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まこらみみらせ  作者: しげしげ
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第十二話 「城島先生の回復力は超人並ですねー!と言われたい。」



第十二話 「城島先生の回復力は超人並ですねー!と言われたい。」




小学校には 校長先生がいるので 年少組の授業は オレがいなくても大丈夫らしい。


ちょびり寂しい・・が、オレの母ちゃんと父ちゃんが見舞いに来てくれた、そして 実家に帰って養生しろ、と言われてしまった。


・・・アパートに一人残ることも出来ない、二週間の入院の間、母さんがずっとオレの病室にいてくれ 看病してくれた。


パートは辞めて、今は週五回もプールに行って運動していると言う事だ、だが 働くことは辞めないようで、新しいパート先を現在、探していると言う事だ。


働くのが好きだ、と言っているが ・・時給800円そこらの手当なしで よく働き続けられるものだ、・・理不尽な事もあっただろうに。


「しょうがないでしょ、他にないんだから。」と 深く考えずに簡単に考える。


・・たぶん それは、競争社会における、競争をしないと言う選択をしたからだろう、なぜ 競争をしないか? 競争したところで勝てないから、「お母さん、そんなに頭はよくないからね。」と明るく陽気に言う。


同情を引くため? 相手に安心感を与えるため? 自信を持たせるため?


・・母さんの言った言葉には 裏はない、・・・能ある鷹は爪隠す、などの高度な芸等は 母さんには無理だ。


誰かに足元を見られて、軽薄な態度を取られても、疑うことなく返事をするだろう。


・・オレがそうであるように。


だけど、どんな目で見られようが、バカにされようが、・・仮に オレが不甲斐ないばっかりに一生苦労かけてしまっても・・、自分を価値のない人間だなんて思ってほしくない。


これからもずっと幸せに生きてほしい、親孝行なんてどうする事が一番良いかなんて分からない、直接 何かをしてあげる事なのか? それともオレが幸せになる事なのか?


・・まだ、謝らない、まだ 始まったばかりなんだから。


たそがれさんにも言ってしまったが、オレは死ねない、・・何をどおやればいいのかなんて、まるっきり分からない、ただ 玉村はオレのいる場所なんだと強く思う。



病院食は なんだか まずそう・・・


だが腹は減る、・・とっても減る、ああ・・不思議だ、オレってこんなに大食漢だったのかな? 食っちゃ寝してるから太ったかもしれない。


六人部屋? 八人かな? 大きな病室だ、カーテンで仕切られている、前のベッドは空いていて、後ろには窓がある。


「・・茂、ちゃんと治るまで家に帰ってきんさい、・・ここに残るじゃゆおーたけ、誰があんたの世話をしよん? 誰もおらんじゃろ?」


「もう・・歩けるし、・・大丈夫だって・・・、」


「まだ治っちょらあせんわいねー、・・まだぁ、一週間しか経っとらんじゃろ! 先生は治るまで六か月はかかる言おうたんじゃけん、」


二週間の入院生活の間、父さんは 三日で帰ったが、母さんはオレのアパートにずっと寝泊まりしていた。


どうやら、大家さんをはじめ 春名先生やソフィーさんと仲良くなっていた、・・その事を見舞いに来るなり楽しそうに話す母さんは きっと旅行感覚なのだろう、・・旅先では軽い気持ちになるのだろう。


誰にでも簡単に声をかける性格の母さんにとったら、近所付き合いのような ・・・尾を引く、と言うのかな・・そんな責任感を持つ必要がないから いつもより気が楽なんだろう。




季節は十月に入った、村はめっきり秋の装いだ。


落ち葉が舞い、青々と力強く枝を伸ばし葉をつけていた大木たちも 落ち葉とともに少しづつ痩せて見える、・・冬と言う お休みの時間に備えるのだろう。


オレが退院する日、春名先生の計らいで梶山が運転する ・・・おんぼろの軽四で迎えに来てくれた。


村所有の車は三台あって、マイクロバスに軽トラック、そしてワンボックスのバンだ、村の人たちは出来るだけ車を使わないでいる、これも村がきれいに見える要因の一つかと思われる。


マイクロバスは 役場の人が運転している唯一の交通手段である、母さんと父さんが一日三便のバスで村に来た時、梶山がバスを走らせていたそうだ。


・・・母さんは 梶山とも仲良くなっていた。


オレはかなり梶山には気まずく思っていた。


・・仲が悪いからだ。


気まずく思うのは梶山も同じかもしれない。


帰る途中、梶山とは喋らなかった、・・その代り 助手席に座っていた春名先生がいろいろ話しかけてくれていた。


オレと母さんは 後ろの席、とても狭く固い座席だった、おまけに悪路とのり後心地の悪さで 足の骨折したところと脇腹に響いた。


「もう少し ゆっくり走ってよ、梶山くん!」と言ってくれる春名先生。


・・お前はほんと 気の利かないやつだ・・・、考えないよな 気まずい、なんて、・・・と言いたいが 今回は何も言えない、むしろ こいつにちゃんと感謝しなければいけない、たとえ 春名さんの頼みで断れなくて嫌々車を走らせたとしてもだ。



母さんは春名先生の事を・・・「春ちゃん!」と呼んでいた・・・、そして付け加えてこう言った「この子のお嫁さんにならんけんね?」と ドキッとする事言った! 冷汗が出るわ! ドキッとしたのは梶山も同じのようだ、よそ見をするなっ! 運転中だぞっ!


春名先生は「私を奥さんにしたら 旦那様が大変ですよー。」と冗談ぽく言った。


何が大変と言うのだろうか? そんな大変、大変じゃないかもしれないでしょ! 大変でも構いませんよ! ほんと。


・・よそ見をするなあっ! 梶山ぁっ!


