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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第二十六話 「同人の集い」

第二十六話 「同人の集い」



近頃、みけつ様は友達ができたらしく、休みの日には友達と日が暮れるまで遊んでいるそうな。


じつに子供らしいお子様です。


校長はちゃんと迷子届けは出してんだろうか?


日曜日の朝早く、上島の奴が元気よくやって来た。


「おい、城島ぁ! 用意できてるかぁ?」


「・・用意ってなんだよ? オレは今、朝のコーヒー飲んでんだよ。」ネスカフェのインスタントコーヒー。


すっかり忘れていたが、町のメイドカフェに行くとか上島が言っていたことを思い出した。


初めから行くつもりもなかったが、ちゃんと断わらなかったオレも悪い、それに真冬に備えて石油ストーブを買いたかったので、行く事にした。


「寒くないのかよ、そんなカッコで、」上島はトレーナー一枚にリックサック背負っていた。


「ああ、オレは暑がりなんだよ、これでちょうどいいだよ。」


プシュウーッ! ガタン・・


二十分遅れでバス到着。


「なんで、二十分も遅れてくるんだよっ! 村の中で渋滞でもしてたのかぁっ!?」


「怒んなって、城島ぁ 今日は梶山だから遅れてきたんだよ、あいつは時刻通りには来ないぜ。」


・・それってダメじゃん


マイクロバスの後ろ半分は農作物の段ボールと米の入った袋がのせられていた。


「おいお前ら、仲いいんだな、城島ぁ、お前もオタクだったんだな、やっぱり、ハハハ。」


すっげーバカにした言い方だ、感じ悪。


バスは途中、岩田村で止まり、二時間かけて町のバス停まで行く。


町についたのは、予定時刻より三十分も遅れていた。

梶山が遅れて来たうえに、岩田村のバス停で掃除をしていたおばさんとミカン食いながら話し込んでいた事もあって普通に遅れたのだ。


「ま、よくある事だ! 終点は、農協までだけどな、手伝うの嫌だろ、梶山だから後ろの荷物下ろすのにぜってー手伝わすから、だからここで降りるのがベターなんだよ。」と言って梶山が運転するバスを降りた。


ここからさらに駅まで歩く事、二十分、「すぐそこだって。」と言う上島はすぐそこでへたばり、「ちょっと休んで行こうぜ、」と販売機で500のジュースを買い、一気飲みしていた。


十歩、歩くごとに休憩、そしてまた休憩、休憩ばかりする上島にイラッときた!


「おまえっ! ふざけてんのかっ!ちゃんと歩けよっ!」


「久しぶりに歩いたから息が上がっちゃってー・・ハァハァ・・、ダメだ!頭がクラクラする、」と言って、地面に寝転がっ

しまった。


上島が倒れた!


