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月子 1

ここから落ちたらどうなるのだろう。

窓から身を乗り出すと、三階下の地面へひゅっと吸い込まれるように体は落ち、潰れる。

痛いだろうか。痛いだろう。地面と接した面はぐしゃりとつぶれ、中身が飛び散る。

意識はどこで飛ぶのか。時間はどれくらいに感じるのか。一瞬なのか。人生が駆け巡るのか。

誰が私の死体を見つけるだろう。クラスメートは泣くだろうか。両親はどんな顔で私の葬式を執り行うのか。

そんなとりとめのない、くだらないことを、何の邪念も意図もなくただ純粋に思考していた。誇らしくすら思っていた。

それが、小学生の私。

滝見月子の幼い日の一節だ。

我ながら、なんて根暗な子だったのかと思う。

「何してるの?」と寄って来たクラスメートもいたが、私がけろりとしてそんなことをつぶやくと、俄かに離れていった。答えが返って来た覚えもない。

今の私だったら相当ひいているだろうし、その女の子も多分薄気味悪く思ったに違いない。

かといって、変だと周囲に避けられていた訳でもない。

普段は活発で明るく、優等生の女の子だった。休み時間は大抵クラスメート皆でドッチボールやバスケットボールをしてきゃあきゃあ騒いだ。

一方で地区の図書館、学校の図書室にも通いまくって本を読み、貸出しカードが何枚になるか挑戦した。

勉強のできるちょっと意地悪な男の子と宿題をやっつけた数を争い、学級会では悪口を言われた女の子をかばって、その子をやり込めたりした。

一体どんな小学生だったのか。自分でも自己像に酩酊する。

明るく、体を動かすことが得意で、優等生、友達も多く、本も読み、喧嘩もする。

そんな「できる」子も世の中には本当にいるかもしれないが、少なくとも私は、自分ではないと違和感を感じる。

どれも嘘。偽り。

そしてそのでたらめな優等生の虚像の底流に、「ここから落ちたらどうなるだろう」という疑問が流れている。

全く、我ながら理解不能。

そんな私だったから、こんな卑劣なことができたのかもしれない。

小学生だった私は、理解不能の暗闇を抱えたまま、十年ばかり過ごして、大人になった。

その過程でありがたくも小説家として認められ、いくつか作品を上梓した。

作品は、私のかわいい子供たち。その子供を、今まではただ内なる声の赴くままに生んで来た。

だけど、これは違う。これは鬼子。

『あなたに会いたいの』。その願いは真実。

その願いのために、私は、この子を使おうとしている。

山内三香。

幼い頃を共に過ごした彼に、私は会いたい。

でもそれがなぜなのか、会ってどうするのか、ああ、自分でも全く理解不能だわ。

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