「梶山くん、ちゃんと前見て運転してね。」と春名先生に注意されてやんの! ハハハハハハぁ。



そんなこんなで到着した、・・・杖があれば何とか歩ける、右手、右足は骨が折れている、・・右足に限っては 足首と大腿骨にひびが入っているだけだが、補強用に二か所 足用のコルセットをつけている。


右手は完全にギプスがはめられ 腕がちょー痒くなる時があって イライラする。


幸い左足は無傷だ、杖を使えば何とか歩けるが 右肋骨や(砂骨)も折れてるから バランスをとるため力むと横っ腹や首が痛む。


オレは荷物を持てないが 誰にも手を借りず二階まで歩かなきゃならない、母さんと春名先生が荷物を持ってくれたが、梶山が 母さんの荷物を代わりに持ってくれた。


・・・梶山って、


・・・考えるの?


気を使ったのか? 梶山が? 春名先生じゃなく オレの母ちゃんに? 嘘ぉー・・。


「しげちゃん! 二階は危ないから 今日からこの部屋を使いなさい、母さんと春名先生がちゃんと掃除して使えるようにしておいたから、・・春ちゃんが手伝ってくれたんよ。」と言う母ちゃん。


102号室!?「・・え!? オレの部屋は・・・」 今日からここにしなさいって!? 掃除して使えるようにした!?


えええーーっ!?? なんでーぇ!? ソフィーさんの横がいいよぉー、何でカビ臭いドラさんとトイレの間なのぉーっ!?


春名先生が手伝ってくれたぁ!? ・・・ほんと? ・・・ああ、・・そうかぁ・・・、じゃあ いいかなー。


「そんな状態で階段なんか上れるわけなかろーね。」とお母さん。


結局 102号室に 予定として半年間住むことになった。やっぱりソフィーさんの横がいい。


今、オレはきっと 血圧が急上昇してると思われる。


入院中、看護師さんが よく言ってたことだが「城島さんは 血圧の上下の差が激しいわね、今日は160もあるわよ。」160と言われてもピンとこないから、「それってかなり高いんですか?」て聞いたら、


「・・そうねー、これが続くと高血圧症で薬飲まなくちゃいけなくなるけど・・城島さんの場合、低いときは 110を切るときがあるから、フフフすごいわねー、この差。」と看護師さんが笑って言ってた。


別れ際に春名先生と・・梶山にも礼を言った。


「・・梶山くん、車出してくれてありがとう。」とオレは梶山に言ってしまった、たぶん今日が一番の最高血圧になったと思う。


冷汗が出てくるわ!


梶山は「・・ああ、」と素気なく返事をした。



その夜、102号室に母さんと二人で泊まった。


・・便所の匂いが少しする。


母さんと同じ部屋で寝るのは何年振りだろうか? ・・・・広島の祖父ちゃんの家以来かな・・、小学生まではずっと同じ部屋で寝てたけど。


母さんは 二日後に帰っていった。


「しげちゃん、電話しんさいよ、・・たまーにじゃけん心配になろーね、・・それからちゃんと野菜 食べんさいよ、欲しいもんがあったらすぐに言いんさい、分かった?」と一通り言って 一日三本のバスに乗って帰っていった。


その時運転していたのは また、梶山だった。


・・春名さんが 町まで父の運転する軽トラで送ってくれると言ってくれたが、母さんは「バスで帰るけん 大丈夫よ。」と遠慮した。


・・母さんが帰った後はとっても静かになった・・。


数日間の食事を作り置きしてくれてた。


洗濯者も全部きれいに洗って、たたんでくれていた。


小さなタンスがあって 父さんが町まで買いに行ってくれてたみたいだ。


・・幅 70cm弱に引き出しは五段、中にはぎっしりと 洗濯物と新しいパンツと靴下が入っていた。



退院してから、五日後に職場復帰をした。


春名先生も校長も 二、三か月は療養した方がいいと言ってくれたが、オレはきっぱりと「大丈夫です!」と言ってすぐにでも学校に戻りたい気持ちを示した。


・・楽しみだ、子供たちの明るい顔を見るのが。


・・・・・オレはいつからこんなにやる気満々の男になっていたんだ、・・・大学時代は どーやってサボろうかしか考えなかったのに・・。


準備は万端、すぐにでも教室に戻れる、・・牛乳もたくさん買ってもらっている、これさえあれば ・・なんか安心だ! 骨になる!


学校までの一日一日は 歩くことに専念した、右手は使えないから左手一本で マツバ杖をつき、・・アパートの前から始めて、川の土手を一・五メートルほど上り、川沿いの道を歩いた。


・・何回か、こけた。


とんでもない痛みで、今まで経験したことのない痛み、これは・・病院からずっと感じていた痛みと違和感と同じ痛み、それを数倍にした痛みだった・・・


だけど ・・まあ、大丈夫だろう・・、そう思ったから病院には行かずに我慢した。 


それから 多少は残る痛みに我慢しつつ、商店街の駄菓子屋まで行けるようになった。


・・・駄菓子屋の婆さんは相変わらず、無口でマイペースでなによりだ。


そして毎日、お菓子と牛乳を買い、それから豆腐屋に寄って家に帰った。豆腐は体に良さそうだから絹に木綿に厚揚げ豆腐をはじめいろいろ買った。


その間 ほぼ毎日 夕方頃に春名先生が訪ねて来てくれた、ちょー嬉しかった。


「これ お婆ちゃんと私とお母さんとで作ったんです」と いろいろ美味しい晩御飯を持ってきてくれた。


肉じゃがをはじめ()


おとずれの みずほさんまでが心配して 手料理を持ってきてくれたりした。


昭吉をはじめ、うちのクラスの松本や利倉たち、・・それに 北元もお母さんと一緒に訪ねて来てくれた。


あと 雨宮メリイも ・・・見舞いと言うより遊びに来た。


あの時の看きり岩の小山で北元の居場所を教えてくれた事に オレが礼を言うと、「えー、なにぃ?」と 話にならず、・・・なんだか面倒くさくなったのでもういい事にした。


・・あと、オレの部屋には 蛇をはじめ、蛙もバッタも 絶対に持ってくるなと言ったら「持ってきちゃダメぇ?」と聞いてくるので「当たり前だっ!!」と持ってくる可能性を潰しておくことにした。