「おいっ!大丈夫なのか!? 病院行ったほうがいいんじゃないのか!?」


「病院だとぉっ!? 病院なんて行かねーっ!! オレは注射が嫌いなんだよっ!!」


「・・おまえは歳いくつだよ?」


町と言っても人通りは少ない住宅地、舗装された道端で大の字を描いて寝転ぶ上島は、一見 太った家のない人みたいだ、危ない感が出ている。


それにトレーナーの腹のところに アニメ柄が入っている、その隅にラブライブと書いてある、一緒に歩くのが恥ずかしくなってきた。


「ハァハァハアー・・、それにオレはよ、健康には自信ががあるんだよ。」


「・・その自信はどっからくるんだ?」


粗大ゴミ置き場に捨ててあったカラフルな老人用の杖を拾った上島は、なんとか駅までたどり着く事が出来た。


「ハァハァ・・、よし!着いたぞ! 城島ぁ! これから電車に乗るぞぉ!」


生還した感が出ている上島。


電車に乗る事、三十分、オタク街と思われる場所についたのは昼前だった。


「もうお昼じゃんかよお〜!」と愚痴る上島、


「誰のせいだと思ってんだよ、」


・・なんか気持ちが悪いと思ってしまう街だな。


見るからにオタクと思われる人達がたくさんいる、それにメイド服を着た女の子がチラシを配って客引きみたいな事をやっている。


アニメのカードやグッズ、PC関係の機械を売っている店が両側に数十店舗並んでいて、中にはビル丸ごとがアニメ関連だったりする。


上島はすでにバテていた。


「おい、ちょっと休んでいかないか? 疲れちまった!」


「さっきから何回、休んでんだよ、メイド喫茶行くんじゃないのかよ、そこで休めよ! そのあと、ストーブ買いに電気屋さん行くからな!」


「ハァハァ・・ 分かってるよ、その前によ、そこに美味いカレーの店があんだけどよ、ハァハァ・・食ってかね?」


ちょうと昼時もあって上島の勧めるカレー屋に行く事にした。


カレーなんてどこで食ったって同じような味なんだが、


「どーだ!? うめーだろ! ここのカレー。」と言うもんだから、


「・・ああ、そーだなー、まあまあかなー」と答えた。


ボンカレーもバーモントカレーも、CoCo壱番屋も味がちょっと違うだけで、みんな普通のカレーの味としか思えない。


やはり、感性で味あう以外に、若人であるオレにとっては繊細な味覚なんてない!

何て~のだろ、一押しの説明があったほうが分かりやすいかな、


例えば、野菜がいっぱい、食物繊維もたっぷりだよ! とか、コラーゲン入ってるよ! とか、リンゴとハチミツ入ってるよ! とか、説明文があれば、それに騙される感じで美味いと思えてしまうのだ。


カレーを食い終わって店を出たら、


「よし! メイドカフェに行こうぜ!」と言う上島、


「はあ!? いま、カレー食ったところだろ!」


「茶ぁーだよ、茶ぁー! 茶ぁ〜飲みに行くんだよ! それに待ち合わせ場所でもあるからな!」


「待ち合わせ!? 初めからメイドカフェに行けば良かったんじゃないのか?」


「食うもんねーんだよっ!」


上島は待ち合わせと言っていたが、聞いていない。


もともとはこの街、pc部品など電気部品関係を売る小売り店が軒を連ねるこ汚い街だったのだが、いつしかアニメ書籍やいかがわしいpcソフトを売る店が出来始め今に至っていると言う事だ。


メインストリートから少し入ったビルの一階に、三脚の黒板にミルキーハウスとチョークで書かれ、その横に漫画の女の子が、“お兄ちゃん、お帰りなさい。“と イラストで描かれている。


入るのが恥ずかしくなる店だ。


「お帰りなさいませ、ご主人様!」と店に入ると女の子達の声が一斉に聞こえてきた。


ちょっとあせった! 緊張する!


「いま帰ったよ〜!」とベタなセリフで返事をする上島。


向こうで手を振る人がいる、上島はその手を振る人の席に座った。


「いや〜上島くん、久しぶり! 夏コミ以来だね。」席には二人、小太りの男と、もう一人は 帽子にサングラス、マスクをしている、顔を隠しているのか?


「那珂ちゃん、持って来たぜ!」と言って背負っていたリックから手のひら大の箱を出した。

その中に この前上島の体重によって潰れたフィギュアが入っていた。


「うん、・・うんうん、大丈夫、なおるよ、じゃこれは僕が持って帰りましょうかね。」と小太りの男。


(´-﹏-`;)(´-﹏-`;)(ㆀ˘・з・˘)ლ(´ڡ`ლ)




この後、梶さんと言う頭の薄いメガネをかけた五十過ぎのおじさんが現れた。


歳の離れたお友達なのか!?


梶さんはメイドさんに、ラムちゃスペシャルと言う実にふざけたパンケーキ三枚が大皿にのっかっているだけの、1280円にオプション付きを注文していた。

合計2780円、税抜きだ。

軽くボッテんじゃないかな。

ホイップクリームでなんだか汚い字が書かれてあるパンケーキを、ナイフとホークで小刻みに切り分けチンタラ食べる梶さん。


ここは異常だ!


なんだろう、この胸騒ぎ、ここに居てはいけない気がする! 子供帰りしてしまう! いや違う! これはあれだ! 引き返せない所まできている、いわゆるそれなんだ! 一線を超えてしまってはいけない! 社会復帰出来なくなるッ!! 罪人でもないのに罪悪感でいっぱいだ!


梶さんは五枚入り百円で売ってそうなパンケーキ三枚を三十分もチンタラと食い、「美味でした。」とぬかしていた。

どー言う意味なんだ!? 美味いわけないだろ。


そしてすぐさま、メイドさんにオプションを要求していた。


そのオプション注文と言うのは、好みのメイドさんと一緒に写真を2枚撮る、そして手を握ってもらって、「ダーリン! 浮気したら許さないっちゃあ〜!、電撃〜っ!」と、言ってもらっていた。

それで金を取るのか!?

本当に嬉しいのか!?

