勇者様。頑張る
いやはや。
人通りが少なく、暗い路地。
建物と建物の間に狭い道がある。その道を塞ぐように、少し紫がかった黒いローブに身を包んだ細身の人が立っていた。フードを深く被っていて口から上が見えない為、性別を特定するのは難しい。
勇者は鞄から通常のトランプ程の大きさのカードを取り出した。このカードは裏商店街の会員証。つまり、ローブの人物が塞いでいる道の奥が裏商店街だ。勇者はローブの人物に近づきそのカードを見せる。
「あいことば。」
そのカードを見たローブの人物は、小さな声でそう呟いく。勇者はローブの人物に身長を合わせる為、少し屈みローブの人物の耳元に顔を寄せた。しばらくしてローブの人物は頷き、道を開ける。勇者達は狭く暗い道の奥へ入って行った。
建物は古くさく、商店街の賑やかさなど欠片もない。しかし店は全部見て回るには一日じゃ足りないと、思うくらいに多い。勇者達は目当ての店へ真っ直ぐと向った。
からんからん
勇者は入り口の上に斧がぶら下がっている店の扉を開ける。それに気付き、剣の手入れをしていた女性が顔を上げた。勇者だとわかるとにっこり笑う。
「イラッシャイ。勇者御一行」
女性は勇者達に笑いかけると手に持っていた剣を置く。そしてカウンターに肘をついた。
「アタラシイ装備も入荷したから、チャント見て行ってね」
女性は楽しそうに、ニヤリと笑う。
魔法書、見たことのない形をした武器、強そうな防具、怪しい薬。色々なものが並ぶこの店に勇者達はよく来る。そこらへんの店で買うより、裏商店街の方が強いものが揃ってたりするからだ。
『ボクこれがいぃー』
ふと魔法使いは勇者から離れ綺麗なローブと魔法書を手に取る。ローブは光を受け、紫色に光っていた。
『な、なんだ、そのカッコいいローブ…』
『魔法使い専用だよぉ』
そんな呑気な話をしながら勇者達は自分の能力に合う、気に入った装備を買った。
女性に軽く御礼を言うと、勇者達はその店を後にする。
『じゃあ、とりあえず。レベル上げしていきますか』
次の日、勇者達は宿屋にいた。皆が準備をする中、上の空な僧侶が気になったのか勇者が声をかける。
『どうした』
僧侶は二回ほど瞬きをすると勇者の方を見た。
『いえ。何も』
僧侶は表情一つ変えず勇者に返す。少しの間、勇者の目を真っ直ぐに見てから何も言わず準備を始めた。
(あの魔王は…いい人、なんじゃないか?)
あの時見せた、優しさなのか皮肉なのかわからない行動。それは人の心や感情を知らない僧侶には難しい問題だった。




