12:再戦のゴング
今日がどんなに最悪なモノであろうと、必ず明日はやってくる。
誰かの世界が終っても、必ず太陽は昇る。
どんなに明日が来ないでと願っても。
カーテンを引かれる音。瞼の上から差し込む、少し痛いくらいの日差し。
朝が来た。
昨日は結局、客室に止まってしまった。結婚しているのだから、ニコラウスとは同室。だけど、彼は一度も戻ってきていないと思う。
「おはようございます。シャルロット様」
アンナが私を優しく起こしてくれる。昨日、私と一緒にここへきて、私と一緒に戻るはずだった彼女も、ここに留まってくれている。
そのアンナが身支度を整えてくれている間、ぼんやりと昨日の事を考えていた。
涙が枯れるまで泣いた目は腫れぼったい。喉はイガイガする気がする。
頭が重たい。
あぁ、このままもう一度ベッドへ……。
「ちょ、シャルロット様ぁ、ふらふらと寝台へ行かないでくださいませ!! これからエルヴィン殿下とニコラウス様と朝食を召し上がっていただかなければ!!!」
アンナに引っ張られるようにして部屋を出る。
この子ってば、いつの間にこんなに大胆になったのかしら。
「今回はエルヴィン殿下の私室にお食事をご用意されているとのことです」
アンナの言葉を聞きながら、廊下を進む。
輿入れのために入国して、ニコラウスと共に屋敷へと行くまでの間、私はここで生活をしていた。けれど、この場所に違和感を感じた。
私の生活の基盤はすでにここではないから。
「シャルロット様、つきましたよ」
内側から扉が開かれ、すでに席についていたエルヴィンとニコラウスが出迎える。
「おはよう、ヴァーグナー夫人」
「おはようございます。エルヴィン様」
真っ先に声をかけてきたエルヴィン様に挨拶を返し、ちらりとニコラウスを見る。
彼はこちらを見て、緩く笑い、けれど声をかけようとはしない。
エルヴィン様と同様に、私を出迎えるために立ちあがったけれど、私の元へまで来てくれたエルヴィン様とは違い、私がテーブルに近づくのを待つ。そして、本来なら給仕の者がする、私のために椅子を引く、という行為をして私に席に着くように促した。
……なんか、もやもやするじゃない。
ちょっといつもと違う、その様子に昨日の事が脳裏をよぎった。……けどきにしない!!! 私まで樹にしたらなんか収拾がつかないじゃない!!
「おはようございます、旦那様?」
「おはようございます」
私が席に着く直前、わずかに触れそうになったその手が自然と私を避けた。きっと、私じゃなければ気付かないくらい、自然な動作。
そして、いつもだったら最後に俺の奥さんとか、そう言った言葉をつけきたニコラウス。そのニコラウスが、おはようございますぅ!?
……もやもやどころじゃないわ!!! ちょっとむかつくじゃない!!!!
かーん。
えぇ、開戦のゴング再びよ。
第二ラウンドといこうじゃない!!!
その態度、私が直してやるわ!!!!!
長らくお待たせいたしました。
ようやっと続きを更新しました。楽しんでいただけたら良いのですが……。
ちょっとシリアスが続いてて、コメディーに戻したかったのですが、書いても書いてもシリアスになったので……。途中まで書いた12話をまるまるっと書き直してしまいました。
シリアスだととことん重くなりそうだし、シャルロットにそんなのは似合わねぇぜ!!という事でここからシャルロットが頑張りそうな感じです。
そして、12・5話の更新に伴い、タイトルをへんこうしました。すみませんっ!!