第78話 表情
私にとってカズヤさんはわかりやすい人なのだが、どうやら他人から見たときはどうやらそうではないようだ。
というのも、今日告白してきた素知らぬ男子生徒から言われた言葉がキッカケだ。
いつも通り、夫がいるのでと断りを申し出るとこんなことを言われた。
「あんな何考えているか分からない根暗の何処がいいか分からない」
私からすればあそこまでわかりやすい人を見てどうしてそんな判断を下したのかが気になるところだ。
きっと一場面を切り取ってそう判断してしまったのだろうと勝手に結論づける。
私からみたカズヤさんはとてもわかりやすい人だ。
正確に言うのなら、素直で正直な人。
というのも何かと表情に出るのだ。
確かに出会った当初は無愛想というか仏頂面で不器用な人と言った印象ではあったが何を考えているか分からない、というわけではなかった。
大体眼差しは穏やかだったし、私に対して不穏な雰囲気を滲ませることもなく、王女としてではなく一人の人として尊重してくれていたのは今も昔も変わらない。
そもそも真正面から聞けば何を考えているかくらい答えてくれるので、分かりにくいも何も聞けば分かるのだ。
今となっては割と聞かなくても分かるくらいに彼の表情から読み取れるようになってきた。
感情豊かなのは極親しい人たちだけ、ではあるのだが普段の表情も昔に比べて棘を感じさせない親やすさすら出ていると思う。
というよりも表情によく出ているんですよね。
何がってセレスティーナのことが好きという感情が。
これは別に自惚れとかそういうのではない。
流石に皆がいる前で常に分かりやすくそういう態度を向けてくるわけではないが、普段からカズヤさんが私に向ける眼差しは柔らかいし、熱を灯している。それが他の人からしたら分かりやすいと評するも0のなのかも知れないが、二人きりの時はその比ではないくらいにカズヤさんの表情は優しいし甘い。
誰が仏頂面と言ったのだろうか。本人もそう自認していたらしいが、とんでもない。
チラリと真正面に座って参考書を解いているカズヤさんを見れば、私に向ける甘さを含んだ視線は今は影も形もなく、ただただ静謐な眼差しと面持ちで黙々ちシャーペンを走らせている。
テーブル向こうにいる彼は私がこうして観察しているなんてつゆ知らずに本人の集中力を遺憾無く発揮してその目線は参考書の文字列を追っている。
当たり前であるが参考書に向かう彼の表情に優しさや甘さと言った要素は全く含まれておらず、この場面を見た人にはツンツンしているというか仏頂面と言われるかも知れないと思い内心クスリと笑う。
「どうかしたのか?」
「いえ特に何も、休憩がてらカズヤさんを眺めていただけです」
そういうと彼は少し呆れたような表情を見せる。
「そんなにいいものでもないだろ?」
「いいえ、そんなことはありませんよ?」
もっともっと、いろんな表情を見せてください。
もうあんな顔する必要はないのですから。
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