第三話 「四畳半の住人」
第三話 「四畳半の住人」
玉利荘は二階建ての古い木造のアパートだ。
玄関は北向き、一階は 東側から101号室で あのかび臭い男の部屋だ、102号室は 住んでる気配を感じない、その横はトイレ、一番奥に風呂場がある。
トイレも風呂場も引き戸だが トイレはいつ見ても開けっ放しだ、ここは田舎だし 周りは田んぼに畑だから 夜 トイレに行くのが怖い。
風呂の入り口は二枚扉の引き戸で右と左の両方から入れるが、使う人はみんな手前の左側から入るようだ。
全てが木製だから、けっこう腐食していて・・汚い。
昭和のガラス窓は雪の結晶のようなデザインなんだな、擦りガラス? じっくり見てしまった、町にいた頃、古い家は何件も身近にあったが、見ずに通り過ぎていた、そんなものだろう。
オレより年輩の人たちは当時にして、こんな建物やデザインが友達の家に行ってもあり、日常では当たり前のように見かけていたりするんだろう。
そんな年輩の人たちはこんなものを懐かしいと感じるのだろうか?
わかっていても、古い、汚い、やっぱり、きっとオレと同じで通り過ぎて行くんだろうか。
足を止めて 気にかけないと気づかないこともある。
たぶんだけど、あと二十年、・・いや十年、でこれらのほとんどは役目を終え、町や村から二度と見ることはできなくなるだろうと思う。
せいぜい、ネットで昭和好きが昭和雑貨と一緒に写真をアップして そこで見るくらいになっているだろう。
だがこれらは 今でも現役だ! すばらしい、リアルに時代を感じる、生活文化は古いものから消えて無くなるから貴重だ。
・・ガラガラガラ・・ガラガラ・・と、引き戸を開けて中に入る。
こんな音一つをとっても きっと四十年以上は奏でてきたんだろうし、その時代と同じ音を今 こうして聞くことが出来るのはとても素晴らしい事だと思う。
だけど、やっぱり 汚いよ! 無理だよっ! こんなきったねー風呂、使いたくないよ、やっぱりサラがいいよ!
だってオレは現代っ子で 平成元年生まれだから仕方がないっ!
風呂場の隅は 腐食して隙間が空いていたりするが、きれいに掃除はされている。
薪で湯を沸かしていたけど誰が薪くべてんのかな? 大家さんかな?
浴室内はタイル張りなんだな、タイルがなくなっている床の一部はセメント張りになっている。
浴槽は正方形のセメントで固めた物かな、これが 五右衛門風呂なのか? どーやって入るんだ、・・しかも古くて汚ねー。
汚いが懐かしい感じがする。
銭湯の匂いと言うのだろうか、家の風呂場とは違う匂いがする、昔はどこにでもあった銭湯はこんな匂いがしてたんだろうと考えてしまう。
ずっと昔だが こんな匂いのする風呂に入ったことがある気がする。
田舎の夜は静かだ、おまけに街頭がほとんどないから真っ暗だ、月明かりが無いときはどおするんだ、提灯でも持って歩くのか? いやー・・さすがにそれはないよな、懐中電灯があるし、オレは今までその懐中電灯を一度も使ったことはないけど。
夜は涼しい、窓を開けていても蚊が入ってこない、親戚の叔母が言ってたことだけど土がきれいだと虫は湧かないと言っていたなぁ。
静かだぁ・・ 秋の鈴虫がきれいな音色で鳴いている。
アパートは昭和の四十年代くらいに建てられたのかな。
アパートの屋根は鬼の顔だと分かる鬼瓦と緑の屋根瓦が使われていた。
夜になってから 風呂に入る事にした。
誰もいないのに、風呂が沸いていた・・、ミステリーだ。
何だか湯船には浸かりたくないから、カラスの行水と言う感じに風呂に入り、すぐ部屋に戻った。
私は、自室の窓に腰かけ錆びついた格子に肘をついて、二階からの景色を見ながら夕涼みをしていた。
高い建物がないからずっと向こうまで見渡せる、・・西側の木が邪魔して そっちがよく見えないけど。
・・何やら物音が聞こえるので下に目をやると人影がバス通りを商店街の方へ向かってゆっくり歩いて行く。
・・あれは 昼間のドラさんとか呼ばれてた人だ、・・幽霊みたいに見える。
・・田舎って引っ越しそば持ってかないとダメなのかなぁ。
子供たちは知っていたしな、・・挨拶はしといた方がいいかぁ・・、
まぁ いいや、よそう、カビ臭かったし。
・・コンコン・・
ん・・!?
何かの叩く音・・?
・・気のせいか、
コンコン・・
!!
玄関に誰かいる!?
え? 誰? こんな時間に、
・・・・・・・・・、
・・もう一回、叩くか待ってみよう。
・・・・・・・・・。
・・帰ったかな? 夜だよ、田舎だよ、もう八時だよ、風呂も入ったよ、歯も磨いたよ、他に何があるっての!? 寝るだけでしょ!
あっ! もし普通に訪ねて来てたら相手に失礼じゃないかっ!
いやいや、普通に訪ねない人の方が珍しい!
・・・・・・・・・・・、
オレは玄関まで、そーっと足音立てずに行ってみることにした。
あー、やだなぁ、・・何年か前に見たホラー映画が頭に浮かぶじゃんかぁ・・
田舎って夜になるとほんと静かで暗いもんなー・・。
・・コンコン・・コン・・、
っっ!!
怖エーっっ!! 一回 ずれたのなんでっ!? ドギトキするーっ!! 落ち着けっオレッ!! 大の大人が 子供みたいにお化け想像してビビってるってカッコ悪いぞぉーっ!!
ふー・・、とりあえず深呼吸だ! ハアー・・フゥー・・ハアー・・フゥー・・は、はいてばっかり・・
なんか気持ち悪くなってきた・・酸素の量が・足りないのか。
だいたい、お化けなんているはずがないっ! 普通、人間に決まってるだろ、どこの世界に 貞子さんやメリイさんがいるって言うんだ!?
