act. 5
朝。
輝希のおはようございますと言う声で声羅は目を覚めた。
声羅は、不思議な顔をして輝希を見つめた。
「どうしました?」
「あ...いや...何でもない」
慌てた様子で声羅が答える。その反応に輝希は不思議と微塵も思わず、話を続ける。
「朝食があるけど、起きれる?」
そう言いながら声羅に手を差し出したが、声羅にパンッと手を叩かれ、ビックリする。その反応を声羅が見て、声羅は少し後悔をした。
「あ...ごめんなさい。大丈夫だから。」
「そう、じゃあご飯食べる?」
輝希に笑顔で返され、戸惑う声羅。
「うん。食べれる。」
「じゃあ、食べようか。」
「うん。」
**************
朝食を二人は食べ終わり、話を始める。
「今日、平日だけど学校大丈夫?」
「どういうこと?」
「学校行けれる?」
「わからない。あなたは?」
「君が行かないなら、行かないよ。ずっと傍にいるよ?」
「ストーカー?」
「違うよ!違うよ!ストーカーは毎日コソコソ見てる人とかだよ!」
「そうなの。」
「そう。そういえば、名前を聞い...」
その言葉を遮るように声羅が答える。
「声羅。」
「え?」
「名前は声羅。」
「声羅。僕は、輝希。よろしく」
お互い黙り込んだが、その淀んだ空気を絶つために輝希が話し出す。
「メールのやり取りやってたよね?僕ら」
「うん。やってた。」
「やっぱり。改めて、よろしくね」
「うん。よろしく。」
「昨日何かあったの?」
「なんで?」
「だってあんな事...言ってたから..」
輝希はモゴモゴと焦らし、照れながら話す。声羅は昨日の事を思い出して、顔を真っ赤にして輝希に背を向ける。
「聞いて、も、いいかな?」
「まだダメ。」
「そっか。
家族の人心配してない?」
「してないよ」
「なんで?」
「私はあの家の犬なの。」
「犬?ってどういう...」
「飼われてるの。」
「声羅が?でも、家族でしょ?」
「お母さんだけ血が繋がってる。」
「そっか。」
「当分、僕の家にいる?」
「なんで?」
「親のところにいるのが良いとかいうけど、声羅が今いるのはいちゃいけない場所だと思う」
「そうなのか...」
「わかんないよ!それは、声羅自身が決める事だからね!!」
「うん」
「分かったならいいけど...」
「...ありがと」
声羅が消え入りそうな声で言ったとたん、輝希はびっくりとしながら微笑み。
「初めて、言われたなぁ」
「そう?」
「うん」
お互い目を合わせ、(笑)合った。