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17:はたして勝者は?


 とりあえず、こちらに来てから今までの事を申し訳ないとは思っているのよ。

 ちょっと自分にコンプレックスがあるからって、それを周りに威張り散らすことで隠してたなんて。正直、とても褒められた事じゃないじゃない?

 ニコラウスとも話し合いの末、お互いが思ってる以上にお互いの事を想い合ってるってわかって。

 雨降って地固まる、っていうどっかの東国の古いことわざにもあるじゃない。

 つまりは、幸せって事よ。


「シャロン」


 ニコラウスが私を呼んでるわ。でも、まだ眠いの。ベッドから抜け出せないわ。

 私のぐずる様子に、クスリ、と笑う気配がして、ギシリ、とベッドが沈む。

 今日はいつもより早く出勤しなくちゃいけないのですって。

 お互いの理解を深め合って、ニコラウスが私をシャロン、と呼ぶようになった。私もニコラウスの事をたまぁにニコ、と呼ぶようになって、日は浅い。

 のに、ニコラウスは最近泊まり込みの仕事が多いの。エルヴィン様って無粋だと思わない?


「シャロン、私はそろそろ出たいと思います」

「……ぅうん……いってらっしゃぁい」

「……行ってきます」


 ベッドでもぞもぞする私の頬に軽くキスをして、ニコラウスは出ていった。

 お見送り、なるべくしたいのだけど。でも、何時ごろ帰るかわからない(もしくは帰れないかもしれない)旦那様をできれば起きた状態で迎えたいから、ついつい夜更かししちゃうのよ。

 そう言ったら、ニコラウスは苦笑して、無理はしないで、と言っていた。


 私たちの関係はとても良好。

 お互いに隠していた部分をさらけ出せば、気が楽になった。そして、自然でいられる分、二人の間の空気も優しくなるものなのよ。

 だけど、ニコラウスの性格ってちょっと詐欺だと思ったわ。

 私は実は結構短気だし、すぐ手が出る人間なのよ。なんていうか、面倒くさい女よね。私。

 で、ちょっとした事ですぐ手が出ちゃうんだけど、ニコラウスってば笑いながらそれをかわして、私の手を掴んではサラリと恥ずかしい睦言まがいの事を言ってみたりとか、逆に火に油を注ぐような事を言ってみたりとか。

 翻弄されっぱなしなのよ!

 エルヴィン様が「ニコって呼ぶと嫌そうにするよ」というからそうやって言ってみたら、まるでとろけそうな顔して喜ぶのよ!!

 ……なんか悔しいじゃない!!!


 ガバッとベッドから飛び起きて、もうすぐ屋敷を出るだろうニコラウスの元へと走る。

 こういう私の淑女らしからぬ行動だって、屋敷の者たちは悟りきったような笑いで流してくれる。私の本来の性格がここに馴染んできているからだわ。(後はここ数日の間に繰り広げられる第三者から見たら甘ったるい二人きりの世界にしか見えないような、本人はケンカだと言い張る出来事への耐性がついた結果、というのはニコラウスしか知らなかったりするわけです。)


「ニコっっ!!!」


 今まさに扉を開けようとしていたアンバーの手が止まる。

 アンバーの横にいたニコラウスもびっくりした顔でこちらを見上げる。

 いまだに夜着のまま、階段の上から王者のように指をつきつける私を見て、ユルく笑って「はい、何でしょう?」とのたまった。

 このユルイ笑いが悔しいのよ!!!


「いいこと!? 今はそうやって余裕でいられるでしょうけどね! 女を磨いてやるわ!! 貴方の余裕を失くしてやりますからね!!!」


 のちに盛大に語り継がれることになり、後悔する羽目に陥る大胆発言をした私に、ニコラウスは嬉しそうに笑った。


「今でもそんなに余裕なんて無いですよ?」


 そういうのを余裕っていうのよ!!!


「でも、楽しみにしています」


 そう言ってニコラウスは仕事に向かった。

 扉を閉めたアンバーが笑う。


「お二人が仲睦まじくて、我々はとてもうれしいですよ。頑張ってくださいね。奥さま!」



 私も二人の関係がこんな風にまとまるとは思わなかったけれど、こういう関係も素敵よね?

 でも、絶対に負けないわ!!



これで本編は完結となります。

この後番外編を少し書いていきたいと思っています。



とてもつたなく、色々と未熟な点も多々ありますが、完結出来て良かったと思っています。

そして、このお話を読んでくださる方、お気に入りに入れて頂いた方、評価をつけて下さった方、全ての方に感謝しています。

ありがとうございます。読者様がいるから、続きを書くことができたと思います。

番外編を更新するまでにまたお時間をいただくかと思いますが、お付き合いいただけたら幸いです。


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