ああ、こんな時に雨宮メリイを思い出してしまったぁ、・・あいつならきっとお化けなんか怖くないんだろうなぁ・・いいなぁ・・。
はっ! そんな事よりっ! 戸を開けろっ! オレっ!!
ノブに手をかけっ、何も考えずバカになれっ! 怖くないぞっ! ヘッチャラさぁっ!
・・カチャ、
この世にメリィさんなんていないわぁーっ!
ギギ・・
戸を少し開けてみた、・・外は暗い、・・と言うより真っ暗だ! なんでこんなに真っ暗なんだってくらい暗い・・
・・この戸を開けた隙間から すー・・と顔がぁっ、なんて事になったら オレはきっと腰抜かすかもしれない、いやっ! そんな事はないっ! 自分を信じろっ!
ギギギギィ~・・
ハァ ハァ ハァ ハァ・・落ち着けぇーっ、思い込みが激しいぞっ! オレッ!
何てことはないさっ! ハァハァハァハァハァハァハァ・・
ギギギィ~・・ いない?
・・少し待ってみよーかなぁー・・
この暗闇の中、扉の横に立っているんじゃないだろーねー、
外は真っ暗だ・・、真っ暗すぎて・・出れない、怖い。
ハァハァハァハァハァハァハァ・・
正直に言います、ぼくはお化けと注射が大の苦手ですっ! だから どーかお化けとか、なんかそんな怖いものは他所の誰かでお願いしますっ! ぼくは苦手だからそっとしておいてくださいっ、お願いします。
ハァハァハァハァハァハァ・・閉めちゃお・・。
ギ・・ギギギィ~・・パタン・・。
フゥー・・、
よし・・。
あっ!? 何だっこれっ!! 嘘だろぉーっ!! アアーっっ!! 何てことだっ!! 何なんだよぉっ!!
・・・鍵が付いてない・・・玄関なのに鍵がないっ!!
オレは昨日、開けっ放しで寝たのかっ!?
何で? なんで玄関に鍵がついてないのっ!?
・・・これじゃ・・お化けが入ってくるかもしれないだろぅ・・、
どーしよー・・・
・・・・・・・・、
戸締りはどーやってすればいいのだ?
・・・家に帰りたぁいー・・
もしかしてオレは これからずっと一人なのかっ!? 一人で寝なきゃダメなのかっ! いやいや、そんなの当たり前だろっ! オレが言いたいのは、これからずっと一人で寝なきゃいけないのかって事だ! ・・ん!? あれ、違うぞっ! あれ!? 違う違う、そーじゃない、ずっと一人なのかって事で・・・
とりあえず落ち着こう・・。
・・電気をつけたまま寝ればいいじゃん! ・・なら、大丈夫だよ!
コンコン・・
はっ!?
ヒエェェェーッッ!!!
な、な、な、・・何で・・どーして・・さっきはいなかったのに・・
扉の横に立ってたのかぁっ!! 怖い顔をしながら静かにそこにいたのかぁっ!!
なぜまた・・
おいおい、やめてくれよー・・マジ、やめてくれよぉー、お化けとか幽霊は他所、あたってくれってさっき言ったじゃーん・・心の中でー・・。
コンコン・・
あ・ああ・・ダメだ・・ああっ! ダメだっ! ああっ! もうダメだっ! ・・オレは生贄だったのかっ!? どーもおかしいと思ったんだっ! オレが教師になれるなんてっ!! 悪魔に導かれここまで来たのかぁっ!! そうだったのかぁっ!!
「・・ぁ・・のおぉ・・」
ッッ!? 声っ!! 声なのかッッ!!
カ・・チャ・・
え!? ノブが勝手にっ!! これはっっ!! ホラー映画で見たパターンっ!!
ハァハァハァハァハァハァハァッッ!!! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! もーしませんっ! もーしませんっ!!
ギギギィィー・・・・扉がぁーっ!!嫌アァァァーッッ!!!
「・・こん・・ばん・わ・・」ヒエーーーーーっっっ!!!
扉が開いたあっ!! そこから何かがアッ!! 白いッッ!! 白いぞッッ!! 髪もッ!! 服もッ!! 白いいいッ!! ゥッーッッ!!! もうっっ!! ダメっ
ああぁっ、ああ・・ハハハハァ・・
なんだぁ・・この感じ、楽しい感じになってきた・・アハ・・アハハ・・
・・記憶が飛んでいく―・・
フフフゥ・・、これが気を失うって事なのかぁー・・? 腰が抜けるぅ―・・、初めての体験・・・
なんか、下が水浸しだぞー・・何だか大変だ。
目が回るぅー、フフフフゥ・・
「だっ、大丈夫ですかっ!! あのっ! センセっ!! 城島センセですよねーっ!! しっかりしてくださぁーいっ!!」
はっっ!?
「あっ・・」 え!? オレは・・
「ああ・・怪我・・ないですか?・・・」
「・・・・え!?」
あれ? 目の前にいる人・・誰!?
金髪の外人さん・・?
「あ・・あの、・・・あなたは!?」
「あ、わたし、ソフィー・マルタンていいます、中学校で英語を教えてます、フランス人です、・・あなたぁ、城島先生でしょ?」
この人は 真っ白な肌に青い目をしたパツ金で それはそれは めっぽうめんこいおなごだった。
「・・城島センセ! 大丈夫ですか? 明後日から 小学校の先生なんでしょ? わたしこの部屋の隣に住んでるんです、何か困ったことがあったら何でも相談しに来てくださいね。」
そのきれいな金髪の女性は 尻餅をついてヘタり込んでいる"ぼく"の肩に手を添え、明るく元気に話しかけてくれていた。
ああ・・・石鹸の匂いがするぅー・・
部屋の明かりでも青い目がわかった。
白のエプロンつけてる、肩からポシェットを斜めにかけたらきっと・・いや、絶対似合うことは明らかだった。
「立てますか? 城島センセ、」
ゆっくりオレは立ち上がった、体が重い。
・・・あれ・・? これ・・・て、
「センセ、お風呂湧いてますよ、また明日会いましょうね。」と言って隣の部屋へ、ちょっと照れながら戻っていった。
女の子ってーのは照れてる顔って万国共通だよね、フフ・・かわいいよ。
・・フフ、何で照れてたのぉ? もしかしてぇー、オレの事ぉー・・
っっ!!
