能力箱(マナキューブ)
この天パを注意深く観察する。
俺の能力の関係上相手の事を調べないと戦闘が有利に進まないからだ。
武器などは持っている様子は無く構えを見る限り徒手空拳と感じさせる。
「どうした、仕掛けて来ないのか」
挑発をするように右手を前に出しアピールする。
安い挑発だ。
普段なら先手を取ってもいいものだが数多くの経験から不用意に飛び込むのは危険と判断した。
そう判断した直後、天パは視界から消え気付くと俺の目の前にいた。
「なっ!」
不意を付かれた俺は頭部に奴の放った掌底を喰らい地面に無様にひれ伏す。
「うぐっ」
すぐに立ち上がり態勢を整える。
痛みというよりは眩暈、吐き気が襲い最悪の気分だ。
近接戦闘では分が悪いと判断し距離を多く取る。
何らかの能力を使われたかと思ったが、能力箱が出現していないため能力を使っていないことが分かる。
能力箱
能力者が能力を使う際に頭部後方に出現する立方体の透明な箱
これを出して置かないと能力を使用することは出来ない
また、能力を使用する際個人差で鈍く、もしくは明るく発光する
大きさや色も個人によって異なるが平均五cm×五cmで色も単色が多い
能力が使えない(マナオーバー)と能力箱は消え、能力を使用するのに一定の時間を要する
「くそ天パめ、だがかなり喧嘩慣れしてやがる」
また天パが素早く移動する。
さっきよりも距離を多く取っているため今度は分かった。
ノアは能力箱を出現させる。
辛うじて目で動きを追い男の繰り出す裏拳を持っている剣でガードする。
キィィィィィーン
何故か甲高い金属音が発生し天パと距離を取り確認する。
斬られた右腕の部分の服を剥ぎ取ると前腕のとこまで手甲が装備されていた。
おそらく両腕に装備しているのだろう。
「よくそんな装備付けてるな、邪魔くせぇだけだと思うが」
「邪魔くさいと感じたことは最初だけだな、今じゃ攻防一体の最強武器さ」
ルガートは駆ける。
「そろそろ決めるぞ、悪く思うなよ」
ノアの剣とルガートの手甲が交差し金属音がなり響く。
押されているのはノアだ。
重い手甲が何度もノア目掛けて叩きつけられる。
持っている剣でガードするのが精一杯だが・・・・・・
一撃一撃が重くノアの剣も折れる寸前だった。
このままではまずいと思ったとき、ルガートは攻撃を停止し距離を広めに取った。
「どうした、スタミナ切れか天パ野郎」
「予言してやるもう一度の攻撃でその剣は完全に破壊される、修復は絶対不可能でな」
「はっ、やってみな」
「も う や っ て い る」
奴は背後に回り込んでいた。
それだけじゃない、持っている剣が音を立て壊れる。
見事にバラバラになり綺麗に柄だけになった。
「お前の負けだ、チビ」
「それはこっちのセリフだテンパ野郎」
ルガートの腹部には大小無数の刃物が突き刺さっている。
「むっ、な、何故」
ルガートの顔が苦痛で歪む。
「お前が俺の持っている剣を壊そうと必死になっている時、俺は俺で策を練っていたんだよ、あと確かに動きは速いが無駄が多すぎる・・・・・・俺をなめるな」
ルガートは倒れる。
これでようやくアリッサの所に帰って終わりなんだが・・・・・・。
奴は全然本気を出していない。
そもそも背後に回りきった際に武器になんて狙わず直接俺を狙えば・・・・・・まぁそれはそれで対処したが。
奴の能力もまだ見てないし。
俺は柄だけの剣を戻し夜空を見上げながら時計を見る。
「まだ明朝まで時間はあるなぁ・・・・・・」
「天パのおっさん倒れてるとこ悪いんだけど本気出してくんない、全然つまんねぇよ」
それに応えるようにルガートは立ち上がる。
刺さっている数本の刃物を抜き睨む。
その後方には能力箱が出現していた。