夏の空
ビリー・ザ・キッドは、
幸せだったのだろうか。
彼はふと思う。
夏の空に、蝉は鳴いている。
ビリーはきっと、
神様にすら、その銃口を向けただろう。
「くだらねえ世の中だ」
そう決め台詞を口にして。
彼は人殺しだ。
彼は嫌われ者だ。
ビリー・ザ・キッドは、
幸せだったのだろうか。
幸せだったのだと、
彼は根拠のない結論を抱く。
人殺しの感性
自殺志願者の感性
彼は、
それが人間の素晴らしさだと考える。
河原のアスファルトを歩く。
暑い。汗をかいている。
夏の素晴らしさとは、暑さなのだ。
彼は感じる。
自分は感情を抱く。
何にも、どんなものにも則らない
掟破りな感情を。
殺してしまいたいほど人を憎み
死んでしまいたいほど人に恋する
なんて素晴らしい。
夏の素晴らしさとは、暑さなのだ。