はあぁぁーーっっ!! 何てことだあッッ!!! 大変だぞぉッッ!!! 終わりだあッッ!!!
ちょっと待てっ!
・・・落ち着け、だいじょーぶ・・・、軽く行こう! 何でもないさー・・、そうさ! 何でもないさー・・
冷静に行こう!
・・・オレは極度のビビりだと言う事が今分かった。
いや、もともと分かっていたんだと思う、オレはすっげービビりのヘナチョコって事、・・分からないふりをしていたんだ。
ジーパンが濡れている・・、これは 何を溢したんだ? と思えなくもないが・・、溢したと言うより、・・・ハハハ! まるで失禁したようだよ。
・・どうも極度にビビると失禁するようだ! ハハハハ!
・・見なかった事にしよう! ・・忘れよう!
あっっ!!! 見られていたっ!!
いやっ・・・大丈夫だ、見られてない・・、さっきのパツ金の女の人、お風呂沸いてますよって言ってたな・・どゆ事?
ああああっっ!!! こんなにも床がビチョビチョじゃないかぁーッッ!!
大洪水じゃないかあッッ!!
もうっ! 一歩ゆずってお漏らしした、と言う事にしてみよう! ・・それなのにあのパツ金の女性は優しい言葉をかけてくれていたんだ! 素晴らしい人じゃないか! 優しい人じゃないか! きっと黙っててくれるよ、うん。
・・・落ち着いたら、おしっこ臭いのも分かってきた・・臭い。
・・・・・・・・・・・・。
そーだ、おふろにもーいちどはいろー・・そうしよー、これじゃあねられないもんね。
・・・・ソフィーサンテイタケ? ・・オフロワイテマステー イテタヨ・・
ああ・・体から力が抜ける、・・ふー・・・、なんか、すっげー・・疲れた・・・。
とりあえず その場に 和式のウンコさん座りで座ってみる・・・。
「ふー・・・どっこいしょーと・・・。」
・・・つめたい・・田舎の夏はやっぱ涼しいよなぁー。
・・ちょっと落ち着いたかな。
ドンドンドン・・ドンドン・・、
!?
今度は何だ? だんだん音が大きくなってきた!
・・近づいてきているのか・・?
どどっ!
・・止まった・・?
ガチゃっ! 扉が開いた・・
え!? ソフィーさん!? まだお風呂は・・
「おおっ! おっちゃーん! そーめん持ってきたー! 祖父ちゃんが持ってけってさぁー・・」
・・え!?
昼間のソーメンのガキ!?
・・しょう・・きち・・?
「・・・・? おっちゃん、そんなとこで何やってんの?」
子供が 玄関開けて ウンコさん座りで一服しているオレを見ている・・。
「しょっ、昭吉っ!? なんでおまえがっ!?」
「・・・おっちゃん、ほんとにパンツはいたままウンコしてたのかぁー?」
「・・いやっ! そんな分けないだろがっ!!」
「ところかまわずってやつかぁー? ・・オレもたまには野グソはするけどさぁー、さすがに玄関でしたことないよー、そんなことしたら 母ーちゃんがぶちギレるからなー。」
「おまっ・・なにっ言ってんのかな・・? これはおまえっ、・・ちょっと汗かいちゃってだなぁ・・、だからな、・・えっとー・・」
「もう、分かったよ、黙っといてやるって、それよりさー、オレんちのそーめん、すっげーうまいって評判なんだぜー! そーめんのつゆも付けといたからさ、食べろよ!」
昭吉と思われるその少年は、"はい"っと言ってオレに素麺をのせたお盆を手渡した。
今、ウンコさん座りをしているので 受け取りにくかった。
・・・それにしても、よく こぼさないでここまで持ってこれたものだ。
「じゃあな おっちゃん! また明日な! バイバイ!」と言って 昭吉と思われる少年は 玄関から出て行った。
・・・さっき会ったばかりなのに、すっげー親しい近所付き合いになってるのはなぜ? ・・・素麺か・・、おまえんちはそーめん屋なのか?・・、
昭吉は玄関を無造作に バタンっ!と閉めた。
・・帰っていった。
「ああっ!」・・外で昭吉の声?
ちょっとドキっとしたかな。
「ソフィー先生! ああっそうだ! ソフィー先生にソーメン持ってくるんだった!」
声、デカ!
「あれ、昭吉くん? どうしたのー こんな時間に?」
「そこのおっちゃんに ソーメン持ってけってうちの祖父ちゃんが言ったからさ、・・なんだー、そっちのおっちゃんじゃなくてソフィー先生に持ってくるんだったー!」
聞こえてんぞっ! 昭吉っ!
「ああ、そーだっ! センせーっ、となりのおっちゃん、玄関でウンコしてたぜっ! ププっ! アハハハハッ! ソフィーセンせ、ウンコだよぉっ!! しょーべん漏らしてビチョビチョぉーっ! アハハハハハっ!」
ッッッ!!!!
昭吉ィッッ!! 誰にも言わないんじゃなかったのかぁっ!!? 男の約束はどーなんてんだーっ!!!
ああッ!! もうっ! ダメだっ! ・・もう終わった・・、ああぁぁ・・、 ソフィー先生だけならなんとかなったものを・・。
・・昭吉ィッ!! おまえさえっ、おまえさえいなければぁっ!!