雨宮よ、お前と話すと他の子より数倍 疲れる。


春名先生は よく平気だな。




職場復帰当日、アパートから学校までの道のりをいつものように 歩いて通った。


誰かの世話にはならない事が 職場復帰の最低条件だ。


朝は上着が必要なほど寒くなって来た、自然が豊かだと 四季折々の景色以外にも 季節の香りがある、玉村の空気はとてもきれいだ、だからだろう 一つ一つの花の香りまでが分かるようだ。


休み休み、二十分で着くはずの道のりを一時間かけて小学校についた、もう 汗だくだ、右足の太ももに鈍痛がある、半分は痛みによる冷汗だろう。


春名先生と校長、それに六年生の藤原孝子が小学校の校門の前で出迎えてくれた。


:・・・照れくさいものだ。


・・・こんなにも、・・・こんなにも、親切にしてもらった事なんて 子供の頃以来だ。


大人となってこのかた、まともな人間関係を築き上げた事なんて無かった、・・それが 厳しい大人としての社会なんだと思っていた・・。


・・だが、違っていた! ・・こんなにも、・・・こんなにもだ!


・・・人間扱いされたのは初めてだ。



「城島先生、お帰りなさい。」


「はい、帰ってまいりました。」


ああ・・汗を拭くハンカチ、と言うよりタオルを忘れた。


へとへとに疲れてしまったが、顔に出さないようにした、梶山ほどじゃないがオレも顔に分かりやすく出るタイプみたいだから。


この日の為に 歩く練習はした、回復を促すために風呂にも入り、そして牛乳を一日一リットル、それ以上飲むとお腹壊す、と雪印のプロセスチーズ6Pをx2を食べ、半日 アパートの前の河川敷にレジャーシートを敷いて寝ていた! 気持ちいいのでよく寝れた。


骨を作るには日光が必要なのだ! おかげで夜が寝れなかった。


オレは上履きに履き替えると 疲れ知らずを装って颯爽と職員室へと向かった。


そして 始業時間まで たっぷりと休むことにした。


春名先生のクラスの藤原孝子はよく出来た女子だ、よく言う事を聞くしはきはきしている、そのうえ素直だ、うちのクラスで言うなら松本百合子だろう。


春名先生が あの日の事を聞いてきた。


「・・少し分からない事がいくつかあるんですが・・、」と春名先生。


「何ですか? 分からない事って?」


「・・まず、雨宮さんの事なんですが、・・・あの夜、城島先生が北元さんを見つけたあの看きり岩の小さな小山で 北元さんが雨宮さんに後ろから声をかけられたとそうなんです、・・・"それ以上行くと 落っこちるよ!" ・・て。そのあと北元さんは足を滑らして落っこちたとこまでは覚えてるみたいなんですが・・・」


「・・ああ、ぼくも雨宮を その小山で見かけましたよ、"先生 こっちに誰かいる"って、本人に確認してみたんですけど・・どーも話がかみ合わなくて・・、平太といい、昭吉といい 田舎は子供までが夜中でも手伝うんだと驚きましたよ。」


春名先生は 少し考えて「・・ああ、昭吉くんと平太くんは・・ちょっと特別で・・、小田さんの言いつけで手伝ってたんです、・・・それよりも 雨宮さん、・・・どうもあの日の夜、城島先生と蛙をとって遊んで帰った後、ずっと家にいたそうなんです。」


「・・・え!? 確かにあの日は 雨宮と蛙を捕るって言うか・・バッタやトンボを捕っていました・・・、だけどあの日の夜は平太と雨宮の二人に会ってますよ、・・・現に北元を見つけることが出来たのも雨宮に教えてもらったからですが・・・。」


「平太君と昭吉君は小田さんの言いつけで手伝ってたのは私も知ってます・・・・。城島先生から雨宮さんの事を聞いて 直接本人とお母さんに確認をとってみたところ、夜 一人では絶対に出歩かせないそうです、・・あの夜は間違いなく家にいたそうです。」


「・・・・・、じゃあ ぼくが見た雨宮は・・・誰だったんですかね、・・・ですが・・・見間違えるわけ・・・」


「先生!」と藤原孝子が・・なんか目をキラキラ輝かせ話し始めた。


「きっと看きり岩のお地蔵さまが雨宮さんに化けたんじゃないですか?、そして 北元さんに危ない事を教えてくれて、城島先生にも知らせてくれたんじゃないですか?」と。


春名先生も藤原孝子と同じ意見だった。


・・オレも最終的に "あの雨宮"がいったい誰だったのか? ・・理解しがたい事だったが 藤原孝子や春名先生が言うように看きり岩のお地蔵さんが化けた神がかりで納得しようとした。


・・・実際 オレはた"そがれさん"に会い 話をしたんだ、その上、・・身代わりになるかって・・・、誰でも良かったのかなぁ? その時居合わせた者なら誰でも良かったのかなぁ? ええーっ! もし、そーなら・・・・、


・・もし、そうなら、・・・何だっていうんだ・・? もし 違う人だったら? その人が身代わりになる事を拒んでいたら?


・・・そんな事、考えたらゾッとする。 


・・・あの時、ソフィーさんとみきり岩の手前で立ち止まり・・・二股に分かれる左側の道を選んだのは・・偶然、月明かりが その道を一層に照らして見えたから・・・、看きり岩のお地蔵さんのように雨宮に化けて、と言うはっきりとしたものじゃなく、こちらに進め・・、と、感じたから・・?


