第90話 魔王戦そのいち
俺たちが魔王城に突入したのは、土砂降りの雨の日だった。
親衛隊結成時から見れば減りに減った隊員たち。
城の中で散り散りになるのは、いくら通信魔法があるとはいえ、皆、相応の覚悟が必要だった。
魔王の間に辿り着く頃には10人にまで人数は減っていて、合流を待ってから突入した。
「……いくぞ」
「「うおぉおおおおお!」」
騎士たちは雄叫びを上げながら魔王の間に足を踏み入れ、隊列を整える。
「勇敢だな、同時に無謀とも言える。何かしら罠が仕掛けられているとは考えなかったのか?」
魔王の間の最奥中央に座す金髪美丈夫。彼は、退屈そうに肘を突き、物申した。
「どうした勇者よ会話は無しか?」
「……お前が魔王だな」
「いかにも」
そう確認した俺は、ロングソードを眼前に構え、魔王に言った。
「俺はお前を倒さなければならない」
「それはなぜだ?」
「道中でたくさんの出来事を見た。焼かれた村、殺された人たち、泣くことしかできない子供……そんな悲惨な出来事がお前を倒して終わるのなら、俺は喜んで剣を取ろう」
そう勇む俺を魔王は冷静に見下ろす。
「ふん、嘘だな」
「何をいうか!」
「大方、我を殺せば元の世界に帰れるなどと言われたのだろうが、生憎だったな。元の世界には帰れぬぞ?」
「嘘です!戦争が終われば元の世界に帰すって、アルバシア皇帝はおしゃられました!」
「それこそ、嘘だというのだ。数多ある世界の中、一つだけを選んで送るなんて芸当、到底人間如きが行えるはずがなかろうて」
「それは……」
「400年生きた小僧はよりわかるだろう?人間如きが世界間を跨ぐ魔術など扱えるはずがない」
「……くっ」
「はっ、ダンマリか。生意気な小僧よ」
「俺は……俺は、俺が見てきた世界を信じる!」
「敵の言葉を信じるほど愚かでもないか……ならば見せてみよ、勇者の実力とやらを」
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