オレは見ていて悲しくなっていた。


・・よわい五十にして天命を知っているのだろうか、それでこれか。


その後、メイド喫茶を後にしたオレを含めた上島一行は、まんだらけかホンダラケか、ふざけた名前の古いオモチャの店により、「ど〜だ!城島ぁ〜! すげーだろっ!このオモチャ屋!」となんの説明もなしに自慢され、店内を少し見て回った。

昭和の頃からの古いオモチャがたくさん陳列されていた。

高額だ!テレビのニュースで何度か見たことのあるロボットのオモチャが高値で売られている。


そして「ここは高けーんだよ、だから安いとこも連れてってやるよ!」と、ノリノリの上島は疲れ知らずだった。

来る途中のヘタばり具合、あれは何なんだよ!? 拾った花柄の杖はどこやったんだよ。


二軒目の店に入ると、さっきのナンタラケとか言う店より店内は明るく、最近のアニメだろうオモチャが並べられていた。


オレは事もあろうに一つのフィギュアに目が釘付けとなってしまった、オレがまだ少年だった頃、VHSで見たアニメの主人公そっくりだったのだ。


なんとなく欲しいかなぁ・・と思ってしまっていたとき、上島の嫌らしいささやきが耳元で聞こえてきた、


「アミデジじゃん! 初めて見た! 城島ぁ〜、お前なかなかの目利きじゃん、そんなフィギュア滅多に出ないぜ、しかもニッキュッパなんて安いじゃんか!」


このフィギュアのアニメ、上島の説明によると、日本ではあまり売れなかったそうなのだ。


「だけどな、べー国ではヒットしたんだぜ! 主人公のねーちゃんがカワイカッコいいんだよな、だけど“ロボ“(アンドロイド)なんだよなあ〜、あのねーちゃん、赤ちゃん産めるんだよなあ〜、ロボなのに〜。」ふざけてんのか!?こいつ!!


この赤い服着て、太ももが魅力的なフィギュア! サングラスかけてるが脱着可能だ! おお! 顔がカワイイ、目がデカイ!


「これはかなりのレアだぜ! 二度と世には出ねーシロモンだ! 城島!これを逃すと二度とこのフィギュアにはお目にかかる事はねーぜ!それだけのシロモンて事なんだよ!しかも安い! ニッキュッパだぜ! 店の店員はバカとみた! 知らねーんだよ! めっけもんだぜ!これがあるんだよな、掘り出しモンがよ! ぜってーこのアミデジちゃん、お前に見つけてもらうためにここにあるんだよ! それにこいつ、アメリカ持ってけば十万にはなるぜ! むこうのオタクはフトコロもデケーんだよ! さすがべー国だぜ! フィギュアは裏切らねー! 城島! 今買わずにいつ買うと言うのだ!とナウシカも言っているんだぞ!」


オレは、買ってしまった。


ナウシカがそんな事言ってたかどうかは知らないが、上島の勢いに、熱い思いに、情熱に・・流され買ってしまった。


ああ・・・、仲間入りだ、も〜ダメだ、


気がつけばフィギュアを三つも買ってしまった・・、三つもだ。


昼夜が逆転していた学生時代、深夜アニメでお見かけした、“のんのんびより“のこまちゃんが可愛かったので、こまちゃんフィギュアと、“何とかアルペジオのハルナ“、金髪ツインテールでカワイイ♡ 春名先生と同じ名前だったのでこれを買った、一つ買うも二つ買うも同じだ! マグカップも買った、ハルナマグ。


アアアアアッッ!! 自分でも気付かなかったが、オレはヘ・ン・タ・イ・!だったのかああーッッ!!

上島はオレの何倍も買い込んで上機嫌だ!

はち切れんばかりに膨らんだリックを背負い、両手に紙袋、ポスターが何本もはみ出している! 漫画で見た秋葉帰りのオタクそのものとなっている!

しかも腹が出ているからジーパンがズレて半ケツ状態、冬であるにも関わらず下っ腹が丸出し! 両手がふさがってるから直したくても直せない。

その上、寒いからだろう、鼻水がたれている! そして満足笑顔だ!


バカ丸出しだ!


おまえはアニメキャラかっ!


絵に書いたオタクじゃないかっ! バカ丸出しだよ!


他の三名は、ほぼ手ぶら状態で何も買ってはいない。


オレはと言うと、石油ストーブを買わなきゃいけない、そのために上島はを同行させたのだから。


「おい上島、石油ストーブの安い店、教えろよ。」


「はあ〜、まだ行くのかよぉ〜、疲れちまったよぉ〜」


はあああああっッ!!?? 自分の用事が済んだらそれでいいのかっ!?


