第一問:「おい、大丈夫か?」
前半は第三者視点ですが、途中から“勇者”視点になります。ご注意を。
*ご指摘を受けたので、本文を一部訂正いたしました。
自分の身体さえも確認できないほど暗い闇の中、“勇者”と呼ばれた男はさ迷っていた。
「…ここは、一体…何処だ?俺は…」
男はそこでようやく自分に起こった出来事を思い出し、歩みを止めた。
「…!俺は確かに魔王を倒したはずだ。それなのに何故、俺はこんなところに居るんだ?あの時、あいつらに呼ばれて…」
―ガクッ
そこまで思い出した途端、男は頭の中を、刃で刺されたような鋭い痛みを感じ、咄嗟に膝をついた。
「…つぅ。なんだ…頭が割れそうだ。あと…もう少しで、何かが思い出せそうなんだ。あいつらは…、あいつらは…最後に。…最後に何て言ったんだ!」
ここまできて一気に痛みが増し、男は耐え切れず意識を失った――。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―ズキン
「…うっ。」体中から来る痛みによって俺は目を覚ました。
まず目に入ったのは、白い天井。…?はて、俺は確か闇を連想させる黒き魔王城にいたはずだ。もちろんそこに白なんて色はない。なら、一体此処は何処だ?
そう思って自分の状況を確認しようと目線を天井から動かし辺りを見回すと、視界の隅に何かが映った。
「?。なんだ?あれは、……人…か?」
おそらく人であろうそれはぴくりとも動かない。死んでいるのかと思ったが、息をしているのがわかった為、とりあえず勇者という名目上放っておく訳にはいくまい。
そう思って、痛む身体を起こした時、俺は愕然とした。
「なっ!傷が塞がっているだと!!」
一応勇者であるからにして、人よりも回復力がある俺だとしても完治とまではいかず傷が残るだろう、と思っていた魔王から受けた怪我が、未だに痛みはあるものの塞がっていた。
「どうゆうことだ…」
起き上がり自分の周囲を確認すると、そこには夥しい量の血液が広がっており、自分がいかに重傷であったかを物語っていた。
考えると不可解なことがたくさんあるが、ひとまず倒れている人の確認をしようと、身体を引きずりながら近づき、顔を覗き込んだ。
「…女だったのか。
おい、大丈夫か?」「…うーん」
倒れていたのは、肩につくぐらいで切られた黒髪の若干幼さが残る若い娘だった。なんでこんなところに、と思ったが怪我が無いようなのでひとまず安心する。
だが、何故だろう。この娘からは得体の知れない違和感、はっきりいってしまえば何処か薄気味悪さを感じた。魔族という訳でもない。魔族はもっとまがまがしい気配がする。
「至って普通の娘なのにな…。おい、目を覚ませ。何があったんだ?」
「…うーっうん?」
ようやく目を開けた娘がぼんやりと俺を見つめる。だんだんと意識がはっきりしてきたのであろう、濃いブラウンの瞳と俺の視線がぶつかった。
「…しっ!
「し?」
「死体が喋ったぁぁ!!!」
ここで俺は娘に抱いた違和感の正体に気づく。
娘は心底驚いた雰囲気を醸し出しながらも、一貫として無表情だったのだ――。
男女主人公なので、
第〇問を“勇者“視点、第〇答をレイ視点、男女一貫を第〇説という表記になります。
次回はレイのターンです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。