・・・だが、もし 看きり岩のお地蔵さんが何らかの理由でソフィーさんに見られることを良しとしなかったら・・・


・・それに 雨宮に化けた、と考えてもそれが 見切り地蔵かもしれないし、たそがれさんかもしれないし、・・・どちらにせよ、人知を超えた 事象なのだからオレなんかが考える術ではないだろうし。


夢か幻か? オレが現実として見たことが夢で、北元が無事であったと言う奇蹟が幻だったのか・・、始めから 北元は無事だったのかもしれない・・・。


夢か、現か、幻か? なんて、きっと これからのオレにとってはどうでもいい事だ。


北元が言うように、自分が崖から落ちたことは覚えていると・・だが 気が付いてみたら怪我一つしてなく、代わりに ドジな城島先生が 助けに来て崖から落っこちて大怪我したと言う事にでもなっているのだろう。


・・・、きっと村の人たちも 春名先生も 北元を発見したことは良しとてし、その後があまりにドジな城島先生と言われてといるに違いない。


・・・まぁ、いい・・。


・・北元、無事だし。


オレの体は 生まれて初めての骨折でしかも八か所、その上 傷口を針で数十針、気が遠くなりかける数、縫われると言う事も初めて、完全に治るから、と言われても もうっ!! 二度とごめんだ。


それに 入院していたとき 北元と母親が来ていた、あの時 北元は かすり傷以外、怪我ひとつしていなかった、それで良かった、ホッとした、ほんとに ホッとした。無事だと言う事を確認した、それで良い。


もし、夢や幻であったとしても、


確信として考えなきゃいけない事、それはオレにとって たそがれさんとの約束は絶対だと言う事、それだけは守らなければいけない。


「だけど、あんな崖から落ちて、小さなすり傷だけだなんて、おかしいと思いませんか?・・北元さん」と言う春名先生。


「ハハ・・そーですね、たそがれさんが助けてくれたんじゃ・・」


・・・、


ああっっ!!!


オレって口、軽うっっ!!!危うく言うとこだったあああッッ!!! ヤベエーッッ!!


「・・? ああ、そうですよね、たそがれさんが助けてくれたのかも、それと 看きり岩のお地蔵様と。」


「ああ! そうですよ!」と またまた目をキラキラ輝かせて答える 藤原孝子。


・・オレの心臓が・・・大きな音でドキドキしている。太鼓を叩いているようだ。


・・ヤベー・・、こんなにもオレは口が軽かったのか・・、知らなかった。



そのあとからか、・・・気のせいかもしれないが、春名先生のオレを見る視線が、いつもと違うように感じた。


・・オレに惚れた? えへへ。




そして 授業に関して、今まで 校長がオレの代わりを務めてくれてたから、校長と打ち合わせをし、どこまで進んだか、授業内容などを書いたノートを見せてもらいながら確認していった。


確認し終わると校長に頭を下げ、お礼を言った。


すぐに 春名先生と校長と一緒に教室へ向かった。


・・マツバ杖にも慣れた、ちょっとした小走りも出来るようにもなった、マツバ杖を脇に挟み、体を前後にブラブラ揺する事も出来るようになった、・・マツバ杖で軽く遊べるまでになった。


いつも肝心なところでコケちゃうから、調子に乗らないようにしなければならない。


・・ああ、・・どーしよう、・・教室の前まで来たら、急に心臓がドキドキ??してきた。


春名先生は 奥の教室へと向かい、それと同時に 校長が教室の扉を ガラガラガラガラガラ・・と開けた! まだ、心の準備が出来てないからっ!


校長はニコニコしながら 教室の中へ入って行き、オレも必死に後をついて歩いた。


「おはよー!」と言う 校長先生に、オレも教室のみんなの顔を見ようと左に顔を向けた、「お、おは・おはよ・・-」ああっ!!まただっ!! 緊張しているっ!! きんちょーしているぅっ!! こんな時は絶対 変な顔をしているんだっ!! ・・ああっっ!! みんながこっちを見ているぅっ!! 当たり前だけどぉっ!!


自分の顔が・・表情がおかしくないか、気になるよぉっ!! オレはぁっ!!オレはぁっ!! ああっ!! ちゃんと笑えているか!? 卑屈じゃないかいっ!? ああっ!! いつになればっ! オレはっ 辿り着けるのだろうっ!


「センセー・・もう治ったのかぁ?」


「へ!?」


「アハハハハハ!!」と生徒たちの笑い声が一斉に聞こえた!


「へ、だってぇ!! アハハハハ!」と男子! ・・平太っ! おまえかっ!


ちょっぴりドギトキしながら・・・、教室に入ったら、いつもの顔ぶれに ホッとした。


松本百合子の 朝の挨拶! 「起立! 礼! 着席。」


子供の笑い声は魔法のようだ! 一瞬にして どーしようもない不安をすべて帳消しにしてくれる。


・・分からないよう 顔に出ないよう、感動する気持ちを抑えながら、みんなの顔を見て 「おはようございます。」と言った。


・・今度はちゃんと言えた!


みんないる、北元もいる、


・・・よし。


「センセー! 北元助けたってほんとー!?」と 黒田、


「・・あ・・いやぁ・・」そうだ、この場合何て答えたらいいんだ!? 北元が睨んでるぅー、・・子供にひびってるよ、・・オレ。


・・教師なのにぃ、生まれて一けたの歳の子に・・。


「・・ハハ、・・いや・・実は先生もよく覚えてなくてな・・ハハハ。」・・これで行くしかないだろう。


「ええーっ!! 覚えてないのぉっ!?」と 黒田、他の子たちも、ざわざわと話してる。


「まあ、なんだ、・・北元も先生も無事だったんだから、良しとしよう! な。」と丸め込む。


「・・・先生 無事だったんですか、フフフフ。」と小さく笑う利倉、・・お前は皮肉屋なのか。


クラスの子供たちがみんな笑った。「アハハハハ!」


・・ぅぅ・・この利倉は、・・なんか痛いとこをついてくる・・・、子供なのに、・・生まれてまだ 一けたなのに。


とにかく オレは生徒たちと どこまで授業が進んだか確認しながら進めていくことにした。


右腕は 現在 骨折中。


・・生まれて初めてのギプスを装着。


オレは右利きだ。


・・だが 小学校の低学年は難しい日本語は使わない、なので左で書くことにする。


「先生 字が変!」と 生徒たちに笑われても気にしない。


長時間、黒板の前で立つことは 無理と判断して 松本百合子に折りたたみのパイプ椅子を職員室から持ってきてもらい、太ももと足首の痛みが酷くなったら座るようにした。


・・今更・・ではあるが、やはり 教師と言う仕事は夢がある、子供たちの未来、希望、元気、笑顔、それにオレは関わり手助けをする。


・・そう、オレは 子供たちの手助けでなくてはいけない。


勉強が出来る子、出来ない子、・・振り分ける事じゃない、教師の実績を作る事じゃない、穢れのない心に穢れをつけてしまうやり方は絶対ダメだ! 心は目に見えない、だから大人のエゴも簡単に隠せてしまう、・・経験を積むんだ! オレの為にじゃない! 子供たちの為に、だ。


やりがい、と言うものを見つけることが出来たかもしれない。


だから、オレ自身の・・・未来が、はっきりと分かる。


自分の人生を疑うことなく 生きていくことが出来る。


・・・あの非科学的な たそがれさんの事や看きり岩のお地蔵さん、・・信じがたい現象を目にして経験して、・・・そして たそがれさんとの約束を信じるか? 信じないか?


