裏切り
ごろつきの雇われ者のルガートを倒し、俺の小屋まで戻る。
小屋まで戻るとアリッサの姿は無く、もぬけの殻だった。
「あいつ、どこ行った」
心当たりなどある訳無く、ひたすら周辺を探す。
時間だけが過ぎていく。
明朝と言ったのに気付けばもう午後、そして夕方だ。
このまま俺一人で出発しようとも考えたが、あれで一国の姫だから、あいつに何かあったら俺が困る。
もう少し遠くの方を探して見ようと思ったが・・・・・・発見した。
また、何かに追われている。
向こうも俺に気付く。
「あー馬鹿ノア、早くこいつら何とかしてー」
服装はどっからどう見ても姫にしか見えない。
ただ、着ている人間がじゃじゃ馬だとこうなるのか、馬子にも衣装だな。
アリッサを追っている人物を見てみると、また同じようなごろつきの男だった。
あー面倒くせぇーと思い、剣を抜き、ごろつきに襲い掛かろうとした瞬間、背後から腕を捕まれる。
奴らの仲間かと思い振り向きざま残っている左手で殴ろうかと思ったが、さっき知り合った顔だった。
「おい、あいつには手を出さない方が懸命だ」
「ちっ、ルガートだっけか?今忙しいから後にしろ、そんで腕放せ」
「俺がやばいって言ってるのはあの姫の方だ」
「どうゆうことだ」
「俺も金でごろつきに雇われただけだから詳しい話まではわからんが、始めは何か交渉していたらしい」
「・・・・・・交渉」
「そしてその交渉が決裂して追われているらしい、それにおかしいと思わないか一国の姫がこんな田舎に単身一人で」
ルガートの言っている事はわかる。
あいつと少ししかまだ話していないが、・・・・・・ただ性格は変わっていなかった。
「おい手を引け、せっかく忠告しているんだぞ」
「うるせぇー、黙ってろ長身天パ」
「・・・・・・天パだと」
「俺はあいつを助ける」
ルガートの手を振り払い一直線にごろつきの集団に身を投じる。
時間は掛からなかった。
一息つくと罵声が聞こえる。
「馬鹿ああああああ馬鹿ノア、どうしてもっと早く駆けつけてくれないの、洋服汚れちゃったじゃない」
「お前がどこにいるかなんて知るわけねぇだろ、それに明朝待ち合わせで何で外に出てるんだよ」
「・・・・・・それは、その・・・・・・外の空気が吸いたくて」
「へー良かったじゃねぇか、ついでにジョギングも出来て弛んだお腹も引っ込むんじゃ・・・・・・」
ん、急に腹に激痛がはしる。
さっきまで罵り合ってた会話が止まる。
アリッサを見る。
さっきとはまるで別人みたいな生気の無い目をしている。
手にはその豪華な洋服に似つかわしく無い真っ赤な大型ナイフ。
そこで気付く。
アリッサに刺されたと。
「がはっ、おいおい冗談だろ、これは流石にきついぜ」
視界が暗く狭まる。
アリッサは無反応だ。
かわりにさっきまで傍観していたルガートが話す。
「だから言ったろ、もうお前の知ってる奴じゃねぇんだよ」
アリッサがナイフを持ってルガートに突進してくる。
ルガートはそれを見て構える。
ナイフを徒手空拳で弾き飛ばしアリッサは無防備になる。
「あまり女性に拳を向けたくはないが」
だが、その拳をノアが防ぐ。
「なっ」
力を入れたせいか腹部からはおびただしい程の血が流れる。
一瞬ノアに目を奪われ気付くとアリッサの姿は消えていた。
そしてノアも立ったまま意識を失っている。
「世話の焼ける男だ」