「ガチゃっ!」戸が開いた。
「ヒェッ!!」
玄関がまた開いた 昭吉のバカがオレを見ている、オレは現在、玄関で休憩中だ! そしてオレの両手はそーめんのお盆でふさがっている。
「・・・、ソフィー先生! おっちゃんまだソーメン持ったままここにいるよぉー!」
・・昭吉ぃ、よそ様の玄関を気安く開けたり閉めたりすんじゃないよ。
「あー! おっちゃん泣いてるよー!」
「ええっ!? ほんとに?」
とんとんとんと・・
・・たぶん、ソフィー先生がオレんちに来る足音だろう。
ギギ・・ギ・・ 戸が少し開いた。
「・・っ!! せ 先生っ! 大丈夫ですか? 先生っ!? 城島先生っ! ・・どうしよう、返事しない・・」
「腰抜かしてんじゃないの? ・・立てないみたいだよ。」
よく分かるな、昭吉。
「・・あ、だ 大丈夫です、平気です・・。」
「・・どこか痛いところがあるんですか?」
痛いところ・・・?
「・・ええ・・、持病のシャクが・・・」
「え!? ・・持病!? 城島先生 持病をお持ちだったんですか!?」
「じびょうてなに?」
だまれっ!! 小僧っ!! おまえにこの哀れでかわいそうなオレ様の心を救えるとでも言うのかっっ!?
はっ!! そうだっ!!
はははははっ!! そうじゃないかっ! 持病のせいにしてしまえばなんとかごまかせるかもしれないっ! もう、他に手段はないっ!!
「少し、体のちょーしが悪くてですね、・・少し横になれば だいじょーぶです・・。」
「そうですか? じゃあ、私がお布団敷きましょうか?」
「あ、いや、だ、大丈夫です! ・・そのくらいは自分でなんとかします・・。」
この金髪美女は日本語が上手だなー、・・発音が完璧じゃないか。
「そう・・ですか・・」
と言って 英語教師のフランス人で金髪美女のソフィーさんは、バカの昭吉が開けた扉はゆっくりと閉められ、帰って行った。
・・・・。
・・いける、いけるぞ! 良いことに昭吉はかなりのバカと見た!
それにだっ! もしあのとき 気を失っていたら・・その方がよっぽどカッコ悪いっ!
おしっこ漏らして気を失って、目が覚めたら金髪美人が目の前にいるって事はだ、ダブルでショックと言う事だが ラッキーな事にオレは気を失わなかったっ! ははははははっ!! 受けたショックはシングルですんだと言うことだっ!!
・・・だが、しかーしっ、問題は バカでアホの昭吉の口の軽さだっ! ・・それをどうするかだ、
・・フフフフたやすい、しょせんは小学生のガキ、
おおっ! ヒラメいた! 忘れさせればいいんたよっ! 他に興味の対象を作れば 話題にしなくなるはずっ!
はははははははっ! 簡単じゃないか。
興味の対象なんてたくさんある、たとえば・・、
例えば・・・、
考えろっ! オレは大卒で教師だ! 世間ではエリートと呼ばれている! ・・たぶん。
二年も浪人さんして嫌いな勉強に歯を食いしばり、やっと合格したんだっ! そして五年も大学に行き、嫌で嫌で仕方がないバイトもよく頑張った、そしてようやく教員試験に合格したんだっ!! その間、何度 崖っぷちに立たされ、諦めようとしたことかっ!!
合格出来ると思ってたら大学に落ち、ためらいなくご近所に話すうちの母は「うちの子、大学いくの。」と、合格する前から嬉しそうにご近所に言いふらし、その息子はバカなので入試には見事に落っこちた。
・・息子が大学生になると言うことは 母にとって夢だったのだろうと思う・・。
ちなみに 浪人に"さん"を付けるのは まるで他人事のように思えるからだ。
母さんの近所での立場がとっても気まずい事になってしまっていた事も なんとなくだが分かっていた。
いい歳をして子供のように無邪気で、裏表がなく 疑うことを知らない、いつも信じてくれている・・。
だけど オレは母さんが思ってるほど出来た息子じゃないんだよっ!
エリートって自分で言ったのは撤回しますっ!! 世間がそー見てるんじゃないかなぁーて、・・調子に乗って思ってただけですっ!
そんな母の愛情が重たすぎて何度も母さんに酷いこと言った事も数知れず。
・・・・・
それなのに 二浪もしてしまっていた。
一浪だけでも尾崎豊の歌と一緒に絶望と戦ったのに二浪までして その間、ほとんど家から出ない状態だった、・・いわゆる、引きこもり と言うやつなんだろう。
母さんの事を考えると・・きっと辛かったに違いない。
オレはバカだから辛い思いなんていくらでもしてやる!
・・そうだ、・・そうなんだ。
こんな事でっ!! こんな事なんかで挫けそーになってどーすんだっ! 諦めてたまるかっ!!
おしっこ 漏らしたくらいでっ!!
だけど大学に合格したときはほんとに嬉しかった、正直 受からないだろうと思っていた、問題が分からなかったからだ。
浪人生活に疲れ、ネトゲーに疲れ、人生に疲れて・・もう、どーでもいいやぁ、と思って受けた大学入試、半分当てずっぽで提出し、これが青春、最後の学校の正門を堂々と晴れやかな気持ちでくぐりぬけて行った。
もう 戻ることはないだろう、学問の聖地におさらばしたのだ。
・・ああ、今でもそのときの光景が思い出される ・・これからずっと母さんはバカ息子のために無理をするんだろうなって・・そう考えたら、目頭が熱くなって・・、自分をたくさん責めたんだった・・。
後悔、先に立たず・・
つまり 後悔しても始まらない、後悔に意味がないと言う事。
後悔をする原因を知り、二度、同じ過ちを繰り返さないための教訓として受け止めなくてはいけない事なんだ。
後悔するより教訓として前向きに考える事が大切なんだ。
・・後悔するは、自分自身にあり。
後悔のほとんどは 後悔する前にちゃんと分かっていたはずなんだ。
それを 何かにつけて言い訳し、後回しにしていたんだ、・・いつかはそのつけが自分の元に帰ってくる、だから 今できる事は 今、しなきゃダメなんだ!
