第66話 お酒の話
前略、お酒がなくなってきた。
夏休み明けるぐらいから心もとなくなっていた常飲用の酒が等々そこが見え始めてきた。
来客用の上等な酒や樽で保管しているものはまだあるのだが、常飲用と考えるとちょっと違う。
この世界では俺たちは17歳。お酒はまだ買えない年齢だ。
さて、どうしたものか。
この世界で酒が買える様になるまで禁酒するか?
耐えられないことはないだろうが、酒が飲めないと考えると飲みたくなる。
むむむむ。
思い切って父さんに相談してみることにした。
「酒が欲しい?料理用じゃなくてか?」
「うん、俺たちが飲む用で」
「お前たち酒を飲むのか!?」
「イースガルドでは15歳以上は酒を飲んで良い決まりだったので……つい」
叱られる覚悟で申告してみる。
「まあ、異世界だしそういうこともあるのか……?」
若干困惑しつつも父さんはその事実を受け入れる。
「けど、料理用の酒は買ってやれないな」
「どうして?」
「法律で決まってるんだ。未成年者の飲酒は止めろってな。これを介助したりすると罰金刑が下る」
「そっか……じゃあ諦めるしかないか……」
「そうですね……”郷に入ったら郷に従え”ですものね」
「そうだ、だから異世界で手に入れたお酒は大事に呑めよ」
本来高校生がお酒を飲むことすら異常なんだから諦めるか……と思った時、父さんの言葉にひっかりを覚える。
「父さん、今なんて言った?」
「ん?だから異世界で手に入れたお酒は大事に呑めよって言ったんだ」
「お酒飲むの、止めなくていいの?」
「本来であれば止めるべきなんだろが、生憎異世界のことはよくわからん。それに、聞いた話だと和也は27なんだろ?だったら節度ある呑み方をしてくれるはずさ」
「父さん……」
「ただ、もし酒で失敗や次の日に悪影響を及ぼしたら止めるからな」
「ありがとうございます!」
◇
その日の夜、屋敷の自室にて。
「なあセレス、ちょっとこれを飲んでみないか?」
「なんですか?」
そう言って俺はノンアルコールのレモンスカッシュを取り出す。
「お酒はお義父様に止められてたんじゃ……」
「父さんがいきなりの禁酒は辛いだろうからって買ってきてくれたんだ」
「そうですか……今度お礼を言っておかないと」
「それはさっき言ってきたよ」
そんな話をしながら軽快な音と共にプルタブを明ける。
氷で冷やしておいたグラスにレモンスカッシュを注ぐ。
「なんだかジュースみたいですね」
「酒精があるないの違いんなんだ、ジュースとあまり変わらないだろ」
香りをそこそこにグラスを煽る。
「美味しいです……!」
「こっちの世界のノンアルは初めて飲むけど、美味しいな」
レモン特有のちょっぴりビターな酸味がまた良い味を出している。
「これは、こちらの世界のお酒を飲む日が楽しみです」
「セレス、そんなに積極的に呑みたいだなんて珍しいね」
「美味しいんですもの、しょうがないでしょう?」
ソファに二人並び肩を寄せ合う。寒くはなく、なんであれば暑いぐらいの今の気温だが、彼女の熱は心地良い。
「また飲みましょうね」
「ああ」
グラスの氷がカランと小気味良い音を奏でる。耳をすませば虫の声だって聞こえてくる。
でも、今の俺には彼女の動き、吐息、鼓動。そんな情報しか入ってこない。
どちらともなく近づき、やがて影が重なる。
今日の夜は少しだけ長くなりそうだ。
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