・・・たぶんだけど、


・・・・人間は すべてを科学的に信じることは出来ない生き物だと思えてくる・・。


どんなに科学技術が進歩しても 人間が損得勘定だけで生きていけるものではないはずだ、機械ではないのだから、・・誰だって夢を信じて生きている、夢を持てなければ幸せになる事なんて出来ない、人間は幸せになるために生きているんだから。


神様がこの世界に存在しているなら、たそがれさんのように 超常現象として捉えられるだろう、・・たそがれさん あの時オレに言った、"他言無用"と、・・あれはただの脅しなんかじゃない、北元やオレ自身の事を思って 言ってくれた言葉なんだ。


オレたち人間が生きている この "現世"は 科学的根拠によって解明されてきている。


・・つまり この世は 時間、空間、物理、自然、生命が バランスよく調和を保ちながら存在している。


自然破壊が進めば 異常気象を招くように、"摂理"と言う 繋がりとバランスで成り立っているはずだ。


その摂理が崩れれば、・・・小さいものなら 異常現象で済むだろうが それが大きければ、・・・・この現実世界そのものが壊れていくだろう、それはつまり この世界の滅亡になる。


・・オーバーな言い方だが 間違ってはいないはずだと思っている。


日本をはじめ 世界中には 神がかりの奇蹟が報告されているが、・・・もしかすると それらの一部は事実であり 健全な宗教思想として 道徳、秩序を基盤に 今のこの現世を作り上げているのだと思われる。


・・・仮にだが、


暗雲立ちこめる天空の雲間から 突然 金色の光がさし、背中に白い翼の生えた天使が舞い降りてきた! としたらどうだろう。


その姿は金髪のきれいな女性で古代ギリシャ風の正装を身にまとっていた、そして その天使は こう告げた「あなたたちを導きましょう!」と これまた美しい声で。


これを 本当の事として 目の前で見てしまうと、人間は現実と空想の区別がつかなくなるのではないだろうか? 精神衛生上、どうなのだろう、神様は完璧な存在だと言うなら "天使の降臨"などの超常現象を見せる意図には何があるのだろうか。


こういった報告事例は "天使の降臨"と言われて、ヨーロッパから寄せられる情報だ。


アジアやアフリカなどでは ほとんど報告されていない。


・・・なぜなのか?


・・文化、風土、場所に合わせる


卵が先か? ニワトリが先か? 神が先か? 文化が先か?


信じさせるため、その土地土地に根付いた演出を 神様が企画したのか? ・・または別の理由があるのか?


それらの報告にあるような神がかりの事例は いったい何のために? 迷える子羊に人生と言う名の道を教えるため?


オレが思う事は たそがれさんのように "その土地に住まわれる神の位を持つ方"が 狂気に対し、神業を使ってくれたと言う事だ。


神業、と言われる人知を超えた力を使ってくれた たそがれさんは 現実に起きた事を無かったことにする、もしくは時間を戻して "オレ"と言う 身代わりをたてることで 最小限の被害で"やり直す"と言う事をしたのだ。


・・・どちらにしても、摂理で成り立つ この現実世界に、摂理を無視した神業を使った たそがれさんは・・・


・・異常気象などの天変地異では済まなくなる事を たそがれさんは 行ってくれたのだとオレは思う。


それはつまり、一番の リスクを背負ったのは オレじゃなく、たそがれさんなのかもしれない、と言う事だ。





この日から オレは いつもの日常へと戻る事が出来た。



・・・それにしても 教師と言う仕事は "楽"だ。


学生時代にアルバイトをしていたが トラックでの荷物の積み下ろしは大変な仕事だった、もしそれが本職なら 今のオレでは仕事をすると言う以前の問題となる。


不謹慎でも楽なものは楽だ!



楽しい仕事が・・、


学校が終わった後、平吉に「どーやって帰んの?」と聞かれ、「歩いて帰るよ。」と答えた。


春名先生も心配してくれたが やはりオレは 行きも帰りも歩く事を選んだ。


休み休み歩くが、帰りはさすがに大変だった。


疲れが体に溜まる事は避けたい、骨折した場所の回復が遅れてしまう、・・オレはみんながビックリするくらいの速さで回復したい、・・アニメみたいに、「わあーすごぉーい、城島先生の回復力は 超人並ですねー!」なんて春名先生に言われたい。



今晩、何食べよう、・・はあ・・・、なんか飽きたなぁー・・、食事ぃー・・。


買い物も行けないから食事に困る、事前に用意していた食べ物はほとんど 食べてしまった、残り物で済ますが、手の込んだ料理が食べたい、お菓子が食べたい、ウインナーが食べたい、シチューが食べたい、から揚げが食べたい・・・。


・・ああ、買い物に行けない・・。


・・あと何日学校へ行ったら休みかなぁ・・。


・・家事って、大変・・自分ですべてをするのはほんとに大変だ。


オレの部屋は今、201から一階の102号室へ移っている。


・・・一階で良かったあー。


・・便所の匂いがするが もう慣れた。


この日の夕方、オレの部屋、102号室までソフィーさんが来てくれて、「城島先生、お風呂湧きましたんで 先に入ってください!」と 言われてしまったぁ、・・嬉しかった。


