第87話 文化祭そのご
一行は確証はなくとも確信した。
こいつが魔王だと。
誰ともなく抜剣し警戒体制を整える。
「どうした勇者よ会話は無しか?」
「……お前が魔王だな」
「いかにも」
「俺はお前を倒さなければならない」
「それはなぜだ?」
「道中でたくさんの出来事を見た。焼かれた村、殺された人たち、泣くことしかできない子供……そんな悲惨な出来事がお前を倒して終わるのなら、俺は喜んで剣を取ろう」
魔王は組む膝を変え言った。
「ならば見せてみよ。勇者の実力とやらを」
魔王はゆらりと立ち上がり、武器を取る。
得物はロングソード。金属とは思えぬどす黒さの中にどことなく気品を感じさせる逸品だ。
「しッ――!」
先手を取ったのは勇者。右横へ真っ直ぐ鋭い一撃を見舞わせる。
が、それを魔王はロングソードを使わずに容易に手で受け止める。
「その程度か?」
「まだ!」
右へ左へ剣を振る。それを魔王は片手でロングソードを振るいいなす。
「勇者様!」
アリスの合図で勇者は射線を譲る。
それと同時にアリスの魔術が魔王にモロに当たる。
が、それも別に響いていないのか、煙を煩わしそうに払う。
「クロゥビルらを葬った割にはこの程度か?」
今度は魔王から攻撃が繰り出される。
素早く一合二合と剣戟が交わる。
「勇者殿!」
ケイローンらの援護の矢が飛んでくる。
魔術で強化された矢はただ当たるではなく爆発や酸が降りかかる。
しかしダメージを負ったとしても即座に再生され、何事もなかったように魔王は攻撃を繰り出す。
それを勇者は寸前で回避する。
「勇者様、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だ、ただこれ以上は皆んなを巻き込む!退いてくれ!」
「いやです……!けれど、わかりました……、皆さんここにいては勇者様の邪魔になってしまいます。退きましょう」
「しかし、それでは勇者様一人になってしまいます!」
他の兵士たちから非難の声が出るも、激化する戦場でそれは命取り。
「ケイローン!」
「わかっています!皆、勇者殿のいう通りにしましょう。そうでなければ彼は全力を出せません!」
「くっ……勇者様、ご武運を」
ケイローンに促されて兵士たちは退いていく。
「さあ、殿下も」
「……わかりました。勇者様、どうかご武運を」
そうして舞台は勇者と魔王だけになる。
「お前一人で良いのか?」
「ああ、みんなを巻き込みながら戦いたくない」
勇者は剣を空に向かって斬る。
最初は鈍い音だった空を切る音が、だんだんと甲高くなっていく。
そして次第には段々音が遅れて聞こえるようになる。
「……ほう」
「……さあ魔王、勝負だ」
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