「テメーッッ!! ストーブ買うって言ったろーがよッッ!!」


「冗談だよ!冗談、安い店だろ、まかせろ!えーとだなぁ・・そーだなぁ・・・あの店なんか、いんじゃね?」


殴りたい!! 無駄に膨らんだほっぺを殴ってやりたいッ!!


こいつとはやっぱ相入ることなんて出来ねーッ!!


「あの〜・・ストーブをお探しなんですかぁ?」


! 今喋ったのは、帽子にサングラス、マスクの人、・・女の人だったのか!? いや、女の声のような男なのか!?


「オシメちゃん、知ってる?安い店、」バカのプロ、上島、オシメちゃんて何だよ!?


上島のバカと他二名はそのままパンパースと言う名の店に行って待つと言う事だったが、オレは行くつもりはない、ストーブ買ったら帰る!


オシメちゃんがストーブの安い店まで案内してくれる事になった、優しい人だ。


「四千九百八十円だったと思います、小さいのですよね、ストーブの上でおでんが煮炊き出来るやつですよね、でしたらあそこのヤマダ電気でストーブの特売やってるはずです〜。」


オシメちゃんのおかげでオレはおでんが煮炊きできるストーブを手に入れる事が出来た。


このストーブをお持ち帰りする。


バスがない、玉村に帰れない、もったいないけどタクシーしかないか。


だが、オシメちゃんは自分のお店、パンパースに招待してくれた。


「私のお店に来ませんか? 飲み放題です、今日は広島焼きをご用意しています。」


広島焼きとはお好み焼きの事だが、ストーブを買うのに付き合ってくれた事もあるし、オレはオシメちゃんのお店に行くことにした、それに上島のやつ、言わなかったけど、「上島さんならいつも小野さんのタクシーで帰ってますよ。」そーなの?


それにしても上島のやつ、プー太郎のくせに何でそんなに金持ってんだ!?


オシメちゃんのお店は少し入ったビルの二階にある、なんでもコスプレの仕立てとレンタルを生業にしていると言うことだ。

お店の中は小ぢんまりとしている、元々は飲食店だったようでカウンターキッチンが備えられている。

それと仕立ての際に使われると思われる大型のテーブル仕立て台が部屋の壁とカウンターの間に収まるように置かれている。


コーヒーの香りが薄っすらとしてくる、上島は酒が飲めないからカウンターの中でコーヒーをポコポコやってそれを一人寂しく飲んでいた。


梶さんと米澤さんは仕立て台の向かいに置かれている小ぶりのテーブル席で生ビール!?を飲んでいた。


梶さんはオシメちゃんのファンと言う事だかが、何のファンかは知らない。


米澤さんは相づちをうつだけの、会話にとどまっている。


二人の会話はよく分からない。


突然梶さんが突然、「苦しい、動悸がする、冷や汗が出てくる・・」と言い出し、倒れ込んでしまった!

顔が青ざめる梶さん!「ハァハァ・・大丈夫です、・・少し横になっていれば・・」

こんな狭いとこでどこに横になるのだ!?

床に寝転がる梶さん、

冷や汗がダラダラと流れている!急性アルコール中毒!?

「救急車よびましょうか!?」とオレはちょっと焦ってしまった!


「いえ、・・大丈夫です、暑い、暑いです。」と言ってまったく似合わないスカジャンを脱ぎ、その下に着ていたカッターシャツのボタンを外して下着代わりのTシャツ一枚となった。


「ああ〜、だいぶと楽になりました。」とニヤリ、何だか満足げな笑みを浮かべていた。


梶さんはアニメTシャツを着ていた、・・しかもコン太と同じピンク柄の美少女物。


何度も言うが、梶さんはアラフィフだ。


・・・怖い。


怖いよ、何だかとっても怖いよ! オレはなんで紙袋を持っているんだ!? 中にフィギュアが三つも入っている! おまけにマグカップまで入っている!


ここは危ない! 危険だ! 直視する事が出来ない!


