第83話 文化祭そのいち
ビーと、観客たちに開演を知らせるブザーベルがなる。
カーテンが開くと、学生服姿の和也が姿を現した。
しばらくするとナレーションが聞こえてくる。
『それは、薄く雲が見えつつも晴れた天気模様の日だった。普段と変わらぬ学校生活を送った勇者は帰宅の途につく。
特段人通りの多い道ではない帰り道は、勇者と同じ学生服を来た人たちがちらほら。それもいつもの光景なので。特筆して感想を勇者は抱かなかった』
『しばらく歩いて、数少ない信号で止まる。これもいつものことだった。しかし、次の瞬間だった』
背景担当の生徒が背後を駆け抜け、新たな背景を用意する。それは言わずと知れた豪華絢爛な調度品に美しく整えられた室内装だ。
「よくぞ来てくれた勇者よ!我々は貴殿を歓迎しよう」
これまた豪華絢爛な服装をした王が舞台袖から現れる。
「は?」
「我々の世界は今、忌々しい魔王の手によって危機に陥っている。本来であれば我々の手だけで解決したいのだが、魔王の脅威は凄まじく。なので伝承に習い、異世界から貴殿を召喚したのだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!一体全体どうなっているんですか!?」
「混乱するのも無理もない。しっかりと説明しようではないか」
王は舞台の中央へ大手を振って出る。そして観客たちを回しみる。
「ここは勇者殿が暮らしていた世界とは似て非なる世界、イスガルド。外には動物の他に魔族の手先である魔物と呼ばれる危険な生命体が跋扈し、我々人類の生活を脅かしているのだ。そして、我々と敵対しているのが魔族という恐ろしい生物よ。姿こそ我々に似せてはいるが、中身は似ても似つかぬほどに凶暴なのだ。人類根絶を目指す魔王率いる魔族たちと日夜我々は戦っているのだ!」
「はぁ……」
「大丈夫か?勇者殿?」
「えっと、はい?」
「さあ勇者殿!貴殿の能力を教えてくれ!」
「どうやってその能力ってのはわかるんですか?」
「ああ、ステータスオープンと唱えれば貴殿の能力が女神様の祝福の元露わになるぞ」
「す、ステータスオープン」
すると勇者のステータスがプロジェクターで映し出される。
――――――
名前:羽鳥和也
ジョブ:異世界人
HP :205
魔力:50
スキル:勇者 大魔導
祝福:イーディスの祝福
――――――
「おお!これは!」
「素晴らしい、これで我らは助かるぞ!」
貴族たちが囃し立てる。
そんな彼らを勇者はよくわからず見ているだけだった。
「おお、すまぬ。我らだけど盛り上がってもしょうがない。貴殿が持つスキルはな、とても素晴らしいものだ。勇者というのはこの世のありとあらゆる武器種を使いこなせるスキルで、只人以上の成長力を持っておる。そして大魔導、これは数多ある魔術への適性を持つ者の証。魔導書で学び、魔術を行使すれば常人以上の速度で習熟することができる。そして祝福というのは自然的な現象以外、常に再生を続ける。寿命だって超越することができるのだ」
プロジェクターで各用語を解説しながら物語は進む。
「な、なるほど……」
「今一度言おう、勇者殿、我々の世界を救ってはくれないか?」
王の問いかけに勇者はたじろぐ。無理もない。突然そのようなことを言われれば誰であれそうなるだろう。
「お待ちください、王よ」
「おお、ケイローン、そなたも来ておったか」
ケイン――いやケイローンが今度は前に躍り出て、王に向かって膝を着いた。
「当然です。そして王よ、勇者殿はまだ混乱している様子。それに今後戦っていただくには覚えていただくことが多々あります。今一度時間をおいてみてはいかがでしょう?」
「確かにそうであったな、時期尚早であったなすまぬ」
「いえ、つきましては勇者殿の教育係をこのケイローンにお任せいただけないでしょうか?」
「400年の時を生きる賢者であるお主以外適任はいないだろうて、任せる」
「ありがたき幸せ」
ケイローンは勇者に向き座り込んでいた勇者に手を差し伸べた。
「改めまして、初めまして、勇者殿。私はケイローン。ケイローン・アーチボルト。あなたの教育係になりました。よろしくお願いしますね」
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