第二話 第三章~グングニルとオーディン Gungnir and Odin~
私は、次の『獲物』へ『それ』を向ける。
『ラグナロク』シリーズ第五。
『Z54694876757270864058―グングニル』。
それが、この狙撃銃の名前らしい。先ほどまで『それ』と呼んでいたやつだ。
この銃の特徴としては。
狙った獲物は外さない。
対象をロックオンすると、銃口がどこに向いていようと当たる。
まさに『グングニル』の名に相応しい銃だ。
「‥‥‥目標、発見。データベースより、『第二獲物』と判明。対象、ロックオン。目標の狙撃に入る」
歌を歌っている若者が見えた。楽しそうだ。が、獲物なので仕方がない。
引き金に指を掛ける。狙い撃つ。
その直前、屋上に登ってくる人影が見えた。
「‥‥‥ッチッ」
思わず舌打ちをしてしまった。急いで片付ける。
あらかじめ用意していたバッグに『グングニル』を入れて、その上に、黒い布を巻く。
「脱出する」
誰かに言うわけでもなく、呟いた。
「ここです。ここから、『魔力』を感知しました」
俺は、フェーリーと愛唯と一緒に、『マリーンズ』の屋上へつながる階段を登っていた。
「本当にいるの?」
「私を誰だと思っているのです?」
「不思議ちゃん」
女の子二人が会話をする。愛唯にとって、フェーリーは『不思議ちゃん』らしい。まったくの同感だ。
「神成さん、今余計なことを考えませんでしたか?」
気のせいだ。
ドアが見えてきた。
この先に、『狙撃者』がいるのだろうか。
と。
ガタン!!と、いきなりドアが開いた。
中から、女が出てきた。
高校生ぐらいだろうか。どこかの高校のものと思われるジャージを着ていた。美しい赤色で、ボブカットの髪をふわふわ、と揺らしていた。
しかし、女の特徴はそれだけではなかった。
女は、右目に大きな眼帯をしていた。黒色の眼帯で、よく、海賊とか使ってそうなヤツだ。
さらに。大きい、棒のようなものを背負っていた。布で巻いてあるので中身はわからないが、人一人ぐらいの長さだ。
女は、俺らを見ると少し驚いたが、一礼すると、すぐ階段を降りていった。
それを見た俺らは‥‥‥。
『‥‥‥』
まさに、『開いた口が塞がらない』状態だった。
「ぜってーあの女が『狙撃者』だろ」
屋上で、一応人を探したあと、『狙撃者』は誰なのか、という話をしていた。
「ええ、そうでしょう。しかし‥‥‥」
「どうした」
「まさか、『ラグナロク』シリーズを持ってくるとは」
「ラグナロク?なんじゃそりゃ」
俺は聞いたことがない。しかし、愛唯は知っているようだ。
「知ってる知ってる!『ラグナロク』って北欧神話の中での終末の日ってことでしょ?」
すげぇ、アイツそこまで知っているのか。
どうして知っているんだ?
「ゲームで知った」
おい。
「まあ、大体正解です。そんな感じですね」
「イエーイ!正解!一位!優勝!なんか優勝賞品貰えるの?」
「そうですね、ここにガムがあるのであげますね」
優勝賞品ガム一枚。悲しいな。
まあ、フェーリーには感謝してるが。愛唯の性格が明るく見える。あの人達の介護でもダメだったのにな。
フェーリーが話を続ける。
「ラグナロクシリーズというのは、ドヴェルグが作った『十の銃』の中の一つです。あの銃は、ドヴェルグ達が作った初めての狙撃銃で、確か‥‥‥五番目に作られたので『第五』と呼ばれたりします」
そして、フェーリーは少し間を置くと、また説明を始めた。
「第五は、『グングニル』と呼ばれます。しかし、並大抵の人間には扱えません」
「じゃあ、あの女は神様か?」
「いいえ‥‥‥、見た感じ、人間です。しかし、何か、違うんです。こう、人間の大事な柱の一部が崩れたような‥‥‥」
フェーリーは話を続けるが、俺は、ある一つのことを考えていた。
あの謎の女は一体誰なのだろうか。
どこかの高校のジャージを着ていた、ということは高校生である。なぜ、高校生が人を殺さないといけないのか。
「なぜって、儂が『命令』したからじゃよ」
屋上に、声が響いた。
声がした方へと視線を向ける。視線が集まった先には、
一人の、老人が立っていた。
服は、ゲームやアニメで『悪の皇帝』キャラが着てそうな、紫色を中心としたものだ。髪の毛も、白髪の中の何本かに紫色がある。
彼は、孫へ話しかけるように、優しくしゃべった。
「儂の名前は『ヨトゥン』。神の敵じゃ」
どうも、五月雨度巳です。
えー、今回は、ちょっと北欧神話を強く書いて見ました。北欧神話の勉強しなくちゃいけなかったので大変でしたよ。
あと、投稿日は決まっていませんので‥‥‥、えーと、何かごめんなさい(笑)
実は、私、新作執筆中です。
しかも、
三作同時並行で。
タイトルは決まっていませんので、まだまだ完成していませんが、楽しみにしてください。
それでは。
ああー、愛唯全然しゃべらねー。誰が悪いんだ?私ですねすいませんごめんなさい。
五月雨度巳