小さなボックス席に生ビールをオレのために持ってきてくれたオシメちゃん、

もう冬だけど、よく冷えたビールは美味かった、このビールのおかげでオタクが発する何だか分からない恐怖感が和らいでいった。


梶さんはビール一杯しか飲んでなく、・・どーやら無事のようだ。


上島はただ、大人しかった。


夜の七時をまわった頃、お店に小野さんがやってきた。


「エヘエヘヘへ、コンバンワ〜、・・・ちょっとぉ〜・・早かったかなぁ〜・・へへへへ。」


「おい!城島ぁー! 帰るぞおっ!」上島が突然、態度がデカかった、だからオレは上島の肉マンを握りつぶすことにした。


「イデデデーッ!! 何すんだよっ!!」


上島はリックを背負い、両手は紙袋でふさがっている、帰る準備は出来ているようだ。


「おまえの両手はふさがっている、手も足も出まい! アハハハ!」


「ハアアアアッ!?なに言ってんだよっ!! もう一人で帰れっ!」と言ってオレに背を向けたので、上島のはくビッグサイズ、短足仕様のカラージーンズ(黄色)を力いっぱい下へ下げてやった!


抜け目がない、の逆である上島は百パー抜け作さんのようで、ベルトはしてない、腰より腹周りがデカイ、

だから、カラージーンズ(黄色)と下着、ブリーフが見事にズレ落ちたのだ!

アハハハ! 汚いおケツが丸出しとなってしまった!


「アアア〜ッ!! も〜ッ!! やぁめぇろぉよぉなぁ〜ッ!! もぉ〜ッッ!!」と、上島は振り返りながら黄色いジーパンを元に戻そうとしたが、両手に持つ紙袋を床に置く事をためらい、少し考えた、ようだ!

だが、バランス感覚を失った上島はそのまま倒れそうになり、両手に持っていた紙袋をほうり投げ、床に手をつこうするのかとおもいきや!

なんと驚いたことに上島のバカは紙袋を手放さなかった!

水泳選手のバタフライ泳法を思わせるが如く、両手を背面へと思いっきり反らしたのだっ!

ありえない角度で曲がっているっ!ヘンテコだっ!

ビタアアアーン!!!

上島は顔面から床へと倒れ込んだ。


その時、


「あの〜、城島さあ〜ん、お忘れ物ですう〜。」とオシメちゃんが声をかけてきた。


オシメちゃんはオタクグッズ四点が入った紙袋を手渡してくれた。


「あ、有難うございます、忘れていました。」


「・・・おい、・・じょ・・じょーしま、」上島が何か喋った、とりあえず無視する。

バタフライがそんなに気に入ったのか、 床にへばり付いたまま動こうとしない。


オシメちゃんは玄関まてオレを案内して、「下で小野さんがタクシーを止めてます。」と教えてくれた。


階段降り外に出る、夜の八時を回ったとこで暗かった。


小野さんの黄色いタクシーが止まっていて、運転席から振り返りオレをヘラセラしながら見ていた。


扉を開けてくれたので乗った。


車内は臭かった。


屁をたくさんこいているのか、充満していた。


窓を少しだけ開けた。


なぜ気づかないのだろうか? 臭いと言う事。


少しすると上島がやって来た。


「おい! なんで先行くんだよぉっ!!」


「おまえ、床と遊んでたろ、だから。」


「だから何だよっ!! 遊んでるわけねーだろっ!!」


「おい、紙袋とリックが邪魔だからトランク入れろ!」


「はあ〜!? 何でトランクに入れんだよ!? あんな暗くて狭いとこ!」


「お前が入れって言ってんじゃねーよっ! その荷物をトランクに入れろって言ってんだよ!」


「だからっ何であんな狭くて暗いとこに入れなきゃなんねーんだよっ!!」


まじで何言ってんだ!? こいつ、


「めんどくせーっ! おいっ上島ぁっ! お前が入れっ!!」


「はっ!? 何でオレが入んだよっ!! オレは人間だぞっ!!」


「じゃあ、その紙袋をトランクに入れるか、お前が入るかどっちかにしろっ!」


「⚫⚫小野さんは俺が呼んだんだ⚫⚫、」


「だから何だよっ! テメーが入るか、一緒に入るかどっちかにしろっ!」


上島の顔が変なことになっている、


「⚫⚫⚫寒いから、窓閉めろよ。」


「なんだとーッ!!」


いつの間にやらタクシーは走り出し、水を抜かれた田んぼの中を走っていた。


上島はいじけていた。


短く太い膝の上にリックと紙袋を抱きかかえるように静かにいじけていた。


田舎は街灯がない、全くないからお月様が隠れると真っ暗闇となる。


車のライトだけが頼りだ。


小野さんの運転は大丈夫だろうか?


とっても下手な人に見えてしまう。


その時だ、


⚫⚫プゥゥゥ〜⚫⚫


と、音が鳴った。


⚫⚫⚫⚫⚫。


上島の方角だ!