オレ的にはソフィーさんの後が、すっごくいいのだけど、せっかくすすめてくれたんだから一番風呂に入らせてもらった。


いつもはソフィーさんがあがった後にゆっくり入るのがいいが、・・最近、204号室のバカが ソフィーさんが上がると同時に風呂に入りやってくるので、とっても嫌だった、・・あいつの後じゃぁ、治る怪我も治らなくなるに違いない。


今日は一番風呂で入る事になった。


オレは 四十分ほどの間 風呂に浸かって 今日の疲れをとる事にした。


長風呂でごめんなさいと 心の中で思いつつ、「湯加減はどうですか? 熱いですか?」と オレが入っている間、ずっと風呂焚きの番をしていてくれた。


・・・何だろう、自分の時間を使って オレの為にしてくれるソフィーさんに 胸がジーンとくる。


・・嬉しい、・・そうなんだ、・・充実感て言うのは 一人で創るものじゃないんだ。


オレは 村の人たちにいろいろ お世話になっている。


まだ ここへきて 数か月のオレが こんなにも・・・・穏やかで幸福感を味わえるなんて・・・、


子供の頃以来だ! うええーん・・(泣き。)。


ありがとう! みんなあっ! ありがとう! 村の人ぉ! ありがとう! たそがれさーん!・・・


あ、・・・・でも ・・・・身代わりとか・・もういいから。


・・・このままぁ、何もない穏やかな日常がいいかなー・・。


オレは ソフィーさんのおかげで ゆっくり風呂に浸かり、今日の疲れもすっかり取れてしまった、・・・まあ、今夜は ラーメンでもいいや、と思って コンロに一人鍋を用意していたら、なんと!なんとっ!! こともあろーにソフィーさんがオレの部屋を訪ねてくれたではないかっ!


おおおおっっっ!! お部屋に女の子が来るなんて、なんて素晴らしいんだっ!


「城島先生、これ シチューを作ってみたんですけど・・・。」と ちょっぴり照れながら シチューを持ってきてくれたアー! 食べたかったアーっ! たあーっ! エヘへぇー。


シチューぅ!シチューぅ! 嬉しいなー! シチューぅ!シチューぅ! 嬉しいなぁー!


・・一人用の土鍋に入れてくれている、熱々だ! オレがお風呂から上がったの見て、ソフィーさんが温めてくれて わざわざ持ってきてくれたんだー!


一人用テーブルにソフィーさんがシチューの入った土鍋を置いてくれた! オレのお部屋に上がってくれたあっ! シチューを置いたら すぐ出ていったー・・・そんなに急いでどこいくの・・・。


なんかオレの部屋には 知らない間にいろいろ 物が増えている。


タンスをはじめ、テーブル、新しい布団に電子レンジ、ハンガーに・・・お湯を沸かすためのヤカン、・・・あとー・・コップとかー、茶碗にー、米・・・10Kが 小さな台所に置かれている、・・・炊飯器はない。


ああーっ! 米食いたいっ! シチューと一緒に米が食いたいーッ!! どーやって 炊飯器がないのに米が炊けるのよー! もー・・。


・・こんなことしてたら シチューが冷めてしまう、おおっ!! そうだっ!! サトウのごはんがある! こいつがあるじゃないかあーっ! 母ちゃんありがと―! なんでもあるよー! 気が利くなー!


さっそく チンしよう!


・・・テーブルに座った以上・・・・立つのが面倒だ・・・。


・・足痛いし、・・・腕も痛いし・・・、・・・ああー・・面倒くさー。


・・・召使がいてくれたらなー・・楽なのにー・・、今の時代は メイド!? ・・・ああ、やっぱ メイド!? ・・へへ、メイド・・、・・春名先生のメイド姿って・・・、ああっっ!! すんげーいいかもっ!! ・・ああ・・それから・・メイドに何してもうのかな・・、・・なんでもいいのかなぁ、


・・ああ! 冷めちゃうじゃんかよーっ! シチューぅ!


・・・電子レンジこっちへ来いっ!・・・オレが行くしかないかぁー!


その時、


ガチャ・・・と玄関の戸が開いた! ソフィーさんかな?


・・ギギィー・・・ !! でかい顔!?


・・上島っ!?


「・・よお、・・・・お前 死にかけたんだってなぁ・・」「はあっ!? 何、今頃言ってんだよっ!!」 なんか 顔見たらすんげー腹が立つ!


「・・いやー・・なんかいい匂いしてさぁー・・・」「何がいい匂いだよっ! ソフィーさんが風呂入ってんの 覗きに来たのかあ!?」


お前はなんで汗臭いんだよッ!! 玄関開けたから上島臭が部屋に入って来ただろっ!!


あーあぁーっ! お前が来たせいで シチューとソフィーさんの残り香が 台無しだろがあっ!!


「ソフィーの風呂なんて覗かねーよっ! ・・覗くんだったら 風呂場に行くだろっ! なんか、食いもんのいい匂いがしてさぁー・・」


オレはひらめいた!


「・・・・・、おい 上島!・・・ちょっと上がって来いよ、」


「え!? いいのか?」


「・・・ああ、」と言うと上島は 少し照れながらオレの仮住まい102号室に・・・ちゃんと下履き、サンダルだな・・を脱いで上がって来た。


「おい、上島ぁ、・・・・そこにサトウのごはんがあるだろう・・」


「え?・・・サトウのごはん!?」上島は オレの指示した場所で サトウのごはんを発見した、「それをよー、・・少し開けてぇ・・レンジに入れてくれー。」


「・・え!? レンジ?・・ああこれかぁ?」と言って サトウのごはんをレンジにちゃんと入れることが出来た。


バカのレベルが 10 下がった!