オレはいつだって逃げていた、そのたんびに都合良く言い訳をして後回しにする、分かっていた、・・分かっていたから、自分をますます嫌いになっていった。
だからオレは二度と言い訳しない、後悔しないと、・・いつだったか誓ったんだっけ。
この世の全ては考えても考えても分からないことだらけだ!
大学落ちたのも 勉強しなかったから?
息抜きでやっていたネトゲーをコンプリートしてオレはこの世界じゃ何でも出来るんだっ! て思ってこの世界に入ろうと考えた時もあった。
だから、すっげー元気に 母ちゃん、三千円貸してっ! いつか返すから! て言ってタンスの引き出しから三千円を出して貸してくれたんだ。
なんに使うの? と聞かれて、先行投資だよっ! と言って三千円を手にしたんだ。
母ちゃんはずっと部屋にいるオレを心配してたから 買い物行くんなら、と言う気持ちで貸してくれたんだと思う。
ちなみに 子供の頃、母の財布からお金を盗もうとしたことがある。
中には 千円札一枚と百円玉が数枚だけ入っていた。
オレは えーーっ! こんだけーっ!?と思った。
当時 小遣いは一日に換算して 百円だ。
足りないと思ったから盗もうとしたんだけど、財布の中身が余りにもビンボ臭かったし、盗ったらバレると思って 計画は次の日以降に持ち越したんだっけ。
そしてチャンスは訪れた、オレはすかさずテーブルの上に置いてある財布を手に取り、これでオレも悪の仲間入りだと思ったら、また中身が 千円札一枚と、今度は十円玉が数枚入っていただけだ。
以前より貧乏くさい財布となっていた。
さすがにこれではバレると思いまたしても計画は延期された。
だが結局、オレは母の財布からお金を盗む事が出来なかったんだ。
オレは母に言った!
「母ちゃんの財布の中ってなんでいっつも 千円札一枚しか入ってないのぉっ?」 と、ちょっぴり怒り気味に聞いてみた。
そしたら 「え!?・・なんで知ってるの?」 と聞かれて、思わず財布からお金を盗もうとしたことを言いそうになったのだが、なんとか笑ってごまかした。
母さんは言った 「節約よ、たくさん持ってたらたくさん使っちゃうかもしれないでしょ。」と。
ふーん・・と思った。
だが それ以来 母の財布の中身を許可なく見ることはなかった。
友達からも親の財布から 金を盗むと言う話はよく聞いた。
オレは母に盗めないよう手玉に取られていたのか・・・
いや、そうではない、母はそこまで計算しない! 本当に節約のため財布には 千円札一枚しか入れてなかったんだ。
・・胸が痛い。
オレは子供の頃 喘息持ちだった事を思い出した、どーでもいい事だ。
さっきの三千円の話だが、・・もう いいかな?
オレはさっそくゲーム雑誌を数冊も買い込んだ! 一冊 二千円以上もするやつががあって足がすくんだ。
初めて買ったゲーム雑誌、何を書いているのか分からなかった。
たぶん・・・
きっとだろう・・・
オレはゲーム雑誌を部屋の隅っこにきれいに並べて置いた、それ以来、その本は開かれることはなかった。
よく考えて買わなければいけない、それが 後悔、先に立たずなんだと思う。
だから 教訓を生かし 二度とゲーム雑誌は買わなかった、当然 これからも買うことはない。
オレは大学の合否を待たずに、これからの身の振り方を考えていた、が なんと驚いたことに合格だった!
一瞬 何かの間違い? と思い何度も何度も合格通知に目をやった、うん、間違いない、城島 茂 オレの名前だ! いや待て、同姓同名と言うこともある、TOKIOのリーダーみたいに、・・そのとき母さんは 涙を流して喜んでくれた、「しげちゃん、おめでとー!!」
気がついたら母さんはオレの前からいなくなってい。
きっと また、ご近所にわざわざ言い触らしに行ったんだな、と思った・・冷汗が出た。
オレは 焦った、もし間違いだったら、そう考えたら また、母さんを傷つけてしまう、だから 大学に問い合わせてみた、なかなか無愛想な電話対応だったが、間違いなく合格だった。
だが・・・
それでも信じることが出来ないオレは、昼は近所の神社でお百度を踏み、夜は自室で座禅を組みお経を読み上げた、それを三日三晩続けてお祈りを捧げていたのだ。
どうか、間違いではありませんようにと。
ナンミョウホウレンゲキョウ、と何度も何度も繰り返した。
そして眠くなったら寝た。
ちなみら 神道と仏教の違いは大学生になって知った。
だが、合格が確信へと変わったとき、まさに ああ・・天にも昇るような気持ちだった!
神社には神様はいるんだって思ったね!
オレはこの年から毎年 初詣に行くよう心に決めたんだ!
それ以来 毎年、家族三人で 三が日を過ぎてから初詣に行っている。
実は下に兄弟がいる、オレをバカにしてるのでいないものとする。
神様! ありがとう。
大学生になってからいろんな事を考えるようになった、ふと 現実逃避して 何度も 電車を見送って遅刻したり、欠席扱いとなった事が何十回とある、・・それで留年したのかな?
まあ、それはいいだろう、踏切を渡っている最中にオレはふと、考えごとをしてしまったのだ、踏切の遮断機が目の前を降りていくのが見えた、まるでドラマのワンシーンのごとくゆっくりとだ・・、電車はゆっくり"私"の方へと進んできた・・、
あのとき・・都会の踏切で人がたくさんいたから良かったんだろう。
天の声が遠くから聞こえてきた・・
「バカやろうっ!! おまえは死にたいのかっ!!」
だか ここは田舎だ、電車なんか走っていない、フフフ・・安心だ、轢かれることはない。
だが、バスは走っている、一日三便、週二回、月曜と木曜だ、初めて見る田舎の時刻表だ。
・・・・・?
