第一章 ~出会い meeting~
ここは、日本の上空のどこかにある島。
まるで鯨が泳いでいるような<神有島>と呼ばれる島には、島の名前から分かるように人口四百万もの神様が住んでいた。
鯨の頭の部分に火神族、背中の部分に雷神族、右ヒレの部分に海神族、左ヒレの部分に風神族、そして、お腹の部分に闇神賊、という風に別れていて、体の大きさや、族は違ったが、互いに仲良く暮らしていた。
しかし、鯨のしっぽに当たる部分では、神様どうしの戦争が絶えなかった。
表向きは仲良くしていても、裏では領地獲得のため、日々戦争をしていたのだ。
その中でも歴史上一番大きかったのが、闇神率いる闇神軍と海神率いる海神軍の戦争だった。
その戦争では、関係ない女も子供も殺され、両軍とも、ただの殺戮を行っているとしか思えなかった。
元々、闇神賊は全体的に見てもどこの族にも強く、勝利は確実だった。
彼、<雷>と呼ばれる、伝説の英雄が現れるまでは。
<雷>は、人三人分の長さはあるであろう太刀を振り回し、両軍に壊滅的な打撃を与え、たった一人で戦争を終わらせた。その翌年、「百忌戦争」と呼ばれた戦争は終わった。
しかし、同時に<雷>も居なくなった。
神様たちは、彼を英雄と崇め、戦争の起こった場所に記念碑が建てられる事となった。
これが、私が知っている、十年前に起きた「百忌戦争」の詳細と、<雷>について。
そして・・・。
日本 宮崎。
空は太陽がまぶしく、いい天気、なのだが。
今日は運が悪い気がする。
朝起きたら大事にしていたアニメ、「セカンドスラッシュ」のDVDを踏んづけてしまうし、学校は八時四十分に始まるのに時計を見たら十時だったし、しょうがないからのんびりテレビを見ながら学校の準備をしてたら学校に宅習ノートを忘れたことに気づき、テレビを見たら運勢が最悪で、「今年最悪の運勢でしょう」と、笑顔でアナウンサーに告げられた。
「紫蘇野」と、黄色く光る名前カードを学生証に入れ、何もない床で滑って腰を痛めながら家を出た。
そして、今は学校に行く、途中の道だ。暑い。夏ってこんな暑かったか?
周りを見渡しても、辺りは田、田、田。田んぼだらけ。
「あーあ、空から急に五百万円降ってこないかなー」なんてバカみたいな事を呟いた。
もちろん、降ってくるはずもなく、代わりに日光が降り注ぐばかりだった。
今、俺が向かっている学校は東宮柁高校というところで、少しだけ不思議な学校だ。
俺は、東宮柁高校の一年生で、紫蘇野神成っていう名前だ。
‥‥‥自分でも思う。変な名前だ。なんだ神成って。俺は神様でもねーし、雷様でもねーよ。
一応、俺には妹がいる。紫蘇野愛唯、それが妹の名前なのだが。
‥‥‥何で妹は普通そうな名前なのに俺はこんな中二病的な名前なんだよ。
未だに、辺りは田、田、田、田んぼばっかりだった。
暑い日差しが降り注いでいた。これが地球温暖化かと心底思ったときだった。
「‥‥‥ぁ‥‥ぁ‥‥‥‥‥‥ぁ‥‥‥!」
頭の上から音が聞こえた。空を見上げる。何もない。
「気のせいか。」
「‥‥‥ぁ‥ぁぁ‥‥‥‥ぁぁぁ‥‥‥‥!」
やっぱり聞こえた。空を見上げる。何もない。
が。
太陽が歪んだ、と思ったら、空から白いものが落ちてくる。
「いいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃたああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!なんじゃありゃ、人!?」
空から落ちてくるものは人。パッと見た感じ、あれは女だ。
つーかどっから現れた。太陽?そんなわけが‥‥‥。
「着地っ!‥‥‥成功!」
「いや全然成功してないし。地面へこんでいるんだけど」
よく声をかけられたな、と、自分でも思った。見るからに変人である。髪の毛は真っ白で、太陽の光を反射している。目の色は青っぽい。外国人か?服は白いワンピースを着て、靴は履いてなかった。裸足である。
「へっ?ああ、気にしないで下さい。私、普通の女の子ですから」
「いやいやいきなり現れ地面をへこませて裸足で着地したのに怪我ひとつない姿を見て普通の女の子と思う人はいないから」
「早口言葉的な感じでつっこまれた!?普通の女の子ですって」
なんだこいつ、変なやつだ。面倒くさくなる前に逃げよう。
「あっ、僕ちょっと忙しいので、サヨナラ」
「ああ、ハイハイ分かりました。さようなら‥‥‥ってちょい待てい!」
ちっ。
「今舌打ちしたでしょう!?」
「知りーませーんよー」
「嘘をつけ、嘘を!」
「それはおいといて。何か用ですか」
「おいとくなー!!って、やっぱおいときましょうか」
うぜぇ。
「えーと、紫蘇野神成さんですね」
「そうですが。なにか」
「お久しぶりです」
「‥‥‥は?」
「いやー十年ぶりですね~。懐かしいです」
意味が分からん。
「ちょっと待て、貴様のような変人は知らん」
「バッサリ言いますね。とにかく、昔会ったことあるんですよ」
「いつ、何処で、誰と誰が会ったことがあるんだ」
「十年前、神有島で、私と、あなたが出会ったんです」
‥‥‥ね~わ~、絶対ね~わ。まあ‥‥‥ホラ話だったとしても聞いて見るか。面白そうだ。
「まず、神有島って何」
「ふふん。聞いて驚け、見て驚け!!」
「『驚け』って二回連続で文章の中に入れるものじゃないし、見れないし」
「神有島とは‥‥‥」
人の話を聞けよ。
「今、あなたの真上にある、鯨の形をした雲です」
‥‥‥は?
「今、『は?』って思いましたね。デジャウですね」
正確には『デジャビュ』だ。
ん?
なんか忘れているような‥‥‥
「あっ!」
「どうしました?何か思い出しました?」
「学校!今何時!」
「えーと、11時です。正確には11時23分」
女が、なぜかお腹をさわりながら言った。
と、同時に俺は腕時計を見る。11時23分。
「メッチャ正確!?なんなのお前のお腹!?」
「腹時計ですっ!」
「ええと‥‥‥もうなんかいいツッコミが思いつかん!ちょっ、俺学校に行くから、ついてくんなよ!」
「分かりました」
よっしゃ急いで学校へ!
‥‥‥その後、家を出てから校門に着くまで、実に一時間二十三分。
無事、校門を通過し、校門にいる佐原樫御さん(七十二歳 通称おっちゃん)に一礼してから学校の敷地内に入った。
‥‥‥その二十秒後、髪の毛の白い、裸足の女の子が学校に入ろうとしておっちゃんに止められ、今、保健室にいることは知らない‥‥‥ふりをしよう。
どうも、五月雨度巳です。
今後とも長いお付き合いが出来れば、と思っております。
因みに、このペンネーム(?)、私の尊敬しております、作家さんから来ております。考えてみてください。(でも、分かったからと言って、その作家さんに告げ口しないで下さい。私、泣きます。)
それでは。