万年不機嫌な暴君-1
コーケコッコー…クックルドゥ――…
コッコッコッウェーッ―――……フガッΣ!
「―――フガッ!」
ちょ、鶏、大丈夫?お陰で目が覚めたわ。
皆さんおはようございます。
宮……、英エリカです。
そしてご報告で、目が覚めたらなぜかエリカの記憶が共有されてました!驚愕っ!
だけど、あたしとしては宮間瑛梨沙の中にエリカの記憶があるのであって、エリカの思い出は全て他人事のような気分。
結局まだ宮間瑛梨沙は死んでるのか生きてるのかもわからない。
でも、そうとなれば話は早い。
自分で言うのもアレだけど、あたしは人よりポジティブだ。エリカになったからには……ニヤリ。
「…万年不機嫌な暴君の、お手並み拝見といきますか」
フッフッフッ…と怪しげに笑ってると、エリカの母親の[英 華憐]が、
『朝食の支度、できたけど…学校行ける?』と物凄く可哀想な人を見る目であたしを見ていた……。
勿論のこと、あたしは無駄に力んで学校へ向かった。
母はずっと不審そうにあたしを見ていた。
エリカだったら下を向いて憂鬱な気持ちを噛み締めてるんだろうけど、当て付けのようにルンルン気分を装ってみた。
ちなみに最初だし、格好はいきなり変えてエリカの普段の環境を体験できなくなっても困るから、嫌々おさげメガネになってやった。
制服は金ボタン付きシルバーグレーのブレザー、今の季節は春だから薄手のニットカーディガン(黄土色)、赤チェックのリボンとスカート。
膝上にすれば良いのにエリカは膝下にしているから仕方無く膝下。後に変えてやるけどね。
―――学校に着いてからは、装いなんかせずともルンルン気分になるあたし。
西洋にある綺麗な建物のような外装・内装が美し過ぎる。庭もどこかのお城を思わす、薔薇のアーチと沢山の花たち。麗しい。あとで来たい。
そんなことを考えながら、3年1組の教室へ入る。
そういえばハナコイのヒロインって、エリカや俺様より年下じゃないの。
ハナコイはヒロインが入学する時には、高校2年にして既に俺様が生徒会長になっている。
クールも2年で、ワンコは指名されて1年で入って、癒し系は3年で、保健医は25……おっと!?中のあたしと同い年ね。
まあ、色々とイレギュラーだった。
隠しキャラは年齢不詳だけど、見た目は高校生。
(で、問題は…)
教室に入っても、特に変わったことはなかった。
言い忘れてたけど土足OKな学校だから、靴箱にゴミが!上履きに画鋲が……!なーんて心配もなし。
エリカの記憶はちゃんと思い出したはずだけど、かなり時差があるみたい。
あくまでも物語での記憶であって、あたしはその通りに進める気は更々ないし。
何せ思い出したのは最初から「最後」までなのだから。
いやいや、死ぬわけじゃない…と…思う……多分。
「最後」ってのは、物語で俺様にやられちまったところなんだけど、記憶もほぼシナリオ通りで当てにならない。
そしてそのシナリオも、エリカは「やられた」のであって「殺られた」かは永遠に謎。
某国民的アニメのアンパン●ンに出てくるバイキン奴みたいに、完全にお亡くなりになってるわけではない…かも…しれ……
―――嗚呼、今ハッとした……。
これ、もしや、あたし、ヤバイのでは?
あのイベントに身の危険を感じる。
いやいやいやでも攻略対象が人殺しなんて、ねえ?ねえ!?まさか権力振りかざして隠蔽!?くっ、そうなのね……好感度下がる…(勝手に話進めた)
とにかくあのイベントに近付いたら用心しよう。そう自己完結させた。
そういえば、今日って何月何日?
あたしは鞄からスマートフォンを出す。
…スマートフォンを出す。……スマートフォン。
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