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02:ヴァーグナー夫人の秘密

 とりあえずここに宣言するわ。

 初夜なんて、甘さのかけらもなかったし、普通初夜に行われる事が一切なかった事もね!

 私、断固として拒否したから。ええ、それはもう断固として。

 結婚生活三日目、初夜以降ニコラウスと顔を合わせない生活が続いている。それに対して特に不満はないわ。

 でも、なんでいまだに王城の一室を与えられたまんまなのかしら。確かに最初は王子と結婚する予定だったから、疑問もなかったけど、でも騎士と結婚しちゃったんだから、旦那様のお屋敷に行くのが普通じゃないの?

 なんて事を紅茶を飲みながら考えた。

 王城の一室だけあって、やっぱり豪華。祖国には負けるけど。でも、私はそんなに贅沢に執着があるわけでもないから、正直もっと狭い部屋でも良いし、こんな華奢で扱うのも恐ろしい家具や食器はなくても良い。

 ベッドだって、装飾も布団もすごい。このベッドは私一人で使っている。



『絶対、絶対、ぜーったいに嫌ですわ!!』

『なぜですか?』

『だって、わたくしはグレンツィアから嫁いできた、第一王女ですのよ!? なんで王子ではなく、貴方がわたくしの旦那さまなのですか!』

『そうは言っても、貴女も誓いに同意しました』

『それはそうですが! でも、絶対にいやですわ!!』

『はい、わかりました。ですが、ベッドはひとつなのでとりあえず一緒には眠りましょう? 結婚した夫婦らしく』



 貴女はそういう演技すらできませんか?

 という挑発するような視線にメラメラと炎が上がってしまったわ。ええ、一緒に眠りましたとも! このベッドに初夜だけ。もちろん、何事も起こらなかったわ。

 そういえば旦那さま、もといニコラウスはあのとき感じた獰猛な印象を再び綺麗にかくしてしまった。まぁ、優しい顔して結構色々と言ってくれるけどね。私も猫を被ってるから相手の事は言えないけれど。だけどさ、ちょっと普段と違う部分を見ちゃうと他にはどんな部分があるのか知りたいっていうか……逆にあれっきり隠されるのもなんか不安っていうか。……あー、もー! 気にすんのやめた!!

 それよりも。自分で言ったのだけど、初夜で私が吐いたセリフは我ながらすごい。結婚したその日に旦那さまを否定するなんて。それに対して、全く怒らずに大人な対応をしたニコラウスもすごいと思う。


 コンコン。


 扉をノックする音。

 その主を確認しに行く侍女はいない。私が断ったし。祖国からも侍女は連れてこなかったから、まぁ、私と一緒に来たがる侍女はいないからね。今、私はこの部屋にひとりきり。


「どちら様?」

「エルヴィンです。お邪魔してもよろしいですか? ヴァーグナー夫人」

「どうぞ?」


 そっと扉を開けて入ってきたのは、この国の第一王子エルヴィン。私の政略結婚相手のはずだった男。


「ご機嫌麗しゅう、夫人……そんなあからさまに嫌そうな顔はしないでください」


 何が悲しくて私は元婚約者(と呼べるのかしら、この場合)と顔を合わせなければならないのかしら。……でも元婚約者の住居に居候してるのは私だったわ。

 部屋の中央にある椅子を勧める。

 エルヴィン様は勧められるがままに椅子に座り、お茶を出す私を見て苦笑した。


「不機嫌ですわ、エルヴィン様。わたくし、貴方と婚姻を結ぶものとおもってましたもの」

「その節は大変申し訳ありません」

「下手したら国交問題にも繋がりましたのよ?」


 ふう、と厭味ったらしくため息を吐いてエルヴィン様の向かいに座ってやった。

 エルヴィン様はふ、と意味深な笑いをこぼして。


「……ではなぜ、問題にならなかったのでしょうね?」

「それは、貴方が知る必要のない事です」







「グレンツィアの穢れ」






 爆弾を落とした。

 ピクリ、と思わず体が反応した。


少しだけ修正しました。

ニコラウスの口調についての部分です

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