「・・それからよ、つまみを右に回して・・」「・・おお、・・こうか?」チチチチチチチ・・ 「・・ああ、そうだ、・・・で、そのまま二分ほど 待っててくれ。」


「え? 二分? ・・なんで二分だよ、」「二分が一番いいんだよ! ・・・お前は時計見て ちゃんと二分経ったら教えろよ。」


「・・おお、二分だな。」電子レンジがチチチチチチチ・・・ 壁掛け時計がチッチッチッチッチッ・・・「・・・・あれ・・・壁掛け時計もあるじゃん、・・・これも揃えてくれたんだな・・。」


「・・・なんだよ、お前、自分の部屋にある物もわかんないのかぁ?・・・・980円の安物だな! ハハハ。」


「そんな事より 二分経ったんじゃないのか!?」


「え?・・もう二分経ったかぁ?」


「じゃあ・・サトウのごはんを レンジから出して、こっち持ってきてくれ!」


上島は 不満そうな顔でサトウのごはんを持ってきてくれた。「・・ほら、」


「おお、サンキュウ!・・・もう、帰っていいぞ。」バカのレベルが 20 下がった!


「・・・・え!?・・・・・」


「・・・・だから もう帰っていいぞって言ったんだよ!」


オレは シチューとサトウのごはんを食べることにした。


シチューには木のスプーンがついていた、そのスプーンでシチューの具をすくい上げた! 


ああっ!! 肉だっ! しかもでっかい肉が、・・・ああっ!! いっぱい入っているっ!!


「・・・おい、・・」


「・・・はあ?・・・なんだ お前、まだ居たのか・・、早く帰れっ!」


「・・・お前なあっ!! 人に 頼んでおいて、その態度はなんだあっ!!」と言って 上島はシチューの乗っかっているテーブルを両手で掴んで ガタガタと揺らし始めた!


「おいっ!何すんだよッ! シチューがこぼれんだろっ! ソフィーさんがわざわざ 作って来てくれたんだぞっ!」


「なにっ!? ・・・ソフィーの手作りか・・・やっぱりそうか、・・・・」と言って一層 テーブルを揺らし始めた。


「やめろって言ってんだろっ!!アアッーッ!!」 シチューが 少しテーブルにこぼれてしまった!!


バカのレベルが 100 上がった!


「おいっ! オレにも一口食わせろっ!」


「はあっ!? なんでお前なんかに食わせなきゃなんねーんだよおっ!! テーブルの上にこぼれたシチューでも舐めとけっ! アホっ!!」


「・・・なあ、・・・腹が減ってんだよ。」イラッと来るよなっ!! このバカはっ!!


オレは 無視して シチューを食べることにした、これ以上 被害が拡大しないうちに。


ちっちゃな木のスプーンだ、頑張って 口に運ぶ! 左手使いにくー! 両方使えるように特訓しとくんだった!


ガブガブ・・モグモグ ガブガブ・・モグモグ・・・・


「・・なあ、腹減ってんだよ、カップラーメンでもいいから なんかくれよ!」


「っ!! 唾っ!! 飛ばすんじゃねーよッッ!! 汚ねーだろがよぉッッ!!」


・・こいつバカ丸出し、 ・・ああ、この前 プロのバカと結論付けたんだ・・。


「お前の部屋さあ・・もう ねーんだよ、」


「は!?」


「・・・・いや、だからさあー・・・お前の部屋に カップ麺が沢山あったろ・・、あれ もう 無くなっちゃってさ・・、へへ。」


・・・・・・・


「・・お前 もしかして・・・なんか 日に日にカップラーメンが減るような感じがしたけど・・・あれ もしかしてお前が 盗んでたのか?」


「人聞きの悪い事言うんじゃねーよッ!! ・・・あったから 貰ったんだよ、・・いつか返すつもりでへへへ。いや、悪い悪い! 腹が減ってさー、ハハハハ!」


・・・・・・・


何 笑ってんだ・・・こいつ・・・、・・・ぶち切れそうだっ!!


「・・・おまえっ!・・・・怪我が治ったら・・・・ぶっ殺すっ!!」


「へ!?・・・いやー・・なに むきになってんのー・・? ・・困ったよなー、ハハハハぁ・・、だってよぉっ! お前の部屋に行きゃあ、山のようにカップ麺があるんだぜっ!! 据え膳、食わぬは男の恥って言うだろっ!! ・・・だから 食った。・・・悪いか・・。」


ッッッ!!! オレは思わず 小さな木のスプーンを バカめがけて投げてしまいそうになったっ!


「上島あああああッッっ!!!!」


「まっ まてっ!!待てっ!! 落ち着けっ!! お前にいいものやるっ!・・・今日は そのつもりで 来たんだった・・、忘れてた・・・。」


「おまえっ!! 食った分は買って返せよっ!! ああああっっ!!?? 分かったのかああッッ!!!」


「落ち着けってぇっ!!・・とにかく落ち着けっ、怪我に悪いぞっ!」


「テメーが悪くしてんだよおおッッ!!!」


「ソフィーの裸・・・見たくないか?・・」


・・・・・・・。


「な・・・・なにお・・」


「へへぇ・・写真があんだよっ! ・・ばっちり撮れてるやつ、見たいだろ? 持ってきてやるよっ!」と言って 上島はオレの部屋から ドスドスと足音をたてて出ていった。


・・・ソフィーさんの裸・・・の写真・・・。


・・・ソフィーさんの・・・金髪・・・色白・・・の、裸の・・しゃ・し・ん・・。



・・・え!? ・・・ほんと!?


いやいやっ!! 待て待てっ! だいたい何で あいつがソフィーさんの裸の写真を持ってんだ? 覗き!? で、盗撮!? え!? 犯罪? 


ダメでしょ、・・・でも 見たい。・・いやあっ!ダメだ!ダメだ! ・・・・でも、ちょっとなら・・・あ、いや ・・でも見たいっ!! ちょっとくらいなら・・ほら、偶然 見てしまってー的なあー・・そんなー感じでー、見たんならあ・・・


ッッ!!


ガチャッ!! 玄関の戸が開いた、とともに焦った!! 


