第二十七話 「コン太のガールフレンド?」
第二十七話 「コン太のガールフレンド?」
冬の玉村。
あれほど見えた緑豊かな景色はどこへやら。
雑草は枯れて土がみえる。
常緑樹の木々は緑の葉を残したまま立っている。
ある冬の朝早く、オレは駄菓子屋に牛乳とパンを買うためマフラーとダウジャケットを着込んで出かけた。
みけつ様は春名先生の家で暮らしてる。
迷子届はどーなったのだろうか?
ちょうど市場へ行くバス通り、目の前の橋のところでコン太を見かけた。
コン太はブカブカの作業用防寒着を着込んで、水色のプラスチック製バケツを持って歩いていた。
中に水が入っているのだろう、両手で持っている。
やっぱりあいつが校長先生の川魚を獲っていたのか!?
と、疑った。
川の上流の方へ向かって歩いていくコン太。
どこへ行くんだ? 人のいないところで校長の川魚を食べる気なのか?
そうは思いもしたものの、
この時は気にせず、そのまま駄菓子屋にオレは向かった。
そして帰り道、休みの日と言う事もあって、少しばかり気になったのでコン太が向かった方角へ、道を辿ってみた。
午後からも用事はなく、暇だったので散歩のついで、歩いてみる事にした。
川の向こう側にはみずほさんの家が見える。
山から冷たい風が吹いてくる。
玉川に沿って道があり、そこを歩いた。
この道は初めて行く場所だ。
段差のある小さな滝のような形状があり、その水が落ちる一面はプールになっている、村の子供たちは夏、ここで泳いだりするのだろうか?
三メートル以上はあるだろうか、登った先にも段々となった川が山奥へと続いている。
川沿いに狭いが道はあるが、
こういった場所は夏、マムシがいるかもしれない。
山の木々は川に道を開けるかのようにゆったりと立ち並んでいる。
冷たい風が吹く中だが、川の上流、風上から話し声が聞こえてきた。
一人はコン太だろう、もう一人は?
⚫⚫邪魔をしては悪いかもしれない、と思いつつもオレはそのまま歩いていった。
視界に入る、
向こうに、コン太と⚫⚫⚫
もう一人、
あれは、
コン太がオレに気がついた!
こっちを見ている、ちょー目つきが悪い、睨んでいるのか?
何だか近寄りにくい、当然だろ、二人で遊んでいるとこへ水を差すのだから。
すっげー睨んでいるコン太、その横に居るのは、
誰だろう? 女の子か?
歳格好はみけつ様や北本くらいか? だが何かがおかしい、とその時山から冷たい風が吹いてきた!
歩いて登ってきたから体は火照っていた、だが風は冷たかった!
そうだ、この子、肌着一枚だけじゃないか!
しかも、こんなに冷たい風なのに両足を川につけている!
夏の光景じゃないか!!
「おいっ! おまえっ!」コン太が先に声をかけてきた。
「何しに来たんだ!?」 ものすごく邪魔者扱いだ、でも仕方がない、その通りなのだから。
オレは静かに冷静に声をかけた「コン太、その子は誰なんだ?」
「誰だっていいだろっ!!」そうかもしれないが!!
⚫⚫このやろ〜っ
女の子が岩場から立ち上がり、川の中を歩いてオレの方へと近づいて来た。
冷たくはないのか!? 寒くはないのか!? 見てるこちらが寒くなる!
その子は愛らしく、笑顔だった。
そしてオレの前で立ち止まり、「何して遊ぶ?」と言ってきた。
「え? 遊ぶ?」
「うん、何して遊ぶ?」さらに愛らしい笑顔で問いかけてきた。
遊ぶとはどお言う意味だろうか!?
この愛らしい小さな子は 穢れのない純真な目でオレを見つめていた。
いきなり、遊ぶ?と言われても、答えようがない、それにこの子は川に足をつけっぱなしで寒くはないのか!?
はっ!! まさかっ! まさかとは思うが、この女の子は、コンタと同じ妖怪なのかっ!?(ちなみにコンタは妖怪ではありません。あえて何かと答えるなら、神様の遣い、放し飼い、小間使いみたいなものです。)
もし、オレが遊ぶと答えると川の中に引きずり込むとか!何か恐ろしい事でもやらかすというのかっ!? 漫画ではよくある話だ!
こんな純真無垢な幼女がっ! そんな恐ろしい事するのかッ! コン太ならまだしもッ!
オレは軽くパニクってしまった。
「タキちゃん、こいつ小学校の先生だよ!」と、ふつーに話すコン太、タキちゃんてこの子の名前なのか!? ⚫⚫ちゃん付けなのか、では妖怪ではないということなのか!
まさかっ!!まさかとは思うがっ! みけつ様と同じ、神様、なのか!?
それはそれで恐ろしい!
「おいお前! さっきから顔が可笑しいぞ! 何がしたいんだ?」と、コン太。
顔!? お前に言われたくないが、表情のことを言っているのか!?
また、顔に出ていたかっ!
