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魔王様が恋をしました  作者: 藍哀 蒼碧
III : 魔王城にて…
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魔王様。来客

外には雨が降り続いていた。雨粒が俺の部屋の窓をノックする。外の音は全て雨音に掻き消されて、ただひたすら雨が地面に落ちる音だけが響いていた。


さすがに、こんな日には来ないよな…


ふと考えてしまう。

まだ朝だ。心地よい雨音を子守唄にもう一眠りしようか。そんな呑気なことを思っていると部屋の扉がノックされた。


「魔王様、お客様です。」


扉の向こうでメイド長が静かに言う。


「……いったい誰だ?」


俺は扉の向こうに問う。少しの間、沈黙が続く。


「…この間来た勇者の仲間の、僧侶だそうです。」

「っ!?」


一瞬、脳が言葉を理解しなかった。僧侶がこんな雨が降る日にわざわざ、この魔王城に…?


「ひ、一人で…か?」

「はい。そのようです」


突然の事で取り乱す。一人でいったい何をしにきたのだろう。


「…とりあえず、応接間にでも通しといてくれ。」


魔王城はもともと普通の城だった。だから、使いもしない応接間などがあるのだ。


俺は慌ててクローゼットを開け、着替える。髪を整え、膝くらいまであるマントを手で払うと扉を開けた。立派な螺旋階段を駆け下りると暫く廊下を進み、少し大きめな扉のノブに手をかける。


この扉の向こうに僧侶が…っ


一瞬躊躇う。

息を大きく吸い扉をゆっくりと押した。


『あっ…』


後ろから声が聞こえる。抑揚のない感情がわかりにくい、澄んだ声。

僧侶の声だ。


俺の心拍数が一気に上がる。僧侶が、後ろにいる。それだけで心臓が跳ね上がりそうだ。俺はゆっくりと振り返る。

綺麗なピンクの瞳が此方をじっと見つめていた。


「…あ、えっと」

『すみません。少し城内を見てまわっていました』


俺が取り乱していると、僧侶が俺を見つめたまま言う。


「そ、そうか……。とりあえず、中に入れ」


扉を開け、僧侶を中へ通す。僧侶は小さくお辞儀をして応接間の真ん中に置いてあるローテーブルと二人掛けの二つのソファに向かう。


「好きなとこ、座…っていいぞ」

『はい。』


二人きりで話すのは二回目。だが緊張してどんな喋り方をすればいいのか、どう振る舞えばいいのか、頭が真っ白になってしまう。言葉も上手く紡げなくなっていく。

ああ、こんな感じ…なんだな恋って……。


「…えっと、何をしにきたんだ?土砂降り、なのに…」


俺は部屋にある小さな窓をちらと見ると僧侶に目を戻す。その後、すぐ目を逸らしてしまう。


『…。貴方に話があってですね』

「俺さ………、俺、に?」

『…?』


僧侶が不思議そうに首を傾げた。

やはり違和感を感じたのだろうか。いや、でも一回会っただけだ気付くはずが無い。


『なぜ、一人称が変わっているのですか…?"俺様"というのは営業用…か、何かなのですか?』


同じ音程、速度、強弱で俺に問いかけてくる。じっと俺の目を見つめる。

気付いた、のか。一回しか会った事ないのに…

な、なんだ…鼓動が一気に跳ね上がる。嬉しい…と言えばいいのか

顔が次第に熱くなっていく。頬が赤くなっている気がする。


駄目だ、ここにいられない。僧侶の前にいられない、限界だ。

俺はソファを立ち上がり、足をふらつかせながら扉へと向かう。僧侶が困ったように立つ。


「わ、悪い。少し待っていてくれ…」


僧侶の方を向かずに顔を隠しながら扉の向こうへ出た。

左隣に気配を感じる。そっと目を向けるとそこには弟がいた。


「駄目駄目じゃん。兄貴」


俺と目が合うと弟は嘲笑いながら言う。


「う、うるさい…仕方ないだろう」

「まあ?経験なんて無いんですからねぇ?」


にやにやと馬鹿にする弟がいちいち苛立たしい。


「落ち着け兄貴。緊張することはない。…別に僧侶に今すぐ告白しろとか言ってる訳じゃ無いんだ」

「ん、なっ…!?」


弟は俺の肩に手を置き、優しく言う。俺が驚いた顔をすると、弟はくすっと笑い何処かへ行ってしまった。


緊張せず、自然に…。頑張れ、俺。


頭の中で何度も繰り返して、また僧侶のいる部屋へと戻っていった。

段々遅くなって行くかも…しれません?

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