「おいっ! 城島あっ!! 持ってきてやったぜ! ・・あれ・・」


「いや・・あのなあ・・上島・・」


「・・おい、お前の部屋って・・パソねーの?」


「は? ・・・ぱそ?・・パソコンの事かぁ?・・ ねーよ、・・・そんなの もう 持ってない!」


「いまどき パソも持ってないで、どーやってエロを見ろって言うんだ!? ・・お前 どーしてんのぉ? XXXXのXX、・・・は、お前! 想像だけでXXXしXXXかぁ? すんげーなぁ、オレにはそんなのたえらんねーし、無理だっ!!」


「・・・、そ、そんな話は・・・オレはしないんだよ・・・。」


「・・・・、はあ、おまえ ムッツリだな、・・・そんなやつに限って 毎日XXXXたりすんだよなー、・・・・へへ。」


オレは 恥ずかしかった、・・心当たりは・・・たくさんあるのだ。


・・だけど オレはやっぱり 下ネタは嫌いだ!・・上島も嫌いだ! 同時に頭に浮かぶと気持ちが折れそーになる・・。


味あうことなく 残りのシチューを食べきった。


涙の味がした・・。


でも上手かった、・・肉が大きく野菜も大きくたくさん入っていた、・・栄養満点で体力がつきそうだ、・・ソフィーさんの心遣いが伝わってくる いい奥さんになるだろうなぁ・・。


「まあ、いいや・・なあ、カップ麺でいいから 一個くれよ、」


「・・・・・、お前が盗んだカップラーメンはいつ返すんだ?」


「・・はああ、誰が盗んだってぇー!? ムッツリスケベの城島ちゃんさあー、・・・それより腹減っててさあー、カップ麺 一個 くれよー。」


「・・・上島、・・・・お前、怪我が治ったら、その口 二度と聞けないほどにしてやるよ。」


「っ! ・・・・・じ 冗談の分かんねー奴だなー、・・・オレの部屋に来いよ、ソフィーの裸 見せてやるからよ! な、・・ああ、・・それとも春の方がいいかあ、・・ああ、お前は 春が好きだったんだよな! オレはソフィー! いいんじゃね!」


はっ はるっ・・なにぃっ!!!?? は る ? とは、・・・何だ? あの はるぅ ? どのハル? 季節の春か!? はる? 春? ・・・ええっ!?


「へへへへー、オレは なんと 春の裸の写真も持っているのだ! アハハハハハっ!! すっげーっ!だろっ! 見たいだろっ! だったら カップ麺 一個くれ。」


「上島・・・、とにかく 怪我が治ったら お前はパソコンと共に 玉川に投げ込むことにする。」


「はっ!!? バカっ! おまえっ! そ そんなことしたらなぁっ・・・・小田さんが黙っちゃいないぞっ!! あの人は 玉川に命かけてる人だからなっ!! いいのかっ!!ええ!? いいのかっ!?」


「・・・じゃあ 埋めるか、沈めるか、ゴミに出すか考える・・。」



オレは 上島に カップラーメンを一個やる事した。


だが ・・・・オレは 上島の持っている・・かもしれない、何かの写真は 見ない事にした。


オレは 教師であり、盗撮を堂々としている バカの提案を受け入れることは 身の破滅を招くものと 気が付いた。


・・・だから、


こう言ってやった、「今から 警察に行ってお前の盗撮を言う、・・だから刑務所に入れ、このバカ!」と、だ。


そしたら このバカは 「へ・・・へへへ・・嘘に 決まってんだろっ! 何 本気にしちゃってんのかなぁー・・ハハハぁ・・。」


「・・何? 嘘なのかぁ? なら 別にお巡りさんがお前のパソコンを没収して、中身をチェックしても問題ないよなぁ。」


「な、なんで そんなひどい事が出来るんだよッ!! オレが何したって言うんだっ!? オレはっお前の為に」「ああー警察ですか―ぁ? いま、うちの部屋にバカが盗撮した証拠をもっているんですがあー・・」


「そ、そ・そんな事・・してみろっ・・・絶交だかんなぁ・・・」


「絶交って何んだよ、はじめっから お前とは 縁も由もないんだけどねー。」



上島は オレのカップラーメンを一つ持って 半泣き状態で自分の部屋に戻っていった。


・・・そうなんだ、上島は バカなんだ、・・何をあいつの言った言葉に動揺しているんだ。


・・裸の・・、ほんとかなぁ・・、


見たいっ! どこで撮ったんだ?


・・・やっぱり あいつのパソコンはどこかに埋めた方がいいだろうな・・。


せっかくの ソフィーさんが作ってくれたシチュー・・ちゃんと味わう事出来なかったじゃんかー・・。


あいつのせいで ・・・なんだ、この空しい虚脱感は。


オレは 寝ることにした。


明日になれば 今日以上に体は回復し、明後日なら もっと回復しているだろう、日に日に あのバカをぶちのめせる日が近づいてくる! ヘッヘッヘッ。


そして 明日になれば また 元気で可愛い子供たちの顔を見ることが出来るんだから。



その夜 上島は 二階の自室で部屋の片づけをやっているようだった。


オレがいま住んでる102号室にまで ドタバタと聞こえてきた、・・証拠隠滅でも図っているのか? ・・警察呼ぶって言ったの嘘だけど。


そう言えば 隣に住んでいる 101号室の函館太郎さん・・ほんとに住んでるのか? 物音ひとつしない。


噂では 深夜に古本屋さんを営んでいるとか・・。


ドラキュラの生まれ変わりだとか ・・本気で言ってたら危ない人だな、・・初めてここへ来たとき 昭吉たちに会い、その時に 101号室から出てきたのが函館さんだ。


背は高くもなく 痩せこけた体に 青白く四角い角ばった顔だった、・・なぜ あんなにカビ臭かったのか、・・・それは きっと部屋中 カビの胞子で蔓延しているからだろう。


なぜっ! そんな部屋でも平気なの? かび臭くても平気なの? だけど、絶対体に悪いよ! 先生はそう思うよ!


・・・その部屋は 隣だ。


とりあえずは 匂わない・・・ちょっと匂うかな・・? アパート自体が 古いから仕方がないのかもしれない。


謎の人物、函館太郎さん、・・この村には結構 謎が沢山あるよーだ。



もう、寝る。


おやすみなさい。




第十二話  「城島先生の回復力は超人並ですねー!と言われたい。」   十三話に続く。










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