あたしはフラグを蹴り飛ばす予定-1
あ~あ~、あ~あ。
『最初は何処へ行こうかしらね……凜子さんは何処から行きたいかしら?』
『私、二条城に行ってみたいわ。エリカはどうするの?』
「あ、あた…私もそこへ行きたいわ」
とうとう来てしまった5月25日。
親睦旅行1日目、京都へ向かうバスの中で絵鞠ちゃんと凛子ちゃんと、これは予測通り。まあ、早々変わりはしないところね。
思っていたよりも早く当日になってしまったし、あの日―――あたしが帝に席を譲った日から特に変わったことはなかったのだ。
それもそのはず、帝は4クラス中の3組で、あたしとは違うクラスだから顔を合わせることも滅多にない。
廊下ですれ違うという面で合わせる時があったことはあったけど、見つからないよう華麗に避けてきたから問題無しだ。
が、そうとも言えない魔の日が迫っている現在バスの中からお送りしております。英(宮間)です。……この出だし皆様もう慣れましたでしょうか。
『あらやだエリカさん、白目になってますわよ。うふふっ』
『あらま本当、最近よく白目になるのね。エリカってこんなに面白い子だったなんて。オホホホッ』
こっちの株は知らぬ間に上げていたみたいです。
ヨカッタネエリカチャン。ヨカッタヨカッタ。
その後。
皇華京3年一同は京都市内に到着し、長ったらしい校長の話を聞かされてから自由行動へ。
校長ごめん、多分それ殆ど誰も聞いてなかったよ。校長は出張してもブレないわね。
で、三人で二条城へ向かおうとした、その時。
……なんだか騒がしい。あれ、デジャヴ?
『ねぇ帝様~!一緒に阿弥陀様を見に…』
『悟りを開けるくらいの知能をもってからほざけ』
『帝様!私と共に清水の舞台から…』
『ほう。死せ、と?』
『帝様~よろしければ一緒に…』
『断る、失せろ』
……なんと言うか。
見てはいけないものを見てしまったような気分だ。
あそこまでだと同情心が湧いてくるわ。なんなら陰から拝んであげようか?
苛立ちながらあしらう帝に、あたしはまさに白目でなく白い目で帝を見ていると、まさかの事態が起きた。
『……。』
「…っ!」
やややヤッバぁー…目、バッチリ合っちゃった。
「……ン〝ッンー、絵鞠ちゃん凜子ちゃん!二条城に向かいましょっかー!あ~あたs…あたくン〝ッ!あ!私!慶喜公大好きでご、御座いますのよ!?オホホホ…ゴホッ」
二人を無理矢理引っ張って、その場を逃げるように去った。……今だけは誰かにツッコミを入れてほしいくらい、やらかした。
帝に『失せろ』と言われた方が救われたかもしれないわ。今だけは。
二条城に到着した頃。絵鞠ちゃんには、
『おかしなエリカさん。うふっ』と愛らしく微笑まれ、対して凜子ちゃんには、
『慶喜公…フフッ、思う存分どうぞ御覧に……アハハハハッ』とお嬢様らしからぬ笑い方をされてしまった。
―――この日の夜、あたしは帝対処法について真面目に考えたが結局全く思いつかなかった。もうどうにでもなれ。ケ・セラ・セラ。まくとぅそーけーなんくるないさ~。
1日目は二条城に行った後、マンガミュージアム、本能寺、壬生寺、西本願寺にも行った。
道中、帝や陵に遭遇することもなかったし、忙しなくも有意義な時間を過ごせたと思う。
そりゃもう現実なんて忘れるくらいに。
が、そんな中でも現実を忘れさせてくれないのが―――マンガミュージアムという場所だった。
もしかしたら、と思って探しちゃう。
〝ハナコイ〟の存在。
結局見つからなかったけど!
もっとしっかり探せば見つかっていた?神のみぞ知る。
否、あるはずがないとはわかっていた。
なのに、ただひたすら本能の向くまま、その不確かな存在を探し回るあたしの姿を見兼ねてか、途中で絵鞠ちゃんたちに止められてしまった。
二人は何も知らないのに、申し訳ない。
2日目は妙蓮寺、北野天満宮、龍安寺、金閣寺を訪れた。
学問の神様である菅原道真が祀られている北野天満宮では「無事に皇華京高等部に上がれますように」と三人でお参りし、お揃いの御守りも購入。
……ちなみに中高一貫なのに、高等部へ上がる為の試験があるという新事実を、この時初めて知った。
流石に二人の前で「初めて知ったよ(汗)」などと言えるわけもなく、まともに勉強(ある意味復習)をしようと確信した瞬間でもあった。
中学生2回目だからって余裕ブッこいてました。ごめんなさい。
その次に行った龍安寺といえば有名なのが石庭。
宮間瑛梨沙が修学旅行で来たときは「こんな石見て何が面白いんだろう」なんて思っていたっけ。
まさにその時のあたしに似た反応を示していたのが凜子ちゃんで、感嘆の声を洩らしていた絵鞠ちゃんはかなり大人びていると思った。
ソースは宮間青春時代。
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「こんな石見て何が面白いんだろう」
失礼にもほどがありますね。申し訳ございませんでした。……でも桜雪もそっち派でした。(こら)