
「だけど! 別に構わないので、それにあの、何てったっけ、あの子、」
「⚫⚫田霧ちゃん?」
「あ、はい、たきりちゃんが快方してくれたって言うか、治してくれたって言うか、だからコン太は⚫⚫⚫」言葉が出てこない、
「⚫⚫もういいの?」
「はい⚫⚫怪我も、そんなになかったし⚫⚫⚫,」嘘じゃないよな、
「⚫⚫⚫⚫⚫」幸詠さんが黙ってこっち見てるぅッ!! うっ、嘘なんか言ってないしーっ、⚫⚫と思うし!
「まあ、いいわ。」
と、幸詠さんはそう言うと、立ち上がって、「もう帰るわ。」と言ってスキップするように帰って行った。
何だったんだ⚫⚫⚫
オレはなんとか無事だった感じのコン太を見た。
オレを睨みつけてるコン太。
「なに睨んでんだよっ!」
「フンッ!」
コン太も何も言わないまま、帰って行った。
幸詠さん、漢字ではこう書くようだ。
あの幸詠さんもまた、神格なのだろうか? 神様なんだろうか? それとも人間なんだろうか?
みけつ様も人間で、超能力者みたいなものなんだろうか?
だけど、何にしても恐ろしい力だ。
あんな事を容易く出来るなんて、場合によっては大惨事を引き起こす事も可能だろう。
⚫⚫あのままいけば、オレの鼻は取れていたかもしれない。
怖い、
今更だが、オレはとんでもないとこへやって来たのかもしれない。
そもそも、たそがれさんを見た時点でヤバイかもしれないと思うべきだったのかもしれない。
あれは夢かもしれない、なんて楽観的に考え過ぎる事、それがオレの最大の欠点だ。
なぜ、すぐに気づかない!? あり得ない超常現象を見てるにも関わらず! なぜ気づかない!
そう、すぐに気づく事さえ出来れば、厄介事なんていくらでも回避出来たはずなんだ!
ああ⚫⚫
日が暮れるのが早くなった。
夕焼け空は分かる速さで暗くなっていく、
そうだ!
買い物、
駄菓子屋でお菓子買って帰らなきゃ、あと、
野菜と、あれは無人販売所で買おう。
あと、⚫⚫⚫何だっけ?
第二十九話 「冬の女神 幸詠姫」




