第二話 第五章~新たな闇 New darkness~
目覚めた。
そこは廃ホテルの一室だった。
朝日が差し込む窓を見て、昨日のことを思い出した。
あんなクソガキに負けた。
その事実が重くのしかかる。
いつの間にかくっついた右腕でベッドから起き上がる。
意識が朦朧としている。左手で頭を抱えた。
喉が渇いた。早く水を飲みたい。
右腕で、近くにあった『グレープフルーツ味』なるペットボトルを取る。
しかし、不思議なものだ。
魔法側のわしが科学に頼るなんて。
ペットボトルの浸透率は凄いものだ。
飲んでみると、グレープフルーツ味は不味かった。無駄なものを作るな、この国は。
新しい飲み物を買うため、ボトルをホテルによく置いてそうなインテリア的なゴミ箱へ投げ入れた。
その直前、右腕がちぎれた。洒落たランプにペットボトルがぶつかり、ランプもボトルも床に落ちた。グレープフルーツ水が床にぶちまけられる。
「あ?」
朝起きて、ヨトゥンが初めて言った言葉がそれだった。
ちぎれた右腕を見る。肉が見え、驚くほどの量の血が出た。
そして気づく。
誰かいる。
「ヨォ」
そいつは、黒かった。
黒い運動靴を履き、黒い手袋をしていた。ズボンは見えなかった。黒い布製のレインコートみたいな物を羽織っていたからだ。顔は、そのレインコートに付いていたフードを被り、鼻まで見えたが、顔の全体は見えなかった。
少し声が高かったが、男だろうと推測できた。
「ッたく、夜、謎の爆発があったから見てこいなんて言われたけどよォ。いたのは『ただの』ジジイかよ。殺しがいが無さすぎだ」
「き‥さま‥‥‥は‥‥‥誰‥‥だ?」
「冥土の土産にでも聞いておくか?」
男は、不気味な笑みを浮かべながら言った。
「俺は‥‥‥」
目覚めた。
そこは、病院の一室だった。『白い死の床』と表現した人は誰だったか。
病室とは思えないぐらいの広さにポツーンと置かれたベッドで俺は目覚めた。
窓を見ると、光が指していた。
つまり、昨日(より以前?)はもう過ぎた、らしい。
ボー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ッと、退屈な時間を過ごしていると、恂が病室に入ってきた。
恂が、この部屋に入った時の感想は、
「うわ広っ‼」
だった。
色々話していると、フェーリー(今は恂がいるので神奈と呼ぶ)が来た。
この部屋に入った時の第一声は、
「うわ広っ」
だった。お前ら感想それだけか。
あの戦闘は、昨日だったらしい。途中から覚えてない。記憶がスッポリ抜けていたのだ。主に『ザステリア』を発動させ後。
俺はあの時慌てていた。妹とフェーリーの身に危険が迫っていたからだ。唸ってたし。
その事をフェーリーに言うと、
「ああ、その事ね。悪夢を見てたよ。私、大好物のパンケーキに食べられる夢だった」
とのこと。心配して損した。
『ザステリア』を発動させた後、俺は女に向かって走っていた。
もちろん、女にぶつかる。それが狙いだ。
あのジジイが遠隔操作で女を操っているなら、俺が魔法を使うところを見ていたはずだ。
爆発系の魔法なら、体が吹っ飛ばされる。
と、共に。
女とジジイの間にあった、魔法の『繋がり』も吹き飛ばされるだろうと考えた。
まあ、その衝撃で体のあちこちがボーロボロになったし、どちらかの腕が吹っ飛んだことも覚えている。その後が思い出せない。
腕は、両方ともくっついていた。
何か手術でもしたのだろうか。
そう思い、近くにあった[手術報告/確認書]というものを見た。
[手術報告/確認書]
患者名〈紫蘇野神成〉
その時、神成が見た手術名と、黒い男が放った言葉が同じだった。
そう。
『暗黒物質』と。
どうも、五月雨度巳です。
今回、新たな闇とサブタイトルを付けましたが、闇というより黒の方がよかったかもしれません。アイツの存在自体黒だし。
あと、これを投稿した後、『神とあなたがいる世界』の筆を置かせていただきます。
といっても、やめるわけではありません。
新作を、一つ出そうと思うので。
タイトルはまだ付いていませんが、読者の皆さまのご声援をいただけたらと、思っております。
その新作の第一話を出して、『神とあなたがいる世界』の外伝を書く予定でございますので、本編を書き始めるのはその後ですね。
読者の皆さま、本当にこの話を読んでいただき、ありがとうございます。
では、どうか皆さまに幸せが訪れんことを‥‥‥。
あとがきの最後の終わり方気持ち悪いな。
あと、何か最終回の雰囲気だな。終わりませんよ~!
五月雨度巳