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可憐な華でも、姫でもナイッ(仮)  作者: 桜雪りか
Ⅰ.英エリカ、モブキャラの謎編
5/33

万年不機嫌な暴君-3


***



 授業も無事終わり、昼食で学食を食べにあたしは食堂を訪れていた。

 中学にも学食があるなんてお姉さん吃驚。あたしが通っていた中学は普通にお弁当所持だったもの。



 券売機に並ぶA定食、B定食―――無駄に高いS定食の文字ををチラ見。値段見て鼻で笑ってA定食ボタンを押した。

 それからテキトーな席に座って一段落着いた、そんな最中の出来事だった。



 突然にも女子生徒たちが『ね、ねぇっ、あれ…』とか『キャ~!嘘~!』とか言ってざわつき始めた。騒がしい。食事の時くらい静かにして下さい。

 ……って、まさかッ!




(ミカド)様!(ミササギ)様!此方のお席空いてますのよ?』

『いえいえ。是非とも此方のお席に…』

『帝様!?よろしければ親睦旅行で…』

『陵様、こんな方達放っておきましょう』

『お二人とも今日もとても麗しゅう御座いますわ』




 ……えぇ、えぇ、とうとう生・リアルでお目にかかることができたようです。メイン攻略対象キャラのこの二人―――




 俺様―――な生徒会長こと、[帝(ミカド) 零司(レイジ)]。



 ゲームでの印象になるけど、彼の皇帝っぽさ、横暴さ、…わがままさは天下一品だった。

 彼とはなるべく関わりをもたないようにしたいが、なんとかしてやられる前にやりた……げほっ。やられないよう気をつけることが目標ね。



(に、しても…)



 スラリと伸びた脚に、この全身のスマートさ。

 明るいブラウンの綺麗な髪と、琥珀色の切れ長なパッチリ二重。まさに恐ろしい程立ち絵通りね。


 スッと通った鼻筋に、長い睫毛、形の良い唇。

 遠目で見てもわかるくらいにはっきりと端整な顔立ちは、中学生でここまでの色気を醸し出してるとは、ある意味コワい。




 一方、クール―――な生徒副会長こと、[陵(ミササギ) 左京(サキョウ)]。


 ゲームでの印象は、まず名前にサ行音が多…ってこれは関係ないから無視。

 彼は、暴走してばかりの帝を抑える程大人びた性格。作中でも彼の説得力のある言葉にはあたしも頷かされてばかりだった。


 が、幼馴染みという帝に対しても未だに敬語。そしてこの微塵も変わらない無表情を貫いている。

 なので正直何を考えてるのか全く予想はつかない。


 裏を返せば、彼を味方につければ怖いものなしじゃ!?上手くいくとは思わないけど……。



 容姿はこちらもスタイル抜群で、帝とは対照的な風格の持ち主だ。

 背の高さは帝よりも少し低いが、どちらにせよ両者とも別格のように高い。


 灰銀色の髪に、色素の薄い肌が儚げな雰囲気を醸し出す。

 また、紺碧色の切れ長な瞳も睫毛を伏せれば、繊細でより幽玄な印象を与えている。




 二人とも生身の人間でここまでイメージ通りになるのだから、この世界は何でできているの?なんて聞いてしまいそうですね。本当に聞きたいけどね。

 とにかくこの見目麗しさといったら、ファンには堪らないだろう。



 だ・け・ど!


 性格までが、そうも整うだろうか。


 視力はエリカのメガネのお陰様でこんなに視界ピカピカ・クリアクリーンだが、聴覚は自力でなんとかするしかないと、あたしは耳をそばだてたので、二人の会話を聞き逃さなかった。




『おい、陵。これどうにかしろ。煩過ぎて食事どころじゃないぞ』


『……ですが会長。あいにく、席はもう既に埋まっています。断れば他をあたるしか無いのでは?』


『…チッ。仕方あるまい、強行突破のみだな。そこで待ってろ』



 そう言い残して帝はズンズンと歩みを進め、とある二人組の男子生徒の前で立ち止まった。


 ま、まさか。



『おい、貴様ら』



 声をかけられた男子生徒のうち一人は不機嫌そうに、もう一人はビクビクと帝の方を向いた。



『あぁん?なんだよ』


『お…おい、やめとけよ、行こうぜ…』



 帝が表情に影を落とした。

 それが合図かのように、場の空気がしん…と静まり返る。あーあ、男子生徒よ。俺様の逆鱗に触れたな。




 ―――ふいに、

 その静寂を壊すかのようにガタッ!と、どこからか大きな音が鳴る。その音の先に誰もが目を向けた。勿論、陵と……帝も。




「もう…退きますので、よかったらどうぞ」




 そう。


 思っていたより大きな音が出てしまったが、それはあたしが椅子を引いた音だった。


 確かに席は埋まっていたし、あたしの隣の席には鞄を置いていたから退いて正解だと思った。

 何より犠牲者を増やしたくないという善意と、今のうちに良い顔をしておきたいという思いが重たい腰を動かしたのだろう。



『…あ、あぁ』



 性格とは違って心地の良い声だった。

 帝が歯切れの悪い返事を返したことで、緊迫した場の空気はやがて平穏へ。

 しかし、あたしもちょっと怖いので帝の顔も見ずに「では、失礼します」と一礼して逃げるように教室に戻った。あたしってば、いざとなったらビビリ……。



.

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