7話 食堂にて
クラスのみんなと無事に打ち解けたセレスは俺の隣の席に着き、授業を受ける。
こちらでの初めての授業だったので大丈夫かと少し心配したが、しっかりと授業を傾聴し板書をしている。その姿さえ凛としているのは流石といえよう。
先生方が銀髪の彼女に少し驚く様子も見えたが、それ以外問題はなく、午前の授業が終わった。
「カズヤさん、この後はどうするんですか?」
「昼ご飯の時間なんだ。弁当を用意してくるか、食堂で食べるんだ。今日は用意してこなかったから食堂に行こうか」
「わかりました!楽しみです」
そんな会話をしていると話しかけてくる女子が居た。葛西さんだ。
「お二人ともちょっといいかな?」
「葛西さん....でしたよね?もちろんいいですよ」
「夫婦水入らずのところホント悪いんだけど、よかったらお昼ご飯一緒に食べたいな〜なんて」
「俺はいいけど、セレスは?」
「私も構いませんよ」
「やった!ありがとう!」
嬉しそうに喜ぶ葛西さんを見て自然と頬が綻ぶ。そろそろ食堂に向かおうとしているとまた声が掛かる。
「なあ和也、俺もいいか?」
「遼か、セレス」
「もちろん構いませんよ」
「私もー!」
「ありがとな」
こうして俺たちは遼を加えた4人で食堂に向かう。
さっきの盛り上がりを見るにもう少し話かけてくるかと思ったが、その辺は葛西さんらが良しなにやってくれたらしい。
正直かなり助かるので頭が下がる思いだ。
食堂に着くと、なかなか賑やかな声が聞こえてくる。
いつかの説明会でうちの学校は他に比べて食堂が広いらしいという話があったのを思い出す。この世界で他を見たことがないので分からないが、体感でも広く感じる。
けれど、全学年の生徒の何割かが一気に来るのでそれなりに混雑しているし騒がしい。
「セレス」
「大丈夫ですよ」
エルフという種族は元々森に住む種族なため他人種と比べて聴覚が優れている。なのでこの喧騒は大丈夫なのかと心配したが、杞憂だったみたいだ。
今日のメニューが書かれた看板を前にセレスに聞いてみる。
「どれにする?」
「そうですね……カズヤさんと同じものをお願いします。それにしても、自分で選ぶなんてちょっと新鮮です」
「セレスティーナさんがいた学校って自分で選ばなかったの?」
「そうですね、いつも作り手側で決められていました」
「へ〜、外国だとそんな感じなんだな」
内実、王家専属の料理人が毒などの細心の注意を払いつつ一級品を作って提供されていたのだが、物は言いようとはまさにこのことだろう。
「半券を食堂の人に渡したら自分でトレーを持って流れに沿って受け取りに行くんだ」
「なるほど、面白いです!」
表情は変わらずともワクワクした雰囲気を醸し出すセレスと一緒にご飯を受け取り、席に着く。
「セレスティーナさんってお箸使えるの?ほら食堂ってデフォでお箸だから」
「カズヤさんに教えてもらいましたから、ちゃんと使えると思います」
「セレスティーナさん日本語というか日本文化が上手だよなぁ、それも和也から教わったのか?」
セレスがしっかりといただきますと合掌してから食べ始めるのを見て遼がそんな感想を抱く。
「はい!カズヤさんが私の国に来てくださったときに教わりました」
「和也、お前いつの間に外国なんか行ってたんだよ」
「この間の長期休みにちょっとな」
ちょっと昨日の学校帰りに10年異世界行ってたなんて口が裂けても言えるわけがない。
「なんかごめんね、質問ばかりで」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
「何かこっちに聞きたいことはないか?」
「そうですね……学校でのカズヤさんの様子でしょうか、気になります!」
「セレス」
「いいじゃないですか」
セレスは楽しげに二人の回答を待つ。それに応えるように二人もまた楽しげに話始めた。
「そうだな、クラスのやつとは割と分け隔てなく喋ってるな」
「そうそう!男女問わず喋ってる印象!この間のカラオケも来てくれたし」
「成績は並みの上っていった具合だな」
まるで三者面談のように話される俺の情報。態々前でやらなくてもいいだろうに……ちょっといじけているとセレスの手が俺の頭に伸びた。
「拗ねないでくださいね?私の知らないあなたを知りたいのです」
「セレス……」
「知ってます。だから言ったんです」
撫でられる心地が良すぎて緩む心だったが、遼の言葉でなんとか戻る。
「さっきから思ってたんだが、和也お前、”セレス”ってしか言ってなくないか?」
「そうか?」
「ちゃんと話てあげないとだめだろ?」
「大丈夫ですよ、カズヤさんが言いたいことはわかりますので」
「例えば例えば?」
「さっきのは、『そんなこと言われたら何も言えないだろ』ですね」
分かってはいるが見事に当てられたので思わず顔を背ける。
「あ、当たってるぽい!」
「……セレス」
「『恥ずかしいのでやめてくれ』ですか?しょうがないですね」
セレスが二人と話せることに安堵しつつもいじられ続ける。そんな昼休みになった。
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