オレは・・
・・何してたんだっけ?
ま、いいや・・いつものことだし・・そのうち思い出す。
ああっ! 腕が痺れてきた! ずっと素麺のお盆持ってたから・・
そうだ! 昭吉が素麺持ってきて・・
はっ!!!
思い出した・・・
ずっと素麺のお盆を持ってヘたり込んでいたのだ!!
オレは静かに素麺のお盆を横に置いた。
・・そう、あたりは水浸し・・・
簡単なことじゃないか、オレはクヨクヨ考えすぎる!
たかが ウンコじゃないか! いやっ! 違うっ!! そもそもウンコなんてしてないじゃないか!
オレは小便を漏らしただけだ! けっしてウンコではない! そこんとこをちゃんと分かってなきゃだめだっ!
うん! なんかふっきれた! たかがおしっこ漏らしただけだ、誤魔化すなんて簡単じゃーないか。
力がみなぎってきてくるのが分かった、そして胸を張った! せっかく昭吉がわざわざ素麺をこんな夜中に持ってきてくれたんだ、小腹もすいたから後で食ってみるかぁと、立ち上がった瞬間、あ・・立ちくらみが・・・。
ああ・・血が足りない、何でだろ・・栄養不足かな・・・?
それとも運動不足かなぁ?
そう言えば一年近く、運動してないなぁ、とりあえずはもう一度 風呂に入ろう。
はいてたジーパンと下着をぬいでと、・・その上からバスタオルで巻いてと、小学校のプールの時間を思い出すなぁ、へへへ。
洗面用具を持った、代えのタオルとパンツも持った、忘れもんはないよな、よし。
オレは、そー・・と玄関で聞き耳をたて、誰もいない事を確認してから静かに戸を開けた・・。
はっ!!
そうだ! 玄関の扉に鍵がついてない! オレはここへ来てから一度もその事に気が付かなかったのか!? 昨日も一昨日も鍵かけずに寝たのか?
そもそもなんで鍵穴がないの・・?
あっ! この扉! 家の中で使う戸じゃないのか? 室内用!? 玄関に使う扉じゃねーよっ!
嘘だろ・・・。
じゃあ・・、
どうやって鍵かけるんだよ・・?
ああっもう、何なんだよっ!!
都会じゃ絶対ありえーねぇよ! ここ借りる時も玄関にカギ付いてますか? って、不動産屋さんに質問するのかぁっ!? おかしいだろっ! そんな質問っ!! 普通はッ! ついてて当たり前でしょおっ!!? なんで普通にないのぉっ!? 鍵穴ぁ・・。
田舎なら当たり前なのかあっ!!!
ふざけんなよぉッッ!!
もういいっ!! 風呂入るっ!
オレは そのまま外に出て、戸を閉め、階段を下りた。
風呂やトイレに行くのに一度外に出なきゃなんないってのはなぁ・・、まあ、仕方がないかぁ、家賃二万円で風呂も水道もタダなんだから。
階段を下り、トイレの前を通り、風呂の前まで来たが、風呂場の電気がつけっぱなしになってる、誰か入ってんのかな? 夕方 オレはちゃんと消して出たのを覚えている。
ガラガラガラ・・と引き戸を開けると中はちょっと蒸し暑い・・!?
誰? 浴室に入ろうとしていたのか?
こっちを振り向き見ている
うわーこいつも目つき悪ー・・、背、ちっちゃ、顔デカっ! しかも丸っ! 童顔?
それでもオレは冷静を装い「あ・・お風呂ですか?」と言った、その瞬間、「しーっっ!!」と 静かにしろと言う合図をした。
そして 小走りにトトトトト・・と、オレの前まで来ると、「なんだ お前っ!! 何しに来たんだっっ!! おまえっさっき、風呂入ってたんじゃなかったのかぁっっ!? ・・ああ、ウンコ漏らしてたって言ってたの、あれお前かぁっ!! ハハハ!!」と 小声で喋りかけてきた!
ウンコは漏らしていないっ!! 断じて漏らしてはおらんわッ!! 「!! あれはっ、・・そのっ」
「でっけー声、出すなよっっ!! このボケーっっ!!!」と この顔のでかい、背の低い男は言ってきた!
「何なだよっ!? お前はっ?」
「お前とはなんだあっっ!!! 年上に向かってその口の利き方はなんだぁっっ!!!」
と そのとき・・
ガラガラガララ・・・浴室の引き戸がゆっくり開いた、
!!!??
んっ!? さっきの金髪美女!?
「ソフィーさんっ!?・・」 バスタオル巻いてるっ!! て事は裸!?
はっ!て事はこの丸顔男は覗いてたのかぁっ!?
「・・城島せんせい・・わたしちょっと待ってたんですけど・・・」と金髪美女のソフィーさん。
「い いやっ、それはぜんぜんいいんですっ!・・ハハ・・ゆっくり入ってください!」
「・・もう わたし上がりますんで・・、」
「え!?あ、はい・・あの・・こいつ・・」
「? あ、上島くん・・!?」
あれ? 知ってんの?
「! ソフィーさん、知り合いなんですか?」と横の丸顔チビを見ると ソフィー先生の体をなめ回すように見ているではないか!
「おいっおまえっ!! 何じろじろソフィーさんの・・見てんだよぉっ!」
「なんだっ!!てめーっっ!! 誰に向かって口きいてんだっっ!!」
「ちょっとっ! しんちゃん! ケンカはだめよっ!」
しんちゃんっ!? なにっ!? その親しげな呼び方はっ!? ええぇぇーっ!? すっごく嫌なんだけどっ!
「・・だってこいつさー、生意気なんだよぉー、鉄は熱いうちに叩けって言うじゃんかー、・・だから 今のうちに」
なんなんだこいつは、・・何が鉄だっ! 何の話だっ!!?