オレは少し冷静さを取り戻していた。
「おい、コン太、この子は誰だよ?」
「誰だっていいだろっ!」
「ねー、何して遊ぶぅ?」
⚫⚫振り出しだ。
コン太のやつ、タキちゃんをオレに近づけたくないようで、紹介すらしなかった。
「何して遊ぼっか?」を繰り返すその子に、「じゃあ、葉っぱの船作って競争しようか?」と言って足元に落ちている葉っぱを手に取った。
愛くるしいその少女はいっそう笑顔を見せ「やるっ!」と答えた。
「お前、枯れ葉なんかで競争すんのかぁ!?」とコン太が言ってきた、違うのか!?
「タキちゃん、オレが葉っぱを持ってきてやるよ!」と、ノリノリで草むらに飛び込んだ。
遊ぶ気、満々だな。
コン太が葉っぱを拾ってくる、一、二分の間にオレはこの女の子に話しかけた。
まず、「川の中に入ってるけど、冷たくないの?」と聞いてみた。
女の子は「うん、冷たいよ、でももっと冷たくなるよ。」と答えた。
川の状況を聞いたのじゃなくて、君の状況を聞いたんだけど⚫⚫
「冷たいんだったら川から上がったら? 風邪引いちゃうよ。」と改めて聞いてみた。
「⚫⚫⚫川から上がる? 風邪引いちゃうのぉ?」
何だろうか? 他人事なのかな⚫⚫、言った事を理解出来てないのかな? もしかしてかわいそーな子だっりするのだろうか?
だが! オレはもう、雨宮メリーで馴れている! 冗談はさておき、オレはこの子の手を取って「川から上がりな!」と言って引き寄せた!
「触るなあああッッ!!」
その時、コン太の怒声が聞こえた!
次の瞬間、女の子を掴んだオレの右手に激痛が走った!!
コン太がオレの右腕に噛み付いてきたのだ!!
「コン太っダメッ!」コン太はすぐに噛み付くのをやめた、
コン太のやつ、やっぱりこいつはっ!!
人の姿をして言葉を喋るが、こいつは畜生だッ!!
さっきのあの目、あの牙、あれは人間のものなんかじゃない。
ダウンジャケットに穴が開いてる! 牙が突き刺さったんだ!
オレは腕をまくってみた。
前腕には牙の跡とそこから赤い血が流れていた。
オレの血を見たからか、
「ぅわああああーんぅああああーん⚫⚫」女の子の無邪気な泣き声が聞こえた、
「た、タキちゃん!⚫⚫タキちゃん!⚫⚫」コン太は焦っていた。
オレはコン太の獣のような姿と牙に恐怖を感じていたが、この女の子のことを考えるとこのまま放って帰るわけにはいかなかった。
「おい、こっちへ来い! 村に行くぞ!」
女の子は泣き止んだ、そして首を横に振った。
「何で!? こっちへ来いっ! そんな化け物のそばにいるな!」
化け物と言う言葉を使った!
理解するだろうコン太にわざと傷付ける言い方をした!
この女の子にはかなりの想い入れがあるとみたからだ。
イヤらしいやり方かもしれない、だから、
オレは川の中へと靴のまま入っていった、「こっちへ来いっ!こんな奴と一緒にいるなっ!」
「⚫⚫や、やめろぉ!タキちゃんにさわるなっ!⚫⚫触るなって言ってるだろっ!」
コン太は泣いていた、「⚫⚫触るな!⚫⚫触るなって⚫⚫」
オレは女の子から手を離していた。
「帰れよっ! ここはお前たち汚い人間の来るとこじゃないんだよ!⚫⚫だから帰れよ⚫⚫⚫」
「その小さな女の子をこのまま放って帰れって言うのか?」
「ああ、そうだよ、この子はここが家なんだよ、」
「⚫⚫ここってどこだよ? どこに家があるんだよ!?」
「この川だよ、おまえはみけつの人柱なんだろ!? だったら分かるだろ、この子はこの川の女神様なんだよ、だからここから離れられないんだよ!」
「川の女神様だと⚫⚫?」
ふざけているのか!? いや違う、流れからしてそんな展開ではない、なら本当に女神様なのか!? みけつ様と同じってことなのか!?
それはそれで、すっげー怖い!
女の子が冷たい川の中にいて平気な事、事態が緊急を要する事にも思えたが、
女の子はオレに近づき、コン太に噛まれた腕に手をかけてきた。
「た、タキちゃん! ダメだよ! 人間に近づいたらっ!」
傷を負った腕に女の子の小さな手のひらが被さる。
そしてその手のひらからは冷たい水が溢れ、流れているようにも見えた。
少しすると女の子は、「ごめんなさい。コン太には強く言っとくから⚫⚫許してあげてぇ。」そう言うと、オレから離れていった。
そして女の子の体は水と同化するように消えていった!
目の錯覚だろうか!? 幻覚だったのだろうか!?
女の子はどこにもいなかった。
コン太は半ベソをかいていた。
オレの右腕の傷は、不思議な事に、塞がっていた。
滴った血のあとも、あの女の子の手のひらから湧いてくるように見えた水によって洗い流されていた。
多分、
コン太の言う通り、あの女の子は神格なのだろうと思った。
帰りの道、ふと目をやった川の渦に煙草の吸い殻が捨ててあるのに気がついた。
第二十七話 「コン太のガールフレンド?」