「臭っ!!」


こいつ屁をしやがった!


「なにっ屁ぇーッこいてんだよッ!! 臭ぇーっ!! くっせぇーっ!!」


オレはさっき閉めた窓を再び開けた!


ああ⚫⚫生き返るぅ〜、死ぬとこだったぁ〜

だんだん腹が立ってきた!


「屁は臭いもんだよ。」と言う上島、


はっ!? 何言ってんのこいつっ!!


「分かってんなら狭い密室で屁なんてすんじゃねーよっ!!」


「生理現象だから仕方がないだろ、」


「ケツの穴締めてかかりゃあ引っ込むんだよっ!!」


「下品だな、おまえ。」


「はあああ〜っ!? お前が言うかあああ〜っ!!」


あっ!


なんだ!?


上島のでかい頭の上に、


⚫⚫帽子!?が飛んできた!


「あ、これ小野さんの帽子だよ、小野さ〜ん、帽子〜」と上島、


振り返る小野さん、「ウッキ!」と返事をする。


「あれ〜? 小野さんてそんなに猿顔だっけ〜?」とはっきり聞く上島、


ほんとだ! 小野さんが猿に見える!

あ!だけどその前にっ!「小野さん!前見て!前っ!」


「ウキ!?」と答える小野さん。


「うわっ!!前っ!前っ!! 危ねーっ!!」


小野さんはハンドルを手放し、後ろを振り向き嬉しそうに座席の上で飛び跳ねた! まるで猿だ!


「ウワアアアーッ!!!」


ゴツンッ!! 何かに車が乗り上げたのかっ!?はまったのかっ!?車は勢い良く、


ガガガアアーガリガリガリガクンっ!!


少し斜めに落ち、止まった!?


と、同時にエンジンも止まり、静寂となった。


が、「ウッキッキー!ウッキッキー!」うるさく、はしゃぎまくる小野さん、


どうやら無事のようだ、玉川に落ちていたら大変な事になっていた。


オレは右側の扉を開け外に出た。


月夜の明かりがないから、真っ暗で何も見えない。


「ウッキッキー!」小野さんがハイテンションのまま車から出てきた。


「うわわあああーッッ!!」今度は上島が車の中から悲鳴を上げた、とりあえず無視する。


「俺のフィギュアがああーッッ!!」と喚き散らす上島を後目に、「ウッキッキッ!」と小野さんは楽しそうに、そのままどこか暗闇へと消えていった。


いいのだろうか?


山にでも帰ったのだろうか? そんな気がしてならない。


「お〜い、じよーしまあ〜⚫⚫」と悲しそうな声でこちらに近づく上島、


「じよーしまあ〜、フィギュア、無事だったよ〜! 良かったあ〜、」


何の報告に来てんだ!? このバカは!!


「一時はどーなる事かと思ったぜー。」


イライラするっ! だが、月明かりが出てきたぞ! 上島のアホヅラもよく見える。


タクシーは道の左端にある側溝にでも落ちたのか? 畑の用水路か?


「おい、上島! タクシーを道に戻すぞ!」


「ええ〜!? 小野さんはどーしたんだよお〜?」


殴りたい。


「小野さんは山に帰ったよ、当分は帰ってこないだろう。」


「なに、ふざけてんだよ! 小野さんはどこだよ!?」


「山だよ、山!」


面倒くさい上島を説得して、なんとかタクシーを道に戻すことが出来た。


「おい、上島!お前が運転して帰るぞ!」


「俺、免許持ってないぜ。」


⚫⚫⚫⚫⚫⚫なッ?


「はあああ〜!!? 持ってないだあああ〜!!? なにを〜!!? 免許を〜!!?」


歩いて駅まで行くときも、石油ストーブを買うときも、


上島は使えない奴だった。


「トラクターなら乗れるんだけどな〜」と、ヘラヘラ笑いながら言う。


お前に期待したオレがバカだったと何度思った事か、今すぐお前の命より大事そうに見える紙袋とリックを玉川に投げ込んでやろうかと、現在思案中だ。


その後の事はもう、憶えていない。


気がついたらアパートの前だった。


オタク街で買ったトヨトミ石油ストーブを持ってオレの部屋の玄関を開けたら、なぜかもう一台、コロナ製の石油ストーブが置かれていた。


なぜ!?


その中には母さんからの手紙と一万円札が入っていた。


石油ストーブが二台となった。


ああ、あああ、



第二十六話 「同人の集い」







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