「・・二人とも 同じアパートに住むんだから仲良くしないと ダメだよぉー。」
「ええっ!? こいつ同じアパートなのっ!? 変質者じゃないのっ!?」
「なにぃっー!! 誰が変質者だあぁぁぁっっっ!!! 表に出ろっ! このやろぉーっっ!!」
弱そうなので、こいつの言葉を無視した。
「ソフィーさん そのままじゃ風邪引くんでもう一度 風呂、入ってください、ぼくは ぜんぜん後で構わないんで。」と言って先に脱衣場から出て行った。
「じょ・じょーとーだっ!・・このやろーっ・・・」
? なんだ こいつビビってんの? おもいっきりハッタリじゃないのか?
オレは外に出て引き戸の前に立った、腰にはバスタオルを巻いている、いわゆるフリチンだ。
後から出てきたそいつは「・・おまえっ・・やんのかよっ・・・?」と言ってきた。
「なぁにをだっ!?」 なんかウッゼー!
「け・ケンカに決まってんだろっ!」 する気もないのに言ってんじゃねーよ。
「はあ? やんねーよぉ・・」
「はははっ・・ヒビッてんのかっ!? いい子ちゃんぶってんじゃねーぞぉー、おまえっ! 後から来といてなんだっ! そのでかい態度わっ!! だいたいなぁっ、お前は目上の人に対して口のききかたも知らないかぁっ!?」
「目上だぁっ!? だったらなぁっ、風呂場で覗きなんてやってんじゃねーよっ、しかも堂々とっ! ・・この変態がっ!」
「何が変態だっ!! オレはソフィーが風呂入ってたから、覗きに来ただけだっ!!」
「はあっ!? おまえっっ!? 何言ってんの!? それが変態だって言ってんだよぉっ!!」
「てめぇーっっ!! いい加減にしろよっ!!」
「!? 何をいい加減にするんだよッ!? おまえっ!! ほんとっ! 何言ってんのっ!! ほんと何言ってんのっ!? 頭、おかしいのッ!?」
「何って決まってんだろぉっ!!! ソフィーの裸を見に来たに決まってんだろおぉっ!! 他に何を見ろって言うんだよっぉ!!」
「・・・お前はソフィーさんのなんなんだよっ!?」
「・・な、なんでもいいだろっ!! ・・こいびと・・彼女っ・・・」
「なっ!?」 まじなのかっっ!? ほんとなのかっ!? こんな・・こんな奴が・・・
「なーんて言うのは嘘だけどぉー・・。」
「な!? 嘘なのかっ!? おまえの彼女じゃないんだな・・、そんなのありえないよな・・」
「何がありえないんだっ!? ソフィーはオレの女じゃないっ!! だが、誰の女でもないっっ!! だから あいつはオレに惚れる運命なんだよっ!! 運命で決まっているんだっ!! あいつはぜってーオレのもんだっっ!! お前みたいな不細工には似合わねーよっ!!」
「・・・誰の彼女でもないんだな、」
「おおっっ!! だが いずれっ近いうち、おれのか」「そうかっっ!! ソフィーさんは彼氏がいないんだなっ!!」
「ああっそうだって言ってんだろっっ!!! だかなぁソフィーはいずれオレの花」「じゃあっっ!!! なんでお前が堂々とソフィーさんの風呂っ! 覗いてんだよっ!?」
「だっからぁっ!! オレの花嫁になる女の裸を見て何が悪いんだぁよっっ!!」
「・・・お前、・・・バカだろ…。」
「な、何がバカだあぁっっ!! バカって言うもんがバカなんだよぉっっ!!」
もしかしたらこいつは危ない奴なんじゃないだろうか!?
「おまえっ!! もしかして本物のバカだろっ!! すっげぇぇーバカだろっ!! もしかしてじゃなく真のバカだろっ!!」
「言わせおけばちょーしにのりやがってぇぇっ!!」
ガラガラガラ・ラ・・と背にしてる引き戸がゆっくり開いた、当然 中にいるソフィーさんだ。
このバカで変態との言い争いは丸聞こえだったはず・・
「ダメですよ・・二人とも、ケンカしちゃ、・・城島センせ、空きましたので次どうぞ。」
「あ、はい、ありがとうございます。」
オレはソフィーさんをちょっとだけ見送り脱衣室へとバカを無視して入っていった。
「お、おい、何勝手に入ってんだよっ!!」
オレは「入ってきたら泣かすっ!!」と言って睨みつけた。
「な・・・泣かすだとぉっ!! 小学生のガキみたいに言うんじゃ・・」 こいつは無視した方がいいだろう。
バシャッと戸を閉めた。
「・・・・・・・・、」
静かになったか・・
オレはもう一度風呂に入った。
ここの風呂は川から引っ張ってきている水を使っているから・・
当然きれいなんだろうけど・・、ちょっと抵抗あるなぁ・・上流で誰かおしっことかしたりしてないのかなぁー・・
・・・・・・・・。
・・・おしっこかぁ・・
とりあえず石鹸で体をもう一度洗い、湯船につかった、円形の風呂釜にはその大きさに合わせて落し蓋が浮かんでいる、これを足で踏んづけて入ると・・大家さんから教わったが、・・ちょっと怖い、いいのか? 踏んづけて。
とりあえず 落し蓋はすんなり沈んでいった、そして オレは風呂釜の中にゆっくりしゃがんで 膝を抱えてじっとした。
・・・・・。
はあぁー・・、いい気持ちね・・、夏でも熱い風呂に入ると ホっとするなぁ・・。
・・やっぱりここの川はきれいなんだろうなぁ。
匂い・・か。
春名先生が 最後の清流だって言ってたけど ほんとに最後の清流なのかもしれない。
・・春名先生かぁ・・美人だなぁ・・可愛いなぁ・・・
あ、ソフィーさんも美人だよなー、やっぱ 外人さんは違うなー、初めてあんな近くで見た、目が青かった。
・・ソフィーさんはさっきバスタオル姿だったって事は 裸ぁ・・?
・・あたりまえだけど、
はっ!!
そうだっ!! そうじゃないかっっ!! この風呂の水、いや、お湯!!! ・・ソフィーさんが入っているっ!?
えええぇっ!! そーなのかぁーっ!! やっぱそうだよなっ!! そーに決まってるっ!!
ああ! いい匂いがする!
温泉のお湯は飲めるんだよな!
これってぇ、温泉のお湯だよねぇ? (いえ、川の水です。)
よしっ! 飲むかっ! オレは喜んで自分の浸かっている風呂の水を両手ですくい上げた!
ジャバァ・・
スー・・
ハアー
なんかいい匂いがするぞ! これソフィーさんの匂いになるのか!?
ホホホホホ・・、飲んじゃお。
・・ゴックン、
・・うん、体に良さそーだ! さすがは温泉のお湯だ! (川の水です。)
て事はだ、春名先生もお風呂に入ったりするんだよねぇ、当たり前だけど、そんでもって当然裸ぁ・・?
ああああっっ!! これはダメだぁっっ!! 来て早々、・・夜は長いんだぞっ!!
ダメだっ! ダメだ! いかんっ!! いかんぞぉっ!! これでは収まりがつかんっ!! どーするっ!?
おおっそうだっ!!
さっきの変態でチビでバカの顔を思いだせっ!! そーすると萎えるはず!
・・なんだあの腹立つ顔はっ!!
・・ううっ!! なんか腹が立ってきたなぁ!
・・同じアパートに住んでるって言ってたなぁ・・、あいつがぁ? ここに住んでんのぉ? うそぉっ! なんか、すっげー嫌なんだけどぉ!
ここに住んでんのぉっ!? どこの部屋・・!? ええぇーっ! このアパートぉー!? どこかの橋の下って聞き間違えたって事はないのかなぁー? 村には橋がいっぱいあったし、部屋ってどこの部屋!? 段ボールの部屋!? 誰も住んでない犬小屋がそこに放置されてたけどぉー、そこに住んでんのかぁ!? あれなのかあ!?
・・仮にだ! 仮にあの犬小屋に住んてるとしてもだ! あのバカもここの風呂入ってるって事になるよなぁ、
・・さっき 飲んじゃったけど、
・・いやっ待てっ、だけどソフィーさんの後だ!! だからセーフ!! 大丈夫! セーフだっ!! セーフだから今日はいいとしよう。
フゥー・・ 風呂はとても気持ち良かったぁ、ちょっとのぼせちゃったかな、男女兼用のお風呂! きったない風呂場だけど、・・きれいに見えてくる。
その後、オレは部屋に帰り、昭吉の持ってきたそーめんを食いながら、春名さん&ソフィーさんのボデェーが頭に浮かぶのをさっきのデカい顔のバカを思い出しながら必死に我慢してたら、
コンコン・・と 扉の叩く音が聞こえてきた。
・・またか、
怖いって事もないぞ! 慣れた! そう、人というものは順応する生き物なんだよ。
・・三回も風呂、入れるかって。
ドンドンッ! ドンッ!! おーいっ!!
ええーっ!? 嘘だろーっ!! さっき会ったばっかだぞぉ!! ヒビったんじゃないのかよー! さっきの丸顔ぉー・・
・・誰がノックしているか分かったので、出ないことにした。
それにさっき、素麺食って美味かった。
・・うん、あれは美味かったぞ! ソーメンはどこのそーめんなんだ? 三輪か? 揖保か? のどを通る時のあの食感は さぞかし名の売れた地産のものであろう。
うまかったぞ、つゆも良かった! ダシがいいな! あれは醤油ベースの鰹節、シイタケなどにイワシなどの煮干しをたくさん使っていた事だ! 風味! 香り! 味! 日本的な味で素晴らしいっ!
田舎の祖母ちゃんが作ってくれた素麺も たしか煮干しがよく利いていたなぁ。
オレはもう寝る。
布団の中なんだ・・。
・・遠くで猿か何かが吠えている・・・
・・そのとき
ガチャッ!!バアンッッッ!!!
「なんだっ!?」 オレは 大きな音に驚き飛び起きた!
「おいっ!! てめぇーっっ!! さっきから呼んでんのに聞こえねーのかぁっっ!!」
「あああああぁぁぁーっっ!! なにっ入ってきてんだっテメェーッッ!!」
「・・おい、何でここ濡れてんだっ!?」
「おまえにゃっ関係ないだろっ!!帰れっ!! さっさと帰れッッ!!」
「ははあん! おまえぇーっ! ウンコ以外にションベンまで漏らしたのかぁー!? ウンコタレー! ションベンタレーぇっ!! ははははっ!!」
「ウンコなんか漏らすかよっっ!! とにかく帰れっ!! だいたい何しに来たんだよっ!! おまえはっっ!!」
「はあぁっっ?? 年上に向かっておまえだぁーっっ??」
「帰れッッ!!帰れッッ!! 塩まくぞっっ!!」
後で分かったんだが、この顔のでかい、変態バカ男は 同い年と言う事だった。
最初にナメられないよう、鉄は熱いうちに 年上だと"嘘"をついたそうだ。
威張りたかったそうだ。
知れば知るほど腹の立つ奴だった。
家に鍵は絶対必要だと思った。
田舎に泥棒はいないようだが プロのバカはいるみたいなので鍵は必要だ!
明日はオレにとって人生における記念すべき日となる。
そう、ながーい学生生活から一転、想い描いた理想の未来!
マイライフ! マイロード!
"私"の小学校! "私"の仕事場!
明日は、「初出勤」で「初登校」となる。
オレにとって大事な大事な登校初日なのだ!
こんなアホをいつまでも相手になんかしていられない!
今日はいろいろあったが、井上春名先生に昼食をご馳走になり、そして金髪美女のソフィーさんとお近づきになれた素晴らしい前夜祭だった。
と、言う事にしておく。
第三話 「四畳半の住人」




