第86話 文化祭そのよん
『アリスが勇者一行と行動を共にするようになって数か月が経った。勇者一行の活躍は凄まじく、エルフの国、ユグドミア領の魔族も掃討され、その足は隣接している魔王領にまで及ぼうとしていた』
「この分なら明日にでも魔王領に入れるな」
「とうとうですね……」
「本当に俺たちについて来てよかったのか?」
行軍する中、勇者はアリスにそう尋ねた。
「何を今更、お父様……国王の許可は得ています。それに、私はあなたと共にいたいのです」
「そっか、ありがとう」
『勇者一行は森を越え山を越え、魔王領へと足を踏み入れた。そこには驚くべき光景が広がっていた』
「これは街……ですか……」
「静か……ですね」
「周辺を警戒、民間人がいるかもしれない、気を付けろ」
そう言って兵を展開させようとした時、地の底から鳴り響くような声が聞こえてきた。
「去れ、我らが土地を侵さんとする者よ」
「誰だ!」
「我はレオンハルト。貴様らが魔王と呼ぶものよ」
その声を聞いた瞬間、総員が抜剣した。
しかし姿は見えない。
「我を倒したければ城に来い。相手をしてやる」
皆一様に警戒しながら陣形を整える。
しばらく待ってみるも、声は聞こえなくなった。
「今のは本当に魔王なのでしょうか」
「城というのはどこのことでしょう」
様々な疑問が浮かんでくるも答えは出てこない。
「物見が城塞らしき建造物を発見しました」
「よし、とりあえずそこを目指して進もう。皆、警戒は緩めるな」
場面は切り替わり城塞。
「跳ね橋が降りている……罠でしょうか」
「わからない。けど、進むしかないだろう」
一行は勇者の言葉を信じ、前へ進む。
勇者の確信めいた足取りに一人の騎士がこんな質問を投げかける。
「勇者様はこの城のことをご存知なのですか?」
「どうしてだ?」
「随分と確信めいた足取りで進まれるので……気になりまして」
「確証は全くない。が、なんとなくこっちなんだって予感がするんだ」
「はぁ……」
「年のため部隊は分散させているし、問題ないだろう」
「こちらの戦力を分散させるのが目的なのでは?」
「それもあり得るが、この城の見取り図がない以上こうするしかないさ」
そうして一行は進んでいく。
やがて、一行は大きな扉にたどり着いた。
「大きな魔力を感じる……ここかもしれない」
「慎重に行きましょう」
皆と示し合わせて扉を開けて一斉に展開する。
周囲を見渡すと、ただ一人そこに座っていた。
部屋の奥中央の高い位置に座す人物が一人。
腰にまで届きそうなほどに長い金髪。細いが確かに筋肉を感じさせる躰。
その男は肘をついて一言発した。
「よくぞきた、勇者よ」
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