今日は目立ちたくない!
はーい、読んでくれてありがとう!
今回はなんと、湿度が主人公(?)の回だよ!
湿度ってだけで、もう何かイヤな予感しかしないよね……?
教室の空気がベタベタしてると、なんかこう、心霊現象も起きやすいって聞いた気がするけど、気のせいかな?
ま、気のせいってことにしておこう!
さあさあ、今日もゆる〜くいくよー!笑って、びっくりして、ほっこりしてね!
朝の会直前。猫背の古井先生が教室に入ってくる。
寝ぐせ混じりの髪に、ゆるい口調。教室の空気が一気にゆるむ。
「おーはよー……今日は風より湿気のほうが強いなー……
洗濯物、乾かんぞー、ふやけるぞー……俺の靴下がもう既に濡れてんぞー……」
教室がどっと笑いに包まれる中、灯は窓の外をチラリと見た。
どこかまだ気が抜けない。スマホの中に声を潜めてハクがささやく。
「この“教師”という者、話しぶりは寝言の如し……が、心に翳りなし。よき人物なり」
(褒めてるの?それ……?)
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1時間目。英語。
授業中、灯はふと、背中にひやりとしたものを感じた。
なんとなく気配がして、教室の隅を見た瞬間、
黒板の端に貼られていたプリントがひとりでにピラリと揺れた。
(……まただ。何かいる?)
目をこらすと、黒板の隅――ほんの一瞬、「おいで」と書かれた文字が浮かんだ気がして、すぐに消えた。
ぞくりと鳥肌が立つ。蛍光灯がチカチカと瞬き、最後にはバチン、と大きな音。
「わっ……!」
「……俺のせいかー……また電球替えんとなー……」
古井先生がぼそっと呟くと、また笑いが起きた。が、灯は笑えなかった。
ハクがスマホの中でこそこそと囁く。
「主……小さき霊の波動、検知。簡易式、即座に展開可能――」
(ダメだってば!今はテスト返却中だよ!張ったら私がやばいの!)
「ならば“ちゅーもんきゃんせる”の術式を――」
(それ通販用語!!)
隣の席の紬が、ちらりとこちらを見た。
無表情だけど、その目が何か言いたげに光っている。
(……やっぱ、気づいてるのかも……)
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昼休み。ようやく緊張がとけた灯は、スマホを開いた。
「主よ、余はついに“天気予報”なる未来予知の術を入手した!」
(勝手にアプリ入れないで!?通知100件来てるんだけど!?)
「本日午後、雷雨:式の暴走に注意、との表示が出ておる!」
(それ予報じゃないでしょ!?どこの式神向け予報なの!?)
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帰りのホームルーム前、移動教室から戻ると、自分の机に何か書き込みがあるのを見つけた。
(……落書き?)
目を凝らすと、「うしろ」とだけ、赤ペンのようなもので書かれている。
「……っ!」
息をのんで目を逸らした瞬間、文字はスッと消えた。
「主よ……これは“呼ばれておる”のやもしれぬな」
(呼ばれなくていいの!無視して!!)
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放課後。帰り支度をしていた灯のところに、紬がひょいと現れる。
「ねえ」
「わっ、びっくりした……な、なに?」
「別に。あんたには関係ない話だけど……」
紬は、スマホの画面を見せてきた。チャットアプリの画面だ。
【図書室の七不思議探検しようぜ!】
【動く人体模型とかマジで見たい】
【今夜、集まれるやつ!】
見知ったクラスメイトの名前がちらほらある。
「……行くってさ。バカだよね」
「やめてほしいんだけど……」
「止めたら目立つし。行かせとけば?」
「……でも、なんか……気になるし……」
灯はスマホをぎゅっと握りしめた。
(……もし、本当に“何か”があるなら。私が、止めないと)
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その夜、スマホの中でハクが不敵に笑う。
「主よ……“七不思議”とは、まこと人の好奇心と恐れが生みし幻影。
だが時に、幻は現実と化す……これは、余の出番の予感ぞ?」
「……うん、だからお願いだから、騒がずにね?」
(バレたくないんだから……本当に……)
今回も読んでくれてありがとうございました!
灯「ねえ、柚。今日の湿度、やばくなかった?」
柚「べたべたで最悪だった。でも、古井先生の靴下話は笑ったわ」
灯「でしょ?あのゆるさ、最高よね。でも、あの教室で起きてること、ただの湿度のせいじゃない気がするんだ」
柚「お前、またアレ調査するつもりだろ。変なこと巻き込まれんなよ」
灯「うん、でもちょっと楽しみなんだよね。七不思議って、ホントにあるのかな?」
柚「行くなら…付き合ってやるよ」
灯「